都市の骨格
巨大な溶鉱炉の建設が、ついに終わった。
私は地下工業区画に立ち、その巨大な鉄の構造物を見上げる。
「……出来たわね」
文官が隣で頷いた。
「予定より早く完成しました」
私は腕を組んだ。
確かに早い。
レンガ生産。
鉄材供給。
重機。
その全てが噛み合った結果だ。
地下都市の工業の心臓部。
巨大溶鉱炉。
私は少し笑う。
「でも稼働はまだ先ね」
文官がメモを見ながら答える。
「はい」
まだ足りない設備が多い。
空調設備。
火災対策。
安全設備。
そして周囲の作業施設。
溶鉱炉は巨大な熱を生む。
準備無しで稼働させれば事故になる。
私は溶鉱炉を見上げながら呟いた。
「焦りは禁物」
文明は急げば壊れる。
順番が大事だ。
私は視線を少しずらす。
「それに地下貯水槽も建設中だし」
都市には水が必要。
生活用。工業用。
そして火災対策。
巨大な地下貯水施設は、まだ工事中だ。
私は小さく息を吐く。
「早く動かしたいけどここは我慢ね」
その時、後ろから声が聞こえた。
「お嬢様」
振り向くと文官が一人、走ってきた。
「何?」
「経済奴隷が数十名到着しました」
私は頷く。
「そう」
予想より早い。
地下都市の労働力は増え続けている。
私はすぐ指示を出した。
「希望を聞いて適性確認、スキルも判断」
文官が頷く。
「承知しました。配置はどうしますか?」
私は少し考えた。
「まず建設」
地下都市はまだ作り途中。
仕事はいくらでもある。
「その後、適性に合わせて配置」
文官はメモを取りながら答える。
「了解しました」
文官が走って行く。
私はゆっくり周囲を見渡した。
工場区画。住宅区画。
工事中の水槽。動き回る作業員。
重機の音。
私は小さく笑った。
「順調ね」
住宅も完成している。
作業員も増えている。
工場も形になってきた。
今のところ――大きな問題は無い。
私は溶鉱炉をもう一度見上げる。
この巨大な炉が動き出せば。
地下都市は本格的に動き始める。
私は静かに呟いた。
「もうすぐね」
この山の中に生まれた都市は確実に――文明の心臓になろうとしていた。




