↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
PR
488/534

吾妻編第28話 不動沢橋のストレート

若林「磐梯吾妻スカイラインに聳える吾妻山。その頂の手前にある1.4キロのストレートの陸橋である不動沢橋があります!! 空へ突き進むかのようなこの絶景の橋を、先頭グループが今、通過するううう!!!!」


標高差が生み出す雲の合間を縫うように架けられた不動沢橋。

眼下に広がる福島の絶景とは裏腹に、トップ集団のボルテージは沸点を超えようとしていた。

最高時速が試されるこの超高速区間で、ついに「水鮫」が牙を剥く。


若林「ああ!!! やな予感... しかなアアアアい!!!! サテラの『エボ 7 MR』が、フリスの『ケイマン』の横に飛び出して来たアアアア!!!!!」


サテラ「……ふふっ☆ フリスちゃんに言われたこと、ちょっと効いちゃったかな。でもね……ボクの『水鮫』は、直線ならポルシェにも負けないんだよッ!!!」


サテラはランサーエボリューション VII MRのアクセルを床まで蹴り飛ばした。

先ほどのフリスからの冷徹な宣告が、逆に彼女の負けん気に火をつけたのだ。

ミスファイアリングシステムの咆哮と共に、エボ 7のブースト計が跳ね上がる。

スリップストリームから一気に抜け出し、ポルシェ 718 ケイマン GT4の真横へと並びかける!!


フリス「……まだ食らいついてくるのか、お前は。しぶとい雪は、積もる前に溶かす必要があるようだね。」


フリスのケイマンの車内温度がさらに数度下がる。

不動沢橋のストレート。本来ならポルシェの空力とフラット6の伸びが有利なはずのこの区間で、サテラのエボは異常なまでの加速を見せていた。


サテラ「『我が思うにエボは負けてない』……。その言葉、そのまま返してあげる!! 行けぇッ、ボクの水鮫ェェッ!!」


若林「不動沢橋の上で、白と水色の影が火花を散らす!! 時速200キロオーバーの世界!! わずかな風の乱れが死を招くこの橋の上で、サテラがフリスを押し潰しにかかるううう!!!」


エアリ「……無茶をしますね。不動沢橋は風の影響を受けやすい。そこでサイド・バイ・サイドを仕掛けるなんて、文字通り命懸けです。……でも、サテラさんのあの眼。あれはもう、理性で走っている眼ではありませんね。フリスさんの『極寒』に対し、彼女は『執念』で道を切り拓こうとしています。」


若林「時速200キロを超える極限の死闘!! 不動沢橋の強風に煽られながら、サテラのランエボVIIがフリスのケイマンを飲み込もうとしている!! ですが、フリス選手の表情に焦りは全く見えませえええん!!」


フリスは、サイドウィンドウの向こう側で必死の形相を見せるサテラを、まるでお菓子を選んでいる時のような軽い目線で一瞥した。

ケイマンの車内には、彼女の冷気によって精製された甘い砂糖菓子のような「コットンアイススノー」がキラキラと舞っている。


フリス「んふふ〜☆ でもなんか君みたいなやつってムカつく〜☆」


サテラ「……なっ!? 今、なんて言ったのッ!!?」


サテラは驚愕に目を見開いた。

この命を懸けた超高速域のサイド・バイ・サイドで、フリスはまるでお昼休みの雑談のような、あまりにも能天気で、だからこそ底知れない悪意を含んだ言葉を投げかけてきたのだ。


フリス「一生懸命すぎて、なんか暑苦しいんだよねぇ〜♪ ボクの綺麗な雪を溶かしちゃいそう。だから……ちょっとだけ『静止(フリーズ)』しててよ。」


フリスが能天気に微笑んだ瞬間、ケイマン GT4のリアウィングから、物理的な冷気を遥かに超えた「概念的な極寒」が不動沢橋全体へ向かって放射された。

橋の路面、そして並走するサテラのエボの周囲だけが、まるで時間が止まったかのように白く凍りつく。


サテラ「うそッ!? 橋の上が……真っ白!? 視界が……滑るッ!! 車体が流されるぅぅッ!!」


若林「なんとオオオ!!! 不動沢橋が一瞬で白銀の世界に変貌したアアア!!! フリス選手、能天気な発言とは裏腹に、サテラの『熱い執念』を氷漬けにする気だアアアア!!!」


エアリ「……怖い子ですね。あんなに楽しそうに、相手の心を凍らせるなんて。サテラさん、執念だけではこの『甘い絶望』は溶かせませんよ。橋の欄干に激突したくなければ、今すぐその熱を冷ますことです。……フリスさんの冷気は、橋そのものを凍土に変えてしまいました。」


若林「天候や視界が戻る!! 路面も戻る!!! 一瞬の出来事でした!!!」


まるで白昼夢でも見ていたかのように、不動沢橋を覆っていた極寒の霧と凍土が、一瞬にして霧散した。

強烈な日差しがアスファルトを照らし出し、視界はクリアに。だが、その光景の中にいた観客とスタッフは全員、己の目を疑うことになった。


若林「アアアアアアアアア!!!?? なぜだ!? サテラが王者の前に出てしまったアアア!!!!!」


そこには、絶対王者フリスのポルシェの鼻先を、水色の「水鮫」が完全に抑え込んでいる姿があった。


若林「エアリさん! 何が起こったのでしょうか!? あのフリスの絶対領域の中で、一体サテラ選手は何を……!?」


エアリ「……とっさの判断によるオーバーテイクでしたね。サテラさんは、フリスさんが冷気を放ち、路面が凍結したその瞬間、あえてステアリングを真っ直ぐに固定し、スリップ(滑走)を加速力に変換しました。そして……トゥ(スリップストリーム)をEVO 7 MRの方は上手く使ってましたね。」


エアリの赤い瞳が、リプレイ映像を冷静に追う。


エアリ「フリスさんが冷気で路面を凍らせたことで、皮肉にも空気抵抗が極限まで減る『超平滑空間』が生まれました。サテラさんは自ら滑ることで、フリスさんの背後に吸い込まれるような猛烈なドラフトを発生させ、視界が戻る直前のホワイトアウトの中で一気に抜き去ったのです。王者の余裕が、最大の隙を生んでしまいました。」


サテラ「……はぁ、はぁ……。言ったでしょ、フリスちゃん。ボクの『水鮫』は、凍った水の中でも一番速く泳げるんだよ……☆」


サテラのランエボ VII MRが、不動沢橋の出口に向けて火を噴きながら加速する。

抜かれたフリスのケイマンは、一瞬の静寂の後、不気味なほど穏やかにその背中を追走し始めた。


フリス「……へぇ。ボクの雪を利用して滑り抜けるなんて、面白いことするじゃない。ムカつくけど……今の、ちょっとだけ合格☆」


不動沢橋の出口、サテラのエボ 7 MRが火花を散らして加速していく。

バックミラー越しに見えるポルシェは、先ほどまでの能天気なオーラを完全に削ぎ落としていた。


フリスの瞳から「遊び」の光が消え、代わりに底知れない「絶対零度の静寂」がコックピットを満たしていく。


フリス「あー... 安心して。この悔しさは、必ず倍にして返してあげるから.......」


フリスの独り言は、無線を通さずともサテラの背筋を凍らせるような重圧を伴っていた。

ケイマン GT4の水平対向6気筒エンジンが、これまでとは明らかに質の違う、研ぎ澄まされた金属音を奏で始める。

フリスが本気で「倍返し」を誓った時、それは単なる追い抜きでは終わらない。

相手を甘い絶望の底に沈め、二度と這い上がれないほどの「静止(フリーズ)」を与えることを意味していた。


若林「アアアアアッ!! フリス選手の雰囲気が一変したアアア!! 笑顔が消えた!! あの能天気な少女はどこへ行ったんだ!? ポルシェから溢れ出す冷気が、不動沢橋の路面を物理的に削っているかのようなプレッシャーだアアア!!」


エアリ「……これはタチが悪い。ちとせさんの娘であるイヨさんもそうですが、彼女たち『極寒』を司る存在を本気で怒らせてはいけません。サテラさん、あなたは虎の尾どころか、氷山の核に触れてしまいましたね。フリスさんの『倍返し』は、文字通りあなたの意識さえも凍結させるつもりですよ。」


サテラ「……っ! なに、このプレッシャー……!?ゾッとする......!! ミラーを見るのが怖い……。追い抜いたはずなのに、巨大な氷塊に背中から押し潰されそうな感覚だわ……!!」


サテラの「水鮫」が逃げる。

だが、その背後数メートルには、感情を排したフリスのケイマンが、死神のような正確さで吸い付いていた。

倍にして返す。その宣言通り、フリスは次のセクションでサテラを「絶望」させるための牙を研ぎ始めた。


若林「さらにその後ろ! 不動沢橋のストレート、パワーの暴力が炸裂したアアアア!! 山吹 花が2台を一気に抜き去り、眞鍋の赤い戦闘機の前に来てしまったアアアア!!!!」


先ほどヘアピンで眞鍋に屈辱を味わわされた山吹 花だったが、その怒りとプライドがVABのアクセルを踏み抜かせた。

不動沢橋の1.4キロという長い直線は、280馬力のカナタの86、そして中回転域のトルクで勝負する眞鍋のエボIXにとって、WRX STIの高速域の伸びに耐えるにはあまりにも残酷なステージだった。


山吹 花「あはははは! 見た!? これがあたしのVABちゃんの本当の力よッ!! 雑魚は大人しく、あたしのエキゾーストノートでも子守唄にして眠ってなさいよォォッ!!」


カナタ「花!!!!」


カナタが叫ぶ。バックミラーを埋め尽くすスバルブルーの影。

花はスリップストリームさえ必要としない圧倒的な加速力で、カナタの86の真後ろまで一気に距離を詰めてきた。


眞鍋 琉世「やっぱりVAB速いな......!! カタパルトでタイヤを打たれても安定感がある! どんなに足掻いても、あの4WDのトラクション性能の高さだけは認めざるを得ないか……ッ!」


眞鍋は、先行する花の後ろ姿を苦々しく見つめる。

ランエボが「曲がるための4WD」なら、WRXは「どこからでも加速し、どこまでも安定する4WD」。

不動沢橋の強風に煽られながらも、矢のように真っ直ぐ突き進む花の走りは、まさに氷の女王の進軍そのものだった。


若林「山吹 花、怒濤の快進撃!! 眞鍋を抜き去り、ついにターゲットを腹切 カナタへと絞ったアアア!! 86対WRX、因縁のバトルが再び火を噴くぞオオオオ!!!」


エアリ「……執念ですね。眞鍋さんに抜かれたことで、彼女の中の『負け』の回路が完全に遮断されたようです。マシンの安定感を盾に、なりふり構わずアクセルを踏み続けている。……カナタさん、先ほどまでのディフェンスラインは、この『女王の帰還』の前に通用するでしょうか?」


不動沢橋のストレート、逃げる86と追うWRX STIの車間距離が、物理的な殺意を伴ってゼロへと近づいていく。

バックミラーを青一色に染める花の形相に、カナタは無線のスイッチを叩くように入れた。


腹切 カナタ「花! そろそろ戻れよ!!! 花に!!!」


カナタの叫びは、かつての仲間の絆を信じるがゆえの心からの訴えだった。

だが、その言葉は今の花にとって、最も忌まわしく、耳を塞ぎたくなるような「ノイズ」でしかなかった。


山吹 花「誰が戻れって? このままだよッ!!!!! あたしは今、最高に自由なの! 誰にも媚びず、誰にも期待せず、ただ力を振るうだけのこの場所が、あたしの居場所よッ!!」


エンジンの回転数が跳ね上がり、VABのノーズが86のリアバンパーを突っつく。

花は歪んだ笑みを浮かべ、カナタを、そして彼が守ろうとしている全ての「青臭い感情」を嘲笑う。


山吹 花「ねぇ、カナタ……またあの言葉を浴びせてあげようか? ざぁ〜こ♡ ってまた言われたいの? 280馬力のゴミで、あたしの前に立ち塞がるその無様な姿……本当に滑稽よォッ!!」


花の声には、かつての優しさの破片すら残っていない。

ただひたすらに、格下である86を精神的にも肉体的にも踏み潰そうとする、絶対的な支配者の冷酷さだけが宿っていた。


腹切 カナタ「花……!!」


若林「アアアアアッ!! 山吹 花、完全に人格が反転している!! 腹切 カナタの必死の説得を嘲笑い、精神的なダメージまで与えにかかる!! これはもはやレースじゃない、魂の削り合いだアアア!!!」


エアリ「……救いようがありませんね。カナタさんの『熱さ』が、今の彼女には猛毒のように感じられているのでしょう。言葉で向き合おうとすればするほど、彼女はより深く、より冷たい闇へと潜っていく。……カナタさん、彼女を戻したいのなら、言葉ではなく『物理』で分からせるしかないかもしれませんよ。」


眞鍋 琉世「……カナタ、聞くな! 今のあいつは、お前の知ってる山吹 花じゃない! 感情を捨てろ、さもなきゃその毒に当てられて自爆するぞッ!!」


背後から眞鍋が警告を飛ばすが、カナタのステアリングを握る手は微かに震えていた。

信じていた仲間の豹変。浴びせられる罵倒。

不動沢橋の終点、超高速域からのブレーキング区間が目の前に迫る。


不動沢橋の終わり、200km/hを超える超高速域からのフルブレーキング区間。

カナタの86のリアバンパーに、花のWRX STIが接触寸前の距離までノーズを突き立てる。

バックミラー越しに見える彼女の表情は、完全に獲物を追い詰めた肉食獣のそれだった。


山吹 花「ほらほらぁ〜! 前が詰まってるわよ、この『ざぁ〜こ♡』な86さん! もしかして、怖くてブレーキ踏んじゃったのかなぁ〜?♡」


無線からは、彼女の甘く、粘りつくような嘲笑が絶え間なく流れ続ける。

WRXのパッシングライトが、夕闇の迫る峠道で86の室内をチカチカと暴力的に照らし出す。それはもはや合図ではなく、カナタの精神を削り取るための拷問だった。


山吹 花「あははっ! そんなにステアリングを震わせてどうしたのぉ? あたしのVABちゃんにビビっちゃった? 無理もないよねぇ、280馬力のガラクタだもん。あたしの足元を這いずり回るのがお似合いよ、この『ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡』!!」


腹切 カナタ「くっ……!!」


カナタの脳裏に、かつての仲間の笑顔がフラッシュバックする。

だが、ミラーに映る今の彼女は、その思い出を汚すように、執拗にサイドを突き、ラインを乱そうと車体を左右に振る。

「物理」のパワーに加え、逃げ場のない「言葉」の暴力。

花の煽りは、カナタが最も大切にしている86への誇りさえも、無慈悲に踏み躙っていった。


若林「アアアアアッ!! 山吹 花の煽り運転が止まらない!! 左右にフェイントを入れながら、無防備な86の背後を突き回している!! まさに女王の私刑!! カナタ選手、精神が崩壊寸前だアアア!!」


エアリ「……執拗ですね。ただ抜くだけではなく、相手の心を完全に叩き潰そうとしています。カナタさん、あんな言葉に耳を貸してはいけません。彼女は今、あなたの『動揺』を燃料に加速しているのですから。……耐えられるでしょうか、この屈辱に。」


山吹 花「さあ、どきなさいよ! その無様な後ろ姿を見ているだけで吐き気がするわッ! この『ざぁ〜こ86』がアアアアアアっっ!!」


怒号と共に、WRXがイン側へと車体を滑り込ませる。

ブレーキング勝負の火蓋が、最悪の精神状態で切って落とされた。


若林「アアアアアッ!! 山吹 花の煽りがエスカレートしていくううう!!! 無線からは最早呪文のように、あの屈辱的な言葉が連呼されているううう!!!」


山吹 花「ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こぉぉぉッ!!」


花のWRX STIは、86のリアバンパーをコンマ数ミリの距離で突き回しながら、左右に激しく車体を揺らす。

まるで獲物を弄ぶ肉食獣のように、彼女はパッシングと蛇行を繰り返し、カナタの視界と精神を徹底的に破壊しにかかる。


山吹 花「ほらぁ、どうしたのぉ? 逃げなさいよぉ、この『ざぁ〜こ86』!! 直線でこれだけ煽られて、まだその汚いお尻をあたしの前に晒してられるなんて、ある意味尊敬しちゃうわぁ〜♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡!!」


その言葉は、カナタの耳の奥で、そして心の中で、鋭い針となって突き刺さる。

ステアリングを握る手が、自分でも気づかないうちに激しく震え、86の挙動がわずかに不安定になる。


腹切 カナタ「くっ....! やめろ....花....!! 頼むから、そんな言葉を....!!」


山吹 花「あははっ! 嫌がってるぅ〜! カナタ、今のあんたの顔、最高に情けないわよぉ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こッ!! さっさとブレーキ踏んで、あたしのVABちゃんのタイヤに付いたゴミにでもなりなさいよぉッ!!」


若林「腹切 カナタ、完全に飲み込まれている!! 山吹 花の『ざぁ〜こ』連呼が、吾妻の山々に不気味なエコーとなって響き渡る!! これではレースになりません!! カナタ選手、防衛ラインが崩壊寸前だアアア!!」


エアリ「……執拗ですね。もはやスポーツの域を超えています。山吹さんは、カナタさんの『優しさ』を正確に弱点として突き、そこを徹底的に抉っている。……このままでは、カナタさんは彼女を抜かせるどころか、自らコースアウトしてしまいかねませんよ。……耐えて、カナタさん。その『ざぁ〜こ』という鎖を断ち切れるのは、あなただけです。」


眞鍋 琉世「……チッ、あの野郎……!! カナタ、耳を貸すなと言ったろッ!! ざぁざぁうるせぇんだよ、あのクソアマッ!!」


眞鍋が咆哮するが、花の煽りは止まらない。

86を右へ、左へ、執拗に追い詰めながら、女王の「死の呪文」が繰り返される。


若林「あああああっと!! ついに、ついにその瞬間が来てしまったアアアア!! 山吹 花が! 呪文のような罵倒と共に、腹切 カナタをオーバーテイクッ!!!」


山吹 花「ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡……バイバイ、ざぁ〜こ86さんッ!!」


不動沢橋を抜けた直後の緩やかなカーブ。

精神的に極限まで追い詰められ、わずかにラインが膨らんだ86のインサイドを、WRX STIが容赦なく、そして鮮やかに切り裂いた。

青い残像が、カナタの視界を物理的に、そして絶望的に遮りながら前に出る。


山吹 花「あははははッ!! 見たぁ!? これが現実よ! あんたみたいな『ざぁ〜こ』は、あたしの後ろで指をくわえて、この最高に綺麗なリアビューでも眺めてなさいよォォッ!!」


花の咆哮が無線に響き、WRXのエキゾーストノートが勝利の凱歌のように山々に木霊する。

抜かれた衝撃で86の車体がわずかに振られ、カナタは力なくステアリングを握り直すことしかできなかった。


腹切 カナタ「花……!! くっ、うああああああああッ!!」


カナタの慟哭。

それは抜かれた悔しさ以上に、目の前で嘲笑う背中が、自分の知っている「山吹 花」からあまりにも遠くへ行ってしまったことへの悲しみだった。

5位の座は、今まさに「女王」の手へと渡った。


若林「抜いたアアアア!! 山吹 花、執拗な罵倒と圧倒的なパワーで5位奪還!! 腹切 カナタ、ついに防衛ラインを突破されました!! 無慈悲! まさに無慈悲なオーバーテイクだアアア!!」


エアリ「……決着、ですね。カナタさんの心は、今の山吹さんの冷たさに耐えきれませんでした。……ですが、山吹さん。あなたが今手に入れたその順位は、本当にあなたが望んだものなのでしょうか。その背中は、どこかひどく孤独に見えますよ。」


【エーペックスカップ第8戦 吾妻GT 現在の順位表】

Current Conditions: 晴天(5位交代・女王の凱旋)

--------------------------------------------------

1位 :ちとせ(日産 フェアレディZ RZ34 - 氷雪の獣神)

2位 :柊 蒼真(ホンダ シビックタイプR FL5 - 純白の追跡者)

3位 :サテラ(三菱 ランサーエボリューション VII MR - 水鮫)

4位 :フリス(ポルシェ 718 ケイマン GT4 - 復讐の執行人)

5位 :山吹 花(SUBARU WRX STI VAB - 氷の女王)OVERTAKE!

6位 :腹切 カナタ(TOYOTA 86 REVIVE - 280ps/精神崩壊)

7位 :眞鍋 琉世(三菱 ランサーエボリューション IX - 銀の戦闘機)

8位 :伊藤 乎太郎(パガーニ・ウアイラ - 風の天才)

9位 :高槻 健永(ダッジ・バイパー - クールな悪魔)

10位:岡田 大成(トヨタ GR GT - 黒き開発プロトタイプ)

11位:相川 美保(日産 スカイラインGT-R 400R)

12位:内藤 セリナ(アウディ R8 V10 plus - 閃光のフミッパ)

13位:古賀 加奈子(BMW M5 G90 - 紅い重戦車)

14位:相川 律(日産 GT-R NISMO R35 - 覚醒中)

15位:伊藤 翔太(スズキ スイフトスポーツ ZC33S - 激昂)

16位:クリスタ・ニールセン(フェラーリ 488GTS)

17位:菜園 宗一郎(ポルシェ 992 GT3)

18位:イヨ(トヨタ GRスープラ - 白い重力破壊神)

19位:柳津 雄介(BMW M4 DTM Edition)

20位:樋口 瀬那(Xiaomi SU7 Ultra)

21位:佐藤 ジュン(マツダ RX-7 FD3S)

22位:陽太(マツダ ロードスター)

23位:中野(トヨタ) 伸一(クラウンアルテッツァ)

DNS :黒川 海斗(インフルエンザ欠場)

DNS :坂田 五郎丸(インフルエンザ欠場 ※BAD END)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。