鉄の洪水
溶鉱炉は、止まることなく稼働していた。
昼も夜も関係ない。
二十四時間、三交代制。
絶え間なく鉄が生まれていく。
私は生産区画を見渡しながら、小さく笑った。
「……ふふふ」
文官が横で少し苦笑する。
「随分とご機嫌ですね」
私は腕を組んだまま頷く。
「当然でしょ。見てみなさいよ」
レールが並んでいる。
今までとは比べ物にならない量。
一本、二本の世界ではない。
山のように積み上がっている。
私は呟いた。
「別格ね」
文官も頷く。
「はい。これまでの生産量とは桁が違います」
私は満足そうに笑った。
これが――工業力。
人力でも手工業でもない。
完全な量産。
私は指示書を見る。
「完成品は半分ずつ」
文官が答える。
「はい。こちらとゆき様の領地へ」
私は頷く。
「それでいいわ」
これで双方の鉄道敷設は一気に進む。
トンネル内。地下都市。そして地上。
鉄の道が広がる。私は少し考える。
「敷設速度が上がるわね」
文官も同意する。
「間違いなく」
鉄道が広がれば物流が変わる。
物流が変われば文明が変わる。
私は満足げに頷いた。
そして、ふと呟く。
「そういえば……」
文官が首を傾げる。
「何か?」
私は少し遠くを見る。
「蒸気機関車」
まだ完成の連絡が来ていない。
材料も揃っているはずだ。
私は腕を組む。
「苦戦してるのかしら」
それとも。別の事に手を回しているのか。
文官が言う。
「ゆき様も多忙でしょうから」
私は苦笑した。
「それはそうね」
私もそうだ。
今のこの都市ですら、全てを把握出来ている訳ではない。
工場。建設。農業。人員配置。
全てが同時に動いている。
私は肩をすくめた。
「一人じゃ無理よね」
どこかで任せるしかない。
それが組織だ。
私は視線を戻す。
「まあいいか」
近距離の輸送ならカーデンロイドで十分だ。
鉄道は長距離用。
用途は分ければいい。
私は再びレールの山を見る。
「それより今はこれね」
止まらない生産。
溢れる鉄。私は小さく笑った。
「いい感じ」
地下都市は今――確実に加速していた。




