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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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515/534

吾妻編第53話 バイパーとウアイラ

エアリ「直線は速いッスけど、頂上付近の細かいコーナーでラインが膨らみすぎてる。このままじゃ上位へ戻るのは厳しいッスね。」


若林「事実上の敗北宣言!!高槻、十二位から意地を見せられるかァァァァ!?」


ヴォアアアアアアッ!!


赤いバイパーがV10を轟かせる。


だが立ち上がりでリアが揺れ、わずかに加速が鈍った。


その瞬間――。


ズォオオオオオオッ!!


黒いウアイラが、風を切り裂きながら背後へ現れる。


若林「コタローが来たアアアア!!!!黒い風神が、赤いドラゴンを再び捉えたァァァァ!!!!」


コタロー「見つけたぞ、高槻。」


コタロー「その乱れたライン……風が全部教えてくれた。」


高槻健永「またお前かよ……ッ!」


高槻健永「上位が無理だなんて、勝手に決めるんじゃねぇ!!」


ギャアアアアアアンッ!!


コタローはバイパーのスリップストリームへ潜り込み、出口で外側へ飛び出す。


エアリ「高槻くんがアクセルを開けすぎて外へ膨らんだッス!」


エアリ「コタローくんはその内側で加速を整えて、風の抵抗が少ない位置から一気に並んだッスね!」


若林「バイパー対ウアイラ!!十一位を懸けた最終盤のサイドバイサイドだアアアア!!!!」


若林「ん!?いや、まさかの光景だアアアア!!!!」


若林「コタローのウアイラが抜き去ると思われたその瞬間、高槻健永が猛烈なレイトブレーキングを仕掛けたァァァァ!!!!」


ギギギギギィィィィッ!!


白煙を噴き上げながら、赤いバイパーがイン側へ突っ込む。


コタロー「ウソだろ!?その速度じゃ曲がれねぇぞ!!」


高槻健永「止まれええええッ!!」


高槻健永「上位が無理だと!?まだ終わってねぇんだよオオオオ!!!!」


バイパーはガードレール寸前まで膨らみながらも、強引に向きを変える。


その巨体がウアイラの鼻先を押さえ、イン側を守り切った。


若林「止まったアアアア!!!!高槻、白煙を上げながら順位を奪い返したァァァァ!!!!」


エアリ「いや、今のは普通じゃないッス!」


エアリ「ブレーキの効き方が明らかに異常ッスよ!高槻くん、何か相当いじってるッスね!」


若林「計算された走りではないのかァァァ!?」


エアリ「計算より執念ッス!」


エアリ「フロントを無理やり路面へ押しつけて、曲がり切れないはずの速度を腕でねじ伏せたッス!」


コタロー「面白い。」


コタロー「風だけじゃ抜けないなら、次は力ずくで行く。」


ヴォオオオオオッ!!


黒いウアイラは再びバイパーの背後へ潜り込み、次の勝負へ備えた。


若林「そしてクリスタアアアア!!!!なんという追い上げだァァァァ!!!!」


ドォォォォォォォンッ!!


ズバババババッ!!


ヴォアアアアアッ!!


ギャアアアアアアンッ!!


赤い488GTSが、カナタの86、サテラのエボ7MR、花のVABを猛烈な加速で次々と飲み込む。


腹切カナタ「……またか。」


サテラ「へぇ……ボクの前を横切るなんて、ずいぶんアグレッシブだね。」


山吹花「……は?なに、その赤いマッチョマシーン。」


山吹花「私の花道を横切らないでくれる……?」


そしてクリスタは、ついに先頭のケイマンGT4へ迫った。


キュアアアアアアッ!!


フェラーリのタイヤが路面へ食いつき、白いポルシェのアウト側へ一気に並ぶ。


フリス「……来たようね。フェラーリ。」


フリス「我の前に。」


クリスタ・ニールセン「オラアアアアッ!!これが跳ね馬の芸術的なパワーよ!!」


クリスタ「我なんて気取ってる小娘に、姉の前を走らせるわけないでしょッ!!」


ドギャアアアアアンッ!!


488GTSが高い過給圧を叩きつけ、ケイマンの横から半車身前へ出る。


フリスは冷静にイン側を守った。


しかしクリスタは、フリスが作り出した冷えた路面を避けるように、わずかに乾いた外側だけを選んで加速していた。


フリス「……ッ。」


クリスタ「その氷、外側までは届いてないわよ!!」


フリス「見破ったわね……姉さん……ッ!!」


若林「姉妹対決だアアアア!!!!姉クリスタが、妹フリスの冷気の範囲を読み切ったァァァァ!!!!」


エアリ「クリスタさん、ただパワーで押しただけじゃないッス!」


エアリ「フリスさんがグリップを作る冷えたラインを避けて、熱の残る路面だけを踏んでるッスよ!」


エアリ「488の強烈な加速を、滑らない場所へ正確に乗せた!これは姉だからこそ、フリスさんの癖を知ってる走りッスね!」


クリスタ「いつまで妹に王者の顔をさせておくと思ったのよ!!」


クリスタ「一位は、このクリスタ・ニールセンがもらうわッ!!」


ボボボボッ!!


488GTSのリアから炎が噴き出し、ついにケイマンの前へ出る。


フリス「姉さん……我を抜いた程度で、勝ったと思わないことね。」


若林「21位から先頭へ!!クリスタが大逆転でトップ浮上だアアアア!!!!」


だが、その背後。


水色のエボ7MRを駆るサテラが、前を争う姉妹のラインを静かに見つめていた。


サテラ「二人とも、前しか見えてないね。」


サテラ「ならボクが、その間をもらおうかな。」


バアアアアアアアンッ!!


若林「サテラもまだ諦めていない!!チェッカーまでは、まだ決着しなあああい!!!!」


サテラ「げ……やっぱり来たよ、馬力番長のフェラーリ。」


水色のエボ7MRから、先頭へ躍り出た488GTSを睨む。


サテラ「ボクに勝てると思ってるわけ……?」


だが、そのすぐ前にはフリスの白いケイマン。


静かな冷気をまとった背中に、サテラは一瞬だけアクセルを緩めた。


サテラ「……今はやめとこ。」


サテラ「前にいるフリス、下手に触ったら絶対おっかないからね。」


その直後、バックミラーへ赤いREVIVE 86が映り込む。


サテラ「カナタも来てる……?」


サテラ「あり得ないだろ。NAから百馬力近く上乗せしたターボ仕様でも、所詮は86だぞ……。」


サテラ「なんでまだ、ボクたちについて来られるんだよ……ッ!」


ヴォアアアアアアッ!!


赤い戦闘機はタイヤを労わりながらも、エボの背後から離れない。


若林「サテラ、無理な仕掛けは避ける構えか!!」


若林「暴れるクリスタと、路面を支配するフリス!!二人の女王が激突する直後で、青いエボ7MRが三位を守りに入ったァァァァ!!!!」


エアリ「サテラくん、前の二台へ近づきすぎないように、ブレーキ地点を少し手前へずらしてるッス!」


エアリ「クリスタさんが強引にラインを変えれば巻き込まれるし、フリスさんの冷えた路面へ乗ればグリップを失うッスからね!」


エアリ「今は旋回速度を少し落としてでも、出口で車体を安定させて三位を守る。かなり現実的な判断ッス!」


白いケイマンの中で、フリスは一度だけ深く息を吐いた。


フリス「落ち着け、我よ。」


フリス「静かな甘い雪のように……心を戻せ。」


しゅうううう……。


荒れていた冷気が、ケイマンの周囲へ薄く整えられていく。


若林「フリスも冷静さを取り戻した!!そしてその後ろでは、サテラとカナタが表彰台を懸けて距離を縮めているゥゥゥ!!!!」


さらに後方。


若林「さあ、肝心のバイパーへウアイラが迫るウウウウ!!!!」


ヴォオオオオオッ!!


ズォオオオオオオッ!!


赤いバイパーと黒いウアイラ。


その前方には、岡田の黒いGR GTと古賀加奈子の赤いM5が接近していた。


若林「十位から十三位までが一つの塊になったァァァァ!!!!」


若林「岡田!古賀!高槻!コタロー!!四台が最終セクションへ雪崩れ込む、巨大な四つ巴バトルだアアアア!!!!」


岡田大成「まとめて来るなら、全員処理する。」


古賀加奈子「後ろで勝手に潰し合ってくれると助かるわ。」


高槻健永「誰が潰れるかよ!!」


コタロー「前の二台ごと抜く。」


ギャアアアアアアンッ!!


ブオオオオオオンッ!!


四台は互いのラインを奪い合いながら、最終区間へ一斉に飛び込んだ。


ギャアアアアアアンッ!!


赤いM5 G90が、2.4トンの巨体でコース中央を塞ぐ。


古賀加奈子「この重さごと壁にしてやる!!十位は渡さないッ!!」


岡田大成「なら、そのロールの隙をもらう。」


黒いGR GTがM5のインへ鼻先を差し込む。


その背後から、高槻のバイパーとコタローのウアイラも一気に迫った。


若林「十位から十三位まで四台が密集!!巨大な鉄の塊となって山頂へ突入するウウウウ!!!!」


そこへ――。


ドギャンッ!!


黄色いスイスポが、ウアイラの真横へ飛び込む。


若林「伊藤が来たアアアア!!!!巨体ばかりの集団へ、軽量コンパクトが割って入ったァァァァ!!!!」


コタロー「伊藤!そこに入ったら曲がれねぇだろ!!」


伊藤「邪魔でも何でも、ここが俺の道だ!!」


エアリ「伊藤くん、ウアイラが向きを変える前にインを塞いだッス!コタローくんのラインを完全に消したッスね!」


若林「M5、GR GT、バイパー、ウアイラ、そしてスイスポ!!五つ巴の大乱戦だアアアア!!!!」


一方、先頭集団。


キィィィィィィッ!!


青いVABが、カナタの86とサテラのエボ7MRの隙間へ突っ込む。


山吹花「ざぁ〜こ♡ 二台まとめて退きなさいッ!!」


若林「山吹花、一気に二台抜き!!フリスのケイマンへ再び迫ったァァァァ!!!!」


しかし、その直後。


先頭を走っていたクリスタの488GTSが、五連ヘアピンで大きくラインを乱す。


ドギャアアアアンッ!!


若林「クリスタが一位から五位へ急降下アアアア!!!!」


クリスタ「誰が五位で終わるもんですかッ!!ぶつけてでも戻るわよ!!」


488GTSが前方へ荒々しく鼻先を振る。


その左右から、ちとせのRZ34とイヨのGRスープラが迫った。


ちとせ「もへ〜……暴れすぎると危ないよぉ。」


イヨ「クリスお姉さん、イヨの重力でぺったんこだよ!」


クリスタ「まとめて来なさいよオオオオ!!!!」


ヴォオオオオオンッ!!


ギュワアアアアアンッ!!


若林「クリスタを挟んで、RZ34とGRスープラが並んだァァァァ!!!!五位から七位まで三台横一線!!ゴールまで残り五十六キロ、まだ何が起きるか分からなあああい!!!!」

次回 山吹花の走馬灯


山吹花「なに、これ……。」

「前が……見えない……ッ。」


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