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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
PR
520/534

吾妻編第57話 2人のファーストキス

若林「さあ!!猛吹雪を切り裂き、全車が土湯峠分岐点まで続く地獄の六連ヘアピンへ突入したアアアア!!!!」


ギャアアアアアアッ!!


ギュガガガガッ!!


白い闇の中から、赤いREVIVE 86が一気に姿を現す。


若林「腹切カナタが三位サテラのエボ7MRへ仕掛けたァァァァ!!!!」


視界は数メートル。


それでもカナタは、雪壁とガードレールの位置を知っているかのようにインへ飛び込んだ。


腹切カナタ「見えなくても、道は変わらない。」


腹切カナタ「タイヤの振動も、路面の傾きも……全部覚えてる。」


フロントタイヤが雪を掻き分け、86のノーズがエボの内側へ突き刺さる。


サテラ「マジかよ、カナタ……ッ!」


サテラ「この吹雪で、そんな綺麗なラインを通るのか!?」


腹切カナタ「真っすぐじゃ追いつけない。」


腹切カナタ「だから、俺は曲がる場所で前へ出る。」


ギャギャアアアアッ!!


カナタはブレーキを残して86を回頭させ、出口へ向いた瞬間にアクセルを踏み抜く。


ヴォアアアアアアッ!!


赤い86が半車身前へ出た。


若林「腹切カナタ、サテラを捉えたァァァァ!!!!二百八十馬力の赤い戦闘機が、ついに表彰台圏内の三位へ浮上だアアアア!!!!」


サテラ「へぇ……やるじゃん。」


サテラ「ボクの前へ出たんだから、そのまま逃げ切ってみろよ!」


腹切カナタ「逃げない。」


腹切カナタ「前の二台まで、追う。」


赤い86は雪を巻き上げ、さらに前方の花とフリスを見据えた。


その後方では――。


ドォォォォォォンッ!!


クォォォォォォンッ!!


眞鍋琉世の銀色のエボIXが、岡田大成のGR GTへ並びかける。


若林「眞鍋のエボIXが来たアアアア!!!!猛吹雪を吸い込むような轟音で、岡田の守りをこじ開けるウウウウ!!!!」


ギュオオオオオッ!!


過給圧を高めた4G63が、雪混じりの空気を強引に吸い込む。


眞鍋は岡田のブレーキングへ重ね、イン側へ一気に車体をねじ込んだ。


岡田大成「また抜かれるのか……ッ!」


岡田大成「いや、この加速……エンジンの限界まで使ってやがる!」


眞鍋琉世「理論だけで守れる状況じゃない。」


眞鍋琉世「この雪では、先に踏み切った方が勝つ。」


ドゴオオオオオンッ!!


エボIXが四輪で路面を掴み、GR GTの前へ飛び出す。


若林「眞鍋琉世、岡田を突破!!十二位へ浮上だアアアア!!!!」


エアリ「カナタくんは路面の感触を頼りに、サテラくんより早く向きを変えたッス!」


エアリ「眞鍋くんは逆に、多少姿勢が乱れてもエボの四駆で立ち上がりを押し切った!」


エアリ「同じ吹雪でも、赤い86は正確さ、銀のエボは爆発力で前へ出たッスね!」


若林「赤い戦闘機と銀の戦闘機!!二つの閃光が、白銀の六連ヘアピンを駆け上がっていくウウウウ!!!!」


若林「さあ!!猛吹雪を切り裂き、全車が土湯峠分岐点まで続く地獄の六連ヘアピンへ突入したアアアア!!!!」


ギャアアアアアアッ!!


ギュガガガガッ!!


白い闇の中から、赤いREVIVE 86が一気に姿を現す。


若林「腹切カナタが三位サテラのエボ7MRへ仕掛けたァァァァ!!!!」


視界は数メートル。


それでもカナタは、雪壁とガードレールの位置を知っているかのようにインへ飛び込んだ。


腹切カナタ「見えなくても、道は変わらない。」


腹切カナタ「タイヤの振動も、路面の傾きも……全部覚えてる。」


フロントタイヤが雪を掻き分け、86のノーズがエボの内側へ突き刺さる。


サテラ「マジかよ、カナタ……ッ!」


サテラ「この吹雪で、そんな綺麗なラインを通るのか!?」


腹切カナタ「真っすぐじゃ追いつけない。」


腹切カナタ「だから、俺は曲がる場所で前へ出る。」


ギャギャアアアアッ!!


カナタはブレーキを残して86を回頭させ、出口へ向いた瞬間にアクセルを踏み抜く。


ヴォアアアアアアッ!!


赤い86が半車身前へ出た。


若林「腹切カナタ、サテラを捉えたァァァァ!!!!二百八十馬力の赤い戦闘機が、ついに表彰台圏内の三位へ浮上だアアアア!!!!」


サテラ「へぇ……やるじゃん。」


サテラ「ボクの前へ出たんだから、そのまま逃げ切ってみろよ!」


腹切カナタ「逃げない。」


腹切カナタ「前の二台まで、追う。」


赤い86は雪を巻き上げ、さらに前方の花とフリスを見据えた。


その後方では――。


ドォォォォォォンッ!!


クォォォォォォンッ!!


眞鍋琉世の銀色のエボIXが、岡田大成のGR GTへ並びかける。


若林「眞鍋のエボIXが来たアアアア!!!!猛吹雪を吸い込むような轟音で、岡田の守りをこじ開けるウウウウ!!!!」


ギュオオオオオッ!!


過給圧を高めた4G63が、雪混じりの空気を強引に吸い込む。


眞鍋は岡田のブレーキングへ重ね、イン側へ一気に車体をねじ込んだ。


岡田大成「また抜かれるのか……ッ!」


岡田大成「いや、この加速……エンジンの限界まで使ってやがる!」


眞鍋琉世「理論だけで守れる状況じゃない。」


眞鍋琉世「この雪では、先に踏み切った方が勝つ。」


ドゴオオオオオンッ!!


エボIXが四輪で路面を掴み、GR GTの前へ飛び出す。


若林「眞鍋琉世、岡田を突破!!十二位へ浮上だアアアア!!!!」


エアリ「カナタくんは路面の感触を頼りに、サテラくんより早く向きを変えたッス!」


エアリ「眞鍋くんは逆に、多少姿勢が乱れてもエボの四駆で立ち上がりを押し切った!」


エアリ「同じ吹雪でも、赤い86は正確さ、銀のエボは爆発力で前へ出たッスね!」


若林「赤い戦闘機と銀の戦闘機!!二つの閃光が、白銀の六連ヘアピンを駆け上がっていくウウウウ!!!!」


若林「ああああああああッ!!これはもはや公道レースの域を超えた、狂気の密着戦だアアアア!!!!」


猛吹雪を突き破り、高槻健永の赤いバイパーがサテラのエボ7MRへ並ぶ。


短い下りのストレート。


その先には、すぐさま第四ヘアピンが迫っていた。


ヴォオオオオオオオンッ!!


ギャリギャリギャリッ!!


二台のドアが擦れ合い、散った火花が雪へ飲み込まれる。


高槻健永「やっと追いついたぜ、サテラ!」


高槻健永「この距離……最高にゾクゾクするだろ!?熱いキスをしようぜッ!!」


サテラ「するかアアアアッ!!」


サテラ「気持ち悪いこと言ってんじゃねぇぞ、この変態ドラゴン!!」


サテラは接触の衝撃に逆らわず、一度エボの車体を外側へ振った。


次の瞬間、カウンターを当てながらバイパーの側面へ押し返す。


ドンッ!!


ギャギャアアアアッ!!


高槻健永「ハハハッ!やり返してきたか!」


サテラ「とうとうボクを本気で怒らせたね……?」


サテラ「そんな高槻くんには、お仕置きしてあげるよオオオオ!!!!」


エボ7MRが再びバイパーへ迫る。


だが高槻も退かない。


巨大なV10のトルクを使い、リアタイヤを滑らせながらエボのイン側へ車体を押し込んだ。


若林「両者、一歩も退かない!!押されたら押し返す!!第四ヘアピンへ、接触したまま突入していくウウウウ!!!!」


ブレーキングポイント。


サテラが一瞬だけ先に減速する。


高槻はその隙を逃さず、バイパーの長いノーズをインへ差し込んだ。


しかし、重いフロントが凍結路面を捉え切れず、わずかに外へ膨らむ。


サテラ「その巨体じゃ、ここは曲がり切れないよッ!」


高槻健永「だったら、力で曲げるだけだ!!」


高槻はアクセルを煽り、リアを大きく振り出す。


ヴァアアアアアンッ!!


バイパーは横を向きながらヘアピンを旋回し、エボの進路を塞ぐように出口へ向かった。


サテラ「邪魔だああああッ!!」


ドガンッ!!


エボのフロントフェンダーがバイパーのドアへ当たり、二台は再び押し合う。


その前方では、ちとせのRZ34とイヨのGRスープラが、騒乱を背後へ感じながら走っていた。


ちとせ「もへ〜……後ろがすごく騒がしいねぇ。」


ちとせ「高槻お兄さん、サテラちゃんに愛の告白かなぁ……?」


ちとせ「でも雪山での熱いキスは、マフラーまで凍っちゃうよぉ……もへ〜。」


イヨ「パパとサテラさん、仲良しだねっ!」


イヨ「イヨも混ざりたいから、二台まとめて重力で地面にぎゅーってするよ!」


若林「無邪気に恐ろしいことを言っているウウウウ!!!!」


第四ヘアピン出口。


高槻はバイパーの暴力的な加速で雪を掻き飛ばす。


サテラもエボの四輪駆動を使い、外側から速度を乗せていく。


ギュオオオオオッ!!


二台は依然として並んだまま。


鼻先だけが、交互に半車身ずつ前へ出る。


エアリ「サテラさんは進入で先に車体を曲げて、出口を広く使ってるッス!」


エアリ「高槻くんは旋回中にかなり失速したッスけど、立ち上がりのトルクで全部取り返してる!」


エアリ「接触してる場合じゃないッスけど、走り方だけ見れば完全に互角ッスね!」


高槻健永「もっと来いよ、サテラ!!」


サテラ「後悔しても知らないからねぇ……ッ!」


若林「第四ヘアピンを抜けても決着なし!!」


若林「赤いドラゴンと水鮫!!二台はボディを削りながら、次のヘアピンへ突入していくウウウウ!!!!」


若林「あああああああッ!!正気かァァァァ!!!!」


若林「完全なミラーアイス!!その上をサテラと高槻健永が、時速二百五十キロオーバーのまま第五ヘアピンへ突っ込んだアアアア!!!!」


ギギギギギギギッ!!


ギャアアアアアアッ!!


赤いバイパーの巨大なV10が咆哮し、エボ7MRの四輪駆動が凍結路面へ必死に食らいつく。


二台は横並びのまま、一斉にブレーキを踏み抜いた。


真っ赤に焼けたブレーキローターへ雪が触れ、白い蒸気が勢いよく噴き上がる。


高槻健永「まだ踏めるッ!!」


サテラ「こんな所で張り合うな、バカ槻ィィィィ!!!!」


ギュガガガガガッ!!


だが減速が間に合わない。


バイパーのフロントはイン側へ入らず、長い車体が外側へ押し流される。


エボも四輪を滑らせ、サテラは激しくカウンターを当てた。


サテラ「曲がれえええええッ!!ボクのエボオオオオ!!!!」


高槻健永「ハハハッ!!最高だぜ、この氷!!」


二台のドアが再び重なる。


ガギギギギギッ!!


接触したまま、バイパーとエボはヘアピンの頂点を大きく通り過ぎた。


若林「両者オーバースピード!!クリッピングポイントを完全に通過したアアアア!!!!」


その前方。


ちとせはバックミラーへ視線を送り、ゆっくり笑った。


ちとせ「おじさんのミラーアイス、最高でしょぉ〜……?」


ちとせ「滑って、滑って……たくさん味わってねぇ。もへ〜♪」


サテラ「お前の仕業か、ちとせえええええッ!!」


ちとせ「もへ〜……バレちゃったぁ。」


高槻健永「いい氷じゃねぇか!!もっとくれよ、ちとせ!!」


サテラ「喜んでんじゃねぇよ、この変態ドラゴン!!」


外側の雪壁が急速に迫る。


サテラはブレーキを一瞬だけ緩め、エボのフロントへ荷重を戻した。


さらにアクセルを煽り、車体を強引に内側へ回す。


ドバアアアアッ!!


雪煙を噴き上げ、エボ7MRがヘアピン出口へ鼻先を向けた。


一方の高槻も、バイパーの大トルクでリアタイヤを空転させる。


ヴォアアアアアアアッ!!


巨大な車体が横向きのまま旋回し、雪壁すれすれで向きを変えた。


若林「二台とも生還したアアアア!!!!あの速度から、強引にドリフトへ持ち込んだァァァァ!!!!」


高槻健永「抜けたぜ、サテラ!!」


サテラ「まだボクの方が半車身前だよッ!!」


出口へ向け、エボが先に四輪のグリップを回復する。


ギュオオオオオッ!!


しかし直後、バイパーのV10が爆発的な加速を開始した。


ヴァアアアアアアアンッ!!


高槻健永「直線なら、こっちのもんだ!!」


サテラ「だったら次のヘアピンまでに、もう一度黙らせてあげるよ!!」


若林「決着はつかない!!水鮫と赤いドラゴン、互いに半車身も譲らず最終ヘアピンへ向かうウウウウ!!!!」


窓の向こう。


ヘルメット越しに、高槻健永とサテラの視線が真正面からぶつかった。


二台の間隔は、ほとんど残されていない。


赤いバイパーのドアと、エボ7MRのサイドパネルがぴったりと重なり、まるでマシン同士が無理やり唇を押しつけ合うように擦れ続けていた。


ギャリギャリギャリッ!!


火花が両車の隙間から噴き出し、吹雪の中へ黄金色の線を引く。


高槻健永「ハハッ!この速度、この圧力!!最高だね、サテラくん!!」


高槻健永「俺、君とこんな熱いキスをしたかったんだよ……ッ!」


高槻はバイパーをさらに数センチ内側へ寄せる。


長いボンネットがエボのフロントフェンダーへ重なり、赤と銀のボディがさらに強く擦れ合った。


ガギギギギギッ!!


サテラ「だから、ボクはお前とキスなんかしたくねぇって言ってんだろオオオオ!!」


サテラ「マシンまで押しつけてくるな!!気持ち悪いんだよ、この変態ドラゴン!!」


サテラは接触を避けるどころか、エボの車体を強く押し返した。


ドンッ!!


エボ7MRのサイドがバイパーへ食い込み、今度はサテラから強引にボディを擦りつけていく。


高槻健永「おっと!そっちからキスしてくるのか?」


サテラ「押し返してんだよ!!」


高槻健永「照れなくてもいいって!」


サテラ「照れてねぇぇぇぇッ!!」


二台は接触したまま、第5ヘアピンの頂点へ滑り込む。


極限の横Gで身体をシートへ押しつけられながらも、二人は互いから視線を逸らさない。


バイパーの巨大な車体が外へ膨らもうとするたび、サテラはエボの四輪を雪面へ食いつかせ、押し戻す。


ドガンッ!!


再びドア同士がぶつかる。


その直後、バイパーがトルクで前へ出ようとし、今度はリアフェンダー同士が重なった。


ギィィィィィッ!!


赤いボディと銀色のボディは離れることなく、前から後ろまで何度も擦り合わされる。


まるで二台のマシンそのものが、拒絶しながら激しい口づけを繰り返しているかのようだった。


高槻健永「このまま二人で、吹雪の向こう側まで行こうぜ!」


サテラ「勝手に一人で行けッ!!」


高槻健永「こんな真っ白な世界で二人きりなんて、運命だと思わない?」


サテラ「前にも後ろにも車がいるだろうが!!二人きりじゃねぇよ!!」


高槻健永「じゃあ、周りに見せつけながらキスする?」


サテラ「悪化してんじゃねぇか!!」


第5ヘアピン出口。


二台は車体を擦り合わせたままアクセルを踏み抜く。


ヴォオオオオオオオンッ!!


ギュオオオオオオッ!!


バイパーのV10が雪山を震わせ、エボ7MRの四輪が凍結路面を引っ掻く。


接触している部分から火花が伸び、二台の間に薄く積もった雪が一瞬で蒸気へ変わった。


高槻健永「ねー、サテラくん。」


サテラ「今度はなんだよッ!」


高槻健永「俺とキスしない?」


高槻健永「ん〜、ちゅっ!」


サテラ「きっしょいッ!!」


サテラ「無線でそんな音出すな!!誰が聞いてると思ってんだッ!!」


サテラは怒りに任せ、エボをもう一度バイパーへ押しつける。


ドゴンッ!!


しかし高槻も笑いながら押し返す。


二台のドアは完全に重なり、互いの塗装を削りながら最終第6ヘアピンへ向かっていく。


高槻健永「そんなに嫌がるなよ。車同士はもう仲良しだぜ?」


サテラ「どこがだよ!!」


サテラ「ボクのエボを見ろ!!お前のバイパーとキスしすぎて、ドアが傷だらけじゃねぇか!!」


高槻健永「愛の跡だな!」


サテラ「事故の跡だよ!!」


さらにバイパーのフロントフェンダーがエボのリアドアへ滑り込み、赤い鼻先が銀色のボディを撫でるように擦る。


ギャリリリリッ!!


サテラ「触んなああああッ!!」


高槻健永「マシンは正直だなぁ!」


サテラ「お前が無理やり押しつけてんだろうが!!」


ちとせ「もへ〜……高槻お兄さん、絶好調だねぇ。」


ちとせ「サテラちゃん、お顔が真っ赤だよぉ……?もへ〜。」


イヨ「えっへん☆ パパ、すっごく嫌われてるねっ!」


イヨ「でもパパの執念は、重力よりも重いんだよ!サテラさん、もう諦めてパパのちゅっを受け入れるしかないねっ!」


高槻健永「いつ誰がパパになったんだよ!!」


高槻健永「お前のパパじゃねぇしッ!!」


サテラ「そこは否定するのかよ!!」


高槻健永「サテラくんとのキスは否定しないぜ!」


サテラ「やっぱり離れろおおおおッ!!」


(ビュォォォォォォォォッ!!! ズバババババッ!!!)


高槻健永「ねえ、サテラくん。」


高槻健永「俺との『キスマージン』……いる?」


サテラ「いらない。」


高槻健永「即答!?」


サテラ「むしろ今すぐ離れろ。」


高槻健永「でも車同士は、まだくっついてるぜ?」


ギャリギャリギャリッ!!


サテラ「それはお前が押しつけてるからだろ!!」


ちとせ「もへ〜……サテラちゃん、振られちゃったねぇ。」


サテラ「振られたのは高槻の方だろ!!」


ちとせ「でも、高槻お兄さんのキスはとっても情熱的で……路面の氷まで溶かしちゃいそうだねぇ。」


サテラ「いらねぇよ、そんな熱量!!」


ちとせ「おじさん、見てるだけでお耳がふーふーしちゃうなぁ……もへ〜♪」


サテラ「意味わかんねぇし、前見て走れ!!」


ちとせはバックミラー越しに、ボディを擦り合わせながら並走するエボ7MRとバイパーを眺めた。


ちとせ「今度、おじさんがキスしてあげようかぁ〜?」


ちとせ「思い切って、ヒエヒエになれるよぉ〜♪」


サテラ「絶対いらねぇぇぇぇ!!!!」


高槻健永「それ、俺が代わりにもらっていいか?」


ちとせ「もへ〜……高槻くんには、サテラがいるでしょぉ?」


サテラ「いねぇよ!!勝手に組み合わせんな!!」


高槻健永「照れてるサテラくんも最高だね!」


サテラ「お前らまとめて吹雪の外へ消えろオオオオ!!!!」


イヨ「えっへん☆ パパの『キスマージン』、イヨが代わりに受け取ってあげてもいいよ!」


イヨ「でも、サテラさんの嫌そうな顔も面白いから……最後に重力でもう一回、ぎゅーってしちゃうね!」


高槻健永「だからパパじゃねぇって!!」


ギュワアアアアアンッ!!


重力波が路面を押し潰し、バイパーとエボ7MRの車体がさらに雪面へ沈み込む。


サテラ「余計なことすんなイヨォォォ!!」


高槻健永「ハハハッ!もっと密着しちまったな、サテラくん!」


サテラ「喜んでんじゃねぇッ!!」


若林「その前方!!首位フリスと二位山吹花が激しいデッドヒート!!」


若林「さらに三位カナタを追い、サテラと高槻の心中デッドヒートも止まらない!!ゴールまで残り数百メートルだアアアア!!!!」


その時、高槻が再び無線を開いた。


高槻健永「ねえ、花ちゃん。」


山吹花「……何。」


高槻健永「さっきの生意気な感じ、最高だったぜ。」


高槻健永「そろそろ俺とウェディングドレス着て、式場に行かない?もう手配してるんだ〜☆」


一瞬、無線が静まり返る。


山吹花「……はあ?」


次の瞬間――。


山吹花「嫌に決まってるでしょオオオオ!!!!」


山吹花「アンタみたいな『カッコいいのは俺』って顔した男、虫みたいに気持ち悪いのよ!!」


山吹花「誰がアンタなんかと結婚するかァァァァ!!!!視界から消えなさい、この変態ドラゴン!!」


ドパアアアアアンッ!!


WRXのマフラーから炎が弾け、怒りに呼応するように加速する。


高槻健永「うおっ!?」


バイパーが一瞬ラインを乱し、外側の雪へタイヤを乗せた。


若林「山吹花、怒りの大噴火ァァァァ!!!!」


若林「高槻の公開プロポーズを、一切の迷いなく粉砕したアアアア!!!!」


そのすぐ後ろ。


伊藤翔太の黄色いスイスポが、WRXの横へ迫っていた。


伊藤翔太「花、今の……全部聞こえてたぞ。」


山吹花「……えっ。」


山吹花の声が、急に小さくなる。


山吹花「い、伊藤くん……ごめんね。」


山吹花「汚い大声、出しちゃって……その、変な虫が飛んできたから、つい……。」


伊藤翔太「虫って高槻のことかよ。」


山吹花「……うん。」


高槻健永「聞こえてるぞ花ちゃあああん!!」


山吹花「黙って!!」


高槻健永「はい!!」


伊藤翔太「素直に返事すんのかよ……。」


花は恥ずかしそうに視線を前へ戻し、ステアリングを握り直す。


山吹花「伊藤くんも、気をつけてね。」


山吹花「この先、まだ路面が凍ってるから……。」


伊藤翔太「ああ。花も首位だけ見て走れ。」


山吹花「……うん!」


若林「山吹花、一瞬で元のしおらしさへ戻ったァァァァ!!!!」


若林「だが振られた高槻は、なぜかさらに笑顔で加速しているウウウウ!!!!」


高槻健永「最高の断り方だったぜ、花ちゃん!!」


サテラ「お前、もう何言われても喜ぶだろ!!」


高槻健永「サテラくんも試してみる?」


サテラ「二度と話しかけんなァァァァ!!!!」


若林「あああああああッ!! 収まらない! 吹雪も、そして高槻 健永のポジティブなストーカー行為も全く収まる気配がありませんッ!! 最終バックストレート、タイヤの限界を迎えて苦しむ山吹 花のWRXに対し、高槻のバイパーが12気筒の咆哮と共にその巨大な影をさらに密着させていくッ!!」


高槻 健永「ねえ、いい加減俺とキスしてよ〜、花ちゃ〜ん☆ この猛吹雪の中で、俺のバイパーと君のWRXが一つになれば、きっと最高のダイヤモンドが生まれると思うんだよね〜。ん〜〜〜ちゅっ♡」


山吹 花「……(プツッ)……。黙っててゴミカス高槻ッ!! 私に追いつけないんだからほっといてよッ!!! アンタのその汚い排気音、雪に埋もれて消えちゃえばいいのよッ!! 誰がアンタなんかとキスするか!!!!」

「この公道の産業廃棄物がアアアアッ!!」


若林「山吹 花、本日二度目の大噴火アアアアッ!! 語彙力がもはやレースの域を逸脱しているッ!! 『ゴミカス』『産業廃棄物』!! 翔太の前で見せていたあの可憐なしおらしさは、ホワイトアウトの彼方へ完全に吹き飛んだアアアアッ!!」


伊藤 翔太「(……うわあ。花、完全にキレてる……。でも、あの状況で高槻さんに絡まれたら、誰だってああなるよな……。がんばれ、花……!)」


エアリ「……ふふ。凄まじいですね、花ちゃんの『輝き』。……若林さん、今の彼女の怒りは、もはや地殻変動レベルの圧力となって、ボロボロになったタイヤの隙間を埋めるほどの熱量を生んでいます。……ゴミカス、産業廃棄物……。岩属性のわたしから見ても、これほど硬度の高い罵倒は、なかなかお目にかかれませんよ。……高槻くんという『巨大な砥石』が、花ちゃんという宝石を、一番尖った形に研磨してしまったようですね(笑)。……あ、でも花ちゃん、翔太くんが後ろでドン引きしてないかだけ、一応確認したほうがいいですよ?」


若林「エアリさんの親切(?)な忠告が、猛吹雪のバックストレートに虚しく響くゥ!! 視界数メートル、タイヤは限界、精神も限界!! 1位を独走するフリスの背中は依然として遠いが、2位を死守せんとする花、そしてそれを追うカナタと高槻の三つ巴は、もはや理性の外側へと突入だアアアアッッ!!!!」

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