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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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495/534

吾妻編第35話 Rの底力

吾妻スカイライン、下りの最深部。ヘアピンの入り口は、二台のGT-Rが撒き散らす火花と、焼けたアスファルトの匂いに包まれていた。

先行する相川 美保の400Rが、その軽量さを武器に最短距離のクリッピングポイントを掠め取る。しかし、その刹那、バックミラーに映る漆黒の怪物が、物理法則をあざ笑うかのような挙動を見せた。


相川 律「……とうとう俺を怒らせちまったみたいだなァ....?

見せてやるよ、美保。お前がまだ知らない、Rの本当の底力をなアアア!!!」


相川 律は、R35 NISMOの強大なダウンフォースを信じ、あえて美保が踏み残したアウト側のわずかなグリップ領域に巨体を叩き込んだ。

通常、あの速度と重量でアウトから被せれば、車体は遠心力に負けてガードレールの餌食になるはずだ。だが、律のマシンは一切の「逃げ」を見せない。アテーサE-TSが四輪のトルクをミリ秒単位で制御し、タイヤを路面に溶接したかのような安定感でヘアピンを旋回していく。


若林「GTR対決は、R35 NISMOに軍配が上がるううう!!!!!! 相川 律がいつものようにスリップしない......!!! 強烈なヘアピンオーバーテイクの契約成立だアアアアア!!!!」


実況席の若林が喉を枯らさんばかりに絶叫する。

美保の400Rが、旋回速度を維持しようとテールを僅かに流したその一瞬、律のR35は一切のスライドを許さぬ「点」の旋回でインサイドを奪い返した。二台のドアパネルが重なり、不快な金属音が夜の山に響く。しかし、立ち上がりで圧倒的なトラクションを見せたのは、やはり「最新のR」だった。


相川 美保「……うそ……っ!? 滑ってない……? あんな重い車で、なんで吸い付くように曲がれるのよッ!! お兄ちゃんのバカ……本気すぎるよ……ッ!!」


美保の叫びを置き去りにし、漆黒のR35 NISMOがターボの過給音を夜空に響かせながら、ヘアピンの出口へと弾け飛んだ。律の瞳には、すでに前方を逃げる柳津 雄介のM4の後ろ姿しか映っていない。


相川 律「……悪いな、美保。俺はお前より、この『重さ』を背負って走ってきた時間が長いんだ。兄貴の背中、嫌でも焼き付けておけ。」


エアリ「……素晴らしい。律さん、今のブレーキングは芸術的でした。美保さんの『鋭さ』を、あなたの『厚み』で完全に封じ込めた。……若林さんの言う通り、これはまさに勝利への契約。美保さん、サメの牙が届かない深海の領域を、お兄さんは今、たった一人で突き進んでいますよ?」


若林「相川 律、12位死守!! いや、11位の柳津を射程に捉えたアアア!! 吾妻のダウンヒル、兄妹の絆を切り裂いて、漆黒のRが再びその牙を剥きますッ!!」


漆黒の闇に沈む吾妻スカイライン。そこには今、物理的な「速さ」を超えた、血の繋がった兄妹による魂の削り合いが展開されていた。

ヘアピンの立ち上がり。最新の電子制御アテーサE-TSを武器に、無機質なまでに完璧なトラクションで先行したはずの相川 律。彼の視界には、勝利の確信と、兄としての安堵が僅かに混じっていた。


しかし、その背後。立ち上がりの一瞬、ディープマリンブルーの400Rから放たれたプレッシャーが、律の背筋を氷のように冷たく撫でた。


相川 美保「……やられたと思った?」


無線越しに響く美保の声は、かつての可憐な妹のものではない。深海の底から獲物を見据える、飢えた鮫の響きだった。

美保は、立ち上がりのラインを僅かにアウトに取っていた。律のR35がその巨体でインサイドを完璧に封鎖した反動で生じた、アウト側の僅かな「空白」。そこは潮風が吹き抜ける、彼女だけの狩場だった。


若林「400Rがサメのような力をむき出しにコーナー後半から立ち上がるううう!!!!! 相川 律! 死守できるのかアアア!!???」


美保の右足がアクセルペダルを床まで踏み抜く。RB-X GT2エンジンが、かつてル・マンの地を震撼させたあの伝説の咆哮を吾妻の夜空に叩きつけた。過給圧が限界まで高まり、ディープマリンブルーの車体が波を切り裂く青い鮫となって、律のR35の真横へと「浮上」した。


相川 律「な……ッ!? 滑らせているのか……!? いや、違う! 立ち上がりの一瞬でフロントを逃がし、リヤの蹴り出しだけでラインを強引に修正したというのか……ッ!!」


律の驚愕は正しい。美保は、R33という旧世代の重さを逆手に取り、慣性を利用して鮫の尾鰭(おびれ)を振るうかのように車体を回しきったのだ。それは、海を知り、鮫を愛する彼女にしかできない、本能的なマシンの操り方だった。


相川 美保「お兄ちゃん、潮風はね……時には嵐になるんだよ!! ブルーシャークの牙、受けてみてッ!!」


二台のGT-Rが、サイドミラーを粉砕せんばかりの距離で並走(サイド・バイ・サイド)したまま、時速180キロを超える超高速のダウンヒル・ストレートへと飛び込んでいく。

青い鮫が漆黒の猛獣の喉元に噛み付く。兄としての誇りと、妹としての覚醒。吾妻の歴史に刻まれるべき「Rの決戦」は、もはや誰にも止められない領域へと突入していた。


エアリ「……素晴らしい。美保さん、今のあなたは最高に輝いていますよ。お兄さんの律さんが作り出した『完璧な壁』を、あなたは『野生の直感』で食い破った。……律さん、これがあなたが守りたかった妹さんの、本当の姿です。……さあ、深海の底へ引き摺り込まれるのは、どちらの方でしょうね?」


吾妻の夜を引き裂く、二条の光の奔流。

時速200キロの領域で並走する、紺碧のR33と漆黒のR35。

相川 律は、隣を走る妹の気配が、これまで知っていたどんなレーサーとも異なる異質なものに変貌していることに戦慄していた。それは機械的な正確さではなく、もっと根源的な、荒々しい自然の力そのものだった。


相川 美保「……私のRは鮫のように突き刺す……!! そして私の通るラインが、まるで共鳴する海の渦潮のように……!!!」


美保のステアリング操作は、もはや理論を超えていた。律のR35が切り裂いた空気の乱気流――その目に見えない「渦」を、彼女は肌感覚で捉えていた。400Rのボディが、律のマシンが発生させる巨大なウェイク(後流)の渦潮に吸い寄せられ、共鳴し、爆発的な推進力へと変換されていく。


相川 律「なっ……!? 俺のスリップストリームを利用しているのか!? いや、違う、これは……気流そのものを支配しているのかッ!?」


律がR35の巨体を安定させようと微修正を加えたその一瞬の隙。

美保は、渦の中心から解き放たれた弾丸のように、兄の懐深くへと飛び込んだ。


相川 美保「私のブルーシャークを……33を舐めないで!!!!」


RB-X GT2エンジンの咆哮が、兄のVR38DETTの重低音を完全に凌駕する。潮騒のようなスキール音と共に、紺碧の閃光が漆黒の闇を突き破った。


若林「ブルーシャークが行ったアアア!!!! 相川 美保のR33 400Rが大逆転!!! 兄のR35を、速度の乗るダウンヒルストレートで完全にねじ伏せましたアアア!!! エアリさん、今のシーンどうでしたか?」


エアリ「……ふふ、鳥肌が立ちましたよ。美保さんの言った『渦潮』……あれは比喩ではありません。彼女は、律さんの巨大なR35がかき乱した空気の渦を、サーフィンでもするかのように乗りこなしたんです。」


エアリはモニターに映し出された美保の車両データを見ながら、感嘆のため息をついた。


エアリ「律さんは完璧な理論で走っていましたが、美保さんはその理論の外側にある『カオス(混沌)』を味方につけた。あの一瞬、吾妻の風は完全に彼女のものでしたね。……律さん、あなたの完敗です。妹さんはもう、あなたが守るべき小さな魚ではなく、大海原を支配する捕食者ですよ。」


若林「信じられないッ!! 相川兄妹による『Rの極限決戦』が吾妻の山肌を真っ白に焼き尽くそうとしているこの瞬間に、ゲスト解説のエアリさんが……な、何やらプライベートな電話を始められたようですッ!! エアリさん、今この状況で一体誰と!?」


五台のマシンが火花を散らす中、実況席のエアリは涼しげな顔で懐から端末を取り出していた。ヘッドセットを少しずらし、モニターの喧騒を遠くに聞きながら、彼女は小さく溜息をつく。


エアリ「あ、すみません....少し電話に出ていいですか?」


エアリ「……あ、サツキ? え? 今度ゲスト解説員やりたいって?」


受話器の向こうから聞こえてくるのは、どこか幼く、それでいて数千年の時を生き抜いたかのような、傲岸不遜な響き。それはこのエーペックスカップという舞台には不釣り合いな、「闇」の気配を纏った声だった。


サツキ「そうなのじゃ! クレアも随分速くなったみたいじゃし....我も解説員しようかのーってな☆ 最近の人間たちの鉄の馬の競演、近くで見てみたくなったのじゃよ。」


エアリ「はぁ......サツキに務まる? 君みたいな『闇の魔術師』と言われている存在がね……。この大会はあくまで物理法則と執念のぶつかり合い。君がしゃべり始めたら、実況席が魔法陣で埋め尽くされちゃうんじゃないの?」


サツキ「くくっ、失礼な奴じゃ。我とて礼儀くらいは心得ておる。それに、あの重力を弄ぶ娘や、氷を撒き散らす獣神たち……あやつらの走りに『理(ことわり)』を添えるのは、我のような存在こそ相応しいとは思わんか?」


エアリ「理、ねぇ……。まあ、主催者側が首を縦に振ればいいけれど。でも、その喋り方だけは気をつけてよね。若林さんが混乱して、絶叫どころか泡を吹いて倒れちゃうかもしれないから。」


サツキ「案ずるな、エアリ。我も少しは現代の流行に乗りたいのじゃ。……して、今の戦況はどうなっておる? あの青い鮫の娘、なかなかに面白い風を纏っておるではないか。」


エアリ「ええ、見ての通り。今は兄妹の絆をかなぐり捨てた、魂の削り合いの真っ最中。……サツキ、もしあなたがここに来るなら、この熱量に当てられて魔力が暴発しないようにね。吾妻の山が、あなたの闇で塗り潰されるのは御免だわ。」


二人の「超常」の存在が交わす会話を他所に、コース上では美保の400Rが律のR35を引き離し、柳津のM4の喉元に迫っていた。若林は受話器を耳に当てるエアリの横で、半ばパニックになりながらも、実況の義務を果たすべくマイクを握りしめている。


エアリ「……ふぅ、お待たせしました。ちょっとお騒がせな知り合いからで、失礼しました。」


実況席に戻ったエアリは、ヘッドセットを直しながら冷静にモニターへと視線を戻す。しかし、その瞳の奥には、新たな波乱を予見するような鋭い光が宿っていた。


若林「さあ! 1周目も終盤というこの時、最後尾側のグループにも異変が起きていますッ!!!! 中野 伸一、陽太、そして佐藤 ジュン!! この三台による、意地と誇りを懸けたテール・トゥ・ノーズのバトルが始まるのかアアア!!???」


吾妻の深い闇を、三つの異なるエンジン音が震わせる。

最後尾に沈んでいた中野 伸一のアルテッツァが、ここでその「牙」を剥いた。かつて「ハチロクの再来」と謳われた名機の咆哮が、先行するオレンジのロードスターと、美しき旋回を描くRX-7を追い詰める。


中野 伸一「……ここで全てやり返してやる……!! アルテッツァをただのセダンだと思って舐めてもらっちゃア困るなァ……ッ!!!」


中野はフロントに荷重を乗せ、3S-GEエンジンの高回転域を維持したまま、タイトな下りコーナーへとアルテッツァを放り込む。FRらしい素直な挙動、それでいて力強い蹴り出し。彼はこの一台に人生のすべてを懸けてきた男の意地を、その右足に込めていた。


対するは、オレンジの閃光を放つ陽太のNDロードスター。


陽太「……風が、少し変わった。後ろから来るアルテッツァの熱気が、僕のラインを乱そうとしてる……。でも、このオレンジの翼は、そう簡単に折れやしないよッ!!」


陽太は軽量な車体を活かし、ひらりひらりとコーナーを舞う。まるで吾妻の風そのものになったかのような軽やかなハンドリング。その後ろにピタリと吸い付くのは、佐藤 ジュンの駆るFD3S、RX-7だ。


若林「佐藤 ジュン! ロータリーエンジンの悲鳴のようなサウンドが、谷底から響いてくるッ!! 彼女の操るFD、まるで生き物のようにしなやかに、中野のアルテッツァと陽太のロードスターの隙間を狙っているぞオオオ!!」


佐藤 ジュン「……おじさんたちの熱苦しいレースに付き合うのは趣味じゃないけど。このFDをただの飾りだと思ったら大間違いよ。ロータリーの真骨頂、ここで見せてあげるんだから……ッ!!」


佐藤 ジュンは、細い指先で繊細にステアリングを操り、シーケンシャル・ツインターボが奏でる独特の過給音と共に、中野のインサイドへとフロントノーズを潜り込ませた。


エアリ「……ふふ、面白いですね。中野さんの『重厚な執念』、陽太さんの『軽やかな風』、そしてジュンさんの『鋭い一撃』。最後尾争いとはいえ、その密度はトップ集団に引けを取りません。……中野さん、そのアルテッツァで二人の若き才能を抑え込めますか? それとも、ここで力尽きてしまうのかしら?」


若林「三台並んだ、三台並んだアアア!! 吾妻の最終区間、まさかの三つ巴がここでも勃発だアアア!!!」


若林「ああ失礼いたしましたッ!! 興奮のあまり私の実況までスピンしそうでしたアアア!! 承知しました、吾妻の夜を焦がす物語のすべてを、このまま克明に記録し続けましょうッ!!」


吾妻のダウンヒル、トップを快走する「氷雪の獣神」ちとせと、それを執拗に追う柊 蒼真。その直後、第3グループでは極寒の冷気と復讐の熱気が入り混じる、極限の緊張状態が続いていた。


サテラの操る水色のランサーエボリューションVII MRが、まるで水を得た魚のようにコーナーを縫っていく。しかし、その直後を追うフリスは、自身のポルシェ 718 ケイマン GT4のコクピットで、ステアリングに伝わる微かな空気の乱れを敏感に察知していた。


フリス「……コイツ、何かやらかすと我は思う。そのライン取り、あまりに危うすぎるな。復讐の刃を研ぐ我の目をごまかせると思うなよ。お前のその『揺らぎ』……嫌な予感しかしないぞ。」


フリスの予感は、次の瞬間、物理的な衝撃となって現実のものとなった。超高速の緩やかなS字セクション。本来であれば三菱自慢のACDが完璧に制御し、オン・ザ・レールで駆け抜けるはずの旋回ラインが、唐突に崩壊する。


ギュワアアアア!!!!!!


深夜の峠に、耳を劈くようなスキール音が響き渡る。水色の車体が激しくテールを振り、アスファルトの上で独楽のように回転を始めた。路面には瞬時に黒い紋様が刻まれ、猛烈な白煙が後続二台の視界を真っ白に染め上げる。


サテラ「あら〜ん☆ ちょぉっとスピードを出しすぎちゃったかしらぁん? 吾妻の道は、思ったよりも濡れていて滑りやすいのねぇん☆」


若林「サテラアアアアア!!!!!! エボ7MRのサテラがスピイイイン!!!! 何ということだ!! 表彰台圏内を死守していたサテラが、ここで痛恨のミスだアアア!! すぐに体制を立て直すも、フリスと山吹 花の先行を許してしまったアアアア!!!!!!」


サテラは鮮やかなステアリングワークですぐに車体を進行方向に向け直すが、その刹那、フリスのケイマンと山吹 花のWRX STIが、冷気を撒き散らしながら彼女の真横を弾丸のように突き抜けていた。


山吹 花「……氷の女王の前に立つなら、それ相応の覚悟が必要よ。……無様な姿ね、サテラさん。先に行かせてもらうわ。」


エアリ「……ふふ、お待たせしました。……今のスピン、サテラさんの計算違いか、それともただの『お遊び』か。……彼女の『水鮫』という二つ名は、獲物を油断させるための揺らぎでもあります。……でも若林さん、フリスさんの『コットンアイススノー』と、花さんの『極寒の冷気』の二枚抜きですよ? これは順位以上に、精神的なプレッシャーが重くのしかかるはずです。」


若林「サテラ、一気に3位から5位へ後退ッ!! 第3グループの序列が、この1周目の最終盤で根底から覆ったアアア!! 残るはホームストレートへの立ち上がり、このままの順位で1周目が終わるのかアアア!!!」


若林「そして行ったアアアア!!!!!! 誰もが目を疑う光景だアアア!! 最新鋭の空力デバイスを誇るM4 DTM Editionを、あのディープマリンブルーの残像が、内側からナイフのように切り裂いたアアアッ!!」


吾妻のダウンヒル、最終セクションの緩やかな複合コーナー。柳津 雄介は、BMW M4のフロントを必死にイン側に向けようとしていた。しかし、そのわずかな隙間――タイヤ一個分あるかないかの「死の領域」に、相川 美保の400Rが音もなく、けれど圧倒的な圧力を持って滑り込んできた。


柳津 雄介「……ッ!? なんで昔のRなんかが速いんだよ……っ!!! 物理的にありえねえだろうがッ!!」


柳津の視界の端を、無機質な鉄の塊ではなく、意志を持った巨大な捕食者が通り過ぎていく。一瞬、並走した瞬間に見えた隣のマシンのドライバーの横顔。それは、戦場には不釣り合いなほどに若く、けれど氷のような静寂を湛えた少女の姿だった。


柳津 雄介「……にしてもドライバーの子、若いな……。カリンと同じくらいの歳か? なんでそんなガキが、こんな化け物みたいなマシンを御(ぎょ)せるんだよ……っ!!」


柳津の驚愕を置き去りにして、美保の400Rは路面を吸い込むようなトラクションで加速していく。


相川 美保「……」


美保は何も答えない。彼女の耳に届くのは、もはや若林の実況でも、柳津の動揺でもなかった。ただ、RB-X GT2エンジンが奏でる潮騒の調べと、自らの鼓動が共鳴する音だけ。彼女の瞳には、前方を走る高槻 健永のバイパーのテールランプ、その一点だけが映っていた。


若林「呆気なくM4をR33 400Rがオーバーテイクしてしまう!!!! 相川 美保、大金星だアアア!! 兄を抜き、今また格上のハイパワーマシンを餌食にしたッ!! 吾妻のダウンヒルに、今まさに『ブルーシャーク』の伝説が刻まれようとしていますッ!!」


エアリ「……ふふ、驚きましたね。柳津さんはM4のポテンシャルを信じすぎていた。対して美保さんは、R33というマシンの『重さ』と『古さ』さえも、海の流れの一部として受け入れている。……柳津さん、あなたの敗因は彼女を『ガキ』と侮(あなど)ったこと。今の彼女は、この吾妻の闇そのものを味方につけた、深海の女王ですよ?」


若林「11位、相川 美保!! 12位、柳津 雄介!! 1周目のコントロールラインを前に、順位が目まぐるしく入れ替わるッ!! このまま上位のバイパーをも食らい尽くすのか、相川 美保ォォォッ!!」

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