吾妻編第20話 解析不能
K426
86伝説エーペックスエンジェル46戦
大長編4部作制作決定!!!!
吾妻編のエアリですが本来のエアリと違った雰囲気が出てます。注意してください。
シグナルのレッドランプが全て点灯し、張り詰めた一瞬の静寂が訪れる。
エンジンの回転数が極限まで高まり、各車が今か今かと解き放たれる瞬間を待っていた。
そして――ブラックアウト!!
若林「さぁ! 高湯温泉手前! 23位の黒いクラウンアルテッツァ! 中野 伸一がゲートを抜けエエエエ........ッ!!!!」
ドォォォォォォォォォォォン!!!!!!
若林「全車、一斉にスタートォォォォッ!!!!!! GAME STARTオオ!!!!!」
中野 伸一「俺のアルテッツァは、福島の峠で鍛え上げた足だ! 雪道だろうが凍結路だろうが、絶対に食らいついてやる!!」
23台のモンスターマシンが、ちとせの作り出した極寒の氷雪路面を蹴り上げる。
舞い上がる雪煙とダイヤモンドダストの中で、それぞれの思惑と殺意、そして裸の公約が交錯する!
相川 美保「いくよー!!!負けないんだからっ!」
菜園 宗一郎「ひぃぃぃぃッ!? 後ろからアウディが突っ込んでくる!? 前の相川(弟)は遅ぇし!! 計算外だ!! 計算外すぎるッ!!」
内藤 セリナ「アハハハハハ!! どけどけどけぇ〜〜!! フミッパで行くよ〜〜!!!」
轟音とカオスの中、エーペックスカップ第8戦、吾妻GTの幕が切って落とされた。
相川 律「抜かせるかよ菜園ッ!!!! 美保やおばあのためにも俺は....引くわけにはいかねぇんだよォォォ!!!!」
律のR35が、凍結路面を4輪で鷲掴みにし、爆発的なトラクションで加速していく。
その加速Gは、菜園の想定していた数値を遥かに上回っていた。
菜園 宗一郎「35NISMOか....速い!......なぜあのアヴェンタよりもタイムが速い......!? それ相応の走りをお前らR使いは平然としてしまう......」
菜園は舌打ちをし、自身のポルシェのギアを叩き込む。
物理法則を無視したようなGT-Rの挙動に、彼の計算式が早くも狂い始めていた。
だが、本当の恐怖は前方ではなく、後方にあった。
菜園の背筋に、冷たい悪寒が走る。
バックミラーに映ったのは、減速する気配の一切ない、狂気のレモンイエローだった。
菜園 宗一郎「R8が後ろから......!??? なぜこんなヒルクライムをアクセルベタで踏み込めるんだ.....!? 俺には理解不能で分析も不能だ......ッ!」
内藤 セリナのアウディ R8 V10 plusは、V10エンジンの絶叫と共に、本来ならブレーキングが必要なコーナーへフルスロットルで突っ込んできていた。
タイヤが悲鳴を上げ、車体が横滑りしながらも、不思議と前へ進んでいる。
それは「技術」というよりは「自殺行為」に近い。
菜園 宗一郎「同じ空間を走ってると思いたくない......そんなの嫌だ.....っっ!!!!!」
論理的思考を是とする菜園にとって、目の前で起きている「Rの理不尽な加速」と「R8の狂った突撃」は、生理的嫌悪すら催すカオスそのものだった。
若林「さぁ!! 第1コーナーへの飛び込み!! 内藤のR8が、ブレーキランプを一切点灯させず、早速911GT3『992GT3』に仕掛けたぁぁぁ!!!! まさに暴走特急!! 菜園選手、逃げ場なし!!」
【エーペックスカップ第8戦 吾妻GT レース状況:Lap 1 / 2 GAME START】
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1位 :ちとせ(日産 フェアレディZ RZ34)➡ ロケットスタート
2位 :柊 蒼真(ホンダ シビックタイプR FL5)
3位 :サテラ(三菱 ランサーエボリューション VII MR)
4位 :フリス(ポルシェ 718 ケイマン GT4)
5位 :腹切 カナタ(TOYOTA 86 REVIVE)➡ 決死のスタート(公約:全裸水泳)
6位 :眞鍋 琉世(三菱 ランサーエボリューション IX)
7位 :伊藤 乎太郎
8位 :山吹 花(SUBARU WRX STI VAB)
9位 :相川 美保(日産 スカイラインGT-R 400R)➡ 殺意のフル加速
10位:岡田 大成(トヨタ GR GT)
11位:古賀 加奈子(BMW M5 G90)
12位:高槻 健永
13位:クリスタ・ニールセン(フェラーリ 488GTS)
14位:伊藤 翔太(スズキ スイフトスポーツ ZC33S)
15位:相川 律(日産 GT-R NISMO R35)▲ ビビりスタート
16位:菜園 宗一郎(ポルシェ 992 GT3)★ 前後からの挟み撃ちでパニック
17位:内藤 セリナ(アウディ R8 V10 plus)➡ 暴走ロケットスタート
18位:イヨ(トヨタ GRスープラ)
19位:樋口 瀬那(Xiaomi SU7 Ultra)
20位:柳津 雄介(BMW M4 DTM Edition)
21位:佐藤 ジュン(マツダ RX-7 FD3S)
22位:陽太
23位:中野 伸一➡ 福島魂のスタート
スタート直後、誰もが予想した「氷の結界」は展開されなかった。
そこにあるのは、タイヤがアスファルトに食らいつき、白煙を上げる乾いた路面!
純粋なグリップ走行による、超高速のオープニングラップが幕を開けた!
若林「先頭はまさかの銀色のRZ34! ちとせえええ!!!
そこに白いFL5の柊 蒼真がピタリと張り付いてるうううう!!!!」
銀色に輝く日産 フェアレディZ RZ34が、まるで弾丸のように第1コーナーをクリアしていく。
その背後、わずか数センチのギャップで、純白のホンダ シビックタイプR FL5が食らいつく。
VTECターボの甲高い咆哮が、V6ツインターボの重低音に重なり、凄まじい不協和音を奏でていた。
柊 蒼真「……へぇ、今日は氷?を使わないのかい? 舐められたもんだね。でも、その銀色のボディ……俺の純白で塗り潰してあげるよォ!!」
蒼真のFL5が、イン側の縁石を深く踏み越え、RZ34のサイドミラーに映り込む。
ちとせは無言のまま、ステアリングを微修正し、銀色のラインを死守する。
能力に頼らない、純粋なドライビングテクニックのみの殴り合い。
そのあまりの速さに、観客の目は釘付けになっていた。
エアリ「ちとせちゃん、今日は『銀の弾丸』モードなんですね。気の走り……お山が熱気でビックリしちゃってますよー。」
若林「7位の黒風の神ウアイラにスバルブルーが張り付くううう!!!!!」
コーナーの立ち上がりで、数億円の価値を持つパガーニ・ウアイラの背後に、巨大なリアウィングを背負ったWRX STIがビタリと食らいついた。
その距離、わずか数センチ。
コクピットの中で、山吹 花は不敵な笑みを浮かべ、パッシングライトを激しく点滅させた。
山吹 花「ねぇ、風の天才くん? その数億円のイタリア製のオモチャ、邪魔なんだけど? 退いてくんない?」
彼女の瞳には、相手がハイパーカーだろうが天才だろうが関係ない、純粋な闘争本能と侮蔑すら含んだ自信が宿っていた。
山吹 花「『風を読む』だっけ? あはっ、笑わせないでよ。アンタが読んでるその風、あたしのボクサーサウンドで全部かき消してあげるからさぁ! さっさと道を開けなさいよ、この鈍亀ウアイラ!」
先行する伊藤 乎太郎は、バックミラーに映る青い悪魔のプレッシャーに、冷や汗を流しながら呟いた。
伊藤 乎太郎「……ボクの風が……乱される……! なんだあの人は……理屈も理論も関係ない、ただの暴力的な速さだ……っ! まるで嵐そのものじゃないか……!」
花はアクセルをさらに踏み込み、ウアイラの高貴なリアバンパーを煽るように、生意気極まりないラインでインを伺い続けた。
バックミラーに映る青いWRX STIは、もはや車というより、獲物を狙う猛獣の瞳をしていた。
パガーニ・ウアイラという数億円のハイパーカーを操る天才少年、伊藤 乎太郎は、背後から浴びせられる桁違いの殺気に、ステアリングを握る手がわずかに汗ばむのを感じた。
伊藤 乎太郎「(どうしたんだ花さん!? この前と違うぞ!!??)」
乎太郎の知る山吹 花は、もっとクールで、静かな氷のような走りをするレーサーだったはずだ。
だが、今の彼女は違う。
荒々しく、獰猛で、それでいて計算し尽くされた「暴力的なライン」で、ウアイラの弱点を的確に突いてくる。
伊藤 乎太郎「俺の『風』が……読めない……! 花さんの放つプレッシャーが、風の流れをズタズタに切り裂いてるんだ……ッ! くそっ、このままじゃ……食われる!!」
山吹 花(無線)「あははっ! どうしたの天才くん? 高そうな車が泣いてるよぉ? ビビってんなら、さっさとママのところに帰りなさい!!」
乎太郎「ッ……!! 言わせておけば……!! 俺だって……!!」
乎太郎はアクティブエアロフラップを全開にし、ウアイラの空力性能をフル活用してブロックを試みる。
だが、花のWRXはまるで影のように、そのスリップストリームから離れようとしなかった。
V12ツインターボの甲高い咆哮と、ボクサーエンジンの重低音が重なり合い、吾妻の山肌を震わせる。
ストレートエンド、減速必至の難所手前で、青いWRXがパガーニ・ウアイラの横に並びかけた。
若林「このヒルクライムでWRX STiとウアイラがサイドバイサイドおおおおっ!!!!」
数億円の芸術品と、数千万円の戦闘機。
本来なら勝負になるはずのない二台が、互いの塗装が触れ合うほどの超接近戦を展開している。
若林「この先コースは5連ヘアピンへと突入します!!! うおっと!!! WRXがアウトから並んで滑り込んだアアア!!!!!!」
常識では考えられないライン取りだった。
インを閉めた乎太郎に対し、花は減速を遅らせ、アウト側の荒れた路面へ躊躇なく突っ込んだのだ。
山吹 花「あははっ! 天才くん、その高い車じゃアウトの『砂利』は踏めないでしょ? ラリー屋のあたしにとっては、そこも立派な走路なのよ!!」
WRXが四輪を激しくスライドさせながら、アウト側からウアイラをねじ伏せにかかる。
巻き上げられた小石が、ウアイラの高級なカーボンボディにバチバチと音を立てて直撃した。
伊藤 乎太郎「くっ……!! アウトから被せてきただと!? 俺の計算にはないラインだ……! しかも飛び石まで……! この人、高級車への敬意とかないのか!?」
山吹 花「敬意? そんなもん、速い方が偉いに決まってんでしょ! ほら、どきなさいよ鈍亀ェ!!」
5連ヘアピンの入り口で、山吹 花のWRX STIが物理法則を無視した挙動を見せた。
アウト側の砂利を蹴り飛ばし、強制的にノーズをイン側へねじ込む「クロスライン」。
パガーニ・ウアイラの鼻先を掠めるようにして、スバルブルーの機体が前に躍り出た。
若林「アウトからインにラインをクロスさせてしまううう!!!! 山吹花のWRXが前に出たあああああっ!!!!」
会場がどよめきと悲鳴に包まれる中、若林が解説席へ助けを求めるように叫んだ。
若林「エアリさんも何か言ってくださいよ!! この非常識なオーバーテイクを!!」
しかし、エアリは冷静だった。
先ほどまでの柔らかな笑みは消え、モニターを見つめる赤い瞳は、宝石の鑑定士のように鋭く、冷徹な光を放っていた。
エアリ「……騒ぐ必要はありません、若林さん。これは『非常識』ではなく、極めて論理的な『物理現象』です。」
その声色は硬く、一切の甘えを許さない厳格な響きを持っていた。
エアリ「彼女はアウト側の未舗装路を、単なる『悪路』ではなく『摩擦係数の高い足場』として利用しました。四輪駆動のトラクションを計算し尽くし、遠心力を瞬時に推進力へと変換したのです。……ですが。」
エアリは少しだけ眉をひそめ、厳しい口調で付け加えた。
エアリ「タイヤへの負荷、サスペンションへの衝撃……全てが限界値ギリギリです。あのような乱暴な『宝石の研磨』は、一歩間違えば自らを粉砕する諸刃の剣。……美しくはありますが、あまり感心できるマナーではありませんね。減点対象です。」
若林「き、厳しいイイッッ……! 岩属性ならではの『硬派』な解説! 華麗な抜き去りにも、冷静なダメ出しが入りました!!」
ズオオオオオオオオオッ!!!!!!
8.4リッター、V型10気筒。
大排気量NAエンジンの暴力的なトルクが、吾妻の急勾配を平坦な道であるかのように踏み潰していく。
若林「……高槻イイイイイイイッ!!!!
赤いドラゴンが3台を飲み込んだあああああ!!!!!!」
それは、オーバーテイクというよりは「捕食」だった。
12番手からスタートした高槻 健永のダッジ・バイパーが、前のコーナーで競り合っていた古賀 加奈子(BMW M5)、岡田 大成(GR GT)、そして相川 美保(GT-R 400R)の3台を、たった一つの直線区間でまとめてブチ抜いたのだ。
高槻 健永「……チッ。道が狭すぎるんだよ、ここは。俺の『龍』が窮屈がって暴れてやがる。」
岡田大成「ウソだろ......!?でも、まだ抜かせるチャンスはある!!!!」
ステアリングを握る高槻の表情は、氷のように冷徹だった。
巨大なボンネットが唸りを上げ、先行車たちのスリップストリームを強引に吸い込み、吐き出す。
高槻 健永「悪いな、雑魚ども。視界の邪魔だ。……消えろ。」
相川 美保「はぁ!? 私の400Rを一瞬で!? ちょっと待ちなさいよアンタァ!!!」
岡田 大成「バカな……! この区間で3台抜き!? GR GTの加速でも追いつけないトルクだと……!?」
若林「信じられません!! 欧州のハイテクサルーンも、日本の次世代GTも、伝説のGT-Rも!! アメリカン・マッスルの暴力的な加速の前に、為す術なく飲み込まれました!! まさに『赤い龍』の降臨だアアアア!!!」
エアリ「……なんて野蛮な走り。繊細なライン取りもへったくれもありませんね。ただただ大排気量で物理法則をねじ伏せる……。岩を砕くハンマーのような走りですが、品性が足りません。減点です。」
若林「後方でも見物なバトルが始まった!! NDロードスター! 陽太 VS クラウンアルテッツア中野 伸一ィィ!!!!」
オレンジ色の小さなオープンカーと、黒塗りのスポーツセダン。
馬力競争とは無縁の、しかし最もドライバーの腕が試される領域でのドッグファイト。
ヘアピンカーブで、陽太のNDロードスターが軽快に向きを変えるが、背後のアルテッツァが不気味なほどスムーズなラインで追従してくる。
中野 伸一「悪いな若いの。ここら辺の峠は、俺の庭なんだよ......。パワーじゃ勝てねぇが、この下りセクションなら話は別だ。」
中野のアルテッツァは、地元・福島のアスファルトを知り尽くした「いぶし銀」の走りで、陽太の隙を虎視眈々と狙っていた。
陽太「くっ......! 離れない......! こっちは最新のNDだぞ!? なんであんな重そうなセダンがついてくるんだよ!」
若林「この勝負どうなる!!?? パワーウェイトレシオのNDか! それとも地元の意地、アルテッツァか!」
その様子をモニターで見つめるエアリは、冷静に、しかし厳格に評価を下した。
エアリ「……確かに、同じカテゴリー同士のお車ですからね。大排気量で押し切るような『雑な走り』は通用しません。」
彼女の赤い瞳が、二人のライン取りを細かく分析する。
エアリ「軽量で回頭性に優れるロードスターと、安定感とトラクションに優れるアルテッツァ。どちらもFR(後輪駆動)の基礎が詰まったお車です。つまり、これはマシンの性能差ではなく、『ドライバーの基礎技術』の優劣がそのまま順位に出る試験のようなもの。……誤魔化しは利きませんよ? ほんの少しの荷重移動のミスが、命取りになります。」
若林「うおぉぉ! エアリさんからの厳しいお言葉ッ! 『誤魔化しは利かない』!!
まさにドライバーの裸の力が試されているのかアアア!!??」




