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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
PR
524/534

吾妻編第60話 フミッパスライダー第二形態

若林「信じられないッ!!高速ベント区間で、本物の太陽が昇ったアアアア!!!!」


クォォォォォォンッ!!


内藤セリナのR8 V10 plusが、9位から猛烈な追撃を開始する。


内藤セリナ「今まで見せたことないフミッパ……見せてあげるッ!」


内藤セリナ「フミッパスライダー2だよーッ!!」


コーナー出口。


R8は四輪を早々に真っすぐへ戻し、一気にトラクションを掛ける。


ヴァアアアアアアンッ!!


若林「なんという加速!!セリナが次々と前走車を飲み込んでいくウウウウ!!!!」


イヨ。カナタ。花。

そしてもうひとり――。


フリス「..なッ.......!?」


レモンカラーのR8が、ケイマンGT4まで一気に突破する。


どんっっっ!!!!!!!

ずどおおおおおおん!!!!!!!!!


若林「うわきたあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!

内藤セリナ、まさかのトップ浮上ォォォォ!!!!」


フリスの視界にはたしかに内藤のR8が横からスパンと抜き去っていくのを確かに見てしまっていた。しかし、内藤はそれをものともせずにアクセルベタ踏みで突き抜けていく......。


ゴオオオオオオオオ!!!!!!!


フリス「我のケイマンまで……。……あれは速い。」


少し考える。

しかし.........ッ!


フリス「……ところで我、今二位か?...今何周目だったか?」


山吹花「そこ確認するの!?」


フリス「……重要だからだ。あとはきかない。」


エアリ「セリナさん、コーナー中じゃなくて出口へ全振りしてるッス!」


エアリ「R8を早く真っすぐにして、quattroとV10の加速を全部使った。前の車がまだ旋回してる間に加速へ移ってるから、差が一気に出たッスね!」


若林「そして全車、最速区間トンネルストレートへ突入だアアアア!!!!」


クォォォォォォォンッ!!


トンネル内へV10の咆哮が響く。


内藤セリナ「やったぁーッ!1位だよーッ☆えへへ☆賞金なににつかちゃおっかなぁー??☆☆」


内藤セリナ「このまま最後までハッピーに逃げ切っちゃうんだから!」


その後方。


眞鍋琉世の銀色のエボIXが、古賀加奈子のM5へ迫る。


ヴオオオオオオオオオオオオンッ!!

どわ!!!!ごしゃああああああああああああっ!!!!!!!

眞鍋琉世「重いM5なら、高速ベント出口で一瞬遅れる。そこを使う.....ツ!!」


古賀加奈子「来なさいよエボ!簡単には通さないわよおお.....ッ!!!」


若林「銀の戦闘機と紅い重戦車!!トンネル内でサイドバイサイドだアアアア!!!!」


さらに――。


パァァァァァンッ!!

ずがあああああああああああああ!!!!!


クリスタ・ニールセンの488GTSが、高速域でイヨのGRスープラを抜き去る。


クリスタ「この速度域なら、フェラーリの時間よ。」


イヨ「えっへん☆ じゃあ次は重力でもっと速くするよっ!」


その勢いのまま、クリスタは山吹花のVABへ接近。


ギュオオオオオッ!!


山吹花「....なにしてんねんッ!!!なによそれエエ!!

いきなり狭いところから来ないでよッ!」


クリスタ「狭いなら、前へ出ればいいだけでしょう?無駄よ。だってそれが私のルーツだもの......ッ?」


山吹花「....は???」


若林「クリスタ、花まで突破!!表彰台圏内へ再浮上だアアアア!!!!」


そしてトンネル出口。


後方でも順位が激しく入れ替わる。


佐藤ジュンが高速コーナーで柳津雄介たちへ仕掛け、美保の400Rも一気に上位へ距離を詰める。


相川美保「お兄ちゃんがいなくても、私は止まらないッ!」


若林「相川美保、猛追!!伊藤翔太のスイスポの背後まで来たアアアア!!!!」


伊藤翔太「美保ちゃん、もうここまで来たのかよ……ッ!」


さらに前方では――。


ギュワアアアアアンッ!!


イヨのGRスープラが、腹切カナタのREVIVE 86へ外側から並びかける。


イヨ「えっへん☆ カナタお兄ちゃん、そこどいてーッ!」


ドカンッ!!!ぎゃああああああああんん!!!!!!


腹切カナタ「……そう簡単には行かせない。」


二台はトンネルの照明を高速で流しながら、長いサイドバイサイドへ入る。


エアリ「イヨさんは重力で接地を増やして最高速でも安定してるッス!」


エアリ「カナタくんは86の軽さと気流を使って抵抗してる。でもタイヤがもう厳しいから、長く並ぶほど苦しくなるッスね!」


若林「そしてトンネル出口の光が見えてきたアアアア!!!!」


若林「トップは内藤セリナ!!その背後でフリス、クリスタ、花、カナタ、イヨが激しく入り乱れる!!」


若林「吾妻GT、後半戦は完全な順位シャッフル状態だアアアア!!!!」


若林「さああああ!!トンネルストレート突入ッ!!」


若林「そしてここで最大の注目!!トップへ躍り出た内藤セリナのR8!!その真後ろに、絶対王者フリスのケイマンGT4が食らいついたアアアア!!!!」


フリス「........。」


クオオオオオオオオンッ!!


ぽぉんっ!!ぽぉん!!!!

ごぎゃあああああああああああああああッ!!


トンネル内へ、V10の咆哮とケイマンの乾いた加速音が激しく反響する。


内藤セリナ「えへへッ☆ フリスさん、来たね!」


内藤セリナ「でも今のわたし、すっごく速いよーッ!!」


フリス「……分かっている。」


フリス「だからこそ、我が止める。」


フリスは静かなまま、R8の背後へぴたりと張り付く。


左右へ一切無駄に動かない。


ただひたすら、セリナのブレーキングポイントを見続ける。


若林「絶対王者、完全に獲物をロックオン!!」


内藤セリナ「だったら……これ見せてあげるッ!!」


高速ベント入口。


セリナはアクセルを緩めない。


ギュガガガガガッ!!


R8の四輪がわずかに横へ滑る。


しかし車体はコーナー出口へ向いたまま。


内藤セリナ「フミッパスライダー2ーーーッ!!!!」


ヴァアアアアアアアンッ!!


R8が横滑りの勢いを残したまま、一気に前へ飛び出した。


若林「出たアアアア!!!!フミッパスライダー2!!」


若林「滑らせながら速度を殺さず、出口で一気に四輪へトラクションを掛けるウウウウ!!!!」


フリス「……ッ。」


ケイマンもアウト側へ大きく振る。


ぽぉんっ!!


フリス「速い。」


フリス「だが……我のケイマンを、そう簡単に置いていけると思うな。」


ギャアアアアアアンッ!!


ミッドシップの旋回性能を活かし、ケイマンGT4がR8のインへ切り込む。


内藤セリナ「わっ!入ってきた!」


若林「並んだアアアア!!!!」


R8は圧倒的な加速。


ケイマンはコーナー中の鋭い回頭性。


一方が直線で前へ出れば、もう一方がベントで鼻先を差し返す。


エアリ「これは面白いッス!」


エアリ「セリナさんはフミッパスライダー2で、旋回中に多少滑っても出口へ早く車体を向けてる!」


エアリ「その瞬間からR8の四駆とV10を全部加速に使えるッス!」


エアリ「でもフリスさんは、ケイマンのミッドシップだから向きを変える速さがかなり強い。セリナさんが外へ膨らんだ一瞬に、インへ入れるッスね!」


内藤セリナ「まだまだーッ!!」


フリス「……来い。」


クオオオオオオオンッ!!


ごぎゃあああああッ!!


トンネル中盤、再び照明の帯が流れ込む区間。


R8とケイマンは、互いのリアバンパーが触れるか触れないかの距離まで詰まる。


一瞬でもラインがズレれば、そのまま“軽く追突して押し合う”レベルの超至近戦。


若林「近い近い近い近いッ!!ヤバい距離だアアアア!!」


フリス「……ここだ。」


ギュンッ!!


ケイマンが鼻先をねじ込む。


だがセリナも即座にカウンター。


内藤セリナ「させないッ!!」


ギュオオオオオッ!!


R8がトラクションを噛ませ、リア同士が一瞬“コツン”と触れ合う。


火花寸前の接触。


それでも両者は一切引かない。


若林「当たってるッ!!当たってるのに止まらないッ!!」


若林「ドッグファイトが限界突破してるウウウウ!!!!」


エアリ「これもうレースじゃないッス!!格闘ッス!!」


さらに後方。


別のGT3勢がトンネル入口へ突入し始める。


クオオオオオンッ!!


ぽぉおおん!!


「前、何やってんだあれ!?」

「トップ争いバケモンかよ!!」


だが前方は完全に別世界。


内藤セリナ「まだまだ続くよーッ!!」


フリス「終わらせる。」


クオオオオオオオンッ!!


二台は出口の光へ向け、再び完全なサイドバイサイドへ。


今度はラインが交錯するたびに、リア同士が“ピタッ”と吸い付くように接触寸前まで寄る。


若林「太陽神・内藤セリナか!!」


若林「絶対王者フリスかああああ!!??」


若林「トンネルストレート、もはやドッグファイトの領域を超えてるッ!!」


若林「ぶつかるッ!!並ぶッ!!またぶつかるッ!!」


若林「トップ争い、まだ加速しているアアアア!!!!」


――そしてその瞬間、トンネルの奥に出口の光が二重に割れて見え始める。


セリナのR8はさらに一段ギアを上げ、V10が悲鳴のように吠える。


フリスのケイマンも負けじと回転を上げ、まるで地面に爪を立てるように食らいつく。


一歩も引かないまま、二台は“光の出口”へと吸い込まれていく――


若林「さああああ!!トンネルストレート突入ッ!!」


若林「そしてここで最大の注目!!トップへ躍り出た内藤セリナのR8!!その真後ろに、絶対王者フリスのケイマンGT4が食らいついたアアアア!!!!」


クオオオオオオオオンッ!!


ぽぉんっ!!


ごぎゃあああああッ!!


トンネル内へ、V10の咆哮とケイマンの乾いた加速音が激しく反響する。


内藤セリナ「えへへッ☆ フリスさん、来たね!」


内藤セリナ「でも今のわたし、すっごく速いよーッ!!」


フリス「……分かっている。」


フリス「だからこそ、我が止める。」


フリスは静かなまま、R8の背後へぴたりと張り付く。


左右へ一切無駄に動かない。


ただひたすら、セリナのブレーキングポイントを見続ける。


若林「絶対王者、完全に獲物をロックオン!!」


内藤セリナ「だったら……これ見せてあげるッ!!」


高速ベント入口。


セリナはアクセルを緩めない。


ギュガガガガガッ!!


R8の四輪がわずかに横へ滑る。


しかし車体はコーナー出口へ向いたまま。


内藤セリナ「フミッパスライダー2ーーーッ!!!!」


ヴァアアアアアアアンッ!!


R8が横滑りの勢いを残したまま、一気に前へ飛び出した。


若林「出たアアアア!!!!フミッパスライダー2!!」


若林「滑らせながら速度を殺さず、出口で一気に四輪へトラクションを掛けるウウウウ!!!!」


フリス「……ッ。」


ケイマンもアウト側へ大きく振る。


ぽぉんっ!!


フリス「速い。」


フリス「だが……我のケイマンを、そう簡単に置いていけると思うな。」


ギャアアアアアアンッ!!


ミッドシップの旋回性能を活かし、ケイマンGT4がR8のインへ切り込む。


内藤セリナ「わっ!入ってきた!」


若林「並んだアアアア!!!!」


R8は圧倒的な加速。


ケイマンはコーナー中の鋭い回頭性。


一方が直線で前へ出れば、もう一方がベントで鼻先を差し返す。


エアリ「これは面白いッス!」


エアリ「セリナさんはフミッパスライダー2で、旋回中に多少滑っても出口へ早く車体を向けてる!」


エアリ「その瞬間からR8の四駆とV10を全部加速に使えるッス!」


エアリ「でもフリスさんは、ケイマンのミッドシップだから向きを変える速さがかなり強い。セリナさんが外へ膨らんだ一瞬に、インへ入れるッスね!」


内藤セリナ「まだまだーッ!!」


フリス「……来い。」


クオオオオオオオンッ!!


ごぎゃあああああッ!!


トンネル中盤、再び照明の帯が流れ込む区間。


R8とケイマンは、互いのリアバンパーが触れるか触れないかの距離まで詰まる。


一瞬でもラインがズレれば、そのまま“軽く追突して押し合う”レベルの超至近戦。


若林「近い近い近い近いッ!!ヤバい距離だアアアア!!」


フリス「……ここだ。」


ギュンッ!!


ケイマンが鼻先をねじ込む。


だがセリナも即座にカウンター。


内藤セリナ「させないッ!!」


ギュオオオオオッ!!


R8がトラクションを噛ませ、リア同士が一瞬“コツン”と触れ合う。


火花寸前の接触。


それでも両者は一切引かない。


若林「当たってるッ!!当たってるのに止まらないッ!!」


若林「ドッグファイトが限界突破してるウウウウ!!!!」


エアリ「これもうレースじゃないッス!!格闘ッス!!」


さらに後方。


別のGT3勢がトンネル入口へ突入し始める。


クオオオオオンッ!!


ぽぉおおん!!


「前、何やってんだあれ!?」


「トップ争いバケモンかよ!!」


だが前方は完全に別世界。


内藤セリナ「まだまだ続くよーッ!!」


フリス「終わらせる。」


クオオオオオオオンッ!!


二台は出口の光へ向け、再び完全なサイドバイサイドへ。


今度はラインが交錯するたびに、リア同士が“ピタッ”と吸い付くように接触寸前まで寄る。


若林「太陽神・内藤セリナか!!」


若林「絶対王者フリスか!!」


若林「トンネルストレート、もはやドッグファイトの領域を超えてるッ!!」


若林「ぶつかるッ!!並ぶッ!!またぶつかるッ!!」


若林「トップ争い、まだ加速しているアアアア!!!!」


――そしてその瞬間、トンネルの奥に出口の光が二重に割れて見え始める。


セリナのR8はさらに一段ギアを上げ、V10が悲鳴のように吠える。


フリスのケイマンも負けじと回転を上げ、まるで地面に爪を立てるように食らいつく。


内藤セリナ「フリスさん!!出口までどっちが先か勝負だよーッ!!」


フリス「……最初から、そのつもりだ。」


セリナが一瞬だけR8を右へ振る。


フリスも即座に反応してラインを塞ぐ。


だが――。


内藤セリナ「ひっかかったーッ☆」


フリス「……何?」


R8が一気に左へ切り返す。


ギュガガガガガッ!!


フリス「フェイントか……ッ!」


内藤セリナ「フミッパスライダー2、もう一回ッ!!」


ヴァアアアアアアアンッ!!!


R8がケイマンの左側へ飛び出す。


しかしフリスも遅れない。


ぽぉんっ!!


ごぎゃああああッ!!


ケイマンがさらに内側へ潜り込み、再びR8と完全に横並び。


ドンッ!!


二台のリアフェンダーが軽く触れる。


内藤セリナ「わっ!」


フリス「……退かぬ。」


内藤セリナ「わたしもーッ!!」


若林「また接触ゥゥゥゥ!!!!」


出口まで残り僅か。


R8が半車身前。


ケイマンがコーナー進入で並ぶ。


そしてまたR8が加速で前へ。


フリスがブレーキングで差し返す。


一瞬ごとに順位が入れ替わる。


エアリ「セリナさんは立ち上がり!」


エアリ「フリスさんは進入と旋回!」


エアリ「完全に得意分野の殴り合いッス!!」


内藤セリナ「えへへッ☆ 楽しいね、フリスさん!」


フリス「……我は、少し腹が立ってきた。」


内藤セリナ「それ褒め言葉ーッ!!」


フリス「褒めていない。」


クオオオオオオオンッ!!


ごぎゃあああああッ!!


出口の白い光が目前まで迫る。


二台は一歩も引かないまま、最後の高速ベントへ同時に飛び込んでいった。


若林「まだ終わらないィィィィ!!!!」


若林「R8とケイマン!!太陽神と絶対王者!!」


若林「トンネル出口まで、完全サイドバイサイドだアアアア!!!!」


若林「絶対に見逃すなあああああ!!!!」


若林「トンネル出口まで残り僅か!!R8とケイマンGT4、完全サイドバイサイドのままだアアアア!!!!」


クオオオオオオオオンッ!!!


ごぎゃああああああッ!!!


内藤セリナ「まだ踏むよおおおおッ!!」


R8がV10を限界まで回し、僅かに半車身前へ出る。


しかし次の高速ベント。


ケイマンGT4が一気にインへ潜り込む。


ギャアアアアアアンッ!!


フリス「…………。」


何も言わない。


アクセルも緩めない。


視線はただ、トンネル出口とR8だけを捉えていた。


若林「フリス、無言ッ!!一言も発さない!!」


若林「絶対王者、完全な集中状態に入ったアアアア!!!!」


セリナが前へ出る。


フリスが差し返す。


またセリナがV10の加速で伸びる。


そしてケイマンがベントで再び並ぶ。


内藤セリナ「えへへ……ッ!そうこなくっちゃ!!」


ヴァアアアアアアアンッ!!!


ぽぉんっ!!


出口の白い光が、二台のフロントガラスいっぱいに広がる。


【ライブ配信コメント】


●「絶対見逃せねえええええ!!!!」


●「セリナVSフリス熱すぎる」


●「R8直線速すぎだろwww」


●「ケイマン、コーナー入るたび戻ってくるの怖い」


●「フリスが無言になったぞ」


●「喋らないフリス=ガチモード」


●「普段ちょっとポンコツなのに走りだけ別人すぎる」


●「フミッパスライダー2から逃げないケイマン何者だよ」


●「一瞬ごとにトップ変わってて実況泣かせ」


●「太陽神VS絶対王者、決着つくのかこれ」


若林「世界中がこの二台を見ているウウウウ!!!!」


若林「内藤セリナ!!フリス!!」


若林「トンネル出口――同時に飛び出すぞオオオオオオ!!!!」


若林「高速ベントオオオオ!!!!R8が前に出るかアアアア!!!!」


クオオオオオオオオンッ!!


内藤セリナのR8がV10を吠えさせ、僅かにケイマンの前へ出る。


その瞬間――。


フリス「…………。」


ギャアアアアアアッ!!


ケイマンGT4がラインを寄せた。


ドガアアアアアアンッ!!!!


内藤セリナ「……チッ。」


白いケイマンのフロントフェンダーが、R8の側面へ激しくぶつかる。


衝撃で二台の車体が同時に揺れた。


ギャリギャリギャリッ!!


セリナも引かない。


R8を押し返し、今度は互いのドアがぶつかり合う。


ドンッ!!


ドガンッ!!


若林「ぶつかったアアアア!!!!絶対王者フリスがR8へ身体ごと仕掛けたァァァァ!!!!」


高速ベントの中。


R8がアウトへ膨らめば、ケイマンが内側から押す。


ケイマンが前へ出ようとすれば、今度はR8がV10の加速で横へ並び返す。


ギャアアアアアアンッ!!


内藤セリナ「やるじゃん、フリスさん……ッ!」


フリス「…………。」


返事はない。


ただR8だけを見ている。


内藤セリナ「その顔……本気ってことだねッ!!」


ヴァアアアアアアアンッ!!


セリナがアクセルを踏み抜く。


R8が半車身前へ。


だが次の瞬間、フリスがブレーキを僅かに遅らせ――。


ギュンッ!!


再びケイマンの鼻先をR8の内側へ叩き込む。


ドガアアアアンッ!!


若林「また当たったアアアア!!!!」


若林「R8とケイマン!!高速ベントで互いにボディをぶつけ合いながら、トップを奪い合っているウウウウ!!!!」


内藤セリナ「だったら……最後まで付き合ってあげるッ!!」


フリス「…………。」


二台は火花を散らしながら、横一列のまま次の高速区間へ飛び込んでいった。


クオオオオオオオオンッ!!


ギャアアアアアアッ!!


二台のタイヤが限界まで路面を掴む。


ケイマンがイン側で粘る。


R8はアウト側。


そして――。


ヴァアアアアアアアンッ!!


ほんの半車身。


レモンカラーのR8が、静かに前へ出た。


若林「R8前に出たあああああああ!!!!」


若林「内藤セリナ!!絶対王者フリスを真正面から仕留めたァァァァ!!!!」


若林「トップ交代!!内藤セリナが1位のポジションに立ったアアアア!!!!」


ギャギャギャギャアアアッ!!


ケイマンのタイヤが鳴く。


フリス「…………。」


何も言えない。


アクセルは踏んでいる。


ステアリングも乱れていない。


それでも、R8のリアが少しずつ遠ざかっていく。


フリス「…………。」


エアリ「……これは凄いッス。」


エアリ「今のは単純にV10のパワーで抜いたんじゃない。」


エアリ「セリナさん、ひとつ前の高速ベントからずっとフリスさんにイン側を使わせ続けたんスよ。」


若林「イン側を!?」


エアリ「そうッス。ケイマンは旋回が速いから、フリスさんはインを取れば何度でも差し返せた。」


エアリ「でもその代わり、旋回半径が小さくなる。どうしても出口でステアリングが残って、アクセル全開へ移るタイミングがほんの少し遅れるッス。」


エアリ「セリナさんはそこを狙ってた。」


R8が次のベントを大きなラインで抜ける。


ケイマンより外側。


しかし出口では、すでに四輪が真っすぐ前を向いていた。


エアリ「R8はアウト側を大きく使って、フミッパスライダー2で旋回中の速度を残した。」


エアリ「そして車体が前を向いた瞬間、quattroの四輪トラクションとV10を全部使って加速したッス!」


エアリ「フリスさんが一番強い“コーナーの中”では決着をつけずに、一番弱くなる“コーナー出口の一瞬”まで待った。」


エアリ「これは相当レベル高いッスよ。」


若林「つまり!!絶対王者の得意分野を真正面から潰したのではなく――」


エアリ「得意分野を最後までやらせた上で、その直後を刺したッス。」


エアリ「世界レベルのオーバーテイクだと思います。」


エアリ「相手がフリスさんだからこそ価値がある。何度差し返されても慌てず、最後の一発までラインを組み立て続けた。」


エアリ「セリナさん、これは本当に凄いッス。」


内藤セリナ「えへへッ……!」


内藤セリナ「取った……1位ッ!!」


フリス「…………。」


若林「絶対王者、沈黙!!」


若林「内藤セリナ!!フミッパスライダー2から組み立てた超高次元のドッグファイトを制し、堂々トップへ浮上だアアアア!!!!」


若林「エアリさん!!改めて今のオーバーテイク、一体何が起きていたんですかアアアア!?」


エアリ「かなり細かく組み立ててたッスよ。」


エアリ「まず最初の高速ベント。フリスさんはケイマンの旋回性能を活かして、セリナさんより内側へ早く入ったッス。」


エアリ「普通なら、ここでケイマンが有利。そのままクリッピングポイントを取って前へ出られるッス。」


エアリ「でもセリナさんは無理にインを奪わなかった。」


若林「なぜだアアアア!?」


エアリ「フリスさんにインを使わせたかったからッス。」


エアリ「イン側は最短距離だけど、そのぶん旋回半径が小さい。出口までステアリングを切った状態が長くなるッス。」


エアリ「つまりフリスさんは、コーナーの中では速い。でもアクセルを完全に開けられるタイミングが少しだけ遅れる。」


ヴァアアアアアアンッ!!


前方ではR8が僅かにケイマンとの差を広げる。


エアリ「そこでセリナさんはアウト側をいっぱいまで使って、フミッパスライダー2を入れたッス。」


エアリ「四輪を少し滑らせながら、減速しすぎずに車体だけを出口へ向ける。」


エアリ「滑ってるように見えるッスけど、目的はドリフトそのものじゃない。」


エアリ「“誰より早くステアリングを戻して、アクセル全開の姿勢を作る”ためのスライドッス。」


若林「なるほどォォォォ!!!!」


エアリ「その次のポイントが接触ッス。」


エアリ「フリスさんが横から当ててきた時、セリナさんは慌ててアクセルを抜かなかった。」


エアリ「R8は四輪駆動だから、多少姿勢が乱れても四輪へ駆動を掛け続けられる。」


エアリ「逆にケイマンはミッドシップで旋回は鋭いッスけど、接触でリアの荷重が抜けると、一瞬だけトラクションを作り直す必要があるッス。」


ギャアアアアアアンッ!!


エアリ「ここでセリナさん、ほんの少しだけ前へ出た。」


エアリ「でもまだ抜き切らなかったッス。」


若林「まだ待ったのか!!」


エアリ「そうッス。」


エアリ「半端に前へ出ると、次のベントでフリスさんにインを差し返される。それを何回もやられてたッスからね。」


エアリ「だからセリナさんは半車身並んだ状態を維持して、フリスさんを内側へ固定した。」


エアリ「フリスさんはトップを守るために、またインを締める。」


エアリ「そこで同じ状況をもう一回作ったッス。」


若林「絶対王者の防御そのものを利用したアアアア!?」


エアリ「そういうことッス!」


エアリ「そして最後の高速ベント。」


エアリ「フリスさんはイン。セリナさんはアウト。」


エアリ「フリスさんはケイマンの強みを最大限使って、旋回中はほぼ互角……むしろ少し前だった。」


エアリ「でも出口で差が出た。」


ぽぉんっ!!


ごぎゃあああああッ!!


ケイマンがギアを繋ぐ。


その横で――。


クオオオオオオオンッ!!


R8のV10が一気に回転を上げる。


エアリ「セリナさんはフミッパスライダー2で、もう車体を真っすぐ向け終わってた。」


エアリ「だからフリスさんがステアリングを戻してる時間に、R8はすでに四輪全部で加速を始めてたッス。」


エアリ「数メートルの差じゃない。」


エアリ「アクセル全開へ入る“ほんの一瞬の時間差”を、V10と四駆で一気に車速差へ変えた。」


エアリ「それで静かに半車身……一車身と前へ出たッス。」


若林「とんでもない組み立てだアアアア!!!!」


エアリ「しかも相手はフリスさんッス。」


エアリ「一回の奇襲で抜いたわけじゃない。」


エアリ「何度も差し返されて、接触もして、それでも相手の防御パターンを崩さず観察してた。」


エアリ「最後は“ケイマンが一番速い場所”を逆に利用して、“R8が一番強い出口”へ誘導した。」


エアリ「これ、単発のオーバーテイクじゃないッス。」


エアリ「数コーナーかけて作り上げた、一つの完成した攻撃ッスよ。」


フリス「…………。」


ケイマンの中で、フリスは依然として何も言わない。


エアリ「世界レベルどころか、このレースを代表するオーバーテイクになってもおかしくないッス。」


エアリ「フリスさんを力任せに抜いたんじゃない。」


エアリ「絶対王者の強さを全部出させた上で、その強さの裏側に生まれる数十分の一秒を取った。」


エアリ「内藤セリナさん……今のは本当に見事だったッス。」


腹切カナタ「……今のなんだ?」


腹切カナタ「セリナが言ってた、フミッパスライダー……。」


腹切カナタ「正直、俺にもよく分からない……。」


ぽんっ!!


ギュオオオオオオッ!!


86がシフトを繋ぎ、赤い車体が一気に前へ伸びる。


そのまま次の中速コーナー。


ギャアアアアアアンッ!!


腹切カナタ「……そして、こっちもただ事じゃない。」


フロントタイヤが路面を掴み切れず、86のノーズがじわりと外へ逃げていく。


腹切カナタ「アンダーステア……。」


腹切カナタ「とうとう来たみたいだな。」


カナタは無理にステアリングを切り足さず、一度アクセルを緩めてフロントへ荷重を戻す。


腹切カナタ「左フロント、やっぱり限界が近い……。」


ギュルルルルッ!!


86は外へ膨らみながらも、なんとかラインへ戻った。


腹切カナタ「……ここから先は、速さだけじゃダメだ。」


腹切カナタ「最後までタイヤを残しながら戦わないと……本当に終わる。」



おまけ


フリスは、コンビニの冷凍ケースの前でじっと立っていた。


白とピンクのもこもこ服。

くすんだピンクのツインテール。

手には雪の結晶の杖。


そして、目の前にはアイス。


フリス「……我の仲間……」


フリスは、冷凍ケースのガラスにそっと手を当てた。


フリス「……寒いところに閉じ込められてる……」


フリス「……かわいそう……」


店員「いや、売り物です」


フリス「……救出する……」


フリスは真顔で杖を構える。


その瞬間、冷凍ケースの中のアイスたちが、青紫のコットンアイススノーに包まれ始めた。


しゅうう……。


アイスがさらに凍る。


店員「やめてください!!もう冷えてます!!」


フリス「……まだ足りない……」


フリス「……アイスは……もっとアイスになれる……」


店員「哲学やめてください!!」


フリスは、満足そうにうなずいた。


フリス「……アイスの進化……」


フリス「……スーパーアイス……」


フリス「……我、育成成功……」


その横で、サテラが頭を抱えていた。


サテラ「フリスちゃんさぁ!?アイスを冷やすのはいいけど、商品棚ごと氷河期にするのやめよ!?」


フリス「……氷河期……」


フリス「……かっこいい……」


フリス「……このコンビニ、今日から氷河期……」


サテラ「勝手に時代変えないで!?」


フリスは、今度はレジ横の肉まんを見つめた。


フリス「……あれは……あったかい白い雪玉……?」


店員「肉まんです」


フリス「……雪玉なのに……あったかい……?」


フリスは少し考え込む。


フリス「……裏切り者……」


店員「肉まんに厳しい!!」


フリスは肉まんに向かって、そっと吐息を吹きかけた。


ふぅ……。


肉まんの表面に、淡い青紫の霜が咲く。


サテラ「うわあああ!!肉まん凍ったあああ!!」


フリス「……冷まし中……」


サテラ「冷ましすぎ!!」


フリス「……熱いと危ない……」


フリス「……我、優しい……」


店員「優しさで営業妨害しないでください!!」


その後、フリスはカップラーメン売り場に移動した。


フリス「……お湯を入れる……」


フリス「……でも、熱い……」


フリス「……なら、我の冷気を入れる……」


サテラ「それもうラーメン戻らないよ!?」


フリス「……冷やしラーメン……」


サテラ「たぶん違う!!」


フリスはカップ麺のふたをじっと見つめる。


フリス「……三分待つ……」


フリス「……我、三分も待てる……」


フリス「……えらい……」


三秒後。


フリス「……まだ?」


サテラ「早い!!」


フリス「……三分、長い……」


フリス「……人類、よく耐えてる……」


サテラ「カップ麺で人類を語らないで!?」


最後にフリスは、自分のケイマンGT4の前に戻った。


手には、カチコチに凍った冷やし中華。

もう箸が刺さらない。


フリス「……完成……」


サテラ「何が!?」


フリス「……冷やし中華を……限界まで冷やした……」


フリス「……つまり……本物の冷やし中華……」


サテラ「食べ物として終わってるよ!?」


フリスは、真顔で首を傾げる。


フリス「……食べられない冷やし中華……」


フリス「……観賞用……」


フリス「……夏の芸術……」


サテラ「アホすぎる!!」


フリスは、ほんの少しだけ誇らしげに胸を張った。


フリス「……我、地獄の閻魔天……」


フリス「……そして……かの伝説と呼ばれた冷やし中華の保護者……」


サテラ「何その肩書き!?」


フリスは最後に、カチコチの冷やし中華をケイマンGT4の助手席へそっと置いた。


フリス「……シートベルト……してあげる……」


サテラ「冷やし中華に!?」


フリス「……安全第一……」


フリス「……麺も命……」


サテラ「もうだめだこの閻魔天!!」


フリスは満足そうにうなずき、ケイマンGT4のドアを閉めた。


フリス「……出発……」


フリス「……我と冷やし中華の旅……」


サテラ「待って!!それ助手席に乗せてどこ行くの!?」


フリス「……海……」


フリス「……冷やし中華に……夏を見せる……」


サテラ「感動話っぽくするなあああ!!」

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