都市の秩序
「……よし」
私は設計図を畳みながら、小さく頷いた。
公共放送。これを開始する。
表向きは――情報伝達の効率化。
掲示板だけでは遅い。
全員に同時に伝える手段。
それが必要になってきた。
私は心の中で呟く。
「……それだけじゃない」
同郷の転生者。あの商人。
気づく可能性はある。
なら――それに対抗出来る準備も必要だ。
私は腕を組む。
「疑うのは好きじゃないけど」
ここは日本じゃない。
法律も倫理も常識も違う世界。
私は静かに言う。
「やる事はやる」
それだけだ。
その時。
「お嬢様」
文官がやってくる。
「何?」
「領都から人員が到着しました」
私は少し首を傾げる。
「領都?」
「はい」
私は立ち上がる。
「誰?」
外に出ると。
整然と並んだ一団。
装備。統一された動き。
私は目を細めた。
「……警備隊?」
先頭の男が一歩前に出る。
「はい。お嬢様。お父様の指示により参上しました」
私は少しだけ驚く。
「お父様が?」
男は頷いた。
「はい」
私は腕を組む。
「……なるほどね」
人が増えてきた。
工業に農業。ギルドに商人。
そして外部との繋がり。
治安が必要になるのは当然だ。
私は小さく息を吐く。
「先に言ってくれてもいいのに」
無線機も設置してある。
連絡は取れるはずだ。
私はすぐに考えを切り替える。
「……まあいいか」
来てくれたのはありがたい。
私は警備隊を見渡す。
「助かるわ」
男が頭を下げる。
「お任せください」
私は頷いた。
「治安維持は任せる」
これで都市の内側は安定する。
同時に外からの目も増える。
私は小さく呟いた。
「……ちょうどいい」
警備に放送。
監視は警備隊に任せるか。
これで全てが揃い始めている。
私は静かに笑った。
「都市らしくなってきたわね」
今――“管理される町”へと変わり始めていた。




