第二溶鉱炉始動前夜
「お嬢様」
文官が一礼して報告を始める。
「ゆき様から、第二溶鉱炉と地下生産ラインの進捗状況の確認が来ております」
私は軽く頷いた。
「そう」
当然の確認だ。
「資材はあちらも必要だしね」
こちらだけで回しているわけではない。
むしろ――今はまだ足りてない。
私は机に広げた生産表を見る。
「第一溶鉱炉」
現状。
「レールで一杯一杯」
ほぼ全力投入。それでも需要に追いつくかどうか。残りは最低限。各領で必要な物だけ。
分散して生産。
「余裕は無いわね」
私は小さく息を吐いた。
「だからこそ」
第二溶鉱炉。
その意味は大きい。私は顔を上げる。
「いつ火が入るの?」
文官がすぐに答える。
「あと数日ほどかと」
私は頷く。
「早いわね」
文官は続ける。
「ただし」
少しだけ間。
「人員の三分の二が新人です」
私は眉を上げる。
「訓練上がり?」
「はい」
第一溶鉱炉で経験を積んだ者達。まだ熟練ではない。
「最初は、生産量は控えめになるかと」
私は腕を組む。
「……まあ、当然ね」
いきなりフル稼働は無理。
事故のリスクもある。
「徐々に慣らすしかない」
それでも。
「ゼロじゃない」
それだけで違う。私は小さく頷いた。
「いいわ。最初は慎重に」
文官が記録する。
「承知しました」
そして文官が続ける。
「それと、もう一件」
私は顔を上げる。
「何?」
「ここから最短の村まで」
少しだけ間を置いて。
「レールの敷設が完了しました」
私は一瞬止まる。
「……本当?」
「はい」
「単線ですが、接続完了しております」
私は思わず笑った。
「やったわね」
ついに。
「繋がった」
拠点と外部。鉄道で物流が変わる。
人の流れも変わる。
「いいじゃない」
私はすぐに次を考える。
「単線……ね」
なら。
「次は複線化」
輸送量を増やす。待ち時間を減らす。
効率を上げる。
私は即座に指示を出す。
「早速それを使って複線化、進めて」
文官が力強く頷く。
「承知しました」
私は椅子にもたれた。
第二溶鉱炉。鉄道接続。人材育成。
すべてが――
「繋がってきた」
私は小さく笑う。
地下都市は今。確実にそして加速しながら――
次の段階へ進んでいた。




