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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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512/534

吾妻編第51.5話 VTEC!!!!

ちとせ「柊く〜ん……おじさんと一緒に下へ落ちちゃったの〜?」


ちとせ「そろそろベンチで休んだ方がいいんじゃないの〜……?」


柊蒼真「……そうか。」

若林「そして肝心の赤い戦闘機の後方!!ちとせのRZ34へ、柊蒼真の白いFL5が迫ってきたアアアア!!!!」


ちとせ「柊く〜ん……おじさんと一緒に下へ落ちちゃったの〜?」


ちとせ「そろそろベンチで休んだ方がいいんじゃないの〜……?」


柊蒼真「……そうか。」


白いFL5が一気にイン側へ寄る。


柊蒼真「そっちがその気なら、俺も容赦しねぇよオオオ!!!!」


ドガアアアアアンッ!!


バアアアアアアアンッ!!


VTECターボが高回転域へ突入し、FL5がRZ34の横へ弾けるように飛び出した。


ちとせ「……ッ!!」


若林「VTECアアアアアアアアアア!!!!!」


キュアアアアアアアンッ!!


ギャオオオオオオッ!!


白いFL5が軽いノーズを鋭くねじ込み、ちとせの銀色のZへ並ぶ。


柊蒼真「休むのは、お前を抜いてからだ!!」


ちとせ「もへ〜……急に元気になったねぇ。」


若林「RZ34対FL5!!大排気量トルクと高回転VTECターボが、赤い86の背後で真っ向から激突したアアアア!!!!」


ンバアアアアアアッ!!


FL5のVTECターボが、ちとせの耳元で甲高く吠える。


ちとせ「そのエンジン……うるさいんだけど。」


その声だけで、周囲の空気が一気に凍りついた。


ゴォォォォォォッ!!


RZ34の周囲へ極寒の冷気が噴き上がり、白いFL5の視界を薄い氷霧が覆う。


柊蒼真「……ッ!?」


ちとせ「静かに走れないなら……おじさんが黙らせてあげるねぇ。」


ギャオオオオオオンッ!!


銀色のZがトルクを爆発させ、FL5の横から強引に前へ出た。


若林「ちとせの声が凍ったアアアア!!!!VTECの咆哮に、極寒の獣神が牙を剥いたァァァァ!!!!」


腹切カナタ「後ろで、ちとせさんと柊がやり合ってるのか……ッ?」


バックミラーの奥で、銀色のZと白いFL5が激しく入れ替わる。


だがカナタは、すぐに視線を前へ戻した。


腹切カナタ「少し加速したいけど……そろそろタイヤが荒れてきたな。」


キュルルルルッ!!


次のコーナーへ切り込んだ瞬間、赤い86のフロントがわずかに外へ逃げる。


腹切カナタ「イメージより、ラインが膨らむ……。」


もう一度ステアリングを切り足す。


それでもノーズは、狙ったクリッピングポイントへ届かない。


腹切カナタ「アンダーステアが始まってきたのか……ッ?」


若林「赤い戦闘機に異変!!腹切カナタ、コーナーでわずかに外へ膨らんだアアアア!!!!」


エアリ「フロントタイヤがかなり厳しくなってるッス!溝落としと強いブレーキングを繰り返した影響が出てきたッスね!」


エアリ「ここで無理に速度を上げれば、さらに前輪を滑らせて曲がらなくなるッスよ!」


腹切カナタ「前を追うには速さがいる。」


腹切カナタ「でも今は……タイヤを壊さない速さが必要だ。」


カナタはアクセルを一瞬だけ戻し、86の荷重を前へ移す。


赤い戦闘機は乱れたラインを静かに修正しながら、次のコーナーへ向かった。


柊蒼真「……ここで勝てなきゃ、エアリさんにも……俺にも悔いが残るッ!!」


ンバアアアアアアッ!!


白いFL5が高回転の咆哮を響かせ、ちとせのRZ34へ再び食らいつく。


ンバアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!


若林「柊蒼真、ここで意地を見せるウウウウ!!!!」


エアリ「あ、そういえば言ってなかったッスね。」


エアリ「柊くん、普段は私のところで一緒に車をいじりまくったり、テスト走行を何度もしてるんスよ!」


若林「なんとォォォ!?エアリ直系のセッティングだったのかアアアア!!!!」


エアリ「フロントの入り方も、立ち上がりでどこまでアクセルを踏めるかも、何度も二人で詰めたッス!」


エアリ「だから今の柊くんは、FL5が一番速く曲がれる瞬間を身体で覚えてるッスよ!」


柊蒼真「この一台は……俺だけの力じゃねぇ。」


柊蒼真「だから絶対、ここで終われねぇんだよオオオ!!!!」


ギャアアアアアアンッ!!


FL5は鋭くインへ切り込み、銀色のZへ再び並びかけた。


エアリ「柊くんの、この砂を切り裂くみたいなラインの鋭さ……私ですら惚れてしまったんスよ……ッ!!」


白いFL5は、コーナー進入で一度だけ車体を沈めると、そのまま最短の軌道へ鋭く滑り込んでいく。


余計な修正舵は一切ない。


フロントタイヤが路面を噛んだ瞬間だけ、刃物のように向きを変えていた。


エアリ「荷重が前へ乗る一瞬を逃さず、ノーズをインへ刺してるッス!」


エアリ「この切れ味……すごすぎるッスよ!!」


ンバアアアアアアッ!!

ンバアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!


VTECターボの咆哮とともに、FL5がRZ34の背後へさらに迫る。


銀色のZのミラーいっぱいに、白いボンネットが大きく映り込んだ。


ちとせ「……やばい。」


ちとせ「どんどん差が詰まってきてるねぇ〜……。んばぁ~てうるさ~い♪」


先ほどまで余裕を浮かべていたちとせの声が、ほんの少しだけ低くなる。


直線では引き離せる。


だがコーナーへ入るたび、柊のFL5は削り取るように距離を縮めてきた。


ちとせ「柊くん……思ってたより、ずっとしつこいなぁ。」


柊蒼真「まだだ……ッ!」


柊蒼真「この程度の差なら、次で全部消せる!!」


ギャアアアアアアンッ!!


FL5は再びイン側へ車体を寄せ、RZ34の逃げ道を狙う。


若林「柊蒼真が完全に捕まえたアアアア!!!!銀色のZの背後へ、白いFL5が刃のように突き刺さるウウウウ!!!!」


ちとせ「もへ〜……。」


ちとせ「おじさん、今度こそ本気で逃げないと危ないかもねぇ。」


銀色のRZ34が立ち上がりでトルクを解放する。


しかし白いFL5も、わずかたりとも離れなかった。


若林「先ほどまで先頭争いを繰り広げていたものの、一気に順位を落としてしまったこの二台!!」


若林「だが、このまま終わるようなマシンではない!!絶対に見逃せなあああい!!!!」


ギャギャアアアアアッ!!


ンバアアアアアアアアッ!!

ンバアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!


白いFL5がブレーキングでRZ34のイン側へ飛び込み、フロントタイヤを激しく鳴らす。


柊は限界寸前まで減速を遅らせ、車体が外へ逃げる前にノーズをクリッピングポイントへ突き刺した。


ちとせ「……ッ。」


銀色のZのすぐ横へ、FL5の白いフェンダーが並ぶ。


柊蒼真「捕まえたぞ、ちとせ!!」


ちとせ「柊くん……本当に休ませてくれないねぇ。」


次の瞬間、ちとせはステアリングを戻しながらアクセルを深く踏み抜いた。


ゴオオオオオオオッ!!!!


RZ34のリアタイヤが路面を押し潰し、強烈なトルクで車体を前へ撃ち出す。


一度は並んだFL5だったが、コーナー出口から伸び始めた銀色のZが半歩だけ先行した。


若林「ちとせが立ち上がりで押し返すウウウウ!!!!大排気量ターボの一撃で、FL5を再び後方へ追いやったァァァァ!!!!」


エアリ「でも柊くん、離れてないッス!」


エアリ「進入ではFL5、出口ではRZ34!二台がコーナーごとに得意な場所を奪い合ってるッスよ!!」


ンバアアアアアッ!!


柊はすぐさまRZ34のスリップストリームへ潜り込み、再び距離を詰めていく。


ちとせ「もへ〜……まだ来るんだぁ。」


バックミラーを埋め尽くす白いFL5。


ちとせの穏やかな瞳に、冷たい闘志が再び宿った。


若林「野生のVTECが来たアアアアア!!!!」

UBAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


ンバアアアアアアアアッ!!


白いFL5がRZ34のイン側へ飛び込み、銀色のZと完全に横並びになる。


若林「サイドバイサイドだアアアアア!!!!高回転の白い猛獣が、極寒の獣神へ噛みついたァァァァ!!!!」


エアリ「あ!ここでライブ配信を見てる皆さんにも、VTECについて説明するッス!」


二台がミラー同士を重ねるほど接近する中、エアリはモニターへ身を乗り出した。


エアリ「VTECは、エンジンの回転数に合わせてバルブの動かし方を切り替えるホンダの仕組みッス!」


エアリ「低い回転では扱いやすさを重視して、高回転へ入ると空気をたくさん吸える動きへ切り替わるんスよ!」


エアリ「だから回転を上げた時に、エンジンの音と加速感が一気に鋭くなるッス!」


ンバアアアアアアッ!!


柊のFL5が高回転を維持したまま、RZ34の横でさらに半車身前へ出る。


エアリ「ただし、今のFL5は昔の自然吸気VTECとは違ってターボ付きッス!」


エアリ「VTECだけじゃなく、ターボの加速と高性能なシャシーまで組み合わさってる!だからコーナー出口でも、この勢いが落ちないんスよ!!」


ちとせ「……うるさいだけじゃなかったんだねぇ。」


柊蒼真「今さら気づいたか!!」


ギャアアアアアアンッ!!


若林「VTECターボ全開!!白いFL5が銀色のRZ34へ、再び牙を突き立てるウウウウ!!!!」


若林「さらにその後方!!横から黄色いR8が来たアアアア!!!!」


ヴァアアアアアアアッ!!


低く鋭いV10サウンドを響かせ、内藤セリナのR8が二台の背後へ一気に迫る。


内藤セリナ「えへへッ☆ お待たせ、ちとせちゃん!」


内藤セリナ「今から叩き潰しに行くからねー☆」


黄色いR8はアウト側へ車体を振り、FL5とRZ34が争う隙を突いて加速を開始した。


若林「アウディ四輪駆動の象徴、quattroシステム!!フルタイム4WDが路面を掴み、猛烈な勢いで迫ってきたアアアア!!!!」


四輪へ駆動力を伝えたR8は、姿勢をほとんど乱さない。


コーナー出口からアクセルを深く踏み込み、黄色いボディを弾丸のように前へ押し出していく。


エアリ「セリナさん、二台が互いにラインを潰し合ってる間に、外側で速度を残してるッス!」


エアリ「quattroの安定したトラクションなら、多少路面が荒れててもアクセルを早く開けられるッスね!」


ちとせ「もへ〜……。」


バックミラーへ映る黄色いR8が、急速に大きくなる。


ちとせ「また厄介なのが、後ろから来てるねぇ……ッ。」


柊蒼真「今度はR8かよ……!」


内藤セリナ「二人とも、仲良く並んでてねー☆」


ヴァアアアアアアッ!!


若林「RZ34、FL5、そしてR8!!三台が一つのコーナーへ殺到するウウウウ!!!!」

UBAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

ンバアアアアアアアアアアア!!!!


若林「さらにそこから五秒後方……ッ!!」


若林「うわあああ!?GRスープラじゃなあああい!!赤いM5、古賀加奈子がじわじわと攻めてきたアアアア!!!!」


ギャアアアアアアアッ!!


ブオオオオオオンッ!!


赤いBMW M5が、プリズムホワイトのGRスープラのアウト側へ並ぶ。


重量級とは思えない鋭い減速から、四輪へ強烈な駆動力を伝え、コーナー出口で一気に前へ出た。


若林「GRスープラが抜かれたアアアア!!!!古賀加奈子、豪快な立ち上がりで順位を奪ったァァァァ!!!!」


イヨ「……イヨ、抜かれた……ッ!?」


エアリ「加奈子さん、進入で無理に仕掛けなかったッス!」


エアリ「イヨさんがインを守って速度を落とした間に、M5は外側の広いラインで向きを変えてたッスね!」


エアリ「出口では先に車体をまっすぐにして、四輪駆動と大トルクを全部加速へ使った!あれならGRスープラでも抑え切れないッス!」


イヨ「むぅ……大きいのに、曲がるの速い……!」


古賀加奈子「重いから遅いなんて、誰が決めたのかしら。」


ブオオオオオオンッ!!


赤いM5はさらに前方のR8たちを捉え、重厚な車体を揺らすことなく追撃を開始した。


柊蒼真「いけえええええッ!!!!!」


ンバアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!


VTEC!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


白いFL5が高回転を叩きつけ、RZ34の横へ一気に並びかける。


若林「ンバアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!

ンバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!

UBAHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


エアリ「うるさいッスアアアア!!!」

「この実況席、私の砂の風で乾き切らせてあげるッスか……?」


ザザザザザザザザッ!!


ゴオオオオオオオッ!!


エアリの周囲から巻き上がった砂の風が、実況席を一気に包み込む。


マイクへ細かな砂粒が叩きつけられ、若林の髪と原稿が激しく舞い上がった。


若林「うわああああ!!口の中が砂だらけだアアアア!!!!」


エアリ「少しは音量を下げるッス!!」


若林「ですがVTECは止まらなあああい!!!!」


ンバアアアアアアッ!!


実況席が砂嵐に飲まれる中、白いFL5はなおも銀色のZへ食らいつき続けた。


そこへ――。


ブツッ!!


全レーサーの無線へ、岡田大成の声が一斉に割り込んだ。


岡田大成「……何やってるんですか、ちとせさん。柊ごときに、そこまで熱くなって。」


ちとせ「えー、だってぇ〜……☆」


岡田大成「火がついたら、そこで負けですよ……ッ?」


ちとせ「……へ?」


その一言だけを残し、通信は突然途切れた。


ブツンッ。


ちとせの表情から、わずかに笑みが消える。


バックミラーには、なおも迫る白いFL5。


ちとせ「火がついたら……負け?」


銀色のRZ34を包んでいた冷気が、ゆっくりと静まり始めた。


柊蒼真「なんだ……急に動きが変わった?」


ちとせ「もへ〜……。」


ちとせ「岡田くん、嫌なところ突いてくるねぇ。」


さっきまで柊を意識していた視線が、再び前方だけへ戻る。


ちとせ「じゃあ、おじさん……冷たいまま勝とうかなぁ。」


ゴオオオオオオッ!!


RZ34は挙動を乱さず、滑らかな加速で次のコーナーへ向かった。


内藤セリナ「なに……ッ? 岡田くん!!」


黄色いR8のステアリングを握るセリナの頬が、ぴくりと引きつった。


内藤セリナ「えへへ……アンタのその台詞ね〜....私にも聞こえてるのよオオオオオ!!!!」


内藤セリナ「あの時の恨みは、ここで返すんだからアアアア!!!!ゴールまで絶対に抜かさねエエエエエ!!!!」


ドンッ!!


ヴァアアアアアアアッ!!


R8のV10が怒りに呼応するように咆哮し、四輪で路面を蹴り飛ばす。


相馬戦で岡田のカローラに刻まれた記憶。


その屈辱が、セリナの中で再び燃え上がっていた。


※相馬編第103話参照


内藤セリナ「あの時のカローラに、私は……私はアアアアアア!!!!」


若林「内藤セリナ、過去の因縁まで一気に再燃だアアアア!!!!」


内藤セリナ「岡田アアアア!!さっさとこっちまで来いよオオオオオ!!!!

GRスープラと、そこのクソ加奈子を抜いて来やがれアアアア!!!!」


古賀加奈子「……今、私まで巻き込んだわね?」


イヨ「イヨもクソって言われた……?」


ブツッ。


内藤セリナ「うるさああああい!!!!」


ヴァアアアアアアアッ!!


黄色いR8は怒りのまま加速し、ちとせと柊の争いへ猛烈に接近していった。

次回 ファイナルラップ突入

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