吾妻編第31話 BMWM4DTM対GRスープラ対Ferrari488GTS対992GT3
若林「ヘアピンへの突入!! 柳津 雄介のM4が、怒涛のブレーキングでイヨのGRスープラとサイド・バイ・サイド!! しかし柳津の視線は、その先のポルシェ……菜園 宗一郎を完全にロックオンしているううう!!!」
柳津 雄介「お前のせいでカリンは予選外だったんだぞ菜園......っ!! お前らみたいなカスがレース出るんじゃねエぞ......!!!!!!」
柳津の絶叫が無線に響き渡る。妹、柳津カリンの夢を断たれた無念が、精密なはずのM4 DTMの走りを荒々しい復讐の牙へと変貌させていた。
柳津はイヨのスープラと車体を擦り合わせながら、先行する菜園のポルシェ 992 GT3のリアに、接触寸前のゼロ距離で張り付く!!
菜園 宗一郎「チッ……妹想いのおっさんか。だが、上がってこれないのは実力不足だ。俺のせいにするんじゃねえッ!!」
菜園はフェラーリのクリスタとサイド・バイ・サイドを維持したまま、バックミラーを埋め尽くすM4の三色ストライプに舌打ちする。
ヘアピンのクリッピングポイント。
アウトから被せるフェラーリ、インを死守するポルシェ。
その真後ろで、ポルシェを突き飛ばさんばかりにプッシュするM4。
さらにその横で、重力波動を撒き散らしながら虎視眈々と全抜きを狙うイヨのスープラ。
若林「四台が団子状態でヘアピンに吸い込まれる!! 柳津の執念が菜園を押し潰すか!? それともこの混戦をイヨが飲み込むのか!! 吾妻のヘアピンが、四色の火花で燃え上がっているぞオオオ!!!」
エアリ「……ドロドロの因縁ですね。柳津さんの怒りは、ポルシェのRR特有のトラクションさえも狂わせるほどの圧力になっています。菜園さん、余裕を気取っている場合ではありませんよ。後ろの『狂犬』は、あなたのエンジンを噛み砕くつもりです。」
若林「ヘアピンの出口イイイイ!! 四つ巴のドッグファイト、もはや誰がどこにいるのか分からんッ!! 16位から19位、この四台の密度が異常だアアア!!!」
ヘアピンの立ち上がり、四台の欧州・国産ハイパワーカーが火花を散らしながら加速体制に入る。
アウトからクリスタのフェラーリが華麗に脱出ラインを描こうとするが、そのインを抉り続ける菜園のポルシェ。
そしてそのポルシェのリアに噛み付いたまま離れない柳津のM4が、復讐の咆哮を上げる!
柳津 雄介「どけええええ!! 菜園ッ!! お前の汚いラインなんて、俺のM4が踏み潰してやるよォォッ!!」
柳津は強引にステアリングを切り込み、菜園のポルシェを外側へ押しやりながら加速。
その凄まじい肉弾戦の隙間を、イヨのGRスープラが「重力の魔法」で最短距離を滑り抜ける!
イヨ「えへへ☆ おじさんたちの喧嘩、楽しそうだけど……イヨが先に行っちゃうねっ! 重力崩壊ッ!!」
若林「なんとオオオ!! イヨのスープラが、三台のパワーウォーズを嘲笑うかのように内側をスルスルと抜けていく!! 柳津の執念が菜園を足止めし、その隙をイヨが突いたアアア!!」
一方、この激闘のわずか3秒後方。
圧倒的な加速力を誇るはずのXiaomi SU7 Ultraを駆る樋口 瀬那は、前方の四台が撒き散らす「狂気」と「乱気流」に気圧されていた。
樋口 瀬那「な、なんなのよあの四台……!? 隙がない……入る余地が全くないわッ!! モーターのトルクなら負けないはずなのに、あの異様な熱量についていけない……ッ!!」
若林「さらに後ろのXiaomi! 樋口 瀬那、三秒の壁が破れない!! EVの加速を持ってしても、あの因縁に満ちた四台の『壁』を突破できないのかアアアア!!!」
エアリ「……執念の差ですね。樋口さんのXiaomiは速いですが、今のあの四台には『絶対に退かない理由』がある。物理的なパワー以上に、その精神的な圧力が、三秒の差となって立ちはだかっています。」
若林「へ??? え、エアリさん、今なんと……!? 53(ゴミ)!? 公共の電波で今、とんでもない暴言が飛び出しましたアアアア!!!」
実況席の若林が文字通り椅子から転げ落ちそうになる横で、エアリは不敵な笑みを浮かべ、赤い瞳でモニターに映るXiaomi SU7 Ultraを冷ややかに見据えた。
エアリ「だから言ったじゃないですか。EVなんて53(ゴミ)だって。前にも言いましたよね? 電気仕掛けの玩具が、魂を削り合っている本物の獣たちの咆哮に追いつけるはずがないんです。」
若林「あわわわわ!! 視聴者の皆様、失礼いたしました! エアリさん、あまりにも過激すぎる!! ですが確かに、樋口瀬那のXiaomiは圧倒的なスペックを誇りながらも、前方の四台が放つドロドロとした執念のオーラに完全に気圧されています!!」
エアリ「数字上の馬力や加速力だけで勝てるなら、レースなんて計算機で十分。でも、ここは吾妻の峠。柳津さんの復讐心、イヨさんの無邪気な破壊衝動、それらが物理法則を歪めている今の領域に、クリーンでスマートなEVが入り込む隙間なんて1ミリもありませんよ。」
若林「毒舌が止まらないイイイ!! エアリさんの冷徹な分析が、ハイテクEVの限界を無慈悲に突き刺す!! 樋口 瀬那、この屈辱的な評価を跳ね返すことができるのかアアア!!」
樋口 瀬那「……なによ、あのアリみたいなポルシェ。この『静かなる加速』で、その生意気な口を一生開けなくしてあげるわッ!!」
後方に沈んでいた樋口のプライドが火をつけた。
しかし、先行する四台は依然として地獄のようなサイド・バイ・サイドを継続。
1周目のコントロールラインまであとわずか。吾妻の空気は、さらに熱く、そして毒々しく淀んでいく。
若林「ヘアピン出口!!!!! 菜園が一気に加速していく!!! さすがはRRのトラクション、立ち上がりの鋭さが尋常じゃないッ!!!」
柳津の執念深いプッシュを強引に振り切り、菜園 宗一郎のポルシェ 992 GT3が、路面を蹴り上げるような衝撃と共に一気に加速。ヘアピンの深部から弾丸のように飛び出していく。
エアリ「ストップアンドゴーですね……。この加速の鋭さこそが彼の真骨頂です。」
若林「A☆ASHIの?笑 『ステップ・アンド・ゴー』ならぬ『ストップ・アンド・ゴー』ですか!?」
実況席の若林が、つい懐かしのアイドルソングに絡めて悪ノリ気味にツッコミを入れる。しかし、エアリは間髪入れずに、冷徹なトーンでそれを一蹴した。
エアリ「それはstepandGO!!! 全然違います、ふざけないでください。私が言っているのはポルシェのクルーズコントロールであるストップアンドゴーです!!!」
若林「あ、はいっ……失礼しました!! そっちのハイテク機能のことでしたか!!」
どっちもハイテクです笑
エアリ「……ふふ。もちろん冗談ですよ。彼がこの極限状態でクルコンを使うはずがありません。でも、まるで自動制御で先行車を追尾しているかのような、精密かつ無駄のない加減速……。菜園さんは今、自分のポルシェを『感情』ではなく『機能』として完璧に使いこなしている。それが不気味だと言っているんです。」
若林「なるほど、精密機械のようなポルシェの動きをそう表現したわけですね!! 菜園 宗一郎、柳津の怒涛の攻めをいなし、再びクリスタのフェラーリを抜き返す勢いで加速中!! 欧州勢の争いが、さらに研ぎ澄まされていくううう!!!」
菜園 宗一郎「……外野がガタガタうるせえんだよ。アイドルごっこならカラオケでやってな。俺はただ、最短距離で前を喰うだけだッ!!」
菜園は冷淡に呟き、フラット6の咆哮を轟かせながら、1周目のフィニッシュラインを見据えてアクセルを踏み抜いた。
若林「うおお!!?? しかし!! ジリジリとコーナー立ち上がりでポルシェの前を横切るかのように割り込んだのはM4!!!! 柳津 雄介、強引なラインカットだアアア!! 菜園の精密な『ストップアンドゴー』を、文字通り身体を張って阻止しましたアアアア!!!」
菜園が描こうとした最短の脱出ラインを、柳津のM4 DTMが鼻先をこじ開けるようにして強引に遮断する。タイヤが白煙を上げ、サイドミラー同士が接触するほどの超至近距離。柳津の復讐心は、ポルシェのハイテク機能さえも力ずくでねじ伏せた!
柳津 雄介「行かせるかよ……ッ!! カリンを泣かせたお前のラインなんて、俺が全部ぶっ壊してやるんだよォォッ!!!」
菜園 宗一郎「チッ……正気かよ!? この立ち上がりでそんなライン取りをすれば、共倒れだぞ……ッ!!」
菜園はたまらずアクセルを僅かに戻し、接触を回避する。だが、その一瞬の「躊躇」が、この四台の均衡を劇的に崩した。
若林「そしてその隙を見逃さない!! GRスープラはそのままさらに加速へ!!! 重力操作の安定感を武器に、乱気流を突き抜けていく!! イヨ選手、この争いからは圧勝でしょう!!!!」
イヨ「えへへ☆ おじさんたちの意地の張り合い、ごちそうさまですっ!! スープラちゃん、一気に飛ばしちゃうよ〜っ!!」
ホワイトのGRスープラが、三台の欧州車が牽制し合うインサイドを軽やかに、そして重厚に加速。重力波動で路面に吸い付いたその走りは、もはや他の追随を許さない。1周目のフィニッシュラインに向けて、イヨが一気に後続を突き放しにかかった!
エアリ「……決着、ですね。柳津さんが菜園さんと心中する覚悟で道を塞ぎ、イヨさんがその果実を全て奪っていった。……菜園さん、せっかくの『ストップアンドゴー』も、止まってしまえばただの置物ですよ?」
若林「ストップアンドゴー?……ああ、あのロックダンスとかのパントマイムみたいな動きのことですか!? カチッ、カチッて止まる……」
若林が実況席で不器用に腕をカクカクと動かし、ダンスの真似事をする。しかし、そのおどけた空気は、エアリの氷点下の視線によって一瞬で凍りついた。
エアリ「そっちでもないです! 何度も言わせるなよ!」
若林「ひっ……! す、すみません!! 本気で怒った時のエアリさんは本当に怖いッ!!」
エアリ「……全く。ポルシェのテクノロジーを、アイドルの曲やらダンスやらと一緒にしないでください。菜園さんがやろうとしたのは、マシンのポテンシャルをシステムレベルで引き出す精密な走法なんです。それを柳津さんが『感情』という名のノイズでぶち壊した。……今のこの混迷こそが、レースの醍醐味だとは思いませんか?」
若林「は、はい……おっしゃる通りです!! さあ、そんなエアリさんの叱咤激励(?)を背に、1周目のコントロールラインが目前に迫るッ!! 重力の魔法で抜け出したイヨ、そして泥沼の潰し合いを続ける柳津、菜園、クリスタ!! 吾妻の夜を焦がす獣たちの狂宴、1周目の決着だアアア!!」
若林「おっとォ!! 1周目のコントロールラインを通過した直後、19位に甘んじているはずのクリスタ・ニールセンが不敵な笑みを浮かべたアアア!! 混戦のなかで唯一、余裕を感じさせるその一言!!」
クリスタ・ニールセン「フフ....私が勝ったも同然かしら?」
フェラーリ 488GTSのタイトなコックピットで、クリスタは細い指先でパドルを軽く撫でる。
彼女の背後や横では、柳津や菜園が復讐心や意地に燃え、タイヤの悲鳴も構わずにアスファルトを削り合っている。だが、クリスタのフェラーリだけは、まるでダンスを踊るかのような滑らかなラインを維持し続けていた。
クリスタ・ニールセン「私、こう見えてすごくタイヤ温存してるのよ? もしかしたら……この2周目、あなたたちが力尽きて路肩に転がっている横を、私が優雅に通り過ぎることになるかもしれないわね。」
若林「なんとオオオ!! 欧州勢のドロ沼バトルは、彼女にとっては単なる『前座』に過ぎなかったのか!? 牙を隠し、爪を研ぎ、ライバルたちが自滅するのを待つ……まさに跳ね馬の皮を被った狼だアアア!!」
エアリ「……賢明ですね。この吾妻のコース、特に2周目は1周目以上にタイヤへの負担がのしかかります。柳津さんたちの激しいプッシュは、確かに速いですが自滅へのカウントダウン。クリスタさんは、その『熱』を冷徹に利用している。……後々しでかす、とは言いましたが、案外その時は早いかもしれませんよ。」
菜園 宗一郎「温存だと……? ふん、抜かしてろ! 2周目の入り口で、その綺麗すぎるフェラーリを泥まみれにしてやるよッ!!」
クリスタの余裕に菜園が反応するが、クリスタはそれを涼しげに聞き流す。
1周目突入。
牙を隠していたフェラーリが、ついにその深紅の蹄を真の加速へと向けようとしていた。
若林「まだ1周目は終わらないッ!! コントロールライン手前、標高を一気に削り取る魔の下り坂——ダウンヒル・セクションに突入だアアア!! ここでスバルボディがついに、あの絶対王者の影を捉えましたアアアア!!!」
吾妻スカイラインの急勾配な下り。重力加速度を味方につけた山吹 花のWRX STI VABが、狂気的なスピードで先行車を追い詰めていく。その先にいるのは、風を操る伊藤 乎太郎のウアイラ、そして「黒い伝説」を継承した岡田 大成のGR GTだ。
山吹 花「あはははは! 見つけたわよ、『元・絶対王者』の出来損ない! 重たいモノコックを引きずって、あたしの前をノロノロ走るんじゃないわよッ!!」
花のWRXは、4WDの圧倒的な制動力と安定感を武器に、下りのヘアピンで岡田のGR GTのインサイドへ強引にねじ込んでいく。岡田が語った「アルミモノコックの必需品」さえも、今の花の狂気と「物理的な重力」の前では、ただの標的に過ぎなかった。
岡田 大成「……っ! この下りでこれほどのリスクを冒して突っ込んでくるのか……。スバルブルーのVAB……データの限界を超えていやがるッ!」
若林「捉えたアアア!! 山吹 花、岡田 大成を真っ向から撃破!! 現代の技術で蘇った黒い影さえも、女王の罵倒とダウンヒルの加速が置き去りにしていくううう!!!」
エアリ「……怖いですね。山吹さんは下り坂の恐怖心を完全に『ざぁ〜こ♡』という優越感で上書きしています。岡田さんの精密なロジックが、彼女の破壊的な本能に食い破られました。……岡田さん、継承者としてのプライド、ズタズタですよ?」
山吹 花「ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ 伝説なんて過去の遺物なのよ! ほら、そこをどきなさいパガーニ!! 風なんてあたしが全部、このウイングで叩き落としてあげるわッ!!」
若林「なんという事だアアア!! ヘアピン出口の混乱に乗じて、最年少の天才・イヨが欧州の猛者たち3台を文字通り一飲みにしたアアア!! 16位から一気に13位集団へとジャンプアップだアアア!!!」
イヨ「すごーい☆ イヨ、3台抜けちゃったー!!! 対抗角バッチリー☆」
純白のGRスープラの車内で、イヨがぴょんぴょんとシートを跳ねさせる。
柳津が復讐心に燃えて菜園の進路を塞ぎ、クリスタがタイヤ温存のために一歩引いたその一瞬の「静寂」を、イヨは重力操作による異次元の旋回速度で切り裂いた。
他のマシンがタイヤを鳴らし、慣性に抗っている中で、彼女のスープラだけが物理法則を書き換えたかのように最短距離を突き進んだのだ。
イヨ「えへへ☆ おじさんたちの意地の張り合い、イヨにはよくわかんないけど、先に行っちゃうねっ! スープラちゃん、もっとギュイーンってしちゃおーっ!!」
若林「『対抗角』!? 彼女、あの混戦の中で出口のラインをミリ単位で計算していたというのかッ!! 恐るべきは11歳の空間把握能力!! 柳津、菜園、クリスタの3人を完全に置き去りにして、1周目のフィニッシュに向けたストレートへと弾丸のように飛び出していきましたアアア!!」
エアリ「……天真爛漫な破壊神ですね。柳津さんたちの『大人の事情』なんて、彼女の前ではただの障害物でしかない。重力で地面に張り付く彼女のスープラにとって、あのヘアピンはただの直線と同じだったんです。……さあ、置いていかれた大人たち、恥ずかしくないんですか......?」




