吾妻編第32話 ダウンヒルのカオスレース勃発
若林「おっとォ!! 突如としてインサイドを強襲された古賀 加奈子が、驚愕のあまり絶叫したアアア!! まさに重力の魔法、常識では考えられない角度からのオーバーテイクだアアア!!」
古賀 加奈子「いつの間にGRスープラが....!? バカなの.....!???」
2.5トンを超える「紅い重戦車」BMW M5を駆る加奈子にとって、イヨのスープラが見せた動きは物理法則への冒涜に他ならなかった。
ヘアピンの立ち上がり、M5の強大なトルクをもってしても抑えきれないはずのラインを、イヨのスープラは「濃いピンク色」の重力波動を路面に叩きつけながら、まるでレールの上を走るかのように曲がりきってみせたのだ。
イヨ「えへへ☆ バカじゃないよーっ! イヨは『少しだけ壊す側』だもんっ! 加奈子お姉ちゃんの大きな車、重力でぺっちゃんこにしちゃうぞ〜☆」
古賀 加奈子「なっ……! あのガキ、なんてことを……ッ!! 2.5トンの質量をナメるんじゃないわよッ!!」
加奈子は悔しげにステアリングを叩くが、ダウンヒルで加速を乗せたスープラの背中は、もはや加奈子の視界の先、相川美保の400Rの真後ろまで迫っていた。
若林「加奈子選手、呆然!! イヨのGRスープラ、その勢いは留まることを知らない!! 13位に躍り出た重力少女、次なるターゲットは12位の相川 美保だアアア!!」
エアリ「……無理もありませんね。加奈子さんのM5は『重さを武器にする』マシン。対してイヨさんのスープラは『重さを支配する』マシン。相性は最悪です。……加奈子さん、あなたの重戦車がただの鉄屑に見えるほど、今のイヨさんは冴え渡っていますよ。」
若林「なんという執念だアアア!! 抜かれたはずの古賀 加奈子が、2.5トンの質量を咆哮させ、ダウンヒルで再びイヨの真横に並びかけたアアア!! 次のヘアピン!! M5とGRスープラが完全にサイド・バイ・サイドオオオオオオオオ!!!!!!」
超重量級のM5が、下り坂の重力加速度を味方につけて文字通りの「重戦車」と化す。カーボンセラミックブレーキが真っ赤に焼け落ちんばかりの制動力を発揮し、イヨのインサイドを強引に塞ぎにかかる!
古賀 加奈子「クソガキがアアアアアっ!!!!! なめてんじゃないわよッ!! このM5の重さは、あんたの小細工を叩き潰すための『武器』なのよォォォォォッ!!!!! うおおおおおおおお!!!!!」
イヨ「わわっ☆ お姉ちゃん、すっごい迫力……! でもでも、イヨの重力は、重ければ重いほど効いちゃうんだよっ!」
イヨは「濃いピンク色」の重力波動をさらに強め、スープラのタイヤをアスファルトに無理やり食い込ませる。
アウト側に膨らもうとするM5の巨大な車体に対し、スープラは物理限界を超えた回頭性で、加奈子の鼻先を掠めるようにしてターンインを開始した!
若林「接触寸前!! 吾妻のヘアピンが二台の火花で真っ赤に染まるッ!! 加奈子の意地か、イヨの魔法か!! まさに重量と重力の真っ向勝負だアアア!!!」
エアリ「……加奈子さん、捨て身ですね。ですが、あの速度でインに飛び込めば、立ち上がりで確実にイヨさんに刺されますよ。……まあ、その『バカ』になれる熱さ、嫌いじゃありませんけどね?」
若林「いや! 並びかけても抜くことはできませんっ!!!! 白いGRスープラが赤いM5の前に立ちはだかる!!! 重力の壁は、2.5トンの質量をもってしても突破不可能なのかアアア!!!」
古賀 加奈子が捨て身のブレーキングで並びかけたのも束の間。ヘアピンのクリッピングポイントを通過した瞬間、イヨのGRスープラが「濃いピンク色」の重力波動を爆発させた。スープラは物理的な遠心力を完全に無視し、M5の進路を塞ぐようにしてインサイドから最短の立ち上がりラインを強奪したのだ。
古賀 加奈子「なっ……!? なんであんな角度から前に割り込めるのよッ!! 嘘でしょ、私のラインが……消された!?」
イヨ「えっへん☆ お姉ちゃんの車は重すぎるから、止まるのも大変だよねっ! でもイヨのスープラちゃんは、重力を味方にしてるから止まらないんだよーっ!」
立ち上がり。加奈子のM5がその重さゆえに、加速体制に入るためのコンマ数秒のラグを強いられている間に、イヨは羽が生えたような軽やかさでアクセルを踏み抜く。赤い重戦車の鼻先を、白い影が嘲笑うかのようにかすめて先行した。
若林「イヨ、鉄壁のディフェンス!! 否、これはディフェンスという名の攻撃だアアア!! 古賀 加奈子の逆襲を力ずくでねじ伏せ、逆にその差を広げていく!! 重力少女、強すぎるッ!!!」
エアリ「……言ったでしょう? 重ければ重いほど、イヨさんの重力操作の餌食になるんです。加奈子さんの2.5トンは、今や彼女を後ろへ引き戻す『重り』でしかありません。……さあ、加奈子さん。重戦車が動けなくなった時、次に何が起きるか……分かりますよね?」
相川 律「……隙あり。姉さんに追いつく前に、まずはあんたを片付けさせてもらうよ。」
若林「おっとオオオ!! 加奈子が失速した一瞬を見逃さない!! 後方から相川 律のGT-R NISMOが牙を剥いたアアア!! 14位争いも一気にヒートアップだアアア!!!」
若林「なんという負けん気だアアア!! イヨの『見えないよね?』という無邪気な死告を、古賀 加奈子が真っ向から否定したアアア!! M5の巨体が、まるで意志を持った岩盤のようにイヨの背後に再び圧をかける!!」
イヨ「ん〜そろそろ後ろに見えないよね?☆」
スープラのバックミラーを覗き込み、余裕の表情で首を傾げるイヨ。彼女の計算では、先ほどの立ち上がりでM5は完全に戦意を喪失し、バックミラーの豆粒になっているはずだった。
しかし、現実は違った。そこには、フロントグリルを怒りに震わせ、左右に車体を揺らしながら猛追する「紅い重戦車」の姿があった。
古賀 加奈子「舐めんな。……あんたの重力だか何だか知らないけど、このM5には私の『誇り』が乗ってるのよ。子供の遊びに付き合って、後ろに下がってやるほどお人好しじゃないわッ!!」
加奈子はエンジンの回転数をレッドゾーンギリギリまで引っ張り、凄まじいエンジンブレーキと共にイヨのラインをトレースする。下り坂の慣性をすべて加速エネルギーに変換し、イヨが「見えない」と言ったその刹那、再びスープラのリアバンパーを突き破らんばかりの距離まで詰め寄った!
若林「加奈子、執念の再接近!! イヨの『対抗角』をも上回る、根性と気合のダウンヒルだアアア!! 重力少女イヨvs紅き重戦車加奈子!! この因縁、1周目のフィニッシュまで決着がつかないのかアアア!!」
エアリ「……面白いですね。イヨさんの合理的な重力支配が、加奈子さんの不合理な『感情』に押し戻されている。加奈子さん、その熱さ……タイヤを使い切る覚悟ですね? だったら見せてくださいよ。その重戦車が、魔法を打ち破る瞬間を。」
若林「イヨ、さらにギアを上げてきたアアア!! 『対抗角グリグリ』!? その言葉通り、スープラの挙動がさらに異次元の領域へ!! 加奈子の執念をあざ笑うかのように、白い車体がさらなる重力魔法を纏います!!」
イヨ「へー! なら対抗角グリグリしても振り切ろうかなー? スープラちゃん、もっと地面をギュッてして、お姉ちゃんをビックリさせちゃおうっ☆」
イヨがステアリングを細かく、かつ鋭く操作すると、GRスープラの四輪にかかる重力配分がリアルタイムで書き換えられていく。
コーナーごとに最適な「対抗角」を物理演算で弾き出し、タイヤの接地面を無理やりアスファルトに押し付ける。
もはやそれは「グリップ」ではなく、路面と「同化」しているかのような旋回。
加奈子のM5が遠心力で外側に僅かに孕むその一瞬、イヨのスープラはコマのように鋭く回転し、コーナーの出口へ向けて弾け飛んだ!
古賀 加奈子「なっ……グリグリって何よ……!? コーナーを曲がるたびに、あの車だけ重力加速度の影響を受けてないみたいに加速していく……!! 待ちなさいッ! 逃げるんじゃないわよォォォッ!!」
若林「引き離したアアア!! イヨのGRスープラ、コーナーひとつ抜けるたびに加奈子のM5との距離を数メートルずつ広げていく!! これが……これが重力を統べる少女の真の走りなのかアアア!!」
エアリ「……『グリグリ』、ですか。可愛い名前に似合わず、やっていることはえげつないですね。マシンの重心を自在に操り、慣性を完全に封じ込めている。加奈子さんの『誇り』という重りでは、もう彼女の影すら踏めないかもしれませんよ。」
若林「ヘアピンで3台飛び込んだアアア!!! GRスープラ! M5! そしてR35 NISMOの火花がバチバチだアアアアっっ!!!!! 先頭のイヨを追って、古賀 加奈子と相川 律がほぼ同時にコーナーへ突入していくッ!!!」
イヨの「グリグリ」加速でわずかに空いた加奈子のインサイド。その針の穴を通すような隙間に、漆黒のカーボンパーツを全身に纏ったR35 GT-R NISMOが、獲物を狙うハヤブサのごとき鋭さで滑り込んだ。
古賀 加奈子「相川くん!? ウソでしょ....!!?? こんな時にRが....!!??」
古賀は驚愕に目を見開く。先行するイヨを仕留めることに全神経を注いでいた彼女にとって、同じく中団に沈んでいたはずの相川 律が、このタイミングで自分の横に並んでいることは計算外だった。
相川 律「……悪いな、古賀さん。あんたのM5はデカすぎて、この下りじゃ隙だらけだ。美保のところへ行く前に、まずはあんたをここで抜かせてもらう。」
律の瞳には、遥か前方を行く妹・美保の400Rの後ろ姿しか映っていない。究極の4WDシステム、アテーサE-TSが路面状況を瞬時に演算し、R35の巨体を無理やりイン側のクリッピングポイントへとねじじ伏せる。
若林「相川 律、冷徹な一撃!! 妹への想いが、R35の秘めたる牙を呼び覚ましたか!! 古賀 加奈子、インサイドを完全に封じられ、逆に逃げるイヨとの間にGT-Rを挟まれる形になったアアア!!」
エアリ「……いいですね、律さん。今のブレーキングは完璧でした。加奈子さんの『重さ』を逆手に取り、立ち上がりのラインを潰しに行きましたね。イヨさんの重力、加奈子さんの意地、そして律さんの執念……このヘアピン、もはや物理法則が崩壊しかかってますよ?」
イヨ「わわっ☆ お兄ちゃんも来たー! 三つ巴だねっ! でもでも、イヨは誰にも捕まらないもんねーだ!」
三台のマシンが、お互いの塗装を削り合わんばかりの距離でヘアピンを旋回する。1周目のクライマックス、吾妻の山肌にタイヤの悲鳴と三色の咆哮が激しく木霊した。
若林「M5をRが抜いたアアアっ!!!!! 2.5トンの巨壁を、R35の強大なトラクションが切り裂いた!! スタートから牙を隠し続けてきた、ようやくRの火花がつき始めましたあああ!!!! 律が14位へ浮上!!」
相川 律の駆るR35 NISMOは、ヘアピンの立ち上がりで古賀 加奈子のM5を完全に置き去りにした。アテーサE-TSが路面に叩きつけるトルクは、もはや「重戦車」の追随を許さない。
相川 律「……悪いな、古賀さん。俺には先に行く理由があるんだ。美保……今行くぞ!」
しかし、その視線の先。妹である相川 美保もまた、青い鮫となって牙を剥いていた!
若林「そして!!! その前方のグループ! 再び内藤 セリナに迫るR33 400R! 希少なディープマリンブルーの輝き……通称『チャンピオンブルー』!! 相川 美保の進撃だアアアっ!!!」
美保の400Rが、最新鋭スーパーカーのアウディR8を操る内藤 セリナの背後に、吸い付くようなラインで肉薄する。潮風を切り裂くようなその加速は、まさに獲物を狙うブルーシャークそのものだった。
相川 美保「セリナさん、さっきのお返しだよッ!! 400Rは直線だけじゃない……コーナーの出口でも、あなたを逃がさないんだからッ!!」
内藤 セリナ「なんですって!? あのスカイライン、まだあんなパワーを隠し持っていたっていうの!? この『フミッパ』の私が、コーナーで煽られるなんて……っ!!」
若林「内藤 セリナ、絶体絶命!! 美保の400RがR8のスリップストリームを突き破り、サイド・バイ・サイドに持ち込むかアアア!! 相川兄妹、ここにきて同時に火がついたぞオオオ!!!」
エアリ「……いいですね、相川兄妹。お兄さんは理詰めの速さ、妹さんは感性の速さ。特にお兄さんの律さんは、加奈子さんを抜いたことで完全に『ゾーン』に入りましたね。……セリナさん、あなたのR8がただの『綺麗なスポーツカー』で終わるのか、それとも本物の意地を見せるのか。試されていますよ?」
若林「抜けたアアア!!!! R33 400Rが再びR8の前に出たアアア!!!!! ダウンヒルの最終セクション、青い閃光がV10の咆哮を置き去りにしたあああ!!!」
内藤 セリナ「......クソぉぉぉ!!! クソがアアアっ!!! 車体の重いR8だから横Gが抜けない......っ!! 助けてママアアア!!!」
wwwwwwww。
スーパーカーの意地も、V10の排気音も、今の相川 美保の前では無力だった。R8のミッドシップ・レイアウトが生む鋭い旋回性能も、下り坂で一度膨らんだ慣性を抑えきれず、わずかにアウト側へとはらんでしまう。その一瞬、針の穴を通すようなインサイドの隙間を、ディープマリンブルーのサメが静かに、しかし冷酷に抉り取った。
相川 美保「甘いよ......?」
相川 美保の瞳には、かつての「おおらかとした少女」の面影はない。潮風のような鋭さを纏った彼女は、400RのRB-X GT2エンジンを咆哮させ、セリナの視界から一瞬で消え去った。
若林「相川 美保、リベンジ達成!! まさにブルーシャークの真骨頂!! 格上のスーパーカーをダウンヒルで仕留め、11位へと浮上ですッ!!」
エアリ「……ママに泣きつくようじゃおしまいですね、セリナさん。美保さんの400Rは、重さを『安定』に変えていました。対してあなたのR8は、重さに『振り回された』。……美保さん、いい顔になりましたね。お兄さんの律さんもすぐ後ろ。相川兄妹、ここからが本番ですよ。」
若林「そして! 再び赤い戦闘機! トヨタ 86 REVIVEがここに来てエボIXに滑り込むううう!!! ヘアピン勝負だあああ!!!! 直線で離されても、ブレーキングのたびに影のように忍び寄る! 腹切 カナタ、執念のイン刺しだアアア!!!」
ダウンヒルの最終区間。重量とパワーがモノを言う超高速域では、三菱 ランサーエボリューションIXの圧倒的な加速力がコースを支配していた。しかし、ひとたびブレーキング競争になれば、腹切 カナタの86はその真価を発揮する。
カナタは、ステアリングを通して伝わる路面の「熱」と「粗さ」を、まるで指先で直接触れているかのように感じ取っていた。古賀先生から叩き込まれたライン感覚。非力なマシンが格上を食う唯一の手段——それは、誰よりも深く、誰よりも鋭くコーナーの奥底へ飛び込む勇気。
腹切 カナタ「……ここだ。ここしかない。眞鍋さんのエボが、4WDのトラクションを稼ごうとしてラインを僅かに膨らませた……そこが俺の勝機だッ!!」
86のブレーキローターが赤く染まり、タイヤが白煙を上げる。ABSが作動する限界ギリギリの制動力を維持したまま、カナタはサイドブレーキを引くことなく、荷重移動だけで86の鼻先をヘアピンのインサイドへ向けて投げ出した。
眞鍋 琉世「……!? 速い……っ!!」
眞鍋は驚愕した。バックミラーに映る赤い影が、一瞬で自分の真横までワープしてきたのだ。通常、あの速度でインに飛び込めば、アンダーステアでコースアウトするか、激しくスピンするはずだ。だが、カナタの86は、まるでアスファルトを爪で掴んでいるかのように、鋭い角度でコーナーを曲がりきってみせた。
眞鍋 琉世「俺のエボIXが……ブレーキングだけでここまで詰められるなんて。腹切……お前の集中力、異常だぞ……ッ!!」
眞鍋は必死にステアリングを切り込み、4WDのパワーで出口の加速に賭けようとする。しかし、カナタはすでに眞鍋の「加速ライン」を潰す位置に車体を置いていた。
若林「捉えたアアア!! 腹切 カナタ、眞鍋 琉世のエボIXを真っ向から撃破!! まさに外科手術のような精密なイン刺し!! 軽量な86が、重厚なエボの牙城を崩しましたアアアア!!!」
エアリ「……見事ですね。カナタさんは、エボの『わずかな揺らぎ』を逃しませんでした。眞鍋さんがパワーを過信した一瞬の隙を、魂の再燃(REVIVE)を果たした86が切り裂いた。……眞鍋さん、これが『峠の王』を目指す男の執念ですよ。抜き返せますか?」




