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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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487/535

吾妻編第27話 縮小区間のサイドバイサイド

若林「そして行ったアアアアアっ!!!!! フミッパスライダーでやはり来ました!!! 内藤 セリナがヘアピンで3台ごぼう抜きイイイイイ!!!!!」


吾妻GTの難所、連続ヘアピン。

先行するマシンたちが慎重にブレーキングを開始する中、後方から一台の猛獣が、物理法則を無視した突っ込みを見せた。

内藤 セリナの操るアウディ R8 V10 plus。

ミッドシップに積まれたV10NAエンジンが、高周波の絶叫を上げて路面を震わせる。


若林「常識外のブレーキングポイント!! まさに『フミッパ』!! 踏みっぱなしの度胸が、ヘアピンのわずかな隙間をこじ開けたアアア!!!」


セリナは、ライバルたちがアウト側に膨らむ刹那、最短距離を迷いなく切り裂いた。

彼女の「フミッパ」は決して泥臭い走りではない。

クワトロシステムによる四輪制御を極限まで信じ切り、コンマ一秒の躊躇もなくアクセルを開け続ける、極めて研ぎ澄まされた「恐怖の克服」による超高速旋回だ。


相川 律「やっぱあのR8バケモノかよ......っ!! マシンのスペックもだけど、あの女の度胸……人間じゃねぇ!!」


バックミラー越しにその光速のオーバーテイクを目の当たりにした相川 律が、驚愕に目を見開く。

律のGT-Rもセノと大塚の手によって極上のセッティングを施されているが、セリナのR8が見せた「躊躇のなさ」は、それさえも置き去りにするほどの狂気を孕んでいた。


内藤 セリナ「ふふっ☆ 抜くときは一気にいかないと、失礼でしょ? 私のR8は止まらないわよ……このまま頂上まで、全開で駆け抜けるんだからッ!!」


セリナの瞳には、一切の迷いがない。

ヘアピンを鮮やかにクリアしたR8は、V10サウンドを吾妻の空へ突き刺しながら、さらなる上位集団を目指して弾丸のように加速していった。


エアリ「……見事なフミッパスライダーですね。泥んこどころか、むしろ氷のように冷徹で、鏡のように澄み切ったドライビングです。R8の低重心とクワトロの恩恵を、これほどまでに暴力的に使いこなすのは……彼女くらいのものでしょう。律さん、ぼやぼやしていると、次はあなたが『ごぼう』にされますよ?」


若林「おおっと!! 抜かれたばかりの古賀 加奈子が、重戦車を咆哮させて食らいつく!! 閃光のR8を逃がさない構えだアアア!!!」


古賀 加奈子「速い......!! でも、追いつきたい!!」


加奈子は、大柄なBMW M5 G90のステアリングを力一杯握りしめた。

目の前を走り去る内藤 セリナのR8は、まるで重力を無視したかのように軽やかにコーナーを抜けていく。

対する自分のマシンは、2.4トンを超える「重戦車」。

だが、加奈子の瞳には諦めの色は微塵もなかった。


古賀 加奈子「重いからって、負ける理由にはならない......!! V8ターボの底力、今ここで見せてあげるんだから!!」


加奈子はアクセルを踏み抜いた。

700馬力オーバーのパワーユニットが唸りを上げ、Mハイブリッドシステムが瞬時に爆発的なトルクを全輪へ叩きつける。

巨大な車体が慣性をねじ伏せ、まるでアスファルトを剥ぎ取るようなトラクションでR8の背後へ肉薄する。


相川 律「おいおい、加奈子までスイッチ入っちまったかよ……!! あの重てぇM5を振り回してR8を追うなんて、正気かよ!?」


律の視界では、光り輝くR8と、それを猛追する紅い巨体M5が、凄まじい火花を散らしながらコーナーの先へ消えていく。


エアリ「……執念ですね。加奈子さんのドライビングは、セリナさんの『軽やかさ』とは対照的な、圧倒的な『質量攻撃』です。どんなにコーナーで離されても、立ち上がりのトルクだけでその差を強引に埋めてしまう。……あの重戦車が本気で突っ込んできたら、R8も無事では済みませんよ。」


古賀 加奈子「うおおおおおらああああああああ!!!!!!!」


ガアアアン!!!!


吾妻の山肌を切り裂くような重々しい金属の打撃音が、谷底から頂上へと木霊する。

常識で考えれば、この極端にアプローチが狭く曲がりくねったヘアピンカーブで、二台のハイパワーカーが並んで進入するなどという選択肢はあり得ない。だが、その非常識な光景が今、現実のものとして展開されていた。


若林「なんとオオオ!!!!!次のヘアピンでまさかのR8とM5がサイドバイサイドオオオ!!!!!」


実況の若林の声が極限の興奮で裏返る。

内藤 セリナの操るアウディ R8 V10 plusの横っ腹に、古賀 加奈子のBMW M5 G90が、己の巨大な質量を武器にして強引にねじ込んできたのだ。2.4トンを超える重量級のボディが、物理的な圧力となってミッドシップのR8に襲い掛かる。


若林「この狭い区間でまさかのハイパワーカーがサイドバイサイドですよエアリさん!!??」


若林の問いかけに対し、解説席のエアリはモニターに映る二台の異常な挙動を赤い瞳で冷徹に見つめていた。自由奔放な彼女も、レースの解説においては丁寧な敬語を崩さない。


エアリ「……破綻してもおかしくないですねこれは……。M5のあの重量でイン側ギリギリを攻めれば、必然的に遠心力で外へ孕み、アウト側のR8を崖際まで押し出す形になります。アウディの優秀なクワトロシステムでさえ、あの質量兵器を真横からぶつけられればトラクションを失いかねません。わたしから見ても、極めて危険なチキンレースです。一歩間違えれば、二台仲良く谷底へダイブすることになりますよ。」


二台のマシンは、サイドミラーが完全に接触し、火花を散らすほどの至近距離で、互いのドアパネルを削り合わせながらコーナーの頂点へと向かっていく。

V10自然吸気エンジンの甲高い絶叫と、V8ツインターボの野太い咆哮が暴力的に混ざり合い、吾妻の山々を揺るがすほどの轟音を生み出している。摩擦で焼け焦げたブレーキパッドの匂いと、タイヤから噴き上がる白煙が、後方の視界を完全に奪っていく。


古賀 加奈子(R8に踏めるんだから私だってェェ......!!!)


加奈子は、悲鳴を上げるM5の重いステアリングを力任せに押さえ込んでいた。

普段の彼女は生徒思いの真面目な教師であり、カナタからも本気で尊敬される存在だ。しかし、ステアリングを握り、極限のバトルに身を投じた今の彼女は、己の闘争心と情熱を剥き出しにした一人の獰猛なレーサーだった。


運動性能に優れるR8がフミッパでこの過酷なコーナーを駆け抜けられるのなら、自分だって絶対にやってみせる。その意地と執念が、右足に強烈な力を込めさせる。最新鋭の電子制御がフル稼働し、システムが必死に車体をコース上に留めようと足掻く中、彼女はさらなる加速を求めてアクセルペダルを床板に叩きつける。


内藤 セリナ(どきなさいよBMWのクセにィ......っ!!!)


一方、アウト側へと追いやられた内藤 セリナの表情も、これまでの余裕を完全に失い、鬼気迫るものへと変わっていた。


泥んこフミッパと揶揄される彼女の真骨頂は、恐怖という感情を完全にねじ伏せてアクセルを踏み抜くことにある。だが、隣に2.4トンの鉄の塊が迫り、物理的な逃げ場を完全に失いかけているこの極限状況下で、アクセルを踏み続けることは文字通りコースアウト、あるいは大クラッシュを意味する。


それでも彼女は決して右足を緩めなかった。

R8のステアリングをミリ単位で微修正し、M5の圧倒的な圧力に耐えながら、アウト側のギリギリ、タイヤ半分が土ぼこりを舞い上げるダートの境界線を決死の覚悟でトレースしていく。


二台の欧州製ハイパワーカーは、まるで互いの魂を削り合うように密着したまま、長い長いヘアピンカーブの出口へと向かっていく。

パワーとパワーの真っ向からのぶつかり合い。女と女の、意地と意地の削り合い。


この極端に狭く危険なコーナーを先に抜け出し、次のストレートで優位に立つのは、紅い重戦車か、それとも閃光のR8か。勝負の行方は、タイヤが路面を噛むコンマ数ミリの違いと、ドライバーの瞬きのひとつの差に完全に委ねられていた。


若林「さらにそこに後方からいた相川 律のR35 NISMOと伊藤 翔太のスイスポもM5! R8! この2台に襲いかかる!!!!!!」


実況席の若林が絶叫する。

ヘアピンで激しく火花を散らすセリナのR8と加奈子のM5。その凄まじい削り合いによって生じたわずかな減速、そして立ち上がりのラインの乱れ。

その刹那の隙を、死に物狂いで追い上げてきた後続の二台が、飢えた狼のような鋭さで突いてきた。


古賀 加奈子「ウソでしょ!? さっきまで5秒ぐらい下にいたはずじゃ......!!!」


加奈子がバックミラーを見て愕然とする。

そこには、セノと大塚が調律した究極の接地性を武器に、コーナーのRを最短距離で抉り取ってきた相川 律のGT-R、そして軽量ボディを活かして限界までブレーキを遅らせた伊藤 翔太のスイフトスポーツが、鼻先を並べるように肉薄していた。


相川 律「おばあに最高のプレゼントをしてやりたいんだ......!! お前らに勝つというプレゼントをなァ......!!!!」


律の瞳は、これまでの「ヘタレ」な面影を完全に消し去っていた。

600馬力のVR38エンジンが咆哮を上げ、セノの組んだECUがその暴力を完璧なトラクションへと変換する。

家族への想い、そして地元・東北の誇りが、彼を限界の先へと突き動かしていた。


伊藤 翔太「いけるだけいくしかない......!! スーパーチャンス到来......っ!!!!」


翔太のチャンピオンイエローのスイスポが、大型ハイパワーカーの隙間を縫うようにひらりと舞う。

パワー差は歴然だが、この混戦状態なら機動力こそが最大の武器。

翔太は仲間であるカナタ、そして花を繋ぎ止めるという使命感を胸に、立ち上がりで全開の加速を見せる。


若林「この4台の対決はどうなるううう!!!!!! ヘアピンからのストレート前の立ち上がりイイイ!!!! R8が膨らんでいるウウウ!!!!!」


アウト側でM5に圧迫され続けた内藤 セリナのR8が、ついにラインを維持できず、わずかにアウト側のダートを蹴り上げた。

車体が大きく揺れ、その隙間を、狙い澄ました律のGT-Rが内側から抉じ開けようとする!!


エアリ「……混沌(カオス)ですね。セリナさんと加奈子さんがやり合いすぎた結果、後方の『執念』を呼び込んでしまいました。特に相川(律)さんの集中力は異常です。今の彼には、GT-Rの挙動がスローモーションに見えているはず。……さあ、ストレートに向けて誰が一番早く鼻先を抜くのか。……吾妻の女神は、果たして誰に微笑むのでしょう。」


若林「GT-Rがいったアアアア!!!! 恐るべし世界最強GT-R!!!!! ヘアピンの出口、最短距離を猛然と加速!! 12位、13位をまとめて抜き去ったアアアア!!!!」


相川 律のR35 GT-R NISMOが、VR38DETTエンジンの咆哮と共に弾丸のように加速した。

セノが調律したECUと大塚の足回りが、600馬力の暴力を完璧に路面へ伝達する。

律は、膨らんだセリナのR8と、立ち上がりでわずかに姿勢を乱した加奈子のM5のインサイドを、カミソリのような鋭さで抉り取った。


相川 律「もらったアアアア!! これが、俺と親父と大塚さんの本気だッ!! 行くぞ、Rッ!!」


若林「さらにR8を抑えるかのようにM5が前へ滑り込んだアアア!!!!!! 重戦車が閃光を封じ込める!! 加奈子選手、セリナ選手を完全にロックしたアアアア!!!」


古賀 加奈子「逃がさない......!! まだ終わってないんだから!!」


加奈子はM5の巨体を捩じ込み、立ち上がりラインを強引に塞ぐ形でセリナの前へ滑り込んだ。

2.4トンの質量が物理的な壁となり、セリナのR8はアクセルを緩めざるを得ない。

一瞬の隙、一瞬の判断ミスが、中団グループの序列を劇的に塗り替えていく。


内藤 セリナ「くっ……! まさか律君にまで抜かれるなんて……! この重戦車、邪魔よッ!!」


セリナは焦燥に駆られながらも、V10エンジンを絶叫させ、M5の背後で虎視眈々と反撃の隙を伺う。

その後方では、伊藤 翔太のスイフトスポーツが、この巨大なパワーのぶつかり合いによって生じる「気流の乱れ」を読み、スリップストリームを狙って加速体制に入っていた。


エアリ「……相川(律)さん、覚醒しましたね。世界最強の称号に恥じない、無慈悲な加速です。そして加奈子さんのあの『ブロック能力』……。重さを味方につけたあの走りは、まさに動く要塞。セリナさんは今、自分の得意な『軽さ』を封じ込められて、相当フラストレーションが溜まっているはずですよ。」


若林「あああああっ!!! 抜いたはずのGT-Rの横っ腹に、紅い重戦車が再び突進してきたアアアア!!!! 古賀 加奈子のM5、驚異的な立ち上がり加速でGT-Rに並び、そして……ブツかったアアアア!!!!」


2台抜きを決めて完全に前に出たはずの相川 律。

しかし、彼が見落としていたのは、最新鋭のBMW M5 G90に搭載されたMハイブリッドシステムの恐るべき暴力だった。V8ツインターボエンジンにモーターの極太トルクが上乗せされた瞬間、2.4トンを超える巨体は物理法則を無視したかのように、猛然とGT-Rの死角へとワープしてきたのだ。


古賀 加奈子「させるかアアアアアアア!!!!!!!」


ガアアアアアンッ!!!


相川 律「......くそっ!」


車体を激しくぶつけ合いながら、加奈子はアウト側から律のGT-Rに強烈なプレッシャーをかける。

R35 GT-Rも決して軽い車ではない。しかし、M5の圧倒的な質量の前では、さすがのGT-Rもわずかにラインを外側へ弾き出されそうになる。火花が散り、カーボンの擦れる焦げ臭い匂いが吾妻の風に混ざる。


古賀 加奈子「律くん、悪いけど……ここは先生が通るわッ!! 大人しく道を譲りなさい!!」


相川 律「……っ! なんだよこの馬鹿力は!? まるでダンプカーに横付けされてる気分だぜ……ッ!!」


律は悲鳴を上げるステアリングを必死に押さえ込んだ。

以前の「スリップマン」と呼ばれていた彼なら、この質量の暴力と恐怖に耐えきれず、間違いなくパニックを起こしてスピンを喫していただろう。だが、今の律は違う。

父・セノが組んだECUが瞬時に四輪の駆動を最適化し、大塚が組み上げたサスペンションの尋常ではない粘りが、紅い重戦車のタックルをギリギリでいなしている。車体は揺れながらも、決してコースの外へは飛び出さない。


相川 律「親父たちのセッティングは、この程度じゃビクともしねぇんだよッ!! どけぇッ、加奈子先生ェェ!! 俺は絶対におばあに勝つ姿を見せるんだッ!!」


律は決してアクセルを緩めず、GT-Rの巨体を捩ってM5に押し返しを図る。


エアリ「……凄まじい肉弾戦ですね。M5のハイブリッドによる瞬間的なトルクの立ち上がりは、GT-Rのターボラグすら許さない鋭さを持っています。加奈子さんはその特性を完全に理解し、自分の『重さ』を最大の武器として律さんに叩きつけました。……ですが、律さんも簡単には沈みません。マシンのポテンシャルと、何よりドライバー自身の意地が完全に覚醒しています。」


内藤 セリナ「ちょっとアンタたち! 前で塞がないでよッ!! 私のR8の邪魔をしないでぇッ!!」


後方では、アウト側に押し出されて行き場を失った内藤 セリナが、V10エンジンを空吹かししながらフラストレーションを爆発させている。


伊藤 翔太「うおおお……前で怪獣大決戦が始まってる……!! でも、俺のスイフトなら、あの二台の隙間を縫えるかもしれない……!!」


さらにその後方。紅いM5と白いGT-Rが火花を散らす真後ろで、伊藤 翔太のスイフトスポーツが、2台の死闘によって生じる僅かなスペースを虎視眈々と狙っていた。

古田の最高傑作の一つであるスイフトの機動力。翔太は、前の大型ハイパワーカーたちがブレーキングで苦しむ次のコーナーへ向けて、自身の「軽さ」を武器に勝負を仕掛けるタイミングを計っている。


重量級四駆ターボ同士の激突、牙を剥く閃光のR8、そして隙を狙う軽量スイスポ。

12位を巡る4台のドッグファイトは、次なるコーナーへのブレーキング競争へと雪崩れ込んでいく。


若林「来ましたアアアア!!!!!! フミッパスライダアアアアア!!!!!! 内藤 セリナが再びR35 NISMOとM5に接近している!!!! 古賀 加奈子! 絶体絶命だアアア!!!!!」


律のGT-Rと加奈子のM5が激しくドアをぶつけ合い、互いのラインを潰し合っているその背後。

極限までフラストレーションを溜め込んだ内藤 セリナが、ついに「踏みっぱなし」の狂気を解放した。


内藤 セリナ「私の... 私の邪魔するなアアアアア!!!!!!」


V10エンジンの咆哮が、それまでの音域を遥かに超える高周波へと跳ね上がる。

セリナは、先行する二台のハイパワーカーが接触の影響でわずかに不安定になったその瞬間、あえてブレーキを遅らせ、二台の間に残された針の穴を通すような「フミッパスライダー」を敢行した。


ガリッ!!!


セリナのR8の左右のミラーが、GT-RとM5のボディを同時に掠める。

火花が左右に飛び散り、観客席からは悲鳴に近い歓声が上がる。


古賀 加奈子「なっ……!? この狭いところを突っ込んでくるなんて、正気なの!?」


相川 律「おいおいおい!! 死ぬぞセリナ!! どけッ、そこは俺のラインだッ!!」


セリナのR8は、二台の巨大な鉄の塊に挟まれながらも、クワトロシステムの圧倒的な安定感でその隙間を強引にこじ開けていく。

まさに「閃光」。視界から消えるほどの加速力で、律と加奈子の横を一気にすり抜けた。


内藤 セリナ「ふふっ……あはははは! どきなさいって言ったでしょ! 私が……私が一番速いのよッ!!」


若林「抜いたアアアア!!! なんという度胸!! なんという狂気!! 内藤 セリナ、文字通り『死の隙間』を潜り抜けて12位に再浮上だアアアア!!!」


エアリ「……正気の沙汰ではありませんね。少しでもどちらかの車がラインを乱せば、三台まとめてスクラップ。それを承知でアクセルを抜かない。……彼女の『フミッパ』は、もはや技術ではなく純粋な信仰に近い何かです。加奈子さん、完全に足元をすくわれましたね。」


伊藤 翔太「うわあぁ……あの隙間を通るのかよ……。でも、これで前のバランスはバラバラだ。今度は俺の番だぜッ!!」


先行三台の激しい入れ替わり。

その乱気流を突いて、最後尾に控えていた伊藤 翔太のスイフトスポーツが、虎視眈々と次なる獲物を狙う。

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