吾妻編第56話 どこか熱い対決
若林「吾妻山山頂を通過ァァァァ!!!!」
ゴオオオオオッ!!
ヴァアアアアアアンッ!!
猛吹雪の高速コーナーで、クリスタの488GTSへ三台が同時に迫る。
ちとせのRZ34。
内藤セリナのR8。
そしてイヨのGRスープラ。
若林「跳ね馬包囲網だアアアア!!!!五位を守るクリスタへ、三台が襲いかかったァァァァ!!!!」
クリスタ・ニールセン「ちょっとぉ!?三人がかりなんて卑怯でしょオオオオ!!!!」
ちとせ「もへ〜……熱くなりすぎだよぉ。少し冷やしてあげるねぇ。」
イヨ「イヨの重力で、地面にぺったんこだよ!」
内藤セリナ「わたしの太陽パワーも忘れないでねーッ☆」
ビュオオオオオッ!!
ギュワアアアアアンッ!!
488の周囲で冷気と重力が重なり、リアタイヤが激しく空転する。
そこへ、さらに高槻のバイパーが接近した。
高槻健永「面白そうじゃねぇか!俺も混ぜろ!!」
クリスタ「全員まとめて蹴散らしてやるわよオオオオ!!!!」
ちとせは窓を開け、左手を外へ伸ばす。
すうううう……。
指先から放たれた極寒が路面を這い、488の進路へ薄い氷を作った。
ちとせ「クリスタお姉さん、力みすぎだよぉ。」
ギャアアアアアアンッ!!
488のフロントが一瞬だけ外へ逃げる。
その隙へ、銀色のRZ34が滑り込んだ。
ゴャアアアアアアッ!!
若林「ちとせが前へ出たアアアア!!!!クリスタの死角から一気に五位を奪ったァァァァ!!!!」
クリスタ「なんで私が、あんな“おじさん”に抜かれるのよオオオオ!!!!」
ちとせ「抜いちゃったぁ。じゃあね〜……もへ〜♪」
RZ34のテールランプが、白い闇の奥へ消えていく。
そのさらに後方。
ヴォオオオオオオンッ!!
黒いウアイラが柊のFL5を抜き去り、そのまま岡田のGR GTへ迫った。
若林「コタローが来たアアアア!!!!今度は岡田のGR GTへ、外側から仕掛けるウウウウ!!!!」
岡田大成「また外からかよ……ッ!」
岡田はGR GTを外側へ寄せ、吹雪の向こうにある崖際へウアイラを追い込む。
岡田大成「その道は潰した。もう前には出させねぇ。」
コタロー「道を決めるのは、お前じゃない。」
コタロー「雪の流れも、横風も……全部見えてる。」
ヒュオオオオオッ!!
ウアイラは片輪を路肩の雪へ乗せながら、速度を落とさず外側を旋回する。
岡田大成「そこを走るのかよ……ッ!」
エアリ「コタローくん、雪が流れる方向を見て横風の強さを読んでるッス!」
エアリ「岡田くんが外を塞いだことで、逆に路肩の雪が圧縮されて短いグリップラインができたッスね!」
若林「黒いウアイラの鼻先がGR GTへ並んだァァァァ!!!!」
岡田大成「簡単に行かせるか!!」
コタロー「なら、最後まで塞いでみろ。」
ギャアアアアアアンッ!!
黒い二台は猛吹雪の中、ミラーが触れそうな距離で並走を続けた。
若林「さらにまさかの三台がサイドバイサイドオオオオ!!!!」
若林「吾妻山頂の道の駅、その目前!!高速ベントからヘアピンへ続く魔の区間へ、柳津雄介、相川美保、眞鍋琉世が横並びで雪崩れ込むウウウウ!!!!」
ギュガガガガガッ!!
ヴォオオオオオオンッ!!
ギャアアアアアアンッ!!
白いM4 DTM Edition。
深い青のR33 GT-R Vスペック。
銀色のランエボIX。
三台はミラーが触れそうな距離で、猛吹雪の中を時速二百キロ以上で突き進む。
路面は凍結し、左右には雪の壁。
わずかな操作ミスでも、相川律と同じ空中遊泳が待っていた。
柳津雄介「眞鍋……そのエボ、どうやってこの雪で姿勢を保ってやがる。」
柳津雄介「俺のM4が旋回で引き離せないとはな……ッ!」
相川美保「お兄ちゃんが落ちた直後に、なんでこんな勝負してるのよぉ!!」
相川美保「でも退かない!相川のGT-Rは、もう一台残ってるんだからッ!!」
眞鍋琉世「この低グリップこそ、エボの戦場だ。」
眞鍋琉世「二人とも、中央を空けろ。」
若林「眞鍋が真ん中から出るウウウウ!!!!」
ヘアピン直前。
柳津は外側から速度を残し、美保はインを閉じる。
その中央で眞鍋は一瞬早くアクセルを戻し、エボの荷重を前へ移した。
ギャギャアアアアッ!!
リアを雪の外側へ振り出しながら、ノーズだけを出口へ向ける。
柳津雄介「先に向きを変えたのか……ッ!」
相川美保「真ん中から曲がるなんて無茶でしょ!?」
眞鍋琉世「曲がるんじゃない。」
眞鍋琉世「滑らせて、出口へ合わせる。」
ドゴオオオオオンッ!!
エボIXが四輪で雪面を蹴り、二台の間から前へ飛び出した。
若林「眞鍋琉世が二台まとめて突破ァァァァ!!!!十五位へ浮上だアアアア!!!!」
エアリ「眞鍋くん、三台の中で一番早く車体を出口へ向けたッス!」
エアリ「柳津くんは旋回速度、美保さんは四駆の加速を狙ってた。でも眞鍋くんは、その二つがアクセルを開ける前にエボを真っすぐにしたッスね!」
その先には、柊蒼真の白いFL5。
眞鍋は勢いを殺さず、その背後へ一気に張り付いた。
ンバアアアアアアッ!!
ギャアアアアアアンッ!!
若林「銀の戦闘機、次は柊のFL5を捉えたァァァァ!!!!」
柊蒼真「なんだ、この加速……ッ!」
柊蒼真「でも、このインは絶対に開けねぇ!!」
眞鍋琉世「開ける必要はない。」
眞鍋琉世「俺がこじ開ける。」
エボIXがブレーキングを遅らせ、FL5の内側へ鼻先を差し込む。
二台は雪を巻き上げながら、ヘアピン出口へ並んだ。
エアリ「柊くんはインを守ってるッスけど、その分だけ車体の向きが窮屈になってるッス!」
エアリ「眞鍋くんは少し外から入って、出口の加速を優先してる。ここは立ち上がりで決まるッスよ!」
若林「白い追跡者対、銀の戦闘機!!十四位争いも激化するウウウウ!!!!」
その一方、最後方。
ビュオオオオオオッ!!
中野伸一のクラウンアルテッツァが、孤独に雪の中を進んでいた。
中野伸一「みんな速すぎるだろ……ッ!」
中野伸一「でも、このまま何もできずに終われるかよ!」
重いセダンの車体は横風に振られながらも、赤いテールランプを消さない。
若林「最後尾、中野伸一!!差は開いている!!それでもクラウンは止まらない!!」
エアリ「中野くん、無理に上位と同じ速度を出さず、タイヤが食いつく場所を探してるッス。」
エアリ「今は遅く見えても、車を壊さず下りへ持ち込めば、まだ前の脱落を拾えるッスよ!」
そして再び五位争い。
ズドオオオオオンッ!!
ギュワアアアアアンッ!!
イヨのGRスープラと、高槻の赤いバイパーが、セリナのR8とクリスタの488GTSを一気に抜き去った。
内藤セリナ「ウソ!?立ち上がりで抜かれたぁ!?」
クリスタ・ニールセン「なによこれ!!タイヤが全然前へ進まないじゃないッ!!」
イヨ「えっへん☆ 雪の上でも、重力でタイヤをぎゅーって押しつければ走れるんだよ!」
高槻健永「ハハハッ!雪ごと吹き飛ばせば道は開くんだよ!!」
バイパーの巨大なトルクが雪を撒き散らし、GRスープラは重力で四輪を路面へ押しつける。
二台は並んだまま、前方を走るちとせのRZ34を捉えた。
エアリ「セリナさんのR8は、タイヤの熱で雪を溶かした後に薄い氷を作っちゃったッス!」
エアリ「クリスタさんもアクセルを開けすぎて、リアが空転してる。その隙をイヨさんと高槻くんが一気に使ったッスね!」
若林「五位集団は完全な大混戦!!吹雪の奥から次に飛び出してくるのは、いったい誰だアアアア!!!!」




