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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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478/535

吾妻編第19話 吾妻GT、開幕!

K425

吾妻GTが開幕ッ!!!!

エアリたちのことがわかるアドバンテイル最新話、リメイク公開開始!!!!

スタートまで残り数秒。張り詰めた静寂の中、解説席のエアリがマイクを通して、どこか祈るように、しかし優しく呟いた。


エアリ「......でも、どんなに険しいお山でも、頂上へ続く道はひとつしかありませんから……。皆様、どうかご無事で……。」


その声がサーキットに響く中、不快な電子音が静寂を切り裂いた。

16番グリッド、ポルシェ 992 GT3のコックピットで、菜園 宗一郎がタブレット端末のデータを指先で弾きながら、冷ややかな視線を前方の腹切 カナタに向けた。


菜園 宗一郎「おい、ハラキリ......。今日の山吹 花はなんだ......? 俺の端末が弾き出している予測値と、奴の現在のバイタルデータ、マシンの出力係数がまるで合致しない。様子が変だぞ? 何か知ってるのか?」


菜園の眼鏡の奥の瞳は、人間を見ているというよりは、処理すべき「エラーデータ」を見つめているようだった。

突然の問いかけに、カナタはハンドルを握りしめ、苦渋の表情を浮かべる。


腹切 カナタ「......俺たちにも分からないんだ。昨日までとはまるで別人みたいで......俺たちの声も届かない。」


菜園は鼻で笑い、視線をタブレットに戻した。画面には複雑なグラフと数値が高速で流れている。


菜園 宗一郎「は? 原因不明のパラメータ変動だと? ......てことは、腹切 カナタと伊藤 翔太は、単純な足し算もできない低脳ってことか?」


その言葉に、隣のグリッドにいた伊藤 翔太が噛み付いた。


伊藤 翔太「あァ!? 菜園! テメェ、俺たちをバカにすんなよ! 足し算くらい余裕でできるわ! ......えーっと、いち、たす、じゅうご、は......」


翔太は焦りと怒りで指を折りながら計算し、自信満々に答えた。


伊藤 翔太「菜園......えっと、1たす15は14?」

腹切カナタ「あ!わかった!115!!!!」


一瞬の沈黙。

菜園は心底呆れたように肩をすくめ、憐れむような視線を投げかけた。


菜園 宗一郎「ハッ....お前らは所詮子供騙しで終わるやつらだろ。俺がゴールする頃にはもうお前らはかなり下の方にいるはずさ......

ワクワクしてるぜ...どんな分析ができるのかな......っ!!」


菜園のポルシェのエンジンが、精密機械のような咆哮を上げる。

その見下した態度に、カナタも闘志を燃え上がらせた。


腹切 カナタ「言ってくれるじゃないか菜園.....っ!! データだけで勝てると思うなよ......俺たちの走りで、その計算式ごとぶっ壊してやる!!」


若林「さぁ! 各車のボルテージは最高潮!! ついに......ついにシグナルがブラックアウトします!!!!」


ゴォォォォォォォォォッ!!!!!!


菜園 宗一郎の「子供騙し」「圏外」という言葉が、腹切 カナタの導火線に火をつけた。

冷静さを欠いたカナタは、コクピットの中で顔を真っ赤にして叫び返した。


腹切 カナタ「上等だ!! お前のその偉そうなデータ分析が絶対だって言うなら、勝負してやるよ!! もし俺たちが菜園、お前の予測を覆して上位に食い込んだら......その腐った性根を叩き直してやる!!」


菜園 宗一郎「ハッ......威勢だけはいいな。だが、もし俺の計算通り、お前らが無様に惨敗したらどうする? ただ負けましたじゃ済まされないぞ?」


菜園の挑発的な視線に、カナタの理性が弾け飛んだ。後先考えず、勢いだけで言葉を紡ぐ。


腹切 カナタ「......嘘だったら、、、ハダカで阿武隈川泳いでやるっっ!!!!!!!」


その瞬間、周囲の空気が一瞬で凍りついた。

10月の阿武隈川。その水温はすでにシングルの気温に近く、身を切るような冷たさだ。それを「全裸」で泳ぐなど、正気の沙汰ではない。

しかし、菜園 宗一郎はその失言を聞き逃さなかった。眼鏡の奥で、捕食者のような鋭い光が走る。


菜園 宗一郎「....言ったな? 言ったな????

その約束破るんじゃねェぞおおおっ!!!!!」


菜園はすぐさま手元のタブレットを操作し、音声レコーダーの保存ボタンを押した。


菜園 宗一郎「今の音声、バッチリ録音させてもらったぞオオオ!!!!!

クラウドにもバックアップ完了だ!!!

…レースが終わった後、『そんなこと言ってない』なんて言い訳は通用しないからな???

楽しみだなぁ......お前の汚い裸体が、福島の冷たい川に流されていく様を見るのが......クククッ!」

「ハダカで阿武隈川〜〜☆☆☆☆!!!!」


伊藤 翔太「お、おいカナタ!! お前バカか!? 阿武隈川って今の時期、地獄だぞ!? 死ぬ気かよ!!」


翔太が慌てて無線で叫ぶが、もう遅い。吐いた唾は飲み込めない。

カナタは自分の発言に一瞬顔を青ざめさせたが、もう引くに引けず、震える声で強がった。


腹切 カナタ「う、うるせぇよ!... 勝てばいいんだろ、勝てば!! 菜園より前でゴールすれば文句ねぇはずだ!!」


取り返しのつかない誓いを背負った86と、冷酷な計算式を組み上げたポルシェ。

因縁が極まる中、スターターがフラッグを振り上げた。


ゴォォォォォォォォォッ!!!!!!


全車、一斉にエンジン回転数をレッドゾーンまで叩き込む。

運命のシグナルが、今、ブラックアウトした!!!!


激しいスキール音と共に、色とりどりのマシンが吾妻の紅葉を切り裂いていく。

砂煙と氷の飛沫が舞うカオスの中、実況の若林が興奮気味にエアリへマイクを向けた。


若林「エアリさん! この中で活躍しそうな方は誰だと思いますか? 岩属性の視点から、ズバリ3人上げてください!!!」


エアリはモニターを穏やかな瞳で見つめ、口元に指を当てて少し考え込んだ後、鈴を転がすような優しい声で答えた。


エアリ「ふふっ、皆様とても魅力的で迷ってしまいますけれど……。そうですねぇ、わたくしが注目いたしますのは……」


彼女はモニター上の3台を指差した。


エアリ「まずお一人目は、やっぱり**ちとせさん**です。このツルツルの舞台を作り上げた張本人ですし、氷の使い方は天下一品ですから。お友達として、どれだけ皆様を『転がす』のか、楽しみでもあり心配でもありますねぇ。」


若林「なるほど! やはり絶対王者の盟友、外せませんか! ではお二人目は!?」


エアリ「お二人目は、**山吹 花さん**です。先ほども申し上げましたが、あのエンジンの重低音……まるで地殻変動のような力強さを感じます。今の彼女からは、岩をも砕くような『圧力』を感じますので、何か凄いことをなさる気がいたします。」


エアリは少し目を細める。花の放つ殺気を、彼女は「圧力」としてポジティブ(?)に捉えているようだ。


エアリ「そして三人目は……**腹切 カナタさん**、でしょうか。」


若林「おおっと! ここで崖っぷちの赤い戦闘機を操る男を選びましたか!! 理由は!?」


エアリ「ええ。今の彼は、逃げ場のない圧力によって、原石が宝石に変わろうとする瞬間の輝きを持っています。『負けたら裸』という極限状態が、彼をダイヤモンドのように硬く、鋭くしてくれるのではないでしょうか? ふふっ、頑張ってほしいですねぇ。」


若林「素晴らしい解説です! 魔王、堕ちた英雄、そして裸の挑戦者! この三つ巴がどうなるのか、目が離せません!!」


エアリ「あと......288戦ではいらっしゃらなかった、内藤 セリナちゃんですね......。過去の試合の映像を拝見しましたけれど、変な意味ではこの方にも焦点が入ってきてしまいます。」


エアリはモニターに映る、鮮やかなレモンイエローのアウディ R8 V10 plusを見つめ、信じられないといった様子で首を傾げました。


エアリ「よくもいままで、あんな可愛らしい黄色いレモン色のR8で、コーナーもヘアピンもアクセル踏みっぱなしでいられたものです......。岩肌を駆け下りる落石だって、もう少しブレーキをかけますわよ?」


そのおっとりとした口調とは裏腹に、彼女が指摘している内容は、内藤 セリナの狂気的なドライビングスタイルそのものでした。


エアリ「たしか......『フミッパスライダー』でしたっけ? その二つ名の通り、タイヤの悲鳴なんてお構いなしに滑りながら加速していくお姿は、ある意味で目が離せませんねぇ。」


若林「その通りです! 減速を知らない暴走機関車ならぬ暴走スーパーカー! 現在17番手スタートですが、この混戦の中で『踏みっぱなし』が吉と出るか凶と出るかああああ!?」


エアリ「でも……特殊な意味で気になりますのは、岡田 大成くんですわね。」


エアリは、漆黒のボディを纏ったトヨタ GR GTを見つめ、少し声を潜めるように続けました。

その瞳は、岩の裂け目から奥底を覗き込むような、静かで深い光を宿しています。


エアリ「岡田くんからは、あの『赤い戦闘機』の腹切 カナタさんとは、どこか違う……別の質の『熱』を感じるのです……。カナタさんが燃え上がる炎だとしたら、岡田くんは冷たく透き通ったマグマのような……。」


若林「ほほう! トヨタの次世代プロトタイプを操る岡田選手に、そこまでの違いを感じますか! 同じトヨタ車乗りとして、何か通じるものが?」


エアリ「ふふっ、わたくし、昔はセリカに乗っておりましたのよ? だからでしょうか、トヨタのスポーツカーが持つ『魂』のようなものには、少し敏感なのかもしれませんねぇ。」


若林「えええっ!? エアリさんがセリカ乗り!? どの型ですか!? ST205!? それともZZT!? 岩属性でセリカ……まさかラリー仕様で岩場を攻めていたとか!?」


エアリ「それは……ヒミツです♡ でも、セリカの足回りは本当にしなやかで強かったですよ。岡田くんのGR GTからも、そんな『懐の深さ』を感じるんです。彼が本気になった時、このレースの景色がガラリと変わるかもしれませんわ。」


エアリ「これは余談ですけれど……一応、3代目のSA60に乗っておりました。」


若林「えええっ!? SA60!? 3代目・A60系セリカですか!? あの直線基調のウェッジシェイプ!! 80年代の名車じゃないですか!!」


若林の声が裏返る。

可憐な見た目のエアリから飛び出したのは、予想以上に渋く、硬派な旧車の名前だった。


エアリ「ええ。あのカクカクとしたデザインが、まるで切り出したばかりの鉱石みたいで、とっても素敵でしたのよ? パワステも重くて、路面の凹凸がダイレクトに手に伝わってきて……。今の岡田くんのGR GTからも、あのお車と同じような、大地を掴む『無骨な芯の強さ』を感じるんです。」


若林「なるほど……! 見た目は近未来的なGR GTですが、その中には往年の名車セリカの魂、すなわち『ラリーの血統』が流れていると! エアリさんだからこそ見える、深い分析です!!」


エアリ「岡田くんがその『強さ』を解放した時、きっとこのツルツルの路面さえも味方につけてしまうかもしれませんねぇ。……あ、でも、あんまり熱くなりすぎてエンジンブローしないように祈ってますけれど(笑)」


岡田 大成のGR GTが放つ、不気味なほどの静けさと熱量。

それを見たエアリは、ふと過去の衝撃的なシーンを思い出したように呟きました。


エアリ「なんか前の試合の時、スタートできずエンジン爆発させたやついたじゃないですか。神代ナツメさん。」


若林「うわぁぁぁ!! その名前を出しますか!! 確かにありましたね、スタートの瞬間にコンロッドがブロックを突き破って炎上した、あの悲劇の……!」


エアリ「ええ。まるで耐えきれなくなった岩盤が弾け飛ぶみたいに、ドカーン! って……。今の岡田くんの車からも、あの方と同じような『ギリギリまで圧縮されたエネルギー』を感じるんです。」


エアリは心配そうに眉を寄せ、ケモミミを伏せました。


エアリ「パワーがあるのは素敵ですけれど、器が壊れてしまっては元も子もありませんから……。岡田くん、そして皆様も、ご自身のエンジン(心臓)を大切になさってくださいね?」


若林「『エンジンは心臓』……岩属性のエアリさんからの、重みのある警告です! さぁ、全車無事に1コーナーを抜けられるのか!? それともナツメ選手の二の舞になってしまうのか!?」


菜園 宗一郎「......まじかよ...相川のRにフミッパの内藤の間でスタートすんのかよォ.....」


計算高い菜園にとって、最も嫌うものは「不確定要素(カオス)」だ。

前には、いつ姉の怒りを恐れて急ブレーキを踏むか分からない精神状態の律。

後ろには、そもそもブレーキという概念が欠落している特攻野郎・セリナ。


菜園 宗一郎「前門のビビリGT-R、後門の暴走アウディ......。挟まれた俺のポルシェはどうなる? 物理演算シミュレーションだと、スタート直後に俺がサンドイッチになってスクラップになる確率が......85%を超えてるんだが!?」


内藤 セリナ(後方)「アハハハハハ!! 菜園く〜ん! 邪魔したらアウディでケツ掘っちゃうよ〜!! アクセル全開〜〜!!!」


相川 律(前方)「ひぃぃぃ美保ぉぉぉ!! 頼むからこっち見ないでくれぇぇ!!」


菜園 宗一郎「くそっ......! どいつもこいつもデータ通りに動きやがらねぇ......! 俺の完璧なレースプランが、スタート前から崩壊してやがる......ッ!!」


冷徹な解析者は、理不尽なカオスサンドイッチの中で、頭を抱えて唸った。


菜園 宗一郎「くそっ......! どいつもこいつも不確定要素ばかりだ......! 確率論が通用しねぇ......ッ!!」


その時、前方のスカイラインGT-R 400Rから、RB-Xエンジンの咆哮と共に、相川 美保のドスの効いた絶叫が轟いた。


相川 美保「あのさ...ッ!!

...データ通りになる世界がどこにあるんだよオオオオオオ!!!!!!!!」


ドカァァァァッッ!!!!!


その声は、サーキットの空気そのものを振動させ、菜園のタブレット端末にヒビが入るほどの殺気を孕んでいた。

計算や理論、そんな小賢しいものを全てねじ伏せる「暴力的なまでの感情」。

それが、相川 美保の真骨頂だった。


はるか後方の15番グリッドで、その怒声を聞いた相川 律は、自身のGT-R NISMOの中で小さく縮こまり、乾いた笑いを漏らした。


相川 律「今日の美保は荒っぽいな.....」


※いつもはおおらかな美保ちゃんですw


律は知っていた。姉がこうなった時、データも理論も、そして兄(弟)としての威厳も、全てが消し飛ぶことを。

ただ、嵐が過ぎ去るのを待つしかないのだ。


菜園 宗一郎「ひぃっ......!? な、なんだあの女(メス) ガキ......!?

俺の計算式が、恐怖でエラーを吐き出してやがる......ッ!!」


シグナルのレッドランプが全て点灯し、張り詰めた一瞬の静寂が訪れる。

エンジンの回転数が極限まで高まり、各車が今か今かと解き放たれる瞬間を待っていた。


そして――ブラックアウト!!


若林「さぁ... 高湯温泉手前! 23位の黒いクラウンアルテッツァ!

中野 伸一がゲートを抜けエエエエ........ッ!!!!」


ドォォォォォォォォォォォン!!!!!!


若林「全車、一斉にスタートォォォォッ!!!!!! GAME STARTオオオ!!!!!」


相川 律「抜かせるかよ菜園ッ!!!! 美保やおばあのためにも俺は....引くわけにはいかねぇんだよォォォ!!!!」


菜園 宗一郎「R8が後ろから......!??? なぜこんなヒルクライムをアクセルベタで踏み込めるんだ.....!? 俺には理解不能で分析も不能だ......ッ!」


若林「7位の黒風の神ウアイラにスバルブルーが張り付くううう!!!!!」


伊藤 乎太郎「……ボクの風が……乱される……! なんだあの人は……理屈も理論も関係ない、ただの暴力的な速さだ……っ! まるで嵐そのものじゃないか……!」

次回 解析不能

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