転生者の痕跡
「……ふぅ」
私は執務室の椅子に深く座り、軽く息を吐いた。
頭から離れない。ギルドで見た、あの機械。
あの音。あの違和感。私は目を閉じる。
「……仕組みは分かる」
前世の知識。
あれが何かは理解している。
RFID。非接触識別。
この世界の技術では、本来あり得ない。
「あれは……この世界に合わせてあった」
違和感があった。完全な再現ではない。
確実にこの世界で使えるように調整されていた。
私はゆっくりと目を開ける。
「となると」
一つの結論に辿り着く。
「……あるわね」
まだ私が見た事もない物。
転生者が作った物。
あるいは――残した物。
この世界のどこかに。
私は机を指で軽く叩いた。
「知らないだけ」
今まで気づかなかっただけ。
そう考えた方がいい。
私は少し考える。
「情報を集める?」
商人。冒険者ギルド。
情報はそこに集まる。
私は眉をひそめた。
「……なんて言う?」
転生者の技術を探している。
そんな事は言えない。
そもそも気づいていない可能性もある。
あの機械のように生活に溶け込んでいる場合。それが「特別な物」だとすら認識されていない。
私は小さく笑った。
「厄介ね」
探す対象が曖昧すぎる。
私は視線を落とす。
「放置は出来ない」
もし知らない技術があるならそれは力だ。
そして力は――いつかぶつかる。
私はゆっくりと立ち上がった。
「無駄になるかもしれない」
文官がいない静かな部屋で、独り言のように呟く。
「でも」
私は小さく笑った。
「気になる事は潰す」
それが一番安全だ。
私は扉へ向かう。
「文官さん呼ばないとね」
やる事は決まった。
情報を集める。地道でもいい。
少しずつでもいい。
私は扉を開けながら呟いた。
「見えないなら。探すまでよ」




