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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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514/534

吾妻編第52話 ファイナルラップ突入

エアリ「…マッチョみたいな加速で来るんじゃねェよオオオオ!!!!」


クリスタ「誰がマッチョよオオオオ!?」

その頃――。


どこか遠くの静かな公園を、白いガラスのような冷気をほのかに漂わせながら、一人の少女がゆっくりと歩いていた。


柳津カリン。


亜麻色の髪を夜風に揺らし、その手には、透明な氷のガラスケースをはめた銀色のスマホが握られている。画面の中では、吾妻GTの激しいバトルが映し出され、その隣には月明かりを受けて鈍く輝く銀色のフェラーリ・ローマが静かに停まっていた。


柳津カリン「お兄ちゃん……美保ちゃんの33に張り付いてる……ッ」


カリンの澄んだ瞳が、画面の中の白いM4をじっと追い続ける。激しく火花を散らしながらも、一歩も引かない兄の走り。その姿に、胸の奥がぎゅっと締めつけられるような想いが広がっていく。


柳津カリン「ここまで来たのなら……どんな順位でもいいから、最後までゴールしてね……お兄ちゃん……ッ」


その小さな祈りとともに、カリンの周囲へふわりと白い息が溶けていく。公園の静けさとは裏腹に、スマホの向こうではなおも、柳津雄介のM4が、青いR33の背後へ獲物のように張り付き続けていた。


若林「そして肝心の赤い戦闘機の後方!!ちとせのRZ34へ、柊蒼真の白いFL5が迫ってきたアアアア!!!!」


若林「さらにその後方!!内藤セリナ、古賀加奈子、イヨのGRスープラ!!そして岡田のGR GTまで来たアアアア!!!!」


何台ものマシンが、下りのバックストレートへ雪崩れ込む。


その最後尾付近で――黒いパガーニ・ウアイラが、岡田のGR GTへ並びかけた。


グォアアアアアアアッ!!


ヴォオオオオオオンッ!!


若林「岡田大成のGR GTと、コタローのウアイラがサイドバイサイドオオオオオ!!!!」


コタロー「直線なら、こっちが上だ。」


V12の咆哮を響かせ、ウアイラがアウト側から半車身前へ出る。


しかし岡田は焦らない。


バックストレート終端のブレーキング直前まで、GR GTを中央へ残した。


岡田大成「前へ出るのが少し早い。」


ギャギャアアアアッ!!


岡田はコタローより一瞬遅くブレーキを踏み、イン側へ鋭く飛び込む。


ウアイラは速度を残しすぎたまま外側へ膨らみ、出口でアクセルを踏み切れない。


コタロー「……チッ。」


岡田大成「そこ、もらうぞ。」


ドゴオオオオオンッ!!


GR GTが内側から再び前へ出る。


若林「岡田が順位を取り戻したアアアア!!!!コタローのオーバーテイクは失敗!!GR GTが意地の差し返しだァァァァ!!!!」


エアリ「コタローくんは直線の加速で先に出たッスけど、ブレーキングで外側へ残されちゃったッス!」


エアリ「岡田くんは抜かれても慌てず、次のコーナーで自分がイン側を取れる位置をずっと残してたッスね!」


エアリ「ウアイラは速すぎるぶん、進入速度を上げすぎるとラインが膨らむッス。岡田くんはそこを読んで、減速と旋回を一回で決めたんスよ!」


コタロー「まだ終わってねぇ。」


岡田大成「なら、次も来い。」


ギャアアアアアアンッ!!


黒いウアイラは再びGR GTの背後へ潜り込み、次の勝負へ牙を研いだ。


ちとせ「柊く〜ん……おじさんと一緒に下へ落ちちゃったの〜?」


ちとせ「そろそろベンチで休んだ方がいいんじゃないの〜……?」


柊蒼真「……そうか。」


白いFL5が一気にイン側へ寄る。


柊蒼真「そっちがその気なら、俺も容赦しねぇよオオオ!!!!」


ドガアアアアアンッ!!


バアアアアアアアンッ!!


VTECターボが高回転域へ突入し、FL5がRZ34の横へ弾けるように飛び出した。


ちとせ「……ッ!!」


若林「VTECアアアアアアアアアア!!!!!」


キュアアアアアアアンッ!!


ギャオオオオオオッ!!


白いFL5が軽いノーズを鋭くねじ込み、ちとせの銀色のZへ並ぶ。


柊蒼真「休むのは、お前を抜いてからだ!!」


ちとせ「もへ〜……急に元気になったねぇ。」


若林「今、先頭の山吹花!!続いてフリス、サテラ!!三台が激しい火花を散らしながら、コントロールラインを通過したアアアア!!!!」


青いVAB、白いケイマンGT4、水色のエボ7MR。


三台のテールランプが、ほとんど間を空けず吾妻の先へ消えていく。


そして――その六秒後。


ギャアアアアアアンッ!!


ズバババババッ!!


若林「赤い戦闘機が来たアアアア!!!!腹切カナタ!!REVIVE 86が単独四位で姿を現したァァァァ!!!!」


ターボ化された86のエンジンは、最後まで回転を落とさない。


だが前方の三台は、すでに遠い。


腹切カナタ「……六秒か。」


カナタはステアリングを握ったまま、霞む三台の背中を見つめた。


一周目には確かに削れていたはずの差。


しかし最終ラップへ入った花たちは、さらにその先の速度へ踏み込んでいた。


腹切カナタ「俺が遅くなったわけじゃない。」


腹切カナタ「あいつらが、また速くなったんだ。」


コーナーごとに荒れたフロントタイヤ。


狙ったラインからわずかに外へ逃げるノーズ。


それでもカナタはアクセルを緩めず、86をまっすぐゴールへ向ける。


腹切カナタ「今の俺じゃ、あそこには届かない。」


腹切カナタ「でも……見えなくなったわけじゃない。」


赤い86のフロントガラス越しに、三台の小さなテールランプがまだ揺れていた。


腹切カナタ「先生。」


腹切カナタ「次は、あの六秒を全部削る。」


腹切カナタ「86。まだ終わりじゃないぞ。」


ヴォアアアアアアッ!!


若林「腹切カナタ、四位でチェッカーフラッグ!!表彰台には届かなかった!!だが最後まで赤い戦闘機の火は消えなかったァァァァ!!!!」


エアリ「カナタくん、終盤はフロントタイヤがかなり厳しかったッス。」


エアリ「それでもブレーキを早めすぎず、アンダーステアが出る直前で速度を調整して、六秒差まで踏みとどまったッスね。」


若林「この敗北は、次へつながるのでしょうか!?」


エアリ「つながるッスよ。」


エアリ「今のカナタくんは、トップ三台との差がどこで生まれたかを全部覚えたはずッス。」


エアリ「進入速度、タイヤの使い方、立ち上がりの加速。その六秒は、次に詰める場所が六秒分見つかったってことッス!」


若林「四位、腹切カナタ!!敗北を抱えた赤い戦闘機が、次なる戦いへ向けてゴールしたアアアア!!!!」


若林「先頭、山吹花!!その背後からフリスのケイマンGT4が再び迫るウウウウ!!!!」


キィィィィィィィンッ!!


花が最終区間へ向けてWRX STIを加速させた、その直後。


白いケイマンが、誰も使おうとしなかった汚れたイン側へ一気に飛び込んだ。


山吹花「なっ……!?そこ、砂とタイヤかすだらけでしょ!!」


山吹花「そんなラインで曲がれるわけ――」


ギャアアアアアアッ!!


フリスはブレーキをわずかに残したまま、ケイマンの荷重を前輪へ移す。


ミッドシップの重心を軸に車体を鋭く回頭させ、滑りかけたリアをアクセルで押さえ込んだ。


エアリ「フリスさん、最初からイン側で曲がり切るつもりじゃないッス!」


エアリ「汚れた路面で一度リアを滑らせて、ケイマンの向きを強引に出口へ合わせたッスよ!」


若林「滑ることまで計算に入れていたのかアアアア!?」


エアリ「はいッス!普通なら速度を落とすところを、フリスさんは姿勢を変えるために滑りを使ったッス!」


白いケイマンの鼻先が、青いVABの左フェンダーへ迫る。


残された隙間は、わずか数十センチ。


フリス「花。」


フリス「先頭へ立った程度で、我から逃げ切ったつもりか?」


山吹花「逃げてなんかないわよ……ッ!」


花はアウト側へ膨らみかけたVABを押さえ込み、四輪へ一気に駆動力を掛ける。


ドゴオオオオオンッ!!


青いVABが立ち上がりで前へ出る。


しかしフリスもアクセルを戻さず、WRXのドア横へケイマンを並べた。


フリス「お前の覚醒も、女王の力も関係ない。」


フリス「我はただ、お前より先へ行く。」


若林「並んだアアアア!!!!山吹花のWRX STIとフリスのケイマンGT4!!最終区間を前に、完全なサイドバイサイドだアアアア!!!!」


ギャアアアアアアンッ!!


キィィィィィィンッ!!


青いVABは四輪駆動の加速で押し切ろうとする。


対する白いケイマンは、軽い車体と鋭い旋回で次の切り返しへ先に鼻先を入れようとする。


山吹花「しつこいのよ……ッ!私がこのまま勝つって決めたの!!」


フリス「勝利は、決めるものではない。」


フリス「最後まで奪い続けた者だけが、手にするものだ。」


若林「山吹花がわずかに前!!だがフリスは離れない!!まだチェッカーまでは距離がある!!この勝負、最後の最後まで決着しなあああい!!!!」


そのさらに後方。


水色のエボ7MRを操るサテラも、二台が互いにラインを潰し合う瞬間を見逃してはいなかった。


サテラ「二人だけで終わらせるなよ。」


サテラ「ボクもまだ、ここにいるからなアアア……ッ!!!!」


グバアアアアアアアンッ!!


三台のエンジン音が重なり、吾妻の山道を激しく震わせる。


先頭は花。

その真横にフリス。

そして背後からサテラ。


勝負はまだ、コントロールラインへすら届いていなかった。


福島県田村市――「HURUTA WORK」。


静かな作業場で、複数のモニターを見つめる男がいた。


古田のりあきに似た顔立ち。


だが瞳は潤み、表情は常にぴえん。


人呼んで、古田ぴえあき。


古田ぴえあき「頼むよ、花ちゃん……昔みたいに戻ってくれよ。ぴえん。」


古田ぴえあき「カナタ、伊藤……あの子を止めてやってくれ。」


ハンカチを握りしめたまま、彼は花とフリスの激闘を見守っていた。


その頃、後方集団では――。


若林「白いGRスープラが、ちとせのRZ34へ迫るウウウウ!!!!」


ギュワアアアアアンッ!!


イヨ「ちとせ、見つけたよ!イヨ、今日は本気なんだから!」


ちとせ「もへ〜……イヨちゃん、ずいぶん元気だねぇ。」


イヨ「その白いZ、ピンクの重力でぺったんこにしちゃうよ!」


若林「氷の獣神対、重力の少女!!白い二台が激突するウウウウ!!!!」


だが、そのさらに後方。


ドギャアアアアアンッ!!


真紅の488GTSが、凄まじい速度で集団を飲み込んでいく。


若林「クリスタだアアアア!!!!最下位付近から一気に七位!!十四台抜きだァァァァ!!!!」


クリスタ・ニールセン「誰が下位で終わるって言ったのよ!!」


クリスタ「全部まとめて抜いてやるわッ!!」


フェラーリはFL5、スイスポ、ウアイラを次々と突破。


さらにイヨのGRスープラへ激しく迫った。


イヨ「な、なにこのお姉さん!?速すぎるよぉー!!」


クリスタ「どきなさい!!跳ね馬の道を塞ぐんじゃないわよッ!!」


ガギィィィンッ!!


二台が接近する。


だがイヨは咄嗟にブレーキを遅らせ、アウト側へ逃げた。


勢い余った488はリアを滑らせ、GRスープラが再び前へ出る。


エアリ「イヨさん、フェラーリが突っ込みすぎるのを読んだッス!」


エアリ「外へ逃げながら減速して、オーバーステアした隙に差し返したッスね!」


若林「だがクリスタは止まらない!!ちとせを抜き、ついにカナタのREVIVE 86へ迫ったァァァァ!!!!」


キィィィィィィンッ!!


クリスタ「見つけたわ、腹切カナタ!!」


クリスタ「本宮の借り、ここで返してあげる!!」


腹切カナタ「クリスタか……ッ。異常な速さだな。」


腹切カナタ「でも、この86も前とは違う。簡単には譲らない。」


赤い86と真紅の488が並び、吾妻の山道へ飛び込む。


若林「赤い戦闘機対、暴れる跳ね馬!

四位争いが始まったアアアア!!!!」


エアリ「でも、正直に言わせてもらうッス。」


エアリ「あのフェラーリ、パワーで割り込みすぎッスよ。」


若林「まさかの苦言かアアアア!?」


エアリ「…マッチョみたいな加速で来るんじゃねェよオオオオ!!!!」


クリスタ「誰がマッチョよオオオオ!?」


怒ったクリスタがアクセルを踏みすぎ、488のリアが大きく流れる。


ギャアアアアアアンッ!!


腹切カナタ「……ラインが乱れた!

今だァ!」


カナタは一瞬の隙を逃さず、86をイン側へ滑り込ませる。


ブオオオオンッ!!!


クリスタ「......なッ!????」


腹切カナタ「悪いな、クリスタ。」


ヴォアアアアアッ!!


若林「カナタが差し返したアアアア!!!!エアリの一言で跳ね馬が乱れ、赤い戦闘機が四位を死守したァァァァ!!!!」

「さあ、フェラーリの前に出ていくのかああああ!!??」

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