吾妻編第69話 力強く切り裂くラインを
吾妻GT最終回第70話は明日17時に予約投稿しました!!!
最終回は12000文字のスペシャルです!お見逃しなく!!!!
最終コーナーを鮮やかに立ち上がり、三菱のハイテクスリーディファレンシャルを限界まで唸らせたサテラのランサーエボリューションVII MRが、ストレートのイン側を力強く切り裂いていく。
ドゴオオオオオッ!
ババババッ!
若林「その後方ではサテラが先にゴールインッ!!!」
チェッカーフラッグが激しく振られ、白銀のランエボVIIが13番手でフィニッシュラインを越えた。
その真後ろ、強烈なアメリカンV10サウンドを轟かせながらラインを通過したダッジ・バイパーGTSの車内から、高槻健永が無線を開いて凄まじい威圧感の声をぶつける。
高槻健永「これで勝ったと思うなよサテラァ……。こっちにはまだまだ殺戮兵器が用意されてるんだからな?」
大排気量モンスターの熱気を全身で撒き散らしながら威嚇する高槻。
だが、チェッカーを受けたサテラは涼しげな表情のまま、軽く肩をすくめて無線ボタンを押した。
サテラ「知らんがな。」
高槻健永「.....あい????」
青年らしい軽やかなトーンでさらりと受け流し、サテラはアクセルを緩めてクーリングラップへと移行する。
高槻の不気味な予告をまるで意に介さないその飄々とした態度に、バイパーのコクピットからは苦々しい舌打ちが漏れ響いていた。
若林「そして……うおっとおお!!!その後方で岡田大成がいったアアアアアア!!!!最終コーナーでねじ込むううう!!!」
実況ブースの若林が再び絶叫を轟かせる。
最終コーナーの深いアプローチ。
前を行く柊蒼真の駆るチャンピオンシップホワイトのシビックタイプR FL5の背後から、漆黒のカーボンを剥き出しにした異形のモンスターマシン――トヨタ GR GTが地を這うような猛スピードで襲いかかった。
岡田大成「おーい!そこ空いてるぜえええッ!!!!」
ズバババババババババンンンッ!!!
キキキキイイイイイイッ!
大排気量V8ツインターボの怒号とともに、岡田のGR GTは強烈なブレーキング勝負を敢行。
限界ギリギリまで制動を遅らせ、強烈なダウンフォースを路面に叩きつけながら、シビックのインサイドへ獰猛なノーズを強引にねじ込んでいく。
柊蒼真「くっ……!その車幅でそこへ飛び込んでくるのかよッ!」
FF最速を誇るFL5のステアリングを握る柊蒼真は、バックミラーを埋め尽くす巨大なフロントスプリッターに目を見張りながらも、電光石火のステアリングワークで応戦する。
リヤをわずかにスライドさせながらクリッピングポイントを死守しようとするシビック。
だが、GR GTの圧倒的なトラクション性能と空力が生み出す旋回スピードは、その抵抗を力尽くでねじ伏せた。
ドゴオオオオオッ!
バシュウウウッ!
二台のボディが接触限界の数センチまで接近し、巻き上がったタイヤスモークと火花が夜のサーキットを照らし出す。
岡田のGR GTがイン側からシビックを押し出すようにして立ち上がり、最終ストレートへ向けて猛烈なフル加速へと移った。
若林「前に出たああああ!!!!GRGTが前に出てくれましたアアア!!!エアリさん!なぜ重いGRGTが前に出たんでしょうかね?」
実況ブースの若林が興奮冷めやらぬ様子で身を乗り出し、隣の解説席へマイクを向ける。
最終コーナーの立ち上がり、低くワイドなカーボンボディを激しく震わせながらストレートへと抜け出した岡田大成のGR GT。
その圧倒的な脱出スピードに、エアリはケモミミをピコピコと動かし、自信満々に赤い瞳を輝かせた。
エアリ「はいッス!確かにGR GTは最新鋭のGTレーサーベースで車重はあるッスけど、その重さを完全に味方につけた走りを岡田君が決めたんスよ!ポイントは『超低重心パッケージ』と『強烈なグラウンドエフェクト』ッス!シビックみたいなFFスポーツはフロントタイヤに旋回と加速の負荷が集中するから、限界領域の突っ込みでどうしてもリヤの接地感がシビアになるッス。でもGR GTは、フロントミッドシップに積まれたV8ツインターボの重量バランスと、巨大なアンダーディフューザーが路面を吸い付ける強烈なダウンフォースのおかげで、ブレーキをギリギリまで残しても四輪の荷重が絶対に破綻しないんスよ!重いからこそ、ブレーキングの慣性力をそのままタイヤを路面に押し付けるグリップ力へ変換して、イン側の最短クリッピングを強引に奪い取った……まさにマシンの素性を知り尽くした豪快かつ精密なオーバーテイクッス!」
エアリの的確な解説が響く中、岡田のGR GTは重厚な排気音を轟かせ、追撃を試みるシビックタイプRを背後に従えてストレートを突き進む。
若林「あれ?GR GTって……四駆?」
モニターに映し出されたリプレイ映像で、脱出時に激しく白煙を上げながら力強く路面を蹴り出すGR GTの足回りを見て、若林が素朴な疑問を口にする。
その問いに、解説席のエアリがフフッといたずらっぽく笑いながらマイクを引き寄せた。
エアリ「いいえッス!GR GTは生粋のフロントミッドシップ・後輪駆動(FR)ッスよ!あんな四駆みたいな猛烈な立ち上がりトラクションを見せられたら、若林さんが勘違いしちゃうのも無理はないッスけどね!あの異常な蹴り出しの秘密は、トランスアクスルレイアウトによる完璧な前後重量配分と、極太のリヤタイヤにかかる強烈なメカニカルグリップのおかげッス!コーナーの出口で岡田君がアクセルを床まで踏み込んだ瞬間、リヤサスペンションがガッチリ沈み込んで、V8ツインターボの極大トルクを一滴も逃さずにアスファルトへ叩きつけたんスよ!まるで四駆が路面を掴んでいるかのような安定感で前に進む……これぞ世界基準のFRピュアレーサーの恐ろしさッス!」
若林「なるほどおおお!FRでありながら四駆をも凌駕する圧倒的トラクション!岡田大成のGR GT、堂々の走りでストレートを駆け抜けていくううう!」
岡田大成「俺のGR GTを甘く見てもらっちゃ困るぜッ!」
轟音を響かせるV8サウンドとともに、漆黒のモンスターがチェッカーフラッグめがけて猛然と加速していった。
若林「てことは……あの腹切カナタの赤い戦闘機と同じ駆動方式ですか?」
若林の問いかけに、エアリは大きく頷きながらケモミミを揺らし、熱っぽく語り出した。
エアリ「その通りッス!カナタ君のREVIVE86と同じ、フロントエンジン・リヤドライブの純粋なFRッスよ!だけど、同じ後輪駆動でもアプローチは全然違うッス!カナタ君の86は軽量ボディを活かしたシャープな旋回性と限界ギリギリの荷重移動で曲げる『軽さのFR』!対する岡田君のGR GTは、巨大なV8エンジンの超絶トルクと最新鋭のエアロダイナミクスで路面を力尽くで押し潰す『パワーと空力のFR』ッス!駆動輪が後ろの二輪だけでも、マシンのポテンシャルとドライバーの腕次第で、四駆を凌駕する異次元のトラクションを生み出せる……FRの奥深さと可能性を、この二台が証明してくれたッスね!」
エアリの解説が響き渡る中、漆黒のGR GTが堂々たる咆哮を上げてコントロールラインを射抜いていく。
岡田大成「同じFR乗りとして、あの86に負けっぱなしでいられるかってんだ!」
岡田は雄叫びを上げながらアクセルを踏み抜き、柊蒼真のシビックタイプRを背後に従えたままチェッカーフラッグへと飛び込んだ。
若林「こちらもチェッカアアアアアア!!!!岡田大成がそのままゴールインするううう!!!柊蒼真!敗北を受けたあああ!!!」
巨大なV8サウンドを轟かせた岡田大成のGR GTが先着し、白黒のチェッカーフラッグを豪快に切り裂いていく。
わずかコンマ差で届かなかった柊蒼真のシビックタイプR FL5も、悔しさを滲ませるスキール音を響かせながらコントロールラインを通過した。
柊蒼真「くそおおお!!!」
コクピットの中で、蒼真は思わずステアリングを叩いて激しい悔しさを露わにする。
その瞬間、車内のハンズフリー通話がピピッ!と強制的に接続され、スピーカーから鼓膜を破壊せんばかりのハイテンションな絶叫が車内のみならずサーキットの公式オンボード回線へ響き渡った。
ゾフィア「クソクソクソとか言ってたらウンコウンコと言ってるのと同じよオオオオオオ!!!!!」
柊蒼真「ぶっ……!?ゾ、ゾフィア!?なんで今かけてくんの!?」
あまりにも予想外すぎる強烈なツッコミに、先ほどまで張り詰めていた悔しさと緊迫感が一瞬で崩壊する。
ピットロードのモニターや公式ライブ配信を見ていた観客、さらにはパドックのメカニックたちからも、我慢しきれずにドッと大きな笑い声が巻き起こった。
若林「あはははは!車内無線からとんでもない名言が飛び出しました!柊選手、これは一本取られましたね!」
エアリ「あははッ!悔しいのはわかるッスけど、お腹痛いッスよもう!」
蒼真は顔を真っ赤にしながら、苦笑いとともにクーリングラップへとマシンを進めていった。
後続の激闘を繰り広げていたマシンたちが、エキゾーストノートの余韻を響かせながら次々と最終直線を駆け抜けていく。
ババババッ!
ドリュウウウッ!
若林「17位陽太!18位に佐藤ジュン!!そして最後に19位に中野伸一で全員がゴール!!!!おまけに柊を励ましてくれた今回未参戦の赤いコルベットC7のゾフィア!!!」
実況の若林が全車のチェッカーフラッグ通過を告げると同時に、場内スピーカーへ再び強烈な抗議の声が飛び込んできた。
ゾフィア「おまけってなによッ!おまけってエエエ!!!!」
真っ赤なシボレー・コルベットC7の車内から放たれたゾフィアの怒声に、パドックのメカニックやピットレーンのドライバーたちから再びドッと大きな笑い声が巻き起こる。
激戦を終えたサーキットの緊張感が一気に解け、心地よい歓声と拍手がコース全体を優しく包み込んでいった。
ばぶんっ!!!!
青いWRX STIのドアが勢いよく開き、駆け寄ってきた山吹花がヘルメットを脱ぎ捨てて二人の元へ飛び込んできた。
さっきまでの鬼気迫る激怒の表情はすっかり消え去り、いつもの優しく柔らかな笑顔と、少しだけ潤んだ大きな瞳がそこにあった。
山吹花「カナタくん、伊藤くん……ッ!」
伊藤翔太「花……戻ったのか?」
黄色のスイスポから降りた伊藤翔太は、ほっと胸を撫で下ろしながら優しく微笑みかけた。
眞鍋の理不尽な暴言で傷つき、一時はどうなることかと思ったが、自らの力で怒りを晴らし、見事に4位を勝ち取って帰ってきた花の姿に、チームの絆がより一層強く結ばれた瞬間だった。
腹切カナタ「へへっ、花!すげえ走りだったぜ!あの銀のエボを看板送りにしたコンボ、マジでシビれた!」
腹切カナタが白い歯を見せてサムズアップを突き出すと、花は少し恥ずかしそうに頬を桜色に染めながら、小さく頷いた。
大波乱に満ちた吾妻GTのパドックに、激闘を戦い抜いた仲間たちの温かい空気がふわりと広がっていく。
山吹花「ごめんなさい……私、あんな態度を取っちゃった……。伊藤くんにも……私、もうこの世界には居られないかも……ッ。」
花はぎゅっとレーシングスーツの胸元を掴み、大粒の涙をポロポロとこぼしながらうつむいた。
レース中、謎の黒い気配と見知らぬ手に心を操られ、仲間たちに対しても普段の自分からは想像もつかないほどトゲのある生意気な言葉をぶつけてしまっていたこと。
その記憶が鮮明に蘇り、花は強い罪悪感と恐怖で身体を小さく震わせていた。
伊藤翔太「花……何を言ってるんだよ。誰も花のせいだなんて思ってない。」
翔太は優しく穏やかな声で語りかけ、そっと花の両肩に手を置いた。
伊藤翔太「あれは花自身の本当の言葉じゃないって、俺にはすぐ分かったよ。誰かに操られて苦しかったのは花の方だろ? そんなことで居場所がなくなるわけないじゃないか。俺たちの隣は、ずっと花の場所だよ」
腹切カナタ「そうだぜ花! 気にすることなんか一つもねえ! あのクソ野郎の挑発を跳ね除けて、ちゃんと自分の走りでチェッカーまで帰ってきたんだ! 俺たちにとって、花は自慢の仲間だ!」
カナタも力強く笑い飛ばし、屈託のない笑顔で花の頭をポンと叩いた。
山吹花「う……うぅ……っ、ありがとう……二人とも……!」
二人の温かい言葉に、張り詰めていた花の心の氷が解け落ち、花は伊藤翔太の胸に顔を埋めて声を上げて泣きじゃくった。
パドックを吹き抜ける涼しい夜風が、傷ついた少女の心を優しく包み込んでいった。
パドックの温かい空気を切り裂くように、赤いジャンパーを肩に羽織った高槻健永が、ニヤけた表情を浮かべながら近づいてきた。
高槻健永「やあ、花。……途中からどうしたお前?」
いつもの調子で不躾に声をかけてくる高槻。
翔太の胸から顔を上げた花は、涙を拭うと同時にスッと冷徹な光を瞳に宿し、静かに歩み寄った。
山吹花「どうかしてるのは……アナタの方でしょ?」
花は小さく人差し指を立てると、高槻の目の前で素早く右を指差した。
反射的に逆の左側へ顔を向けてしまった高槻に対し、花は右拳にバチバチと激しい青色の雷光を凝縮させる。
山吹花「あっち向いて……」
高槻「????」
ドゴオオオオオオンッ!
バチチチチッ!
山吹花の強烈な蒼雷パンチが、無防備な高槻の顔面へ真正面からクリーンヒット。
青い電撃を撒き散らしながら放り出された高槻の身体は、パドックのフェンスを豪快に飛び越え、裏手を流れる水路へと真っ逆さまに落ちていった。
ドッポオオオオンッ!
激しい水柱が上がり、夜の闇に情けない水音が響き渡る。
その光景を横目で眺めながら、腹切カナタはリタイアして呆然と立ち尽くしていた菜園宗一郎の肩をポンと叩いた。
腹切カナタ「菜園もほら、約束通りハダカで阿武隈川泳げよ。」
菜園宗一郎「えっ……ま、待てカナタ!
あれは口から出まかせで……!」
真っ青になる菜園の襟首を掴み、カナタは満面の笑みを浮かべて川べりへと引きずっていく。
先ほどまでのシリアスな空気は一瞬で吹き飛び、パドックには再びいつもの賑やかな笑い声が戻っていた。
山吹花「菜園……マジで許さないんだからああああああ!!!!」
先ほど高槻を吹っ飛ばしたばかりの山吹花が、両手首をコキコキと鳴らしながら、青い雷光をパチパチと全身に纏わせて歩み寄ってくる。
その背後には、逃げ道を塞ぐように腕組みをして仁王立ちする腹切カナタと、苦笑いしながらも見守る伊藤翔太の姿があった。
追い詰められた菜園宗一郎は、冷や汗を滝のように流しながら両手を突き出し、必死に指を動かして宙に数式を描くようなジェスチャーを繰り返す。
菜園宗一郎「お、落ち着け花!暴力は非論理的だ!俺の……俺の計算では殴られたり蹴られたりしない物理法則何だが……ぎゃあああああああ!!!!!」
ドカッ!
バキッ!!!
べきっ!!
ボキィィンッ!!!
容赦のない打撃音が夜のパドックに小気味よく炸裂する。
花の目にも留まらぬ蒼雷コンボとカナタの豪快な足払いが完璧な連携で決まり、複雑怪奇な物理計算など一切通用しない現実の質量攻撃が菜園を襲う。
菜園宗一郎「ぐへえええっ……!計算と……摩擦係数が……違う……!」
ボロボロになった白衣のような上着をはためかせ、阿武隈川の冷たい水面へと放り出された菜園は、先に落とされて藻掻いていた高槻の隣へと派手な水しぶきを上げて着水した。
ドッシャアアアアアンッ!
川底から二人の情けない悲鳴とブクブクと泡立つ音が響き渡り、パドックに残された仲間たちは顔を見合わせて大爆笑の渦に包まれていった。
川へ飛び込んでいく菜園の豪快な水しぶきを眺めて爆笑していたその時、パドックの通路の向こうから、聞き覚えのある明るい声が響いてきた。
相川律「おい!カナタ!何してんだよ!!」
駆け寄ってきたのは、いつもマイペースで面倒見のいい相川律と、そのすぐ後ろで笑顔を浮かべる妹の美保だった。
腹切カナタ「相川!!!」
カナタが手を挙げると、相川は川でずぶ濡れになって藻掻く高槻と菜園の姿を一瞥し、呆れ半分、楽しみ半分の表情で手を振った。
相川律「もう少しで表彰式と会食始まるぞー!!今日はホルモンにこの街一番のお店の移動販売もあるらしいから速く来いよ〜!!!」
相川美保「花ちゃんも待ってるよ〜!!」
美保はピカピカに輝く笑顔で山吹花に手を振り、激闘の疲れなど微塵も感じさせない元気な声を届ける。
山吹花「美保ちゃん!うん、すぐ行くね!」
相川律「そんじゃあ後でなぁ〜☆」
相川はご機嫌そうに鼻歌を交えながら、美保の手を引いて軽やかにスキップを踏み、パドックの先にある華やかなイベント会場へと駆けていった。
川の中で震える二人のことなど完全に忘れ去られたかのような二人の陽気な後ろ姿に、カナタと翔太、そして花も顔を見合わせて思わず吹き出した。
腹切カナタ「ホルモンに美味いメシか!おい伊藤、花!川の泥水飲んでる連中は放っといて、俺たちも速攻で食いに行くぞ!」
伊藤翔太「あはは、そうだね。花、一緒に行こう」
山吹花「うんっ!お腹ペコペコ!」
激戦の夜を終えた吾妻のサーキットは、温かい湯気と美味しそうな香りに包まれた、楽しい宴の時間を迎えようとしていた。
スキップしながら去っていく相川兄妹の背中を見送り、カナタたちが歩き出そうとしたその時、少し離れたピットの壁に寄りかかっていた岡田大成が、頭をガリガリと掻きながら呆れたように声を漏らした。
岡田大成「……てかなんで相川生きてるんだよ?あんな高いところからRごと落ちてさ……化け物??」
漆黒のGR GTから降りたばかりの岡田は、かつてコースアウトして崖下へ車体ごと真っ逆さまに転落した相川律の壮絶なクラッシュを思い出し、信じられないといった様子で眉をひそめていた。
常人なら命どころか車ごとスクラップ確定の超大事故から、何食わぬ顔でピンピンして戻ってきたどころか、今やホルモンを楽しみにスキップまでしているのだから無理もない。
腹切カナタ「がははっ!相川だからな!あいつの頑丈さと悪運の強さはマジで人間離れしてんだよ!」
伊藤翔太「あはは……確かにあの時は俺たちも肝を冷やしたけど、こうして元気に笑ってるのが一番だよ。それに、美保ちゃんがずっと支えてたからね」
山吹花「うんっ!相川くんのあの明るさが、みんなを元気にしてくれるんだもん!」
岡田大成「ったく、お前ら揃いも揃ってネジが数本ぶっ飛んでやがるぜ……」
岡田はため息をつきつつも、どこか毒気を抜かれたように小さく笑い、仲間たちの輪に加わって歩き出した。
熱気冷めやらぬサーキットの夜空の下、激闘を戦い抜いたレーサーたちは、美味い飯と笑い声が待つ会食の会場へと賑やかに足を運んでいった。




