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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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507/534

吾妻編第47話SP 伊藤と岡田のオールクリアドラマ

7月25日と26日、8月1日の86伝説は描写確保によりおやすみします。

山吹花「……ふん、絶対零度?原子が止まる?そんな理屈、私の生意気さの前では無意味なのよ。」


山吹花「冷気が届く前に、私がもっと速く、もっと生意気に駆け抜ければいいだけでしょう?」


花はDCCDを緻密に制御し、四輪すべてで吾妻のアスファルトを削り取るように加速する。


ちとせの絶対零度がVABのリアバンパーを掠め、白い氷を張りつかせる。しかし花は、その一瞬すら加速へ変えた。


山吹花「ざぁ〜こ♡追いつけない神様なんて、ただの置物よ。」


山吹花「そこでカチコチに凍って、私のエキゾーストノートでも子守歌にしてなさいッ!!」


若林「ちとせの報復が届かなあああい!!山吹花、まさに絶好調!!獣神を置き去りにして、セクター1を単独首位で駆け抜けていくウウウウ!!!!」


若林「エアリさん!これはいったいどういう走りなのでしょうか!?」


エアリ「花さん、冷気そのものへ耐えてるわけじゃないッス!絶対零度が一番強く届く距離から、VABの立ち上がり加速で逃げ続けてるんスよ!」


若林「射程外へ逃げていると!?」


エアリ「そうッス!花さんは四輪の駆動配分を細かく変えて、前輪で向きを作りながら、後輪で一気に押し出してるッス!」


エアリ「ただ、リアバンパーはすでに凍り始めてるッスね。このまま長く追われたら、タイヤやデフまで冷気が届く可能性があるッス。今のうちに差を作れるかが勝負ッスよ!」


その頃、後方でも大きな順位変動が起きていた。


若林「さあ!十一位を走っていた岡田大成のGR GTが……コタローのウアイラを電光石火のごとく抜き去ったアアアア!!!!」


R115トンネル出口の高速ベント。黒塗りのGR GTは、路面へ磁石で吸いついたような安定感を見せ、並走するウアイラへ迫る。


V8の重低音が、ウアイラのV12ツインターボサウンドへ激しく重なった。


コタロー「マジかよ……ッ!GR GTのスタビリティ、どうなってやがる!?」


コタロー「風の乱れを無視して、真っすぐ弾丸みたいに抜けていきやがる……ッ!」


コタローはアクティブエアロを細かく動かし、乱気流を受け流そうとする。だが岡田のGR GTは微塵も揺らがず、高速ベントを最短距離で突き抜けていった。


岡田大成「スタビリティだけじゃない……ッ!俺の計算が合っていれば、オールクリアはすぐそこだ。」


岡田は前方の高槻が操る赤いバイパーとの距離と、わずかなラインのズレを瞬時に読み取る。


彼にとってレースとは、最短経路を導き出す数学的な儀式だった。


岡田大成「……見えたッ!!オールクリアアアアア!!!!」


シャコンッ!!


ギアを叩き込み、ステアリングを最小限の切れ角で固定する。


ギャアアアアアアアアッ!!!!


GR GTはウアイラを完全に抜き去り、その勢いのままバイパーの横へ並んだ。


高槻健永「なにィ!?今度は黒いコンセプトカーかよ!!」


岡田大成「ラインが甘い。そこは俺の道だ……ッ!」


若林「トンネルストレートから高速コーナーへ!!完全にウアイラをオーバーテイクし、さらに高槻のバイパーまでも飲み込んだGR GTイイイイ!!!!」


若林「速い!!岡田大成がここに来て、眠れる巨人のごとき追い上げを見せてきたアアアア!?!?」


エアリ「岡田くん、前の二台を別々に抜いたんじゃないッス!ウアイラの後ろで空気抵抗を減らして、その速度を残したままバイパーのラインまで読んでたッスよ!」


エアリ「コタローくんは風を操り、高槻くんはパワーで押し切ろうとしたッス。でも岡田くんは二人が作った隙間を、一本の最短ルートとして通り抜けたんスね!」


若林「これが岡田大成のオールクリアだアアアア!!!!」


エアリ「GR GT、無駄のないライン取りと加速の繋ぎが完璧ッス!コース全体を使った理想的な走りになってるッスね!!」


若林「岡田大成、咆哮!!物理的な加速だけではない!コースの特性すら味方につけた数学的走法だアアアア!!!!」


トンネル出口から続く複雑な高速コーナー。バイパーとウアイラを最短距離の計算だけで葬り去った岡田は、GR GTの挙動を完全に掌握していた。


――だが、その背後。


銀色のウアイラが、じわりと距離を詰めてくる。


コタロー「……逃がすかよ、岡田ァ!」


ウアイラは外側いっぱいまで膨らみ、GR GTのラインに被せるように侵入する。


キィィィィィィッ!!


若林「おおっとコタローのウアイラ!!外から被せたアアアア!!岡田のラインに割り込む気だアアアア!!!!」


エアリ「外からの進入で速度を維持してるッスね!かなり強引だけど、並びにいくには有効なアプローチッス!」


黒と銀、二台のボディが数センチの距離で並走する。


岡田は一切慌てない。ステアリングをほんのわずかに切り足し、ウアイラの鼻先をギリギリでかわしながら、イン側の最短ラインを死守する。


岡田大成「……そのラインじゃ、速度が残らない」


コタロー「うるせぇ!残すんだよ!!」


ウアイラは無理やり外から速度を維持し、GR GTの横に並び続ける。


ガリッ――!!


若林「接触ゥゥゥゥ!!軽く当たったアアアア!!!!」


エアリ「両者ともラインを譲らないッスね!ここは完全にポジション争いの勝負どころッス!」


コーナー出口、二台はほぼ同時に立ち上がる。


だが、ほんのわずかに――GR GTの方が早い。


岡田はアクセルを踏み抜き、ウアイラを半車身だけ前に出る。


コタロー「チッ……!」


若林「岡田、押し切ったアアアア!!しかしコタローも食らいつく!!まだ終わっていないぞオオオオ!!!!」


エアリ「コタローくん、かなり攻めたライン取りッスね!それでも崩れない岡田くんの安定感が際立ってるッス!」


再び高速コーナー。


今度はコタローがインへ飛び込む。


コタロー「今度はこっちだ!!」


ウアイラが鋭く切り込み、GR GTの内側へねじ込む。


若林「今度はインからァァァ!!コタロー、強引に差し込んだアアアア!!!!」


エアリ「イン側で距離を詰めにきたッス!ただ、この進入だと立ち上がりの加速が鍵になるッスね!」


だが岡田は、ほんの一瞬だけラインを譲る。


そして――


岡田大成「……そこだ」


ウアイラがインで減速した瞬間、GR GTは外からクロスラインで加速。


出口で再び並び、そして前へ出る。


若林「クロスライン!!岡田、完全に読み切っているゥゥゥゥ!!!!」


エアリ「インで減速した分、外からの立ち上がりで差をつけたッス!状況判断が非常に冷静ッスね!」


前方にテールランプはない。巻き上がる砂塵すらない。


岡田大成「見たか……!俺のシナリオさえ正しければ、オールクリアはすぐに出るんだ!!」


岡田大成「二キロの直線、その両端に激しいコーナーがあるからこそ、この現象は吾妻GTで起こりやすい……ッ!」


岡田はステアリングをミリ単位で修正し、タイヤのグリップを一切逃さず推進力へ変えていく。


直線で高めた速度を、トンネル両端のコーナーで殺さずにつなぐ。そのまま前走車との距離を一気に縮め、抜いた瞬間に視界を完全に開く。


コースを読み切った者だけが到達できる、岡田独自の無の領域だった。


若林「オールクリア状態へ入ったGR GTが、さらに加速を増していくウウウウ!!!!視界を遮るものがない今、岡田の計算精度がさらに上がっていくぞオオオオ!!!!」


エアリ「前方が完全にクリアになったことで、理想ラインをフルに使えてるッス!これだとラップタイムも一気に伸びる状況ッスね!」


若林「ミスは期待できないと!?」


エアリ「現状だと修正要素がほとんどないッス!マシンの安定性も高いし、このままペースを維持できればかなり有利ッス!」


後方では、抜かれたコタローと高槻が黒いGR GTのテールランプを睨んでいた。


コタロー「……くそ、まだ終わってねぇぞ」


若林「しかし高槻健永も動いたアアアア!!ウアイラとともに抜かされたまま、黙って見送るような男ではなかったアアアア!!!!」


ぎゃああああああッ!!


ンヴァアアアアアアアッ!!!!


赤いダッジ・バイパーが巨大なV10トルクを叩きつけ、GR GTの背後へ再び接近する。


高槻健永「最適解だかオールクリアだか知らねぇが……ッ!俺の前を走って、無事で済むと思うなよ!!」


コタロー「高槻まで追いつきやがった……ッ!あの二台、また始めるつもりかよ!」


若林「高槻のバイパーが狂気のスレスレ走行!!岡田大成のGR GTを、再び射程圏内へ捉えたアアアア!!!!」


エアリ「バイパーは直線加速が強いッスね!パワーを活かして一気に距離を詰めてきてるッス!」


若林「数学対暴力!!」


エアリ「ただ、高槻くんもライン取りはしっかりしてるッス!外側を使って速度を落とさず、次のコーナーで勝負を仕掛ける狙いッスね!」


エアリ「岡田くんが理想ラインを維持するのか、高槻くんがパワーで崩すのか……次のコーナーが大きなポイントになりそうッス!」


黒いGR GTと赤いバイパー。


そして、その背後で牙を剥く銀のウアイラ。


静かな最適解と、荒々しいV10の暴力、そして食らいつく執念が、上位集団へ向かって激突する。


高槻健永「アレ……ウアイラ、抜かれちゃったか?なら、そこのGR GTは危ないから……俺に任せてねエエエエエ!!」


ドギャアアアアアンッ!!


赤いバイパーがGR GTの真横へ飛び込み、巨大な車幅で岡田の最短ラインを強引に塞ぐ。


高槻健永「岡田くん、君の計算は素晴らしいけど……レースは算数じゃないんだよねェ!!唸れ、俺の赤いドラゴン!!」


ギィィィィヤアアアアンッ!!


若林「サイドバイサイド!!数学的精密さの岡田か!八・四リッターV10の高槻か!!九位争いが一気にヒートアップだアアアア!!!!」


エアリ「高槻くん、GR GTの理想ラインを車幅で潰しに来たッス!岡田くんの計算が正しくても、通る場所そのものを塞がれたら修正が必要になるッスよ!」


岡田大成「……計算外なら、組み直すだけだ。」


高槻健永「その前に押し切るけどねェ!!」


黒と赤の二台が火花を散らし、次の高速コーナーへ雪崩れ込む。


若林「さらに後方!!眞鍋琉世の銀色のエボ9へ、相川美保のR33 400Rが猛烈に迫るうううう!!!!」


ディープマリンブルーの400Rが、エボ9のスリップストリームへ入り込む。先ほど美保は、兄・相川律のR35 NISMOを退けていた。


相川美保「お兄ちゃん、ごめんね。でも今の私は、海を泳ぐサメなの。誰にも捕まらないし、止まらないわよッ!」


若林「美保が狙うは十二位の眞鍋!!ブルーシャークが銀の戦闘機を飲み込みにかかるぞオオオオ!!!!」


エアリ「ロングホイールベースでス……ッ!400Rは高速域で車体が安定しやすいから、緩いコーナーなら速度を保ったまま眞鍋くんへ近づけるッス!」


エアリ「ただし、細かい切り返しではエボ9の方が向きを変えやすいッス!美保さんは、この中高速区間で抜き切りたいところッスね!」


眞鍋琉世「……来たか、相川美保。」


相川美保「その銀色のエボ、ここで仕留めるわ。」


若林「さらにその後方……ウオオオオオオッ!?伊藤対菜園宗一郎だアアアア!!!!」


三百馬力を超えるチャンピオンイエローのスイフトスポーツが、白い992 GT3の横へ飛び出した。


伊藤「サイドバイサイドまで来たぞ菜園!!俺は、初戦の頃の俺じゃねぇ!!」


菜園宗一郎「速い……ッ!あの頃のスイスポとは段違いだ!!だが、FFでなぜこの高速ベントを恐れず突き抜けられる!?」


ドガッ!!


ギャアアアアアンッ!!


伊藤は縁石で車体を跳ね上げながらもアクセルを緩めない。軽量なスイスポが強烈なトラクションで前へ飛び出し、GT3を半車身置き去りにした。


菜園宗一郎「アタマがイカれてるのか、君たちは!?いつからこんなカオスなレースになったんだ!!」


若林「抜けてしまうウウウウ!!!!伊藤が十五位へ浮上!!ポルシェでも止められなかったアアアア!!!!」


エアリ「伊藤くん、GT3とブレーキング勝負をせず、手前から速度を落とさないラインを選んだッス!軽い車体とFFの立ち上がりを使って、菜園くんが向きを変える前に前へ出たッスね!」


伊藤「どうだ菜園!!これが伊藤自動車のスイスポだアアアア!!」


菜園宗一郎「……まだ終わってないぞ、伊藤ッ!!」


若林「しかも前方には、最新最強のR35 NISMO!!美保から六秒後方の超高速区間で、スイフトスポーツがGT-Rへ並んでいくウウウウ!!!!」


相川律「今度は黄色いスイスポだと……ッ!?」


伊藤「排気量も馬力も関係ねぇ!!立ち上がりなら、俺だって戦えるんだよォォォ!!」


若林「岡田対高槻!眞鍋対美保!そして伊藤対相川律!!吾妻GT二周目、コースの至るところで激戦が爆発しているゥゥゥゥ!!!!」


若林「そして肝心の赤い戦闘機!!腹切カナタが、完全に柊蒼真の白いFL5へ張り付いたアアアア!!!!」


赤い86と白いシビックタイプRが、低速ヒルクライムの連続コーナーへ突入する。


柊蒼真「お前か、カナタ……ッ!」


バックミラーを埋め尽くす赤いボンネット。それでも柊はラインを乱さず、FL5のワイドな車体で進路を塞ぎ続けた。


柊蒼真「この先は、抜けそうで抜けられない区間だ。さあ……どこで行くんだよ?」


腹切カナタ「……別に、今すぐ抜く必要はない。」


ギャアアアアアンッ!!


カナタはインへ飛び込む素振りを見せるが、ブレーキを残してすぐに後方へ戻る。


柊蒼真「フェイントか……!」


次の右コーナーでは外側へ車体を振り、FL5の死角へ86の姿を隠す。


しかし、オーバーテイクには動かない。


若林「カナタ、仕掛けない!!インへ入らない!それでも柊のミラーから一切消えなあああい!!!!」


エアリ「カナタくん、抜く場所を探してるだけじゃないッス!柊くんへ何度もラインを意識させて、守る方向を増やしてるッスよ!」


若林「プレッシャーをかけ続けていると!?」


エアリ「はいッス!柊くんはFL5の安定感を使って、コーナーの入口から出口まで隙を作ってないッス。でも後ろにカナタくんがいるせいで、毎回インもアウトも警戒しないといけないッスね!」


白いFL5が縁石ぎりぎりを通過する。


その直後を、赤い86が寸分違わぬ軌跡で追いかけた。


ガンッ!!


路面の段差で二台の車体が同時に跳ねる。それでも距離は開かない。


柊蒼真「チッ……どこまで付いてくる気だ!」


腹切カナタ「お前がミスするまでだ。」


柊蒼真「簡単にすると思うかよ……ッ!」


腹切カナタ「思ってない。だから待ってる。」


若林「静かだ!!しかし恐ろしい!!カナタは無理に飛び込まず、柊の集中力とタイヤを少しずつ削っているゥゥゥ!!!!」


エアリ「ここは一台分のラインしか使えないコーナーが続くッス!強引に並べば、二台とも失速する可能性が高いッスね!」


エアリ「だからカナタくんは、FL5の真後ろで空気抵抗を減らしながら、自分のタイヤを温存してるッス。柊くんだけに守らせて、消耗させる狙いッスよ!」


若林「前へ出なくても攻撃しているというのかアアアア!!!!」


腹切カナタ「……まだだ。」


赤い86は一度も並びかけない。


それでも白いFL5との距離は、わずか数十センチ。


柊がブレーキを踏めば、カナタも踏む。


柊がアクセルを開けば、赤い戦闘機も寸分遅れず加速する。


柊蒼真「気味が悪い走りしやがって……ッ!」


腹切カナタ「焦るなよ、柊。」


腹切カナタ「抜く場所は……俺が決める。」


若林「オーバーテイクはない!!しかしカナタの圧力が、確実に柊蒼真を追い詰めているウウウウ!!!!」


白いFL5と赤い86。


順位は変わらないまま、二台の緊張だけが限界へ近づいていった。


相川律は、バックミラーを埋め尽くすチャンピオンイエローの輝きに目を見開いた。


妹の美保に抜かれた直後。今度は格下と思っていたスイフトスポーツが、猛獣のようなフジツボサウンドを響かせて迫ってくる。


相川律「そうかよ……伊藤が来たのか!!ついにチャンピオンイエローとのバトルだアアアア!!!!」


相川律「R35のプライドに懸けて、これ以上の後退は許されないッ!!」


伊藤「相川……お前が相手でも負けないぞ!伊藤自動車の誇り、見せてやる!!」


ギュワアアアアンッ!!


ドッシュウウウンッ!!


若林「伊藤が横へハンドルを切ったアアアア!!!!R35の巨体が作る空気の壁を抉り、わずかな隙間へスイスポの鼻先をねじ込むゥゥゥ!!!!」


ギャギャアアアアアアッ!!


伊藤はスイスポを投げ込むように中速コーナーへ進入。軽量な車体を大きく沈ませ、R35を上回る旋回速度でイン側を駆け抜ける。


相川律「嘘だろ……スイスポだぞ!?なんでその速度で曲がれるんだッ!!」


エアリ「伊藤くん、フロントへ一気に荷重を乗せて、軽い車体を強引に旋回させたッス!R35は安定してるッスけど、重量がある分だけ向きが変わるまでに時間が必要なんスよ!」


若林「その一瞬を狙ったのかアアアア!?」


エアリ「そうッス!かなり危険な進入ッスけど、伊藤くんはスイスポの軽さと前輪のグリップを信じて、ブレーキを早く離したッスね!」


若林「行ったアアアアアア!!!!R35がアウトへ膨らんだ瞬間、チャンピオンイエローの閃光がインサイドを射抜いたアアアア!!!!」


伊藤「っしゃあアアアア!!見たか相川!!」


伊藤「これが俺と、親父が仕上げた最強のスイスポだ!!重いだけのGT-Rに、峠の王座は渡さねぇッ!!」


相川律「進入速度が俺より十キロ以上速いだと……!?フロントタイヤ、どうなってやがる!!」


若林「スイフトスポーツが前へ出たアアアア!!!!伊藤、十四位浮上!!最新電子制御のGT-R NISMOを、熱血のハッチバックが引きずり下ろしたアアアア!!!!」


エアリ「伊藤くんの走りは限界ギリギリッス!でも無謀に見えて、R35が苦しくなる場所だけを正確に突いてるッスよ!」


律を抜いた伊藤の視界に、数秒先を走るディープマリンブルーの400Rが映る。


相川律「美保、気をつけろッ!!伊藤がもう後ろまで来てるぞ!!あいつ、完全に勢いへ乗ってやがる!!」


相川美保「伊藤くんが……!?さっきまで後ろにいたはずなのに、もうミラーが黄色一色じゃない……ッ!」


フジツボマフラーの乾いた咆哮が、400Rの潮風を思わせるオーラへ食らいつく。


伊藤「見えたぞ、400R!!美保ちゃん、悪いな……今の俺は誰にも止められねぇんだよッ!!」


若林「伊藤のテンションは最高潮!!一・四リッターターボがRB26DETTの背後へ牙を剥く!!」


若林「ブルーシャーク対チャンピオンイエロー!!吾妻の夜が、熱すぎる下克上で燃え上がっているぞオオオオ!!!!」


エアリ「ただし、美保さんの400Rはロングホイールベースで中高速域の安定感が高いッス!伊藤くんが同じ勢いで飛び込んでも、律さんのR35ほど簡単にはラインを崩せないッスよ!」


エアリ「軽さで切り込む伊藤くんと、長い車体で速度を維持する美保さん!ここからは全く違う強み同士の勝負になるッス!!」


伊藤「だったら、その安定感ごと突破してやる!!」


相川美保「来なさい、伊藤くん。サメは背後へ近づいた獲物を、簡単には逃がさないわよッ!」


黄色と深い青の二台が、次の複合コーナーへ突入した。


若林「うおおおおお!?チャンピオンイエローが仕掛けたアアアア!!!!」


ぎゃんぎゃんッ!!


ごおおおおおおおおおッ!!


伊藤のスイフトスポーツが400Rのイン側へ鼻先をねじ込み、深い青と鮮烈な黄色が並びかける。


相川美保「……ッ!!」


伊藤「……くッ!!」


しかし、美保はロングホイールベースの安定感を活かし、速度を落とさずコーナー出口までラインを維持。伊藤が使える空間を残さないまま、400Rを前へ押し出した。


ぎゃああああああッ!!


若林「並ぼうとするも、相川美保のブルーシャーク!R33 GT-R Vスペックには届かないッ!!伊藤、オーバーテイク失敗だアアアア!!!!」


エアリ「伊藤くん、進入では完全に並びかけたッス!でも美保さんは慌てず、400Rの長いホイールベースを使って姿勢を安定させたッスね!」


若林「ロングホイールベースが効いたと!?」


エアリ「はいッス!伊藤くんのスイスポは軽くて、コーナーへ飛び込む瞬間はものすごく速いッス。でも出口では、美保さんの400Rが長い車体で荷重変化をゆっくり受け止められるッス!」


エアリ「だから美保さんはアクセルを早く開けてもリアが乱れず、そのまま伊藤くんを外側へ押し出せたッスよ!」


相川美保「伊藤くん、今の飛び込みは鋭かったわ。でも、このブルーシャークの横腹へ噛みつくだけじゃ足りない。」


相川美保「サメを仕留めたいなら……最後まで泳ぎ切ってみなさいよォッ!!!」


伊藤「まだだ……ッ!次は絶対に前へ出る!!」


若林「順位は変わらない!!しかし伊藤の黄色い弾丸は、なおも400Rのリアへ食らいついているゥゥゥゥ!!!!」


相川律「荒っぽいなァ....今日の美保怒ってるよなァ......。」


【ライブ配信・視聴コメント】


「美保つええええ!」


「スイスポ並びかけたのヤバすぎる」


「400Rの安定感えぐい」


「伊藤、完全に勢い乗ってるな」


「ブルーシャーク守り切った!」


「軽さの伊藤と高速安定性の美保、相性が面白すぎる」


「エアリのロングホイールベース解説わかりやすい」


「一回失敗しても離れない黄色いスイスポ怖い」


「次の低速コーナーなら伊藤にチャンスあるぞ」


深い青の400Rが先頭を守り、その直後を黄色いスイフトスポーツが追う。


仕掛けは失敗した。


だが伊藤の闘志は、少しも冷めていなかった。

次回 地続きバトル



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