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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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502/534

吾妻編第42話 86ターボのダンシングライン展開!

フリス「……ッ!!」


ドゴオオオン!!


花がアクセルを一段と強く踏み込むと、WRXの極太のマフラーから強烈なアフターファイアが吹き出し、フリスのフロントガラスを挑発するように照らし出した。

若林「うおおおおっとオオオオ!!!? ケイマン側の車線の先が減速車線っ!!! フリスがここに来て大ピンチイイイイ!!!!!どうなってしまうのかアアアア!!!??」


吾妻スカイライン、1周目セクター3。双竜の辻を抜けた直後の高速セクションにおいて、コースの形状が突如として絶対王者に最悪の牙を剥いた。山吹 花のWRXと並走するためにフリスが選んだアウト側の車線は、登坂車線ならぬ「減速車線」——つまり、数十メートル先でゼブラゾーンと共に強固なガードレールへと消滅する、行き止まりのデッドエンドだったのだ。

ポルシェ 718 ケイマン GT4が叩き出す極限の速度域。迫りくるコンクリートの壁が、フリスの視界を急速に塞いでいく。


フリス「(なっ……!? 道が消えるだと!? 我の完璧な空間把握と計算式に、なぜこんな初歩的なエラーが……!!)」


可憐な少女の容姿を持つ女性、フリス。絶対王者として君臨してきた彼女の美しく愛らしい顔が、驚愕と焦燥で激しく引きつる。彼女の放つ甘い『コットンアイススノー』がいかに相手の精神を惑わせようとも、物理的なコンクリートの壁を透過することは決してできない。フリスが生き残るためには、急減速して花のWRXの後ろへ下がるか、あるいは強引にイン側へ幅寄せして彼女を弾き飛ばすしかない。

しかし、イン側を死守する山吹 花は、氷の女王としての冷酷で生意気な笑みを深め、WRXのステアリングを1ミリたりとも譲る気配を見せなかった。


山吹 花「……あら、絶対王者さん。あなた、ちとせさんの幻惑に夢中になりすぎて、コースの先を見るのを忘れていたんじゃない? 私がわざとあなたをこのアウト側に誘い込んだってこと、今頃気づいたのかしら?」


フリス「(こ、この生意気な小娘……!! 最初から我をこの行き止まりの車線に押し込むために、ちとせを抜いた直後のラインをミリ単位で計算していたというのか……ッ!?)」


花は挑発的な流し目でフリスのポルシェを見据えながら、EJ20エンジンのスロットルをさらに開け、WRXを重戦車のように前へと押し進める。彼女の放つ極寒の冷気が、ポルシェが割り込もうとするわずかな隙間すらも、物理的な氷の壁として完全に封鎖していく。


フリス「……ふざけるなッ!! 我は絶対王者だ!! こんなつるしの四駆風情に、道を譲ってたまるかアアアアッ!!!!」


フリスは一人の女性としての意地と、王者の誇りを剥き出しにし、ケイマンのステアリングを強引にイン側へと切り込んだ。しかし、花のWRXはスバル自慢のシンメトリカルAWDシステムとDCCDのトラクションをフル動員し、強烈な接地圧でフリスのポルシェの体当たりを完璧に弾き返した。


ガガァァァンッ!!!!!


弾き飛ばされたケイマンの鼻先を、無情にも減速車線の終わりを告げるガードレールが掠める。


フリス「……ッ!!」


フリスは可憐な唇を強く噛み締めながら、ついにPDKのシフトを叩き落とし、屈辱のフルブレーキングを強いられた。ポルシェのブレーキローターが赤熱し、激しい白煙と共に絶対王者の車体が大きく失速していく。


若林「フリス、痛恨のフルブレーキングウウウ!!!!! コンクリートの壁を前に、ついにアクセルを抜いたアアア!!!! そして山吹 花のWRXが、ポルシェをねじ伏せて単独トップに躍り出たアアアア!!!!!」


エアリ「……ふふ、見事な知略と度胸です。花さんは、フリスさんの慢心を完全に見抜いていました。力だけでねじ伏せるのではなく、コースの形状という絶対的な物理法則を利用して、王者を自滅の道へと誘い込んだ。まさに、氷のように冷徹な女王の采配ですね。」


スバルブルーのVABが、勝利の咆哮を上げながら先頭を駆け抜ける。

そして、急減速によって完全に失速したフリスの背後には、先ほど手品で出し抜かれ、真っ黒な殺意を煮えたぎらせたちとせのRZ34が、巨大な口を開けて迫っていた。


ちとせ「もへ〜……おじさんを置いてけぼりにして、随分と痛い目にあってるみたいだねぇ、フリスちゃん……。よそ見して減速なんて、本当に悪い子だぁ……」


のんびりとした口調とは裏腹に、ちとせの放つタチの悪い絶対零度の冷気が、逃げ場を失ったフリスのポルシェを背後から完全に包み込もうとしていた。


若林「単独トップに躍り出た山吹 花! しかし、彼女の攻勢は加速だけにとどまらないッ!! バックミラー越しに、失速した絶対王者へ向けて氷の弾丸が放たれるゥゥ!!」


吾妻の夜空をスバルブルーの残像で切り裂きながら、山吹 花は冷徹なまでの勝利の余韻に浸っていた。急減速し、ガードレールに追い詰められて小さくなっていくポルシェの白い車体。

花は通信機のスイッチを入れると、普段の彼女からは想像もつかない、刺すような冷たさを帯びた声で、屈辱に震えるフリスへと罵声を浴びせた。


山吹 花「……あら、どうしたの? 誇り高き『絶対王者』様が、そんなところで何をもたついているのかしら。随分と無様にブレーキを鳴らしていたみたいだけど。」


フリス「(っ……! この小娘……!!)」


山吹 花「自分では賢いつもりだったんでしょうけど、結局はコースの下見すらまともにできない、ただの『おままごとレーサー』だったってことね。その可愛いお顔に似合ってていいんじゃない? そのままそこで、自分の無能さを噛み締めながら、せいぜい私の排気ガスでも吸っていなさい!」


ドゴオオオン!!


花がアクセルを一段と強く踏み込むと、WRXの極太のマフラーから強烈なアフターファイアが吹き出し、フリスのフロントガラスを挑発するように照らし出した。


山吹 花「笑わせないで。あなた程度の底の浅い女に、私たちの『86伝説』が踏みにじられるなんて、万に一つもあり得ないのよ。……さようなら、自称・王者さん。あなたはそこで、ちとせさんにでも可愛がってもらえばいいわ。」


若林「痛烈だアアア!! 山吹 花、まさに氷の女王の独壇場!! 言葉の暴力でフリスのプライドを完全に粉々に粉砕したアアア!!!!」


エアリ「……ふふ、厳しいですねぇ。でも、花さんの言う通り、あの場面で減速車線に誘い込まれたのはフリスさんの完全な失策です。……甘い雪で人を惑わす罰が、自分に返ってきたというところでしょうか。……フリスさん、今の罵倒で完全に頭に血が上っています。これは、後方のちとせさんにとって最高の『餌』になりますね。」


花はバックミラーを一瞥し、通信を切った。彼女の瞳には、もはやフリスの姿はなく、ただ勝利という一点だけが鋭く映っていた。


若林「さあ、カメラは一気に熾烈な9位争いへと切り替わったアアア!! 吾妻スカイライン、セクター3後半!! 腹切 カナタのREVIVE86と、岡田 大成のGR GT!! トヨタの誇りを懸けた、新旧・魂の激突だアアア!!!!」


吾妻の深い闇の中、2台のトヨタ車が放つエキゾーストノートが激しく反響する。

前を行くのは、岡田 大成の操る漆黒のGR GT。トヨタのモータースポーツ技術の結晶であり、その心臓部には咆哮を上げるV8エンジンが鎮座している。対するは、腹切 カナタが魂を吹き込んだTOYOTA 86、通称『REVIVE86』。米沢編を経てターボへと換装されたその心臓は、格上の大排気量車を喰らうべく鋭い過給音を響かせている。


腹切 カナタ「岡田……ブロッキングが上手いな……!!!! 流石にルートを開けないとダメみたいだな……!!!!」


カナタはステアリングを握る手に力を込め、前方の巨大な黒い影——GR GTの挙動を凝視する。岡田のライン取りは極めて緻密で、カナタがインに鼻先を向けようとすれば、まるで未来を予見しているかのようにテールを滑り込ませ、完璧にシャットアウトする。カナタの「異常な路面把握能力」を以てしても、岡田の鉄壁の守りを崩すのは容易ではない。


岡田 大成「抜かせるわけねェだろ……!!! GR GTはトヨタの車で、V8エンジンを搭載しているんだ……!!!! あの腹切 カナタのトヨタ86のターボチューンであるREVIVE86には、劣らねェ!!!」


岡田はバックミラーに映る、執念深く食らいつくハチロクのライトを睨みつけ、アクセルペダルを床まで踏み抜く。V8エンジン特有の地響きのような重低音が周囲の空気を震わせた。トヨタが勝つために生み出したGR GTのプライドが、若き天才の猛追を真っ向から跳ね除けようとする。


カナタ「(……重戦車のようなパワー。だけど、コーナーの出口の立ち上がり……一瞬だけ、リアが暴れる! 岡田さんはV8のトルクをねじ伏せようとして、路面のわずかなギャップを拾いすぎている……そこだ!)」


カナタの脳内にある吾妻の路面マップが、一瞬の閃光と共に書き換えられた。岡田がパワーで逃げようとするその一瞬の隙、カナタはREVIVE86のターボ過給を最大まで引き上げ、岡田のわずかな「ラインの膨らみ」のさらに内側、ガードレールとの隙間わずか数センチのデッドラインへと車体を滑り込ませた!


若林「カナタが動いたアアア!! 岡田のV8パワーの暴力に対し、ハチロクの旋回能力とカナタの路面把握が勝負を仕掛ける!! コーナーの頂点で、二台のトヨタが火花を散らすゥゥ!!」


エアリ「……ふふ、熱いですね。岡田さんはトヨタの最新の『盾』として、カナタさんは古き良きハチロクの魂を継ぐ『矛』としてぶつかっています。……岡田さんのブロッキングは完璧に見えましたが、カナタさんはその完璧さの中に潜む、V8ゆえの『重さ』を見抜いたようですね。……岡田さん、守りに入ったらカナタさんの餌食ですよ?」


漆黒のGR GTと、純白のREVIVE86。

セクター3の出口へ向けて、二台のトヨタは互いのプライドを削り合いながら、異次元の加速競争へと突入していった。


若林「双龍の辻をサイドバイサイドオオオォォォォ!!!!! まるで二匹の龍が絡み合いながら山を駆け下りるような、トヨタ同士のバトルが熱すぎるアアアア!!!!!」


吾妻スカイライン、セクター3の核心部。火山ガスを凍らせたフリスの冷気がわずかに残る、あの死の6連ヘアピン「双龍の辻」に、今度は9位争いの二台が完全に横並びの状態で突っ込んでいった!

アウト側を強引にキープし、V8エンジンのパワーでねじ伏せんとする岡田 大成のGR GT。そしてイン側、ガードレールを削らんばかりの最短距離を突っ走る腹切 カナタのREVIVE86!


岡田 大成「……クソッ、どこまで食らいついてきやがる!! 86にこれほどまでの旋回速度があるなんて聞いてねェぞ!! だが、この双龍の辻の立ち上がり……V8のトルクで引き離してやるッ!!」


岡田はコーナーの頂点でステアリングをさらに切り込み、リアタイヤが悲鳴を上げるのを承知でアクセルを蹴り飛ばす。漆黒のGR GTが、暴力的なトラクションでハチロクを外側から押し潰そうと圧力をかける。


腹切 カナタ「……わかる。岡田さんのライン、V8の重さをカバーするために一瞬だけフロントの荷重が逃げてる……! そこが唯一の、ボクが並べるルートなんだ!!」


カナタの瞳に、極限状態特有の鋭い光が宿る。ハチロクの過給機が「キィィィィィィン」と鼓膜を劈くような高周波音を響かせ、280馬力のパワーが路面へと叩きつけられた。ターボ化によって手に入れた「直線での武器」が、岡田のV8に対抗するための牙となる。


ガシュウウウウウッ!! ギャリギャリギャリッ!!!!


二台のタイヤが、凍結した路面の上で激しく接触し、火花と氷の欠片が夜空へ舞い上がる。1ミリでもステアリングを誤れば、共倒れで崖下へ転落する狂気の並走。だが、両者共にブレーキを抜く気配は一切ない。


若林「並んだまま離れないッ!! 漆黒のV8と、白銀のターボハチロク!! 双龍の辻のヘアピンを、二台が完全にシンクロしてクリアしていくウウウ!! これぞトヨタの意地、レーサーの魂のぶつかり合いだアアア!!!!」


エアリ「……ふふ、息を呑むような美しさですね。岡田さんは最新の技術を詰め込んだGRの誇りを。カナタさんは、古き良きハチロクを現代に蘇らせたREVIVEの魂を。……どちらのトヨタ愛が勝るのか、このヘアピンの立ち上がりで決着がつきますよ。……あら、でも後ろの眞鍋さんも、この熱気に触発されて『銀の翼』を広げ始めたみたいですね。」


後方からは、眞鍋 琉世のランエボIXが虎視眈々とこの隙を狙っている。

双龍の辻の出口。二匹の龍が互いの鱗を削り合いながら、セクター4へのカウントダウンを始めた!


若林「見ろオオオオ!!! トヨタ同士の肉弾戦、その背後数センチの領域に、銀色の閃光が滑り込んでいるッ!! 眞鍋 琉世のランエボIXだアアア!!!!」


吾妻スカイライン、セクター3の出口。岡田のGR GTとカナタのREVIVE86が、互いのドアパネルを擦り合わせながら双竜の辻を駆け抜けるその直後。眞鍋 琉世は、二台が撒き散らす火花とタイヤスモークの渦中にあって、驚異的なまでの冷静さで腹切 カナタの挙動を観察していた。


眞鍋 琉世「コーナーを鮮やかに左足ブレーキしながら曲がっていくのか....。クラッチも完璧だし、俺にとっては破綻しても上手くスピンターンのダンスを繰り広げている......これが86なのか?」


眞鍋の瞳には、格上のV8マシンを相手に、物理限界のさらに先でマシンを踊らせるカナタの姿が焼き付いていた。カナタの86は、一見すれば破綻しかけているように見えるほどの鋭いアングルでコーナーに進入しながら、左足ブレーキによる荷重コントロールと、電光石火のクラッチワークによって、その「破綻」を「推進力」へと瞬時に変換している。


眞鍋 琉世「(……あの86は死んでいない。むしろ、追い詰められれば追い詰められるほど、生き物のように躍動してやがる。俺のエボIXのACD(アクティブ・センター・ディファレンシャル)による精密な旋回とは対照的な、血の通った『ダンス』だ。)」


眞鍋は感嘆しながらも、銀色のランエボIXのステアリングを冷徹に切り込む。カナタの芸術的な走りに敬意を払いつつも、勝負となれば話は別だ。二台が並走し、わずかにラインが膨らんだその刹那、眞鍋はエボIXの4G63エンジンのブーストを全開まで引き上げた。


若林「眞鍋がいったアアアア!! 芸術的な86のダンスに見惚れながらも、その牙を研ぐのを忘れていなかった!! 二台のトヨタの隙間を縫うように、銀色の戦闘機が翼を広げるゥゥ!!」


エアリ「……ふふ、眞鍋さんは本当に冷静ですね。カナタさんの走りの本質を瞬時に見抜き、それを『ダンス』と表現する感性。……ですが、今の眞鍋さんの目は、そのダンスのパートナーを奪い取ろうとする、冷酷なハンターのそれです。岡田さんとカナタさん、二人が見せ合っている隙を、眞鍋さんが見逃すはずがありません。」


銀色の車体が、ハチロクの排気音を切り裂いて前に出る。

トヨタ同士の意地のぶつかり合いに、三菱の魂を宿した「銀の戦闘機」が冷徹な一撃を叩き込もうとしていた。

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