転生者の影
私は、あの光景が頭から離れなかった。
ギルドで見たもの。
あの音。あの違和感。
私は一人、執務室で椅子に座りながら考えていた。
「……間違いない」
あれは。転生者の知識で作られた物だ。
私は小さく息を吐く。
「となると」
私達だけではない。
この世界には――他にも居る。
私は指を組んだ。
「……知らないだけ」
今まで出会っていないだけ。
見えていないだけ。でも居る。
そう考えた方が自然だ。
私は机を軽く叩いた。
「いや。居る前提で動くべきね」
たまたま。私が知らなかっただけ。
そう考えるのが一番安全だ。
私は視線を落とす。
「……問題は」
その転生者が何をしているか。もしくは何をしたか…‥だ。
私とゆきちゃんは違う。
生活を良くする為。
領地を豊かにする為。
その為に知識を使っている。
だが全員が同じとは限らない。
私は小さく呟く。
「もし軍事系に振っていたら?」
銃。砲。爆薬。通信。
それらを再現していたら。
私はその存在を知る事すら出来ない。
軍の中。貴族の内部。閉じた場所。
そこに居れば――外には出てこない。
私はゆっくりと目を閉じる。
「隠してる可能性も高い」
いや。むしろ隠す。使う時が来るまで。
私は小さく笑った。
「当然よね」
その方が強い。さらに可能性はある。
私は指を立てる。
「無理やり作らされてる」
捕まっている。
囲われている。
強制的に技術を提供させられている。
あるいは――
「売り込んでる」
自ら権力者に近づき。技術を武器に。
地位を得る。私はゆっくりと息を吐いた。
「どっちもあり得る」
この世界は優しくない。
知識は力だ。
そして力は――奪われる。
私は窓の外を見る。
町に、地下都市。工業。鉄。人。
全てが順調に進んでいる。
それは同時に目立つという事だ。
私は小さく呟く。
「……さて」
どうするか。敵か。味方か。
それとも。まだ見ぬ存在か。
私は椅子から立ち上がる。
「情報ね」
まずはそれだ。
知らなければ何も出来ない。
私は静かに笑った。




