吾妻編第58話 最接近
若林「さあ!!吾妻の麓エリア!!セクター4が迫ってきたアアアア!!!!」
若林「泣いても笑っても、ここで勝負を決めなきゃ恥にしかならなァァァァい!!!!」
ヴォオオオオオオンッ!!
猛吹雪を抜け始めたその先。
赤いREVIVE 86が、再びサテラのエボ7MRと高槻健永のバイパーへ距離を詰めていく。
若林「それを物言わすように、赤い戦闘機が二台へ接近中だアアアア!!!!」
腹切カナタ「……やっと追いついた。」
サテラ「へぇー……来たのかい、カナタくん。」
サテラはミラー越しに赤い86を確認し、わずかに笑う。
サテラ「いいさ、高槻。」
サテラ「一緒に追っ払ってくれないかい?目障りなんだよ。」
高槻健永「ハハッ!珍しく気が合うじゃねぇか、サテラ!」
高槻健永「じゃあ二人で赤い戦闘機を挟むか!」
サテラ「勘違いすんなよ。」
サテラ「お前と仲良くするつもりはないからね。」
高槻健永「そこがまたいいんだよなぁ!」
サテラ「やっぱ一人でやる。」
腹切カナタ「……。」
ギャアアアアアアンッ!!
三台がほぼ等間隔で次の中速コーナーへ突入する。
若林「赤い戦闘機対、水鮫と赤いドラゴン!!セクター4目前で三つ巴が始まるウウウウ!!!!」
若林「高速ベント……赤い戦闘機の動きが何か変だァ……?」
ヴォオオオオオ……ッ!!
エンジン音が一段と唸りを増し、コーナー手前の空気が張り詰める。
サテラのマシンと高槻のマシンが、ほぼ横並びでラインを塞ぐように進入態勢へ入る。
サテラ「ここは絶対に譲れない……!」
高槻健永「来るなら来いよ、赤いの……!」
二台がわずかにブレーキを残しながら、イン側のラインを固めたその瞬間――
ドシュンッ!!
ギャアアアアアアッ!!
腹切カナタの86が、一度イン側へ入った――その直後。
車体をわざと外へ振り、リアを滑らせながらアウト側へ飛び出した。
若林「なああああああ!!??」
若林「インにいたはずの赤い戦闘機が、今度はアウトからねじ込んだアアアア!!!!」
右側タイヤが縁石の淵へ乗る。
ガガガガッ!!
86は一瞬だけ姿勢を崩す。
しかしカナタはステアリングを戻しながらアクセルを踏み――
スパンッ!!
赤い車体が、まるで弾かれたようにベント出口へ抜けた。
サテラ「……なッ!?」
高槻健永「そこ通るのかよ!!」
若林「この高速ベントで何が起こったアアアア!!!!?」
エアリ「カナタくん、最初からインを抜く気じゃなかったッス!」
エアリ「一度インへ見せて、サテラさんと高槻くんに内側を守らせた。そのせいで二台とも進入速度を少し落としたッスね!」
エアリ「そこから86だけ外へ振って、広い旋回半径を使った!縁石ぎりぎりまで使ったから、ステアリングを切る量を減らして速度を残せたッス!」
エアリ「しかもリアを少し滑らせたことで、フロントタイヤだけに旋回を任せてない!左フロントが弱ってる今の86には、かなり理にかなった走りッス!」
ヴォオオオオオッ!!
赤い戦闘機が、二台の鼻先より半車身前へ飛び出す。
エアリ「タイヤがタレてるからこそ、正面からグリップ勝負をしなかった!」
エアリ「フェイントとライン幅で前へ出たッス!カナタくん、まだ武器を残してましたね!」
若林「赤い戦闘機が再び牙を剥いたアアアア!!!!」
若林「しかし!!吾妻の麓で、またしても因縁の二台が接近しているウウウウ!!!!」
若林「山吹花のWRX VAB!!その背後から赤い戦闘機・腹切カナタのREVIVE 86が猛烈に迫るゥゥゥゥ!!!!」
ギャアアアアアアンッ!!
ヴォオオオオオオッ!!
高速域からのブレーキング。
VABの巨大なリアウイングの真後ろへ、86のノーズがぴたりと張り付いた。
腹切カナタ「……花。」
腹切カナタ「やっぱり最後は、お前とやることになるんだな。」
山吹花「カナタくん……来たね。」
山吹花「でも、ここは簡単には譲らないよ……!」
ブレーキングポイントが迫る。
花はVABをイン寄りへ置き、カナタの進路を消す。
だがカナタは動じない。
腹切カナタ「インを閉じるのは分かってた。」
腹切カナタ「だったら、その一個手前から仕掛ける……ッ!」
ギャギャギャアアアッ!!
86が一瞬だけ外へ振られ――
そこから鋭く切り返す。
山吹花「えっ……そこから!?」
若林「赤い戦闘機、ラインを一度外へ振ったアアアア!!!!」
若林「花にインを意識させてから、一気にクロスラインで潜り込むウウウウ!!!!」
腹切カナタ「花のWRXは速い。」
腹切カナタ「四駆の立ち上がりじゃ、まともにやったら勝てない。」
腹切カナタ「だから……向きを変える速さで勝つッ!」
スパンッ!!
86のノーズがVABの内側へ入る。
山吹花「カナタくん……!」
山吹花「だったら私も、簡単にはアクセル戻さないよッ!」
ドゴオオオオオオンッ!!
VABが四輪で凍結路面を蹴る。
86も軽い車体を活かし、旋回速度を落とさない。
二台が完全なサイドバイサイドへ入った。
若林「並んだアアアア!!!!赤と青!!カナタと花が真正面から激突だアアアア!!!!」
山吹花「私だって、ここまでみんなと走ってきたんだから……!」
山吹花「最後くらい、自分の力で守り切りたいッ!」
腹切カナタ「分かってる。」
腹切カナタ「だから俺も、遠慮しない。」
腹切カナタ「花を抜いて、前へ行く。」
ギュオオオオオオッ!!
最終コーナーへ向け、二台のタイヤが凍結路面を激しく掴む。
エアリ「カナタくん、真正面からVABの四駆と加速勝負してないッス!」
エアリ「花さんがインを守った瞬間に、一度外へ振って旋回半径を広げた。それで86の弱ってるフロントタイヤへの負担を減らしながら、速度を残したッスね!」
エアリ「でも花さんも上手い!VABを早めに出口へ向けて、四輪駆動のトラクションを使える形まで持っていってる!」
エアリ「ここからは、旋回速度の86か!立ち上がりのVABか!完全に得意分野同士の勝負ッスよ!」
若林「最終局面!!赤い戦闘機と青い桜狼!!」
若林「先にコーナー出口を奪うのはどっちだアアアア!!!!」
若林「実況席のモニターもホワイトアウトで見失ったかアアアア!!?」
若林「猛吹雪はさらに激化!!路面はもはやアスファルトではない!!完全な氷の彫刻だアアアア!!!!」
ギャアアアアアアンッ!!
ズバババババッ!!
最終コーナー出口。
腹切カナタのREVIVE 86と、山吹花のWRX VABはまだ並んでいた。
花のVABは四輪を滑らせながらも、車体をカナタの横へ残し続ける。
山吹花「……まだ終わってないッ!」
山吹花「タイヤが滑るなら……滑る量まで使って前へ出る!」
リアが大きく流れる。
それでも花はアクセルを戻さない。
ギャギャギャアアアッ!!
腹切カナタ「……花。」
腹切カナタ「そのタイヤで、まだそこまで踏めるのか。」
カナタの86も、左フロントを庇いながらラインをわずかに外へ広げる。
腹切カナタ「でも……俺もここまで来て譲れない。」
腹切カナタ「風の切れ目が見えた。」
腹切カナタ「ここを通す……ッ!」
ヴォオオオオオオッ!!
86が雪煙の薄い場所へノーズを差し込み、VABと再び完全な横並びになる。
山吹花「カナタくん……!」
山吹花「来るなら来て!!私も最後まで逃げないからッ!」
若林「サイドバイサイドが終わらないィィィィ!!!!」
若林「タイヤの限界を迎えたVAB!!左フロントを酷使した86!!互いに弱点を抱えながら、それでも一歩も引かないアアアア!!!!」
エアリ「花さん、かなりリアが流れてるッスけど、アクセルを細かく調整して四輪の駆動を切らしてないッス!」
エアリ「逆にカナタくんはフロントをこれ以上使えないから、ステアリングを切り足さずにコース幅いっぱいまで使ってる!」
エアリ「VABは立ち上がりの四駆!」
エアリ「86は軽さと旋回速度!」
エアリ「ここまで来たら、残ってるタイヤをどっちが最後まで正確に使えるかッスね!」
ギュオオオオオオッ!!
紅と青の二台が、互いの鼻先を僅かに出し合いながら吹雪の出口へ飛び込んでいく。
若林「花か!!カナタか!!」
若林「最終局面で、二台の意地が真正面からぶつかったアアアア!!!!」
若林「しかし、いけなああああい!!!!」
若林「さすがはSUBARU EJ20!!ラリーで鍛え上げられたWRXが、そう簡単に行かせてくれないッ!!!!」
ドゴオオオオオオンッ!!
花のVABが四輪で凍結路面を掴み、コーナー出口から一気に前へ出る。
腹切カナタ「……ッ!」
86も食らいつくが、立ち上がりで僅かに差が開いた。
エアリ「やっぱり86でVABは厳しいッスねー。」
エアリ「自分もWRCでこういう低グリップ路面を走るッスけど、雪や氷の立ち上がりでは四輪駆動の安心感がかなり大きいッス!」
エアリ「VABは四輪全部で前へ蹴れる。しかも花さん、アクセルを開ける時に車体をほぼ真っすぐへ戻してるから、残ってるグリップを加速へ全部使えてるッスね!」
エアリ「対してカナタくんの86は、旋回中にリアを使えても、出口で二輪に駆動を任せるしかない。左フロントも弱ってる今は、ここで無理に追いつこうとすると一気に姿勢を崩すッス!」
若林「コーナーでは食らいつく赤い戦闘機!!しかし立ち上がれば青いVABが逃げるウウウウ!!!!」
エアリ「WRCでもよくあるッスけど、こういう路面は馬力より『どれだけ早く四輪へ仕事をさせられるか』が大事ッス!」
エアリ「花さん、そこを完全に分かってる走りッスね!」
山吹花「簡単に抜かせないんだから……ッ!!」
ヴォオオオオオオッ!!
VABが猛吹雪を切り裂いて加速する。
その瞬間――。
花の車体を包むように、淡い桜色の風がふわりと広がった。
しゅううううう……。
桜の花びらのような光が、VABのリアウイングから長く尾を引く。
若林「出たアアアア!!!! 山吹花の桜風だアアアア!!!!」
桜色の気流はそのままスリップストリームへ重なり、VABの背後に一本の淡い桜色の道を作る。
花のWRXは桜の風を纏いながら、さらに前へ伸びていった。
その頃――。
肝心の相川律はというと。
相川律「うおおおお!!桃だああああ!!!!」
なぜか一人だけJA福島の農協施設へ辿り着き、大量の桃をもらっていた。
職員「これも持ってっていいよー。」
相川律「マジっすか!?ありがとうございます!!」
箱。
また箱。
さらに箱。
相川律「五色沼に落ちたあとに桃食えるとか、今日ツイてるな俺!!」
その頃、山ではまだ猛吹雪の死闘が続いている。
相川律「うめぇぇぇぇ!!」
完全に一人だけ別番組だった。
その直後。
JA福島の農協施設を出た相川律のスマホが、また震えた。
ブブブブブッ。
相川律「……今度は誰だよ。」
その瞬間、周囲の空気が一段と冷え込む。
吐いた息が白く濃くなり、夜でもないのに視界の端がうっすらと曇っていく。
ちとせ「もへ〜……相川く〜ん……♪」
相川律「……。」
ちとせ「君のすぐ下に、アイストラップかけてあげるからねぇ〜……☆」
ちとせ「今、農協出たんでしょぉ〜?」
相川律「.........」
その瞬間。
すうううううううううう……。
地面のアスファルトが、音もなく白く染まり始める。
冷気が渦を巻き、吹雪のような風が一気に吹き上がった。
びゅうううううううっ!!
相川の足元から、薄い氷の輪が一気に広がる。
まるで見えない刃が地面をなぞったかのように、霜が一瞬で走る。
相川律「は――」
ぱきっ。
しゃらららららっ!!
氷の音が連鎖するように響き、空気そのものが凍りついていく。
足首から膝、腰、胸、肩へ。
吹き荒れる冷気が肌を刺し、呼吸すら凍らせながら、透明な氷がものすごい勢いで這い上がる。
桃の箱ごと、相川の周囲に氷の結界が形成されていく。
相川律「――ッ!!」
数秒後。
吹雪が収まると同時に、相川は全身を厚い氷に閉じ込められ、完全にカチコチになっていた。
氷の表面には細かな霜がびっしりと張り付き、風が当たるたびにキン、と澄んだ音を立てる。
指一本動かせない。
口も開けない。
目だけが「なんでだよ!!」と必死に訴えている。
周囲の空気はなおも冷たく、氷の檻の中だけが別世界のように静まり返っていた。
ちとせ「ひとりだけリタイヤしてぇ〜……みんなレースしてるのに楽しんでる罰だよ〜ん……♪」
ちとせ「その氷で、ゆっくり楽しんでねぇ〜☆」
ブツッ。
通話終了。
相川律「…………。」
氷の中で、完全ノーコメント。
吹き抜ける風だけが、氷の表面をかすかに鳴らしている。
隣では桃の箱まで一緒にカチコチになっており、吹雪の名残のような冷気が、まだ静かに周囲を漂っていた。
ちとせ「もへ〜……。みんな、ゴールを焦りすぎだよぉ……。」
ちとせ「冬の山は逃げたりしないのにねぇ……。おじさんの冷気、もっと深く吸い込んだら楽になれるのに……もへ〜。」
ちとせ「あ、それと相川く〜ん♪ リタイヤお疲れさま〜☆」
若林「ちとせの不気味なのんびりボイスが無線を通り抜けるウウウウ!!!!」
若林「そして先頭!!猛吹雪の乱気流の中、ついに三台が完全に一つの戦闘グループを形成したアアアア!!!!」
ビュオオオオオオッ!!
ズバババババッ!!
先頭を行くフリスのケイマンGT4。
その背後へ山吹花のWRX VAB。
さらに赤いREVIVE 86が、二台のスリップへ食らいつく。
若林「絶対王者フリス!!満身創痍の山吹花!!そして二百八十馬力の赤い戦闘機・腹切カナタ!!」
若林「吾妻GTの頂点を決める三つ巴だアアアア!!!!」
フリス「……来たか。」
普段の静かな表情から、柔らかさが消える。
バックミラーに映る二台を見た瞬間、フリスの瞳には王者としての鋭い誇りだけが残った。
フリス「我の背後まで来たことは認めよう。」
フリス「だが……ここから先を譲るつもりはない。」
ぽぉんっ!!
ごぎゃあああああッ!!
ケイマンがシフトを繋ぎ、吹雪の中で再加速する。
山吹花「フリス……!」
腹切カナタ「……ここで逃がさない。」
そして中段グループ。
若林「だが後方でも異変だアアアア!!!!」
ギュワアアアアアンッ!!
イヨのGRスープラが重力を路面へ叩きつける。
四輪の接地が一気に強まり、RZ34の横へ飛び込んだ。
イヨ「えっへん☆ 今度はイヨが行くよーッ!」
ちとせ「もへ〜……速いねぇ。」
ヴァアアアアアアンッ!!
GRスープラがRZ34を一気に突破。
若林「イヨ、ちとせを瞬殺オーバーテイクウウウウ!!!!」
そのまま前方。
まだボディを寄せ合いながら走る、高槻のバイパーとサテラのエボ7MR。
二台の間に、わずかな空間が生まれる。
イヨ「そこ、空いてるよっ!」
サテラ「は!?」
高槻健永「そこ来るのかよ!!」
ドシュウウウウウンッ!!
GRスープラが二台の間へ鋭く突っ込む。
左右数十センチ。
巨大なバイパーとエボ7MRの間を、白いスープラが真っすぐ抜けていった。
若林「針の穴を通したアアアア!!!!」
若林「イヨ、ちとせ!高槻!サテラ!まとめて射程へ入れながら一気に前進だアアアア!!!!」
エアリ「イヨさん、重力でタイヤの接地を増やしてるから、吹雪の中でも立ち上がりが全然鈍らないッス!」
エアリ「しかも高槻くんとサテラさんが互いを意識しすぎて、中央に一瞬だけ空間ができた。その一瞬を逃さなかったッスね!」
イヨ「えへへっ☆ 破壊神イヨ、まだまだ行くよーッ!」
若林「そこから赤い戦闘機の約10秒後方ァァァァ!!!!」
若林「柊蒼真VS内藤セリナVSイヨ!!三台が短いストレートで横一列になったアアアア!!!!」
ヴォオオオオオオンッ!!
ギュワアアアアアンッ!!
白いFL5。
レモンカラーのR8。
プリズムホワイトのGRスープラ。
三台が雪煙を引き裂きながら、ほぼ同時に加速する。
柊蒼真「……GRスープラまで来たのかよッ!」
柊蒼真「俺のペースが上がってないのか……!?」
若林「イヨがインサイドォォォォ!!!!」
GRスープラが道路の内側へ飛び込む。
その横。
内藤セリナのR8が、まるで二台を割るように中央へ滑り込んだ。
若林「そして真ん中に内藤セリナァァァァ!!!!三台完全サイドバイサイドだアアアア!!!!」
内藤セリナ「えへへ☆」
内藤セリナ「ストレートだからって……油断してないよね?」
柊蒼真「チッ……真ん中に入ってくるかよ!」
イヨ「えっへん☆ イヨも退かないよっ!」
三台の先には、すぐ次のコーナーが迫る。
内藤セリナ「じゃあ……誰が最後まで踏めるか勝負だねッ!」
ヴァアアアアアアアンッ!!
柊蒼真「上等だ……ッ!」
イヨ「いっけええええッ!!」
若林「三台ともアクセルを戻さなァァァァい!!!!」
若林「中速コーナああああ!!!!アウトにいたFL5が膨らむウウウウ!!!!」
ギャアアアアアッ!!
柊蒼真のFL5が、フロントタイヤを鳴かせながら外側へ押し出される。
若林「VTEC、押されてしまうううう!!!!」
がんッ!!
FL5の右側が雪壁ぎりぎりまで流れる。
その内側では――。
イヨのGRスープラと、内藤セリナのレモンカラーR8が完全に並んだ。
若林「これはうまあああい!!!!」
若林「イヨと内藤セリナ、サイドバイサイドオオオオ!!!!FL5がやられたアアアア!!!!」
柊蒼真「……猛者かよ。」
柊蒼真「舐めんな……ッ!ここだけ速いと思ったら大間違いだぞ。」
柊蒼真「ストレートに出たらァ……ッ!!」
だが――。
ドガアアアアアアンッ!!!!
FL5がアウト側のガードレールへ激しく接触する。
柊蒼真「ッ!!?」
若林「ぶつかったアアアア!!!!」
若林「柊、思い切りブレーキングしたものの間に合わない!!ガードレールへ接触!!」
若林「内藤セリナから熱いプッシュを受け、完全にラインを失ったアアアア!!!!」
柊蒼真「クソッ……!」
その前。
二台はもう柊を置き去りにしていた。
ヴァアアアアアアンッ!!
ギュワアアアアアンッ!!
R8とGRスープラ。
短いストレートで完全な横並び。
若林「さあ、立ち並びだァァァァ!!!!」
内藤セリナ「えへへ☆ イヨちゃん、ここからは二人だね!」
イヨ「えっへん☆ セリナさん、今度はイヨが勝つよっ!」
次の中速右コーナー。
セリナはR8を外側へ残し、速度を落とさず大きな弧を描く。
イヨはイン側。
GRスープラへ重力をかけ、四輪を路面へ強く押しつける。
ギュギュギュギュッ!!
内藤セリナ「まだ踏むよーッ!!」
イヨ「イヨも戻さないっ!」
二台がほぼ同時にクリッピングポイントへ。
R8は外側から速度を残す。
GRスープラは小さな旋回半径で内側を駆け抜ける。
そして出口――。
イヨ「ここだよっ!」
ギュワアアアアアアンッ!!
重力がさらに強まる。
GRスープラのリアタイヤが路面へ食いつき、一瞬早くアクセル全開へ。
内藤セリナ「うそっ、伸びる!?」
ヴァアアアアアアンッ!!
GRスープラがR8の横から、一気に半車身前へ。
さらに次の左。
イヨはそのままインを確保した。
若林「GRスープラきたあああああ!!!!」
若林「イヨが内藤セリナをオーバーテイク!!逆転だアアアア!!!!」
イヨ「えっへん☆ とったぁー!」
内藤セリナ「やられたぁー!でもまだ追うよーッ!!」
エアリ「今の三台、かなり面白かったッスね!」
エアリ「まず柊くん。最初の中速コーナーでFL5がアウト側だったから、前輪に旋回と減速を同時にやらせる形になったッス。」
エアリ「そこへセリナさんが内側からプレッシャーをかけた。柊くんは進入を遅らせようとブレーキを強く踏んだけど、フロントがもう限界で、そのまま外へ流れてガードレールまで行っちゃったッスね。」
エアリ「その後のイヨさんとセリナさんは真逆の勝負だったッス!」
エアリ「R8はアウト側を大きく使って、コーナー中の速度を残す走り。」
エアリ「GRスープラはイン側で小さく曲がって、重力でタイヤを押しつけて出口から一気に加速する走りッス!」
エアリ「セリナさんは旋回中は速かった。でもイヨさんは車体が真っすぐ向いた瞬間のトラクションが強すぎた!」
エアリ「結果的に一個目のコーナーで並んで、二個目の入口までにイヨさんが前を取った。連続コーナー全体を使った、すごく綺麗な逆転だったッスね!」
若林「イヨ、破壊神の重力で再逆転!!しかし内藤セリナも離れない!!」
若林「そして傷ついたFL5もまだ後ろから追ってくるウウウウ!!!!」
サテラ「ん? イヨちゃん!? 速いね〜☆ まさかこのホワイトアウトの中で、そのラインをノーブレーキで突っ込んでくるとは思わなかったよ。ボクたちの『キス』に割り込むなんて、なかなかの遊び心だねぇ!」
若林「さあああ!!上位勢が汚い並びの状態だああああ!!!!」
ゴオオオオオオオッ!!
どっごおおおおおんッ!!
イヨのGRスープラが雪煙を押し潰すように、一気にサテラと高槻の横へ並ぶ。
サテラ「……イヨちゃん来たのかい?」
サテラ「悪いけど、コイツぶち抜いてくれる?」
高槻健永「へー?俺の邪魔すんの?」
高槻健永「せっかくサテラくんと良いところだったのになぁ。」
高槻健永「イヨちゃん、恋路の邪魔する子は後でお仕置きかな〜☆ ん〜ちゅ♡」
イヨ「えっへん☆ 高槻さん、サテラさん!」
イヨ「もたもたしてると置いてっちゃうよっ!イヨのスープラは、重力で雪をぎゅーって押しつけて走れるんだから!」
サテラ「ちなみに、高槻はイヨちゃんのパパじゃないからねー☆」
高槻健永「そこ今言う!?」
サテラ「それと高槻。」
サテラ「テメェはきしょいんだよオオオオ!!!!」
ばんっ!!
ばしぃんっ!!
エボ7MRがバイパーを外側へ押しやった、その瞬間。
イヨ「今だよっ!」
ギュワアアアアアアンッ!!
GRスープラが二台の間から前へ飛び出す。
若林「イヨが抜けたアアアア!!!!」
若林「サテラと高槻が揉めている隙を一気に突いた!!イヨ、4位へ浮上ォォォォ!!!!」
高槻健永「ちょっ、待てイヨちゃん!!」
サテラ「ほら見ろ!お前が変なこと言ってるから抜かれたじゃねぇか!」
高槻健永「サテラくんも殴ってきただろ!」
サテラ「うるさい!」
その前方。
フリス、山吹花、腹切カナタ。
三台の背後へ、プリズムホワイトのGRスープラが急速に迫っていく。
若林「先頭集団へ破壊神が接近!!」
若林「フリス!!花!!カナタ!!そしてイヨ!!」
若林「栄光のチェッカーを前に、ついに4台が一つの戦闘圏へ入り始めたアアアア!!!!」
そのさらに後方。
ちとせ「もへ〜……みんな元気だねぇ。」
ちとせ「おじさんは、ゆっくり行こうかなぁ……♪」
その瞬間――!!
ギャアアアアアアアアッ!!!
ンバアアアアアアアッ!!!!
ちとせ「……なッ!?」
若林「黄色い弾丸が吠えたアアアア!!!! 伊藤翔太のスイスポだアアアア!!!!」
若林「ついに氷雪の獣神・ちとせの懐へ飛び込んだアアアア!!!!」
猛吹雪の中。
黄色いZC33Sが、RZ34のサイドミラーを掠めるほどの距離まで接近する。
ギャンギャンッ!!
ギュオオオオオッ!!
ちとせのRZ34が放つ冷気で路面の氷がさらに硬くなる。
それでも伊藤翔太はアクセルを抜かない。
伊藤翔太「ちとせッ!!」
伊藤翔太「カナタも花も前で戦ってる!! 俺だけここで止まってられるかよッ!!」
ちとせ「もへ〜……伊藤くん、ここまで来たんだぁ。」
ちとせ「おじさんの冷たい道を、そんな勢いで壊しに来るなんて……ちょっと楽しくなってきたねぇ。」
伊藤翔太「だったら最後まで付き合ってもらうぞ!!」
次の中速コーナー。
ちとせはRZ34をインへ寄せる。
だが伊藤翔太は一度アウトへ振り、スイスポの軽さを使って旋回速度を残した。
ギャアアアアアアンッ!!
ちとせ「……速い。」
出口。
RZ34がトラクションを掛けるより一瞬早く、スイスポが前へ向く。
伊藤翔太「ここだああああッ!!」
ンバアアアアアアッ!!!!
若林「行ったアアアアアア!!!!」
若林「黄色いスイスポがちとせを突破!! 伊藤翔太、7位へ浮上だアアアア!!!!」
エアリ「伊藤くん、真正面からパワー勝負してないッス!」
エアリ「RZ34がインを守ったところで、スイスポを外へ振って旋回半径を広げた。軽い車体だからこそ、中速域で速度を落とさず向きを変えられたッスね!」
エアリ「ちとせさんは氷の上でも安定してる。でも、その安定を逆手に取って“曲がりながら前へ出る”形を作った。伊藤くん、かなり冷静だったッス!」
その知らせは先頭にも届く。
山吹花「伊藤くん……!」
山吹花「ちとせさんを抜いたの……!? すごい……。」
腹切カナタ「伊藤、やったな。」
腹切カナタ「そのまま来い。前はまだ終わってない。」
山吹花「私も……負けてられないッ!」
若林「先頭集団にも衝撃が走るウウウウ!!!!」
若林「伊藤翔太の追い上げで、最後の最後まで順位が読めない!! 吾妻GT、完全に予測不能だアアアア!!!!」
若林「上位陣、もはや修羅場ッ!!この後どうなるんでしょうか!?エアリさん!!」
エアリ「かなり危ないッスね。特にカナタくん、タイヤのエアとグリップがそろそろ限界に近いッス!」
若林「そして来たアアアア!!!!先頭グループの背後、わずか3.2秒!!」
若林「白いバケモノ、イヨのGRスープラが到達したアアアア!!!!」
ズドォォォォォォンッ!!
ヴォォォォォォォォンッ!!
濃いピンク色の重力波動をまとったGRスープラが、氷結した路面へ吸い付くように迫ってくる。
フリスのケイマンGT4のミラーにも、その白い影が大きく映り始めた。
フリス「……来たか。」
フリス「この吹雪を抜けて、我の背後まで来るとは……待っていた甲斐があった。」
フリスは静かにシフトへ手を伸ばす。
ぽぉんっ。
フリス「……。」
もう一度。
ぽぉんっ。
フリス「……今、何速だったか......。」
一瞬だけ、視線がシフト表示へ落ちる。
フリス「……四速。」
フリス「いや、五速だった。」
「....いや、でも落としたからさっき2速なのか?それとも3速......ッ??」
ぽぉんっ。
フリス「……戻った。」
それでも表情はほとんど変わらない。
山吹花「フリス、何してるの……?」
フリス「確認。」
腹切カナタ「……確認にしては長くないか???」
フリス「静かにして。今、我も少し分からなくなっているから。」
山吹花「どういうことよそれ....ッ」
フリス「……問題ない。」
フリスは小さく息を吐き、今度こそ正確にギアを入れる。
ぽぉんっ!!
ごぎゃあああああッ!!
ケイマンGT4が一気に加速する。
フリス「我の聖域を、簡単に渡すつもりはない。」
フリス「イヨ。来るなら来い。」
イヨ「えっへん☆ フリスさん、見〜つけたっ!」
イヨ「重力でぎゅーって加速したから、もうすぐ追いついちゃうよ!」
山吹花「また速いのが来た……ッ!」
腹切カナタ「3.2秒なんて、今のイヨなら一瞬だな。」
エアリ「その通りッス。」
エアリ「イヨさんは重力で四輪の接地を強めてるから、この氷でも加速がほとんど落ちない。」
エアリ「ただ、カナタくんはタイヤのエアもグリップもかなり厳しい。ここで無理に踏み続けると、次のコーナーで一気に破綻する可能性があるッス!」
若林「フリス!!花!!カナタ!!そしてイヨ!!」
若林「先頭四台、ついに一つの戦闘圏へ入り始めたアアアア!!!!」
【エーペックスカップ第8戦 吾妻GT ファイナルラップ バックストレート 順位表】
Current Conditions: 猛吹雪(ホワイトアウト・破壊神の急接近)
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1位 :フリス(ポルシェ 718 ケイマン GT4 - 18歳の女の子)
2位 :山吹 花(SUBARU WRX STI VAB - 桜風・タイヤ限界)
3位 :腹切 カナタ(TOYOTA 86 REVIVE - 280ps / 俺)
4位 :イヨちゃん(トヨタ GRスープラ - 破壊 of 白猫)トップ3へ3.2秒差!
5位 :高槻 健永(ダッジ・バイパー - 赤いドラゴン / 俺)
6位 :サテラ(三菱 ランサーエボリューション VII MR - 水鮫 / ボク)
7位 :伊藤 翔太(スズキ スイフトスポーツ ZC33S - 伊藤 / 俺)
8位 :ちとせ(日産 フェアレディZ RZ34 - 氷雪 of 獣神 / おじさん)
9位 :クリスタ・ニールセン(フェラーリ 488GTS - 紅い暴君)
10位:内藤 セリナ(アウディ R8 V10 plus - 太陽神)
11位:古賀 加奈子(BMW M5 G90 - 紅い重戦車)
12位:眞鍋 琉世(三菱 ランサーエボリューション IX - 銀 de 戦闘機 / 俺)
13位:岡田 大成(トヨタ GR GT - 黒き伝説 of 継承者 / 俺)
14位:伊藤 乎太郎(パガーニ・ウアイラ - 黒 of 風神 / 俺)
15位:柊 蒼真(ホンダ シビックタイプR FL5 - 純白 of 追跡者 / 俺)
16位:柳津 雄介(BMW M4 DTM Edition - 芸術の修羅 / 俺)
17位:相川 美保(日産 スカイラインGT-R 400R - ブルーシャーク)
18位:陽太(マツダ ロードスター - オレンジ of 風 / 俺)
19位:菜園 宗一郎(ポルシェ 992 GT3 - RR of 誇り / 俺)
20位:佐藤 ジュン(マツダ RX-7 FD3S - ロータリーの歌姫 / 俺)
21位:中野 伸一(トヨタ クラウンアルテッツァ - 執念 of セダン / 俺)
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リタイヤ:相川 律(日産 GT-R NISMO R35 - 五色沼の主・水死体役)
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