吾妻編第25話 トヨタ86対WRXSTi対EVO9
【エーペックスカップ第8戦 吾妻GT 現在の順位表】
Current Conditions: ドライ(1位独走・絶対零度の恐怖)
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1位 :ちとせ(日産 フェアレディZ RZ34 - 氷雪の獣神)➡ 圧倒的防衛
2位 :柊 蒼真(ホンダ シビックタイプR FL5 - 純白の追跡者)▼ 恐怖による失速
3位 :フリス(ポルシェ 718 ケイマン GT4 - 氷の教官)
4位 :サテラ(三菱 ランサーエボリューション VII MR - 水鮫)
5位 :腹切 カナタ(TOYOTA 86 REVIVE - 古田の最高傑作①)
6位 :山吹 花(SUBARU WRX STI VAB - 氷の女王)
7位 :眞鍋 琉世(三菱 ランサーエボリューション IX - 銀の戦闘機)
8位 :伊藤 乎太郎(パガーニ・ウアイラ - 風の天才)
9位 :高槻 健永(ダッジ・バイパー - クールな悪魔)
10位:岡田 大成(トヨタ GR GT - 黒き開発プロトタイプ)
11位:相川 美保(日産 スカイラインGT-R 400R)
12位:古賀 加奈子(BMW M5 G90 - 紅い重戦車)
13位:伊藤 翔太(スズキ スイフトスポーツ ZC33S - 古田の最高傑作③)
14位:相川 律(日産 GT-R NISMO R35 - セノ×大塚SP)
15位:クリスタ・ニールセン(フェラーリ 488GTS)
16位:菜園 宗一郎(ポルシェ 992 GT3)
17位:内藤 セリナ(アウディ R8 V10 plus - 泥んこフミッパ)
18位:イヨ(トヨタ GRスープラ - 白い重力破壊神)
19位:柳津 雄介(BMW M4 DTM Edition)
20位:樋口 瀬那(Xiaomi SU7 Ultra)
21位:佐藤 ジュン(マツダ RX-7 FD3S)
22位:陽太
23位:中野 伸一
DNS :黒川 海斗(インフルエンザ欠場)
DNS :坂田 五郎丸(インフルエンザ欠場 ※BAD END)
柊 蒼真「せっかく予選2位なんだ.....!! この調子で気持ちよく1位でゴールしたいのに、あのZが邪魔だ....!!!」
蒼真はステアリングを握る手に力を込めた。彼にとって、この吾妻GTでの勝利は是が非でも欲しいものだった。完璧なレコードラインをトレースし、タイヤのグリップを限界まで使い切る蒼真のドライビングは、まさに教科書通りの美しさと速さを兼ね備えている。
しかし、どれだけコーナーで差を詰めても、立ち上がりのストレート区間でRZ34の圧倒的なツインターボパワーがその差を再び引き離してしまう。
抜きたくても抜けないもどかしさが、蒼真の焦燥感を煽り、冷静な判断力を少しずつ削り取っていた。
柊 蒼真「ええいっ! コーナーの突っ込みなら俺のシビックの方が上だ! ブレーキングを遅らせて、イン側から一気に刺してやる!! そこをどけぇッ!!」
次のヘアピンカーブ。蒼真は通常よりもはるかに遅いタイミングでブレーキペダルを踏み込み、FL5のノーズをちとせのZのイン側へと強引にねじ込もうとした。
だが、その瞬間だった。
蒼真の視界に映る銀色のZの挙動が、唐突に、そして不気味なほど「静か」になったのだ。
ちとせ「もへ〜......。柊く〜ん、そんなにガツガツこられると、おじさん、びっくりしちゃうよ〜......。」
無線から聞こえてくるのは、のんびりとおっとりとした、緊張感の欠片もない少女の声。
見た目は蒼色のロングヘアにブルーグレーの瞳、萌え袖の愛らしい高校生の女の子。だが、彼女の一人称は「おじさん」であり、その本性はタチが悪く極寒の絶対零度を司る氷雪の獣神なのだ。
ちとせ「せっかく予選2位だったんだからさ〜、そのまま2位で満足しておけばよかったのにね〜......。おじさんの前を走ろうなんて、ちょっと身の程知らずじゃないかなぁ......?」
声のトーンは変わらない。しかし、その言葉に含まれた絶対的な「冷気」が、無線を通じて蒼真の背筋を芯から凍らせた。
ちとせのZが、まるで路面に張り付いた氷の塊のように、一切の無駄なロールを消し去って旋回を始める。それは物理法則を無視したかのような、絶望的なコーナリングスピードだった。
柊 蒼真「なっ!? なんだ今の動きは!? FRのZが、あんなラインで曲がれるはずがないッ!!」
ちとせ「もへ〜......。じゃあね〜、柊く〜ん。ちょっとだけ、頭を冷やしてきなよ〜......。」
Zのリアから排気音と共に放たれた目に見えない「冷圧」が、蒼真のシビックを襲う。
コーナーの出口、イン側をこじ開けようとした蒼真のタイヤが、突如としてグリップを失ったかのように空転した。路面温度が局所的に急低下し、ブラックアイスバーンと化したのだ。
柊 蒼真「うおあっ!? トラクションが抜けた!? くそっ!!」
蒼真は慌ててステアリングとアクセルを修正し、なんとかコースアウトを免れたが、その一瞬の隙にちとせのZは遥か前方へと加速し、冷たい銀色の残像だけを置き去りにしていった。
シビックの車内温度計は正常な数値を示しているにも関わらず、蒼真の吐く息は白く染まり、ヘルメットの中には異常なほどの寒気が充満していた。
柊 蒼真「ハァッ……ハァッ……。な、なんだよアイツ……。背筋が凍るなんてもんじゃねぇ……。本物の、化け物か……ッ!!」
蒼真は全身の震えを抑え込みながら、必死にFL5をコースに留めた。1位への執着は、あの圧倒的で底知れない「恐怖」によって完全にへし折られてしまった。
若林「ああああっ!! 柊 蒼真のシビックがコーナー出口で痛恨のトラクション抜け!! その隙にちとせのZが一気に引き離す!! まるでシビックの足元だけが凍りついたかのような謎の失速だあああ!!!! トップの壁はあまりにも高く、そして冷たかった!!」
エアリ「……愚かですね。彼女の領域に無策で飛び込むなど、自ら冷凍庫に入るようなものです。ちとせさんは見た目こそ可愛らしいですが、その本質は底意地の悪い極寒の絶対零度です。彼女を『邪魔』などと称した時点で、柊さんの敗北は決まっていたのです。あれでも彼女はおじさんとしての余裕を見せて手加減した方ですよ。……柊さん、風邪を引かないように祈るばかりですね。」
VTECターボが悲鳴を上げ、FL5の車体が物理限界の領域でコーナーを刻む。
しかし、目の前の銀色のフェアレディZは、まるで氷の上を滑るように、音もなく、ロールもなく、ただそこに「存在」していた。
柊 蒼真「俺は完璧なキャリアをやろうとしてるが......あのZだけは追って抜けない......!!! なんで抜けないんだよ......っ!!!!」
蒼真は歯ぎしりをする。
彼のシビックは、FF最速の称号に恥じない動きをしている。
コーナーの進入速度は明らかにこちらが上。立ち上がりのトラクションも完璧。
理論上、このセクターで差は詰まるはずだ。いや、詰めなければおかしい。
だが、現実は残酷だ。
蒼真が「詰めた」と思った瞬間、Zのリアから目に見えない「冷気」の壁が噴出し、シビックのフロントガラスを白く曇らせる。
吸気温度が異常に下がり、エンジンの吹け上がりが一瞬鈍る。
そして、路面が局所的に凍結したかのようなトラクション抜け。
ちとせ『もへ〜......。柊く〜ん、そんなに青筋立てて運転してると、ハゲちゃうよ〜?』
無線から聞こえる、気の抜けた「おじさん」の声。
その声が聞こえるたびに、蒼真の完璧な計算式が音を立てて崩れ去っていく。
柊 蒼真「ふざけるなッ!! 俺はプロを目指しているんだ! こんな......こんな訳の分からないオカルトじみた走りに、俺の完璧なキャリアを汚されてたまるかッ!!」
彼はステアリングを叩きつけるように切り込む。
しかし、Zはまるで蒼真の思考を先読みしているかのように、いや、そもそも蒼真のことなど眼中にないかのように、ゆらりとラインを変えてブロックする。
それはブロックというより、ただ「そこに道があったから走った」だけのように自然で、だからこそ絶望的だった。
ちとせ『おじさんねぇ、必死な若者を見るのは好きだけど〜......しつこいのは嫌いなんだよね〜。あと、背後でギャーギャー喚かれると、寒気がして氷が出ちゃうんだよ〜。』
キィィィィン......。
周囲の空気がさらに冷え込む。
蒼真の視界には、Zが走った跡に、キラキラと舞うダイヤモンドダストが見えた気がした。
エアリ「……可哀想に。柊さん、あなたの『完璧』は物理法則の中での話です。ちとせさんは、その物理法則を『凍結』させて捻じ曲げる存在。キャリアとか理論とか、そんなちっぽけな物差しで測ろうとするから、心が折れるのです。諦めて2位狙いに切り替えるのが、賢い大人の選択ですよ?」
若林「路面はフラット! 注目の5位グループ!! ヒルクライム区間も後半!! 腹切 カナタ! 山吹 花! そして眞鍋 琉世!!! この三台のバトルは必見!!!! 見逃せないバトルが、開始のゴングが鳴り響いたアアアアアっ!!!!」
アクセルベタ踏みの高速セクション。
物理的なパワー差が残酷なまでに現れるこの区間で、カナタの86は悲鳴に近い高回転サウンドを響かせていた。
腹切 カナタ「くっ......! やっぱりここじゃ離されるか......!? いえ、離させないっ!! 古田さんの組んだこの足なら、全開で突っ込める!!」
カナタは、本来ならブレーキングが必要な緩やかな右カーブを、アクセルを抜かずに「慣性ドリフト」気味に滑らせてクリアしていく。
タイヤの摩擦円を100%使い切る、命知らずのコーナリング。
その背後、バックミラーを埋め尽くすのは、青い悪魔・WRX STI。
山吹 花「あははっ! 頑張るねぇカナタくん! でもさぁ、そんな非力なマシンじゃ、あたしのVABちゃんの『愛』からは逃げられないよぉ〜〜♡」
花は余裕の表情で、WRXの強大なトルクを解放する。
スバル特有のボクサーサウンドが、86のリアバンパーに噛み付く。
山吹 花「ほらほら! どかないとオカマ掘っちゃうぞ☆ 潰されたくなかったら、さっさと道を開けなさいッ!!」
そして、そのさらに後ろ。
花に罵倒され、プライドをズタズタにされた「銀の戦闘機」が、怨念のようなオーラを纏って復活していた。
眞鍋 琉世「......殺す。全員殺す......!! 俺はまだ終わっちゃいねぇ......!! ランエボの底力、見せてやるッ!!!」
眞鍋のランエボIXが、ミスファイアリングシステムの炸裂音と共に、前の2台に食らいつく。
冷静さを欠いているようでいて、その走りは怒りを推進力に変えた「鬼神」の如き速さだった。
エアリ「……怖いッスねぇ。前門の女王様、後門の復讐鬼。その間に挟まれたカナタさんは、さながら猛獣の檻に放り込まれたウサギですからねー。……ですが、あのウサギ、意外と噛みつきますよ? 86の軽さは、ブレーキ勝負で化けられるってコトですよ....。」
ギャアアアアアアアアアン!!!!
ゴオオオオオオオオオオン!!!!!!!
山吹 花「ほら、そこの86そんな遅いの? ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ......♡」
WRX STIのブースト圧を上げながら、花は楽しそうに、リズミカルにカナタを煽る。
バックミラーに映る青い悪魔は、パッシングライトをBGMに合わせて点滅させるかのようにチカチカと浴びせかける。
山吹 花「280馬力ぽっちで、あたしのVABちゃんの前に立とうなんて100年早いのよぉ〜! さっさとママのお腹に帰ってミルクでも飲んでなさいよ、この雑魚86ぅ〜♡」
その言葉は、カナタのプライドを鋭利なナイフのように切り刻む。
直線の加速では、どうあがいてもWRXの暴力的なトルクには勝てない。
物理的な「遅さ」を突きつけられ、カナタの額に血管が浮き上がる。
腹切 カナタ「やめろオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!!」
カナタは咆哮と共に、アクセルペダルを床板が抜けるほどの勢いで踏み抜いた。
怒りではない。これは、自身の、そして86の可能性を信じ切るための叫びだ。
腹切 カナタ「遅くなったのか......!? 確かに直線じゃ置いていかれるッ......!!
だけど、この86はコーナーじゃ誰よりも速いんだよッ!!!!」
コーナーへのブレーキング。
カナタは、常識では考えられないほど奥までブレーキを我慢した。
タイヤがロック寸前の悲鳴を上げ、車体が横Gで大きく傾く。
しかし、古田の組んだ足回りは、その荷重を完璧に受け止め、86を「オン・ザ・レール」で旋回させる。
腹切 カナタ「ここだッ!!! 見てろよ花ッ!!! 俺の86の『キレ』をッ!!!」
スパパンッ!!
電光石火のシフトダウン。
86はまるで物理法則を無視したかのような鋭角なラインでコーナーをクリアし、立ち上がりでWRXとの差を逆に広げてみせた。
若林「うおおおおおっ!!! 言い返したアアアア!!! いや、走りで言い返したアアアア!!! 『ざぁ〜こ』と言われた直後の鬼のツッコミ!!! ブレーキングでWRXをちぎったアアアア!!! 腹切 カナタ、メンタルが鋼鉄です!!!」
エアリ「……素晴らしい。挑発に乗ってラフになるのではなく、逆に集中力を高めましたね。罵倒を『燃料』に変えて燃焼効率を上げる……。カナタさん、あなたも相当な変態ですね(褒め言葉)。」




