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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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510/534

吾妻編第50話 吾妻GT!包囲戦!!!

若林「アアッ……赤い戦闘機だアアアアアアア!!

いつの間にか、こんなところまで這い上がってきていたァァァ!!!!」


若林「腹切カナタのREVIVE 86が、獣神ちとせのRZ34、その懐へ飛び込んだアアアア!!!!」


ギャアアアアアアンッ!!


バシュウウウウンッ!!


運営の指示を受け、ちとせが減速した一瞬。


カナタは迷わず86を右車線へ振り、RZ34の横へ並びかけた。


舞台はR115荒井バイパス。片側二車線の高架区間だが、中央には冷たい鉄格子が連なり、二台が使える幅はほとんど残されていない。


ちとせ「もへ〜……みんな、おじさんが減速したところばっかり狙うんだねぇ……。」


虚空を見つめていたブルーグレーの瞳が、真横から迫る赤い86の熱気を捉える。


ちとせ「……カナタくんまで来たのぉ?」


若林「ここは狭ああああい!!鉄格子とRZ34の間、わずか一台分!!行けるのかカナタアアアア!!!!」


エアリ「……ッ!」


中継席のエアリも余計な言葉を挟まず、モニターへ身を乗り出した。


シャコンッ!!


ヴォアアアアアアアッ!!


86ターボがギアを叩き上げ、RZ34の太い加速へ食らいつく。


ちとせもアクセルを踏み直した。


ドゴオオオオオオンッ!!


銀色のZと赤い86が、鉄格子すれすれのまま超高速ベントへ突入する。


若林「横一線!!どちらも引かなあああい!!!!」


腹切カナタ「ここで前に出る……ッ!」


ちとせ「簡単には通さないよぉ……。」


RZ34の冷気が86のフロントへ触れる。


しかしカナタはステアリングを一度も揺らさず、鉄格子側へ残された細い直線ラインを踏み抜いた。


ギャギャアアアアッ!!


ミラーが鉄格子を掠め、火花が赤いボディの横を走る。


若林「いったアアアアアアア!!!!オーバーテイクだアアアアアアア!!!!」


バシュウウウウンッ!!


86が半車身、そして一台分前へ。


カナタはRZ34の鼻先を完全に封じ、四位へ浮上した。


若林「赤い戦闘機、腹切カナタ!!鉄格子との間で火花を散らしながら、獣神を抜き去ったアアアア!!!!」


エアリ「今のカナタくん、加速だけで勝ったんじゃないッス!」


若林「では、何が決め手だったのでしょうか!?」


エアリ「ちとせさんは運営の指示で一度アクセルを戻して、走行ラインも外側へ寄せたッス。そのせいで、RZ34がもう一度加速へ入るまでに一瞬だけ間ができたッスよ!」


エアリ「カナタくんは、その間に86を完全に横へ並べたッス!」


エアリ「並んだ後は鉄格子側の狭いラインを使って、ステアリングをほとんど切らずに速度を残したッスね。RZ34はベントへ合わせて少し向きを変える必要があった。その差で86が前へ出たッス!」


若林「冷気へ対抗したのではなく、加速とラインのつながりで上回ったと!?」


エアリ「そうッス!ちとせさんが冷気を広げる前に、カナタくんが前へ出て走行ラインを塞いだッス!」


エアリ「それに86は軽いから、狭い場所でも姿勢修正が小さくて済むッス。今のはカナタくんが一瞬の減速、車幅、ベントの曲率を全部まとめて読んだオーバーテイクッスよ!」


ちとせ「あは……抜かれちゃった。」


ちとせは冷たい微笑を浮かべながら、前へ出た86を見つめる。


ちとせ「カナタくん、やっぱりタチが悪いねぇ……。でも、その熱さは嫌いじゃないよぉ。」


腹切カナタ「……まだ四位だ。」


赤い86の前方には、水色のエボ7MR。


さらに白いケイマンGT4と、先頭を走るスバルブルーのWRX STIが見える。


若林「腹切カナタ、ついに四位!!表彰台まであと一台!!」


若林「前方にはサテラ、フリス、そして山吹花!!ファイナルラップのセクター3、赤い戦闘機がトップ争いへ殴り込んできたアアアア!!!!」


エアリ「これで先頭集団の並びが大きく変わったッス!」


エアリ「カナタくんは高速区間でFL5を抜き、狭いベントではRZ34まで仕留めたッス。今の86は、区間ごとに違う抜き方を使えてるッスよ!」


エアリ「次のサテラくんは四輪駆動の立ち上がりが強いッス。カナタくんが同じやり方で簡単に抜ける相手じゃないッスね!」


若林「赤い86の快進撃は、どこまで続くのかアアアア!!!!」


若林「そして先頭!!青い戦闘機・山吹花が、ついに沈黙を破ったアアアア!!!!迷いを振り切ったWRXが、吾妻の路面へ再び爪を立てるゥゥゥ!!!!」


ギャアアアアアアンッ!!


ズバババババッ!!


山吹花「お待たせ。ここからが本当の勝負よ……ッ!」


山吹花「ざぁ〜こ♡ あの86もポルシェも、私には追いつけないって教えてあげるわ!!」


WRX STIの回転数が跳ね上がる。花は四輪の駆動力を余さず路面へ伝え、連続コーナーを最小限の減速でつないでいく。


フリス「……ッ!?さっきまでと立ち上がりが違う……!」


白いケイマンGT4との間隔が、コーナーを一つ抜けるたびに広がっていった。


若林「山吹花が引き離す!!コンマ五秒、さらに一秒!!独走態勢へ入り始めたアアアア!!!!」


エアリ「花さん、アクセルを早く開けるだけじゃなく、コーナー入口で車体の向きをほとんど完成させてるッス!」


エアリ「だから旋回中の修正が少なく、出口では四輪全部を加速へ使えるッスね!今まで迷いで遅れていた操作が、全部一つにつながった走りッス!」


その花から、後方の高槻へ無線が飛ぶ。


山吹花「何してるの、私の高槻くん♡ そんなところで遊んでたら、女王の隣には来られないわよ?」


山吹花「ざぁ〜こ♡ 早く追いついてきなさいッ!」


高槻健永「言ってくれるじゃねぇか……ッ!待ってろ花!!」


ギャギャギャアアアンッ!!


赤いバイパーが、コタローのウアイラのスリップストリームへ強引に飛び込む。


コタロー「また来やがったか、高槻ッ!」


高槻健永「その黒い風神を抜いて、今すぐ花のところへ行くんだよォォォ!!」


若林「花の挑発で赤いドラゴンが再点火!!高槻がウアイラへ再び襲いかかったアアアア!!!!」


エアリ「高槻くん、ウアイラと正面から最高速勝負をするんじゃなく、後ろへ入って空気抵抗を減らしたッス!」


エアリ「次のブレーキングまで離されずにいれば、バイパーの大排気量トルクで仕掛け直せるッスよ!」


さらに終盤のダウンヒルでは、プリズムホワイトのGRスープラが前方の三台へ迫っていた。


イヨ「えっへん☆ 岡田お兄ちゃんも、古賀さんも、セリナさんも……イヨに道を譲ってね!」


イヨ「譲ってくれないなら、少しだけ重くしちゃうよぉ!!」


ドォォォォォンッ!!


ピンク色の重力波が広がり、岡田のGR GT、古賀のM5、セリナのR8の動きが一斉に鈍る。


岡田大成「計算より減速が大きい……!?車体が路面へ押しつけられているのかッ!」


古賀加奈子「これは厄介ね。アクセルを踏んでも、車体が前へ出ないわ……!」


内藤セリナ「また変なの来たああああ!!胃が痛くなるでしょおおおお!!!!」


イヨ「今だよッ!」


ギュワアアアアアンッ!!


イヨは三台の速度が落ちた瞬間にスープラを外側へ振り、そのまま一気に前へ抜け出した。


若林「三台まとめて抜いたアアアア!!!!イヨ、十位から一気に七位へ浮上だアアアア!!!!」


エアリ「イヨさん、自分のスープラだけを速くしたんじゃないッス!前の三台へ重力を集中させて、旋回と立ち上がりを遅らせたッスよ!」


エアリ「その間に自分の車体へかかる力を調整して、外側の広いラインから速度を残して抜き切ったッスね!」


イヨ「普段は押し入れでパソコンをカタカタしたり、お菓子を食べたりしてるけど……レースでは負けないもん!」


イヨ「吾妻GTも、イヨが絶対にクリアするゲームだよッ!」


その前方には、柊の白いFL5。


柊蒼真「嘘だろ……!?さっきまで後ろにいたスープラが、もうここまで来たのか!!」


イヨ「蒼真お兄ちゃん、そこはイヨの通り道だよぉ!」


イヨ「グラビティ・バーストォォォ!!!!」


ドゴオオオオオンッ!!


FL5の動きが一瞬だけ沈む。


イヨはその外側へスープラを並べ、強烈な重力による接地力を使ってコーナーを高速で回り込んだ。


柊蒼真「外からだと……ッ!?」


若林「イヨがFL5を捲り切ったアアアア!!!!七位から六位へ浮上!!獣神ちとせの背後まで迫ったァァァ!!!!」


エアリ「イヨさん、FL5の進路を直接塞がず、アウト側へ自分のグリップを増やして速度差を作ったッス!」


エアリ「柊くんは内側の小さなラインで減速が必要だった。そこを外側から大きく回り、立ち上がり速度で抜いたオーバーテイクッスよ!」


若林「先頭では覚醒した山吹花!!中団では高槻がウアイラへ反撃!!さらにイヨが重力で一気に六位へ!!」


若林「吾妻GT終盤、全グループで順位が激しく動き始めたアアアア!!!!」


若林「全2周のサバイバルも勝負の後半戦もいよいよ大詰めだああああ!!!」


ちとせ「カナタく〜ん……今、行くからねぇ?」


腹切カナタ「……ッ!!」


次の瞬間だった。


ゴォォォォォォォッ!!


吹雪のオーラを纏ったRZ34が、赤い86の横へ一気に並ぶ。


ちとせは先ほどまでの減速が嘘だったかのように、太いトルクを解放。銀色の車体がカナタの視界を覆い、そのまま前方へ滑り込んだ。


若林「ああ……Zアアアアアアア!!!!」


若林「ちとせのRZ34が、一瞬で赤い戦闘機の前へ出たァァァァ!!!!」


ギャアアアアアアンッ!!


ヴォオオオオオオッ!!


86ターボもすぐに加速するが、RZ34はコーナー出口でさらに速度を伸ばしていく。


腹切カナタ「速い……ッ!」


ちとせ「もへ〜……さっきは運営さんに止められただけだからねぇ。」


ちとせ「今度は、おじさんの力で抜き返したよぉ。」


若林「ちとせ、四位を奪還!!獣神の反撃が早すぎるウウウウ!!!!」


エアリ「ちとせさん、カナタくんが前へ出た直後から、86の加速位置をずっと見てたッス!」


エアリ「カナタくんは狭いベントでラインを優先した分、次の立ち上がりで少しだけ速度が伸び切らなかったッスね!」


エアリ「そこへRZ34の大きなトルクを一気にぶつけて、外側の広いラインから加速したッス!」


腹切カナタ「……まだだ。」


ちとせ「うん。まだ終わってないよぉ。」


銀色のRZ34が再び四位。


赤い86はその直後へ食らいつき、獣神の背後を離れなかった。


若林「バックストレート突入!!赤い戦闘機、一気にZから切り離されるウウウウ!!!!」


ドゴオオオオオオッ!!


RZ34が太いトルクを解放し、吹雪を引きずりながら一気に加速する。


その後方で、カナタのREVIVE 86もターボを唸らせるが、直線が伸びるほど二台の差は目に見えて広がっていった。


シャコンッ!!


ヴォアアアアアアッ!!


腹切カナタ「……くッ!」


ちとせ「もへ〜……直線なら、おじさんのZもまだまだ速いよぉ。」


若林「RZ34の加速が止まらない!!86ターボも全開だが、パワーとトルクの差が露骨に出てしまったアアアア!!!!」


エアリ「ここは完全にちとせさんの区間ッス!」


エアリ「カナタくんの86は軽さと速度コントロールでコーナーでは戦えるッス。でも長い直線では、RZ34の排気量と太いトルクを受け止めきれないッスね!」


若林「先ほど抜いた相手に、今度は純粋な加速で引き離されていくゥゥゥ!!」


エアリ「カナタくんがもう一度前へ出るなら、次の減速区間まで差を広げられすぎないことが重要ッス!」


エアリ「直線では耐えて、ブレーキングと旋回で取り返す。その勝負へ切り替えるしかないッスよ!」


腹切カナタ「……分かってる。」


赤い86は離されながらも、アクセルを一度も戻さない。


銀色のRZ34のテールランプを、カナタは真っすぐ見据えていた。


腹切カナタ「直線で勝てないなら……次で追いつく。」


若林「獣神ちとせが再び差を作る!!だが赤い戦闘機も諦めない!!次のフルブレーキングへ向けて、反撃の機会を狙っているゥゥゥ!!!!」


若林「いや……もう見えない!!RZ34が、赤い86の視界から消えるほど遠くへ行ってしまうウウウウ!!!!」


ドゴオオオオオオオッ!!


ちとせのRZ34は吹雪の尾を引きながら、バックストレートの彼方へ消えていく。


腹切カナタ「……ッ。」


カナタはアクセルを踏み切っている。


それでも、銀色のZとの距離は縮まらない。


若林「これは厳しい!!コーナーで食らいついたREVIVE 86も、純粋な直線加速では完全に置き去りだアアアア!!!!」


エアリ「ここまで差が開くと、次のブレーキングだけで全部を取り返すのは難しいッス!」


エアリ「カナタくんはまず、前方の走行ラインとブレーキランプをもう一度視界へ戻さないといけないッスね!」


若林「獣神ちとせ、圧倒的な最高速!!四位を奪い返しただけではない!!赤い戦闘機との勝負そのものを、一度完全に断ち切ったアアアア!!!!」


腹切カナタ「……直線じゃ、話にならないか。」


赤い86の前には、もはやRZ34の姿すらない。


それでもカナタはシフトを叩き上げ、次の減速区間へ向けて走り続けた。


腹切カナタ「だったら……また見えるところまで追うだけだ。」


ドゴオオオオオオオッ!!


銀色のRZ34は、バックストレートを吹雪の尾とともに貫いていく。


ちとせ「もへ〜……カナタくん、見えなくなっちゃったねぇ。」


ブルーグレーの瞳が、バックミラーに映る小さな赤い光を静かに捉える。


先ほど自分を抜いたREVIVE 86は、今や遥か後方。


ちとせ「狭いところでは上手だったけど……真っすぐ走るなら、おじさんのZの方が速いよぉ。」


シャコンッ!!


ギャオオオオオオオンッ!!


ちとせは迷いなくシフトを叩き上げ、RZ34のトルクをさらに解放する。


吹雪のオーラが車体の後方へ引き伸ばされ、周囲の空気を白く切り裂いていった。


ちとせ「でも、カナタくんは諦めないんだろうなぁ……。」


ちとせ「見えなくなっても、また後ろまで来る。そういうところ……ちょっと怖いねぇ。」


その声は穏やかだった。


しかし、口元には獲物の執念を楽しむような、冷たい笑みが浮かんでいる。


ちとせ「だから今のうちに、もっと遠くへ行こうかなぁ。」


前方には、サテラのエボ7MR。


さらにその先には、フリスのケイマンGT4と、先頭を逃げる山吹花のWRX STIが見えていた。


ちとせ「サテラくんも、フリスも……花ちゃんも。」


ちとせ「おじさんを置いていったまま、終われると思わないでねぇ?」


ゴォォォォォォォッ!!


RZ34の周囲へ、再び濃い冷気が集まり始める。


だが先ほどのようにコース全体を覆うことはない。


ちとせは冷気を車体の周囲だけへ圧縮し、空気抵抗を切り裂くように速度へ変えていく。


ちとせ「運営さんに怒られないように……今度はちゃんと、走りだけで追いつこうねぇ。」


銀色のZは四位のまま、サテラの水色のエボへ急速に距離を詰め始めた。


若林「REVIVE 86がRZ34に追いつけない!!腹切カナタ、ついに表彰台争いから脱落かアアアア!?!?」


赤い86はなおも全開でバックストレートを駆け抜ける。


しかし前方に、ちとせの銀色のZはもう見えない。


腹切カナタ「……ッ。」


若林「四位ちとせとの差が一気に拡大!!このままではサテラ、フリス、山吹花どころか、RZ34へ再接近することすらできなあああい!!!!」


エアリ「ここは厳しいッスね……!直線だけで取り返せる差じゃないッス!」


エアリ「カナタくんの86はコーナーで速さを作るタイプッス。でも今は、次のテクニカル区間へ入る前に差を開かれすぎてるッスよ!」


若林「では、本当に表彰台争いは終わったのか!?」


エアリ「まだ完全に終わったとは言えないッス!」


エアリ「前の三台が争って速度を落とすか、ちとせさんがサテラくんへ仕掛けてラインを乱せば、カナタくんにも追いつく時間が生まれるッス!」


エアリ「ただ、自力だけで追い戻すにはかなり苦しいッスね。今のカナタくんは、前方の混戦が起きることまで計算に入れて走るしかないッス!」


腹切カナタ「……誰かが崩れるのを待つつもりはない。」


シャコンッ!!


ヴォアアアアアアアッ!!


腹切カナタ「次のコーナーで、また差を削る。」


若林「赤い戦闘機はまだ諦めない!!だが前方は遥か彼方!!腹切カナタ、表彰台へ残された道は極めて細いぞオオオオ!!!!」


ちとせ「削らせないよ、カナタくん……。」


銀色のRZ34はバックストレートの先でさらに加速し、前方のサテラたちへ狙いを定める。


ちとせ「おじさんが、この先にいるフリスちゃんたちをまとめてぶち抜いて……そのまま勝っちゃうんだよね〜。」


ブルーグレーの瞳が細まり、穏やかな笑みの奥に獣神の闘志が宿る。


シャコンッ!!


ギャオオオオオオオンッ!!


RZ34のギアが入り、太いトルクが一気に路面へ叩きつけられた。


ちとせ「カナタくんは、後ろで一生懸命追いかけてきてねぇ。」


ちとせ「でも、おじさんの背中は……もう簡単には見せてあげないよぉ。」


前方には水色のエボ7MR。


そのさらに先には、白いケイマンGT4と、先頭を走る青いWRX STI。


ちとせ「サテラくん、フリスちゃん、花ちゃん……。」


ちとせ「みんなまとめて、おじさんが追いつくから待っててねぇ。」


ゴォォォォォォォッ!!


銀色のZは冷気をまといながら、次のブレーキング区間へ向けてさらに速度を上げていった。


そこに――インから!!!


ごおおおおおおおッ!!!!


若林「うわああああ!!赤い戦闘機だアアアア!!!!なんなんだああああ!?!?」


ちとせ「……へ?」


銀色のRZ34が次の右コーナーへ進入した、その瞬間。


遥か後方へ消えたはずのREVIVE 86が、イン側の側溝へ右タイヤを落としながら、一気に姿を現した。


ガコンッ!!


ギャアアアアアアッ!!


腹切カナタ「ここしかない……ッ!!」


86の内側タイヤが溝へ食い込み、車体が強引にコーナー内側へ引き寄せられる。


外へ膨らもうとする遠心力を、側溝の段差が物理的に押さえ込む。


若林「溝落としだアアアア!!!!赤い86、側溝へタイヤを落として旋回半径を無理やり縮めたァァァァ!!!!」


ちとせ「カナタくん……いつの間に追いついたのぉ!?」


腹切カナタ「直線で見えなくなっても……コーナーは逃げない。」


シャコンッ!!


ヴォアアアアアアッ!!


86ターボが溝から飛び出し、RZ34のイン側へ鼻先を差し込む。


若林「並んだアアアア!!!!一度は表彰台争いから消えた赤い戦闘機が、獣神の懐へ再び戻ってきたァァァァ!!!!」


エアリ「カナタくん、直線で追いついたんじゃないッス!」


エアリ「ちとせさんが次のコーナーへ向けて減速する場所まで、ブレーキを遅らせて一気に差を詰めたッスよ!」


エアリ「さらに側溝へ内輪を落として、普通なら使えない小さな旋回半径を作ったッス!そのぶん速度を残したまま、RZ34のインへ入れたんスね!」


ちとせ「もへぇ……そこを走るの、ずるくない?」


腹切カナタ「道の中だ。」


ちとせ「側溝だよぉ。」


腹切カナタ「使えるなら、道だ。」


若林「赤い戦闘機、再びちとせと横一線!!腹切カナタ、執念の溝落としで四位争いへ復帰だアアアア!!!!」


ちとせ「運営さ〜ん……カナタくんのこれって、反則だよねぇ?ルール違反だよねぇ?」


運営「確認します!腹切カナタ選手、右側タイヤを側溝へ落としていますが……車体はコース内です!」


ちとせ「もへぇ……側溝なのにぃ?」


運営「現時点ではコースアウト判定なし!オーバーテイクは有効です!!」


ちとせ「ええ〜……。」


腹切カナタ「聞いたか。反則じゃない。」


ちとせ「カナタくん、そういうところだけ急に元気だねぇ……。」


ガコンッ!!


86が側溝から跳ね上がり、RZ34のイン側へさらに車体をねじ込む。


若林「運営、溝落としを有効と判定!!赤い戦闘機の奇襲は止められなあああい!!!!」


ちとせ「じゃあ、おじさんも使っていいってことだよねぇ?」


運営「ちとせさんは冷気による路面改変を禁止します!!」


ちとせ「まだ何もしてないよぉ……。」


腹切カナタ「考えてた顔だった。」


ちとせ「もへ〜……バレちゃったぁ。」


エアリ「やっぱりZには、溝落としを使わないと勝てなかったッスね……ッ!」

若林「それほどまでに、RZ34の直線加速が圧倒的だったということかアアアア!?」

エアリ「はいッス!普通のラインで追いかけても、カナタくんの86はちとせさんのZに加速で置いていかれるッス!」

エアリ「だから今回は、ブレーキングを遅らせて差を詰めて、さらに側溝で旋回半径を小さくしたッス!」

エアリ「つまり、速さで上回ったんじゃなくて、Zが使えない場所を86だけが使ったんスよ!」

ちとせ「もへぇ……やっぱり普通に走ったら、おじさんの勝ちだったんだねぇ。」

腹切カナタ「……普通に走って勝てないなら、普通じゃない道を使う。」

エアリ「それがカナタくんの強さッスね!マシン性能で負けても、コースの使い方まで同じにする必要はないッス!」

若林「腹切カナタ!!RZ34へ真正面から挑まず、溝落としという異次元のラインで再び並んだアアアア!!!!」

ちとせ「カナタく〜ん……普通に走った方がいいんじゃな〜い?のんびりしてていいよ〜ん♪」


腹切カナタ「……悔やまれますよ、ちとせさん。」


ちとせ「もへ?」


腹切カナタ「普通に走っていたら、俺はもうあなたの後ろにいなかった。」


ガコンッ!!


側溝へ落としたタイヤが段差を捉え、赤い86の車体をさらにイン側へ引き込む。


ヴォアアアアアアッ!!


ちとせ「……ッ!」


腹切カナタ「俺に普通を勧めたこと……すぐに悔やむことになります。」


若林「カナタ、静かに宣戦布告だアアアア!!!!赤い戦闘機が、溝の中からさらに前へ出ようとしているゥゥゥ!!!!」


ちとせ「もへ〜……怖いこと言うねぇ。」


ちとせは笑っていた。


だが、そのブルーグレーの瞳は完全にカナタを捉え、RZ34のアクセルを再び深く踏み込む。


ちとせ「じゃあ、おじさんも……のんびりするの、やめようかなぁ。」


ドゴオオオオオオンッ!!


銀色のZと赤い86が、コーナー出口へ横一線で飛び出した。


腹切カナタ「いや、気持ちはのんびりでもいいんだよ……。」


ちとせ「……もへ?」


腹切カナタ「その中にある……魂さ。」


カナタは前だけを見たまま、赤い86のアクセルをさらに踏み込む。


腹切カナタ「ゆっくりしてても、迷っててもいい。」


腹切カナタ「でも最後に前へ出る時だけは、自分の魂を信じる。」


ガコンッ!!


側溝から86が跳ね上がり、RZ34の横へ完全に並ぶ。


ちとせ「……カナタくん、意外と熱いこと言うんだねぇ。」


腹切カナタ「今さらですか。」


ちとせ「もへ〜……おじさん、そういうの嫌いじゃないよぉ。」


ドゴオオオオオオンッ!!


銀色のZと赤い86が、互いに一歩も譲らずコーナー出口へ飛び出した。

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