吾妻編第23話 北の職人
86伝説エーペックスエンジェル46
大長編 4部作 pixiv 制作決定!!!!
シーズン5おわり。続きは2026年8月末です。
コーナーへのブレーキング競争。
相川 美保のR33 GT-R 400Rが、その希少なディープマリンブルーのボディをきらめかせながらクリッピングポイントを目指す。
だが、その一瞬の隙間を、影のように黒い塊が切り裂いた。
若林「そして黒いGR GTがインをついたあああ!!!!!」
美保の視界の端を、異次元の速度差で黒いノーズが掠めていく。
それはまるで、深海から音もなく現れた巨大なシャチが、獲物を一呑みにするような圧倒的なプレッシャーだった。
相川 美保「後ろからGR GTが......!? 速い......っ!!! 私の400Rも遅くはないはずなのに、立ち上がりのトルクが全然違う!?」
美保は慌ててステアリングを修正するが、黒いマシンは既に彼女のラインを奪い去っていた。
GR GTのコクピットで、岡田 大成は冷静にパドルシフトを弾く。
その背中で唸るのは、トヨタがル・マンやGT3で培った技術の結晶であるV8ツインターボエンジン。
岡田 大成「舐めるなよ...GR GTは600馬力を超えるスーパーカーだ......っ!! 市販車ベースのチューニングカーとは、『骨格』のレベルが違うんだよ!!」
美保の400Rも名車だが、岡田のGR GTは「勝つために生まれた」純粋なレーシングマシンのプロトタイプ。
その暴力的な加速力は、R33をあっという間にバックミラーの彼方へと追いやった。
エアリ「……物理的なスペック差、ですね。GR GT3 Conceptは、空力、重心、剛性、すべてがサーキット前提で設計されています。美保さんのR。」
コーナーへのブレーキング競争。
相川 美保のR33 GT-R 400Rが、その希少なディープマリンブルーのボディをきらめかせながらクリッピングポイントを目指す。
だが、その一瞬の隙間を、影のように黒い塊が切り裂いた。
若林「そして黒いGR GTがインをついたあああ!!!!!」
美保の視界の端を、異次元の速度差で黒いノーズが掠めていく。
それはまるで、深海から音もなく現れた巨大なシャチが、獲物を一呑みにするような圧倒的なプレッシャーだった。
相川 美保「後ろからGR GTが......!? 速い......っ!!! 私の400Rも遅くはないはずなのに、立ち上がりのトルクが全然違う!?」
美保は慌ててステアリングを修正するが、黒いマシンは既に彼女のラインを奪い去っていた。
GR GTのコクピットで、岡田 大成は冷静にパドルシフトを弾く。
その背中で唸るのは、トヨタがル・マンやGT3で培った技術の結晶であるV8ツインターボエンジン。
岡田 大成「舐めるなよ...GR GTは600馬力を超えるスーパーカーだ......っ!! 市販車ベースのチューニングカーとは、『骨格』のレベルが違うんだよ!!」
美保の400Rも名車だが、岡田のGR GTは「勝つために生まれた」純粋なレーシングマシンのプロトタイプ。
その暴力的な加速力は、R33をあっという間にバックミラーの彼方へと追いやった。
エアリ「……物理的なスペック差、ですね。GR GT3 Conceptは、空力、重心、剛性、すべてがサーキット前提で設計されています。美保さんのR33も素晴らしいお車ですが、純粋な戦闘力という点では、あの黒いプロトタイプには分が悪いです。」
ステアリングから伝わる情報は、かつてないほど鮮明だった。
タイヤのたわみ、路面のアンジュレーション、サスペンションの沈み込み。
すべてが手に取るようにわかる。
腹切 カナタ「こっちも負けないぜ!! 古田さんがやってくれたチューンだ......!!!」
カナタはコーナーのクリッピングポイントで、ミリ単位のアクセル操作を行う。
古田が施した「REVIVE(再生)」チューン。
それは単なるパワーアップではない。ボディ補強による剛性アップ、そしてエンジンのレスポンスを極限まで高めた、ドライバーの意志とマシンを直結させる「人馬一体」のセッティング。
腹切 カナタ「280馬力......数字だけ見れば周りより低いかもしれない。でも、この『踏める』感覚は誰にも負けない!! 86は、コーナーで輝く車なんだッ!!」
カナタの86が、まるで生き物のようにコーナーを脱出し、上位集団の背中に食らいつく。
パワーの劣勢を、魂のチューニングとドライバーの技術で覆す。それが86伝説の真骨頂だ。
エアリ「……素晴らしい。無駄な挙動が一切ありません。パワーに頼らず、車のポテンシャルを『使い切る』走り。あの古田さんの仕事は、常にドライバーを信じることから始まっているようですね。……美しいコーナリングです。」
モニターには、激しいデッドヒートを繰り広げるWRX STI(花)、86(カナタ)、そしてスイフトスポーツ(翔太)の姿が映し出されている。
古田「……いい走りだ。俺が組んだ足、エンジンの吹け上がり……ちゃんとドライバーと対話できている。」
古田は満足げに頷くが、その視線は少しだけ心配そうに、青いWRXを追った。
宿命のライバルであるランエボIX(眞鍋)に対し、感情をむき出しにして挑みかかる山吹 花の姿。
その危うさと、それを支えようとする周りの仲間たち。
古田「カナタ...伊藤...、花ちゃんのことをみとどけてくれ......」
古田は知っていた。
速さだけを追求すれば、いつか壊れる瞬間が来ることを。
だからこそ、カナタの優しさと、翔太の熱さが、花のブレーキとなり、支えとなることを願っていた。
特に、花が想いを寄せる伊藤 翔太に対しては、チューナーとして、そして一人の大人として、無言のメッセージを送っていた。
古田「……あの子のハンドルを握れるのは、俺のチューニングじゃねぇ。お前らなんだよ。」
ガレージの蛍光灯の下、古田は祈るように呟くと、再びモニターの中の愛弟子たちに視線を戻した。
古田「...俺のノウハウさえ活かせば、吾妻山向けのセッティングなど容易だ......っ!!」
彼の背後には、膨大な量のセッティングデータがファイリングされている。
気温、湿度、路面温度、そしてドライバーの癖。すべてが数値化され、彼の頭脳とデータベースに格納されていた。
古田「コースごとに荷重の掛かり方の変わるエーペックスカップは、スタビリティ、トランスミッションにコントロール......全てが俺のノウハウに組み込まれている。データもだ。」
画面の中で、カナタの86が縁石を跨ぎ、翔太のスイフトが路面に吸い付き、花のWRXが爆発的な加速を見せる。
それらは全て、古田が計算し尽くした「解」だった。
予測不能なレース展開でさえ、彼にとっては想定の範囲内にある変数のひとつに過ぎない。
古田「ふっ……。それに、この大会の意義も分かってるつもりだ。」
古田はふと、モニターの隅に映る「復興支援」の文字に目をやった。
古田「エーペックスカップは東日本大震災復興をテーマに作られているんだろ? 破壊された道を直し、人が戻り、そこで再びエンジン音を響かせる……。いいじゃないか。」
彼は北海道という、東北のさらに北の大地を出て福島という東北の土地でこの熱狂を見つめていた。
それは単なる観戦者ではなく、技術で若者たちを支える「北の職人」としての眼差しだった。
古田「北海道出身の田舎の走り屋としては、温かい目で静かに見下ろしたいものだな。……行け、若造ども。お前らの走りが、そのままこの土地の『力』になるんだ。」
古田の言葉は、オイルの匂いが染み付いたガレージに静かに溶けていった。
若林「さあ! 1位、2位、3位、4位、5位、6... うわアアアっ!!! EVO9に山吹 花が張り付いているウウウ!!!!!」
テール・トゥ・ノーズ。
いや、もはや「キス・トゥ・バンパー」と言えるほどの超近距離。
山吹 花は、先行する眞鍋 琉世のランエボIXに対し、パッシングライトをチカチカと点滅させながら、マイクに向かって甘ったるく、かつ毒を含んだ声で囁いた。
山吹 花「あはっ☆ ねえねえ眞鍋さーん? 聞こえてますかぁ〜? バックミラー、青一色で綺麗でしょー? 目に優しい『スバルブルー』ですよぉ?」
彼女はステアリングを左右に小刻みに振り、WRXのノーズをチラつかせて眞鍋を煽る。
山吹 花「そんなに必死にブロックしちゃってぇ。もしかしてビビってるんですかぁ? 私のVABちゃんが『前の銀色の車、止まって見えるよー』ってあくびしてるんですけどぉ? くすくすっ♡」
眞鍋 琉世「ッ……!! このアマ……ッ!! 完全にナメ腐りやがって……!!」
眞鍋の額に青筋が浮かぶ。
百戦錬磨の「銀の戦闘機」に対し、この小娘は完全に遊んでいる。
だが、その遊びのようなドライビングの精度は、プロ顔負けの正確さで眞鍋の逃げ場を塞いでいた。
山吹 花「ねえ、どかないなら……お尻ペンペンしちゃうぞっ♡ ……なんてね! さっさと道を開けなさいよ、この旧世代の遺物が!!」
花の声色が、一瞬にしてドスの利いたものに変わる。
甘い挑発と、冷徹な殺気。
その二面性こそが、山吹 花の恐ろしさであり、魅力だった。
エアリ「……性格が悪いですねぇ。相手の精神を揺さぶる心理戦。褒められたものではありませんが、あの若さでベテランを掌の上で転がす度胸は……末恐ろしいです。減点はしませんが、眞鍋さんが胃潰瘍にならないか心配です。」
若林「き、聞こえてくるううう!!! WRXの山吹 花選手! これは……! これは『口撃』だああああ!!! ランエボの眞鍋選手に対し、精神的ダメージを与えに行っている!!!」
山吹 花「はぁ〜〜〜? ねぇ、ちょっとおじさん? いつまでそこで蓋してるつもりですかぁ〜? 遅い! 邪魔! カビ臭い!!」
花はパッシングライトをリズミカルに点滅させながら、眞鍋のバックミラーを自身のWRXの青色で埋め尽くす。
山吹 花「その古臭い鉄屑(エボ9)、オイル臭いんですけど!? 環境に悪いからさっさとスクラップ工場に持って行ってくれません!? あたしの神聖なVABちゃんの吸気が汚れるのよ!!」
眞鍋 琉世「ぐぬぬッ……!! この、クソガキがぁ……ッ!!」
山吹 花「『銀の戦闘機』だか何だか知らないけど、あんたの時代は終わったの! 化石は博物館で大人しく展示されてなさいよ!!」
コーナーの進入で、花はわざと眞鍋のイン側ギリギリにノーズをねじ込み、接触寸前のプレッシャーをかける。
山吹 花「六連星の輝きにひれ伏しなさいよ! このポンコツ菱形野郎!! さっさとどけぇぇぇぇッ!!!」
若林「うわぁぁぁ!! 三菱のエンブレムを完全にディスったぁぁ!! これは三菱ファン激怒必至!! しかし速い!! 悪口の数だけ速くなるのか山吹 花!!」
エアリ「……お口が悪いですねぇ。品性のかけらもありません。ですが、怒りをパワーに変えるタイプというよりは、相手を怒らせてミスを誘う高度な(そして性格の悪い)戦術です。眞鍋さんのメンタルが心配です。胃薬を用意しておきましょう。」
山吹 花「あ、そうだ! 聞いたわよぉ? あなた、まだ21歳なんですってね?」
花の声が、無線越しに眞鍋の耳元で弾ける。
山吹 花「同年代じゃん! 若いじゃん! なのに......」
一瞬の間。そして、絶対零度の冷徹な侮蔑。
山吹 花「なんでそんな『加齢臭』がする走りをすんのよっ!!! 生気が感じられないのよ、その銀色の鉄屑からさぁ!!!」
眞鍋 琉世「なっ......!? か、加齢臭だと......!? 俺はまだ21だぞッ!!」
山吹 花「関係ないわよ! その古臭いエボ9を選んでる時点で、感性がお爺ちゃんなの! 『銀の戦闘機』? バッカじゃないの!? それ、『シルバー人材センターの送迎車』の間違いでしょオオオオッ!!!」
眞鍋 琉世「き、貴様ァァァァッ!!!」
激昂した眞鍋が、一瞬だけ冷静さを欠いてブレーキを遅らせた。
その刹那、花は見逃さなかった。
山吹 花「隙ありッ! そのガラスのメンタルごと、砕け散りなさいッ!!!」
ズドンッ!!!!
花のWRX STIが、イン側の縁石を強引に踏み越え、火花を散らしながらエボ9の横腹に並ぶ。
EJ20エンジンの咆哮が、4G63の悲鳴をかき消した。
山吹 花「ばーいばぁ〜い♡ 介護施設で大人しく余生を過ごしてね、21歳の『お爺ちゃん』!!!」
スバルブルーの疾風が、銀色のランエボを置き去りにする。
若き実力者・眞鍋 琉世が、罵倒という名の精神攻撃と、容赦ないドライビングの前に沈んだ瞬間だった。
若林「ぬ、抜いたアアアアア!!! 罵倒しながら抜いたアアアア!!! メンタルごとへし折る、これが『女王』のやり方かアアアア!!!! 眞鍋選手、21歳にして『お爺ちゃん』認定され、あえなく撃沈です!!!!」
眞鍋 琉世「クソオオオオオ!!!」
若林「完全に流れを引き寄せたアアアアア!!!!!!!!!
終盤までこの戦いが続くでしょう!!!!!!」
山吹花(カナタ.....助けて.....ッ!!!!)
腹切カナタ「花....みんな........ッ!!!!」




