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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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【番外編】内藤セリナの『86伝説』読書感想文 柳津雄介宛編

そして、もう一人どうしても書いておきたい人がいる。柳津さん。私はこの人を読んでいて、最初からずっと思っていた。何なの、このスカした感じ。速い。強い。落ち着いている。そこまではいい。でも私が話しかけても、柳津さんって本当に反応が薄い。というより、ほとんどシカトしてくる。えへへッ✩ 別に私、誰にでも構ってほしいわけじゃないんだけど? ただ、豪邸住みの現役女子高生アイドルがわざわざ話しかけてあげてるのに、何事もなかったみたいに前だけ見てるのはどうなのかなーって思うだけ。


柳津さんは、たぶん自分の世界がかなり強い人なんだと思う。M4 DTM Editionに乗って、自分の走りだけを淡々と続ける。周りが騒いでいても、煽っていても、あまり乗ってこない。そこが強さなのかもしれないけど、私からすると少し腹が立つ。こっちが何か言っても、ちらっと見るだけ。場合によっては本当に見もしない。まるで「好きに言ってろ」って空気を出してくる。ああいう態度をされると、逆にもっと言いたくなる。私はそういう性格なんだから仕方ない。


それに柳津さん、落ち着いてるからって何でも上から見られると思わないでほしい。こっちは現役女子高生アイドルなんだから。仕事もしてるし、人気もあるし、家だって豪邸。普通の高校生が簡単に持てないようなものを、私はちゃんと自分の世界として持ってる。えへへッ✩ 柳津さんが高そうな車で静かに格好つけてても、私は別に驚かないよ。だって、私の家の玄関だけでもかなり広いし、リビングなんて普通に人呼んでイベントできるくらいあるんだから。


こういうことを言うと、柳津さんはたぶんまた無視するんだろうな。


内藤セリナ「柳津さん、私の家って豪邸なんですよ?」


柳津雄介「…………。」


内藤セリナ「聞いてます~~~~~?????」


柳津雄介「…………。」


……ほら。


読んでるだけで腹立ってきた。


でも、正直に言えば、このシカトされる感じがあるからこそ、私は柳津さんに余計に挑発したくなるんだと思う。普通の相手なら、私がお金持ちだって言えば「すごいね」とか「へえ」とか、何かしら反応する。ところが柳津さんは何もない。驚かない。羨ましがらない。悔しがらない。だからこっちも「じゃあもっと言ってやろうかな」ってなる。反応がない相手って、ある意味一番煽りがいがある。


私はたぶん、柳津さんの横に並んだら普通に言うと思う。


内藤セリナ「柳津さん、その車高そうですねー。でも私、欲しかったら普通に買えちゃうかも?」


当然、柳津さんは無視。


それなら続ける。


内藤セリナ「ちなみに私の家、車庫も広いんですよ。柳津さんのM4くらいなら、たぶん奥の方に普通に置けますねー。」


また無視。


ここまで来ると、むしろ私の方が楽しくなってくる。


内藤セリナ「それと、私ってアイドルだから収入もそれなりにあるんですよー。柳津さん、知ってました?」


柳津雄介「…………。」


内藤セリナ「……ほんっとスカしてますねー☆」


たぶんこれでも柳津さんは顔色一つ変えない。そこが本当に腹立つ。でも同時に、そこがこの人の強さなんだと思う。周りから何を言われても、自分の価値をいちいち証明しようとしない。車が高いとか、速いとか、経験があるとか、そういうものを自分からひけらかさない。私みたいに「豪邸住みです」「アイドルです」「お金あります」ってわざわざ言わなくても、自分は自分だって顔をしている。


……悔しいけど、それは少し格好いい。


少しだけね。


ほんの少し。


だからこそ、私はもっと挑発する。


格好いいまま終わらせたくないから。


えへへッ✩ 柳津さん。どれだけ無視しても無駄ですよ。私は無視されればされるほど、もっと話しかけたくなるタイプなんです。レースで横に並んでも、休憩中でも、たぶん普通に言いますから。


内藤セリナ「柳津さん、今日も相変わらずスカしてますねー。」


無視。


内藤セリナ「ちなみに私、昨日も豪邸でゆっくりしてました。」


無視。


内藤セリナ「高級なお菓子も食べました。」


無視。


内藤セリナ「アイドルの仕事も順調です。」


無視。


……ここまで来たら意地だ。


私が勝つか。


柳津さんが最後まで無視し続けるか。


もうレースと関係なくなってる気がするけど、気にしない。


柳津さんは速いし、強いし、落ち着いてる。それは認める。でも、私だってただの騒がしい女子高生じゃない。自分の力で目立って、自分の場所を作って、自分の名前で生きてる。だから、いくら柳津さんがスカした顔でシカトしてきても、私は勝手に引いたりしない。


むしろ、最後まで言ってやる。


内藤セリナ「柳津さん、無視しててもいいですよー? どうせ私の方がお金持ちですからねー?」


そして、最後は笑って締める。


内藤セリナ「おほほほほ♡」


それに、柳津さん。どうせ私のフミッパスライダーに負けるんでしょ? だって、前にフェイントを入れられた時、一発で崩されてたじゃないですか。あれを見た時、私は正直かなり笑った。いつもあんなにスカした顔をして、何を言ってもシカトして、まるで自分だけ別の世界で走ってるみたいな雰囲気を出してるのに、フェイント一つで一気に形勢を持っていかれるんだもん。えへへッ✩ 柳津さん、そういうところあるんですね。思ってたよりずっと人間らしいじゃないですか。


しかも、私のフミッパスライダーって、ただ勢いで抜く技じゃない。相手に「ここで来る」と思わせて、一瞬だけ判断をずらして、その隙にラインを奪う。真正面から力で押すより、相手の読みを外した時の方がずっと気持ちいい。特に柳津さんみたいに、いつも冷静で、自分の判断に自信がありそうな人ほど効いた時の破壊力が大きい。だって、速さで負けるより「読まれた」って方が悔しいでしょ? それなのに柳津さんは、そこでもやっぱり表情を変えない。……いや、そこは少しくらい悔しがってくださいよ。


私が横に並んで、わざと少しだけ仕掛ける素振りを見せる。柳津さんは当然こっちを警戒する。でも私はすぐには行かない。ほんの少しだけ待つ。柳津さんが「来る」と思った瞬間に、逆側へスッと車を動かす。そこで相手の反応が一瞬遅れたら、もう私の勝ち。あとはフミッパスライダーで一気に前へ出るだけ。そう考えると、柳津さんって私からすれば結構わかりやすい相手なのかもしれない。冷静だからこそ、自分の読みが正しいと思い込んだ瞬間に引っかかる。おほほほほほほほ♡


それにしても、本当に柳津さんは反応が薄い。私が「また負けちゃうんじゃないですか?」って言っても無視。「フェイント苦手なんですね」って言っても無視。「今度はもっとわかりやすく引っかけてあげましょうか?」って言っても無視。ここまでシカトされると、普通なら諦めると思う。でも私は逆。もっと言いたくなる。だって、どこまで言ったら柳津さんの顔が崩れるのか気になるじゃないですか。レースで抜くより、その無表情を一回崩す方が難しいかもしれない。


だから私は、もし次に柳津さんと並ぶことがあったら、たぶん最初からかなり意識すると思う。真正面から抜くのもいい。でも、それじゃ面白くない。せっかくならまたフェイントを入れて、あの冷静な判断を一回だけ迷わせたい。柳津さんが私の動きを見て、「今だ」と思って動いたその瞬間に、私が逆を取る。その一瞬だけでも相手の読みを外せたら、たぶん私はかなり満足する。えへへッ✩ だって、いつもスカしてる人ほど、崩した時って気持ちいいんですよ。


もちろん、柳津さんが本当に強いのは認めてる。M4 DTM Editionであれだけ速く走れるし、経験もある。簡単に何度も同じ手へ引っかかる人じゃないと思う。でも、だからこそ面白い。次は警戒してくる。なら、その警戒まで利用する。最初のフェイントを見せて、次は本当に行く。あるいは行くと見せて、また行かない。そうやって少しずつ相手の判断を揺らしていく。結局レースって、車だけじゃなくて相手の頭とも戦ってるんだと思う。


それでも柳津さんは、私がここまで書いてもきっと何も言わないんでしょうね。


内藤セリナ「柳津さん、前にフェイント一発で負けてましたよね?」


柳津雄介「…………。」


内藤セリナ「今度もフミッパスライダーで抜いちゃいますよ?」


柳津雄介「…………。」


内藤セリナ「悔しくないんですかー?」


柳津雄介「…………。」


ほんっとにスカしてる。


でも、まあいいです。


無視したままでも。


次にコースで会った時、私が前へ出ればそれで答えは出るんだから。


柳津さん。今度はちゃんと私の動きを最後まで見ていてくださいね。最初に右へ行くように見せるかもしれない。左へ行くように見せるかもしれない。アクセルを踏むふりだけするかもしれない。そして、柳津さんが「読んだ」と思った瞬間に、その読みごと置いていきますから。


えへへッ✩ だって前にも一発で負けてたんでしょ?


それに、どうせ次も私のフミッパスライダーに負けるんでしょ?


おほほほほほ♡


おわり

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