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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
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473/535

吾妻編第14話 偉大なるエボリューション

K420

パドックの喧騒から少し離れ、サテラは愛車のエボVIIに寄りかかりながら、遠くの山並みを見つめた。

その視線の先には、高槻が花と共に消えていった豪華なテントがある。

サテラは無意識に拳を握りしめ、心の中で静かに、しかし激しく叫んだ。


サテラ(いくらでも仕掛けてこい...高槻!! エーペックスカップは俺たちがいる限り守ってやる、、、!)


サテラの脳裏に、泥に顔を押し付けられ、絶望に震えていた眞鍋の姿がフラッシュバックする。

同じエボを愛し、誇りを持ってハンドルを握る仲間の尊厳を、あいつは土足で踏みにじった。


サテラ(眞鍋の仇は俺が取る、、、、!!

お前のその、年式や馬力でしか人を測れないクソみたいな心……俺が粉砕してやる……っ!!!!)


エボVIIの冷たいボディが、サテラの熱い掌をなだめるように冷やしていく。

コースレコードという結果は、ただの始まりに過ぎない。

本戦という名の戦場で、高槻のバイパーを、そして狂った女王・花を、この4G63の咆哮で現実に引きずり戻してやる。


サテラ(「型落ち」の底力、たっぷり味わわせてやるからな……。待ってろよ、高槻!!)


サテラの背中には、かつてないほどの鋭いオーラが漂っていた。

その決意を知ってか知らずか、吾妻の山々には再び、次なる出走者のエンジン音が響き渡ろうとしていた。


夕闇が迫り始めた吾妻スカイライン。

サテラは、先ほどまでの激しい闘志を一度落ち着かせると、隣でようやく顔を上げた眞鍋の目を見て、静かにつぶやいた。


サテラ「……エボは偉大だよ」


その言葉には、一切の虚飾も、傲慢もなかった。

ただ、20年以上の時を超えてもなお、最新のマシンと渡り合い、コースレコードを塗り替えるポテンシャルを秘めた「三菱の傑作」への、純粋な敬意だけが込められていた。


サテラ「俺たちが何を言われようが、この車が積み上げてきた勝利の事実は変わらねぇ。

お前のエボIXも、俺のエボVIIも……時代がどれだけ進もうが、峠を走ればいつだって『最強』の一角なんだよ。」


眞鍋 琉世「……はい。俺、もう一度、この車と向き合ってみます。

年式なんて関係ない。俺がこのエボを、一番速いって証明します!」


サテラの言葉は、パドックの隅で唇を噛んでいた柳津や中野たちの心にも深く刺さった。

新しいものが常に正しいわけではない。愛した車を信じ抜く力が、奇跡を起こすのだと。


高槻 健永「チッ、ポエムかよ。……気持ち悪いんだよ、負け犬どもの傷の舐め合いはさ☆」

伊藤翔太「黒川みたいなこと言うな!!」


高槻が吐き捨てて立ち去るが、もはや誰もその言葉に怯えることはなかった。

サテラが示した「1位」という圧倒的な事実が、高槻の虚勢を確実に削り取っていたからだ。


サテラ「……行こうぜ、眞鍋。明日からの予選も、俺たちが『エボの偉大さ』を見せつけてやろうじゃねーか☆」


パドックの隅、サテラは缶コーヒーを眞鍋に放り投げると、隣にどかっと腰を下ろした。

先ほどまでの刺すような殺気は消え、いつもの気さくなツンデレ青年の顔に戻っている。


サテラ「……にしても初出場で今の時点で9位前後はすごいよー、、、」


眞鍋 琉世「え……。でも、俺……高槻や花さんに、あんなに言われて……」


サテラ「あんな奴らの言うことなんて、排気ガスと一緒に聞き流しとけって。

いいか? ここに並んでるのは、全国から集まった化け物揃いの18人だぜ?

初参戦で、しかもあの黒川の代打っていうクソ重いプレッシャーの中で、シングル(一桁順位)に食い込んでるんだ。」


サテラは空を見上げ、ふっと笑った。


サテラ「俺が初めての時は、もっとボロボロだったよ。

お前にはセンスがある。あの荒削りな四駆ドリフト、本戦でさらに磨きがかかれば、前の連中だってうかうかしてらんねーぞ。」


眞鍋 琉世「サテラさん……。俺、もっと、このエボと走りたいです。

9位じゃ満足できない……本戦では、もっと前へ!!」


サテラ「へっ、言うようになったじゃねーか。

その意気だ。お前が9位で粘ってりゃ、俺も後ろを気にせず、前を走る『バカな王様たち』を狩りに行けるからな☆」


二人のエボ乗りが交わした笑顔。

それは、高槻や花がどれだけ踏みにじろうとしても決して壊せない、走り屋たちの「真実の絆」だった。


夕闇が迫るスタートゲートに、滑らかな銀色のボディが滑り込む。新型フェアレディZ、RZ34。

そのドライバーズシートで、ちとせは萌え袖をステアリングに添え、眠たげな声を無線に乗せた。


ちとせ「おじさんだよ〜、、、もへ〜、、、みんな〜、、、おじさんのこと忘れないでね〜、、、?」


若林「5日目、14人目のドライバーは……氷雪の獣神、ちとせだああッ!!

前回は温泉ダイブでリタイアを喫したが、今回は違う!! 巨大なリアウイングを装備し、無駄に気合が入っているぞー!!!」


ちとせ「そう……おじさんはこの前ね、相川くんが外側にいたせいで酷くされたの……。

でも、大塚くんと山村さんには感謝してるよ。私を血の池のような場所から出してくれたんだもの……。

だから、、、今、本気出しちゃうね〜.......? もへ〜......」


「キィィィィィィン!!」

V6ツインターボが、冷気を孕んだような鋭い吸気音を上げる。

スタートの瞬間、RZ34は物理法則を無視したようなトラクションで吾妻の急勾配を「沈み込む」ように駆け上がった。


若林「潜り込んだアアアアアっ!!!!

やはり強かった!!! 絶対王者級!! なんと、サテラの記録をさらに上回る……コースレコード樹立だああああああッ!!!!」


銀色の影がチェッカーを抜ける。その瞬間、パドックの温度が数度下がったかのような錯覚に陥る。

ヘルメットの中で、ちとせのブルーグレーの瞳が、高槻の隣にいる花を、そして傷ついた眞鍋を静かに見つめた。


ちとせ(でもね、、、あんなの花ちゃんじゃないよ......自分から戻ってきてね、、、?)

(そして、、、眞鍋くん、、、ボクは君のことを笑ったりしないよ、、、いつまでも、、、)


「もへ〜……」といつもの口癖をこぼしながら、ちとせは銀の弾丸をゆっくりとパドックへ戻した。


高槻に打ちのめされ、花に心を砕かれた眞鍋は、パドックの隅で自分を抱きしめるように震えていた。

ちとせのRZ34が放つ、絶対零度の冷気が周囲に漂っていたせいもある。


眞鍋 琉世「う、、、、寒い、、、、」


そこへ、銀色のレーシングスーツの萌え袖をゆらゆらと揺らしながら、ちとせがのんびりと歩み寄ってきた。


ちとせ「はい、、、おじさんの雪柄のマフラーあげるね、、、眞鍋くんに、、、♪どうかな?」


ちとせは自分の首に巻いていた、ふかふかとした手触りの蒼い雪柄マフラーをほどくと、眞鍋の首元に優しく、丁寧に巻きつけた。


眞鍋 琉世「ち、ちとせさん……。でも、これは……」


ちとせ「いいの、いいの〜……。眞鍋くんは、あんなに頑張ったんだもの。

おじさんはね、君がエボと一緒に一生懸命走ってる姿、ちゃんと見てたよ〜、、、もへ〜……」


マフラーからは、ひんやりとしているのに、どこか安らぐ不思議な香りがした。

ちとせのブルーグレーの瞳が、いたわるように眞鍋を見つめる。


ちとせ「大丈夫だよ、、、。あんな王様ごっこ、おじさんが全部凍らせてあげるからね、、、?

だから、今はゆっくり休んで、、、ね、、、?」


その言葉は、どんな暖房よりも眞鍋の凍てついた心を溶かしていった。

サテラが「誇り」を返し、ちとせが「安らぎ」を与えた。

銀のエボ乗りの瞳に、今、本当の意味で再起の炎が宿った。


5日目の終わり、あるいは6日目の幕開けか。パドックに、これまでのエンジン音とは全く異なる「キィィィィィィン!!」という高周波のモーター音が響き渡る。

現れたのは、眩いばかりのライトニングイエローに輝く最新鋭機、Xiaomi SU7 Ultra。


若林「15人目のドライバーは……樋口瀬那!!

駆るマシンは中国からの黒船、シャオミ su7 ultra '25だあああ!!!」


伊藤 翔太「Xiaomi!?? スマホの会社だろ!? マジかよ!!」


相川 律「スマホだけの会社だと思ってたが、、、車も作ってたのか、、、!!!

しかもあの加速、ただのEVじゃねぇぞ……!」


パドックの面々が驚愕する中、樋口瀬那は大型ディスプレイにタッチパネルで指を滑らせ、トラクション設定を「吾妻・スペシャル」へと瞬時に切り替えた。


樋口 瀬那「とりあえずベストを尽くす!!!」


「シュンッ!!!」

スタートの合図と共に、1500馬力を超えるトリプルモーターが爆発的なトルクを解放。

排気音すら残さず、光の矢となったSU7 Ultraが、一瞬でセクター1へと消えていった。


若林「速すぎるッ!! 登り坂を感じさせない加速!!

まさにスマホをスワイプするような軽やかさで、吾妻のタイトコーナーをクリアしていくぅぅ!!」


だが、超重量級のEVにとって、吾妻のテクニカルな後半セクションは厳しい。

瀬那はデジタルの限界に挑み、タイヤの悲鳴を制御しながらチェッカーを受けた。


若林「タイムが出たッ!! 伊藤乎太郎のすぐ下、暫定11位にランクイン!!

初参戦でパガーニ・ウアイラに肉薄するとは、シャオミ恐るべしだあああ!!!」


吾妻の山々に、これまでのどの車とも違う、高周波で突き抜けるような官能的なV8サウンドが響き渡る。

鮮烈なロッソ・コルサに彩られたフェラーリ488GTSが、まるで獲物を狙う猛獣のようにスタートゲートに据えられた。


若林「そして6日目!!! 16人目のドライバーは……

赤いフェラーリ488GTS! クリスタ・ニールセンだああああッ!!!!」


クリスタは鋭い眼光をバックミラーに向け、不敵な笑みを浮かべて無線を開く。


クリスタ「今度こそちゃんとしたラフファイトしてあげる、、、!

遠慮なくヘアピンでぶつかってあげるから、、、、!!

誰であろうと海外をバカにはさせない、、、、!!!」


その言葉は、暗に高槻や海外車を軽視する者たちへ向けられた弾丸だった。

「パーンッ!!」と弾けるような排気音と共に、488GTSがロケットスタートを切る。


若林「海外勢の主力がアクセルを踏む!!!

ミッドシップ特有の異次元のコーナリング!

クリスタはアウト側に縁石を使い、最小限のロスでつづら折りをクリアしていくぅぅ!!」


高槻 健永「あはは☆ 外人さんが熱くなっちゃってるねー。

フェラーリ様がそんなにボコボコになりたいなら、本戦で喜んで遊んであげるよ☆」


若林「クリスタ・ニールセン、チェッカー!! タイムは……出たあああ!!

なんと暫定5位に躍り出たアアア!!! これぞフェラーリだあああ!!!」


ゴールしたクリスタは、パドックの高槻に向かって中指を立てるような勢いで、鋭い視線を投げかけた。


豪華なフェラーリやバイパー、未来的なシャオミが並ぶパドックにおいて、そのオレンジ色のロードスターはどこか場違いなほどコンパクトに見えた。

だが、ドライバーの陽太の瞳には、誰にも負けないギラついた野心が宿っていた。


若林「残り2人!!!! 17人目は、、、

オレンジ色のロードスター! 陽太アアアアッ!!!!」


陽太「見てろよ、、、いつまでもモブな訳がねぇんだよ、、、、!」


高槻 健永「あはは☆ またボロいマツダ車? ジュンちゃんだけでお腹いっぱいなんだけどなー☆」


陽太は高槻の嘲笑を無視し、無線のスイッチを切った。

集中力を極限まで高め、1.5リッターのエンジンをレブリミットまで叩き込む。


若林「スタートッ!! 軽いッ!! 圧倒的な軽さだああ!!

パワーでは劣るロードスターだが、吾妻のタイトなつづら折りではその『軽さ』が牙を剥く!!

陽太、イン側のガードレールを掠めるような、狂気的なライン取りだぁぁ!!」


陽太(俺は……主役になりたいんじゃない。俺をバカにした奴らの喉元を、この非力なマシンで食い破ってやりてぇだけだッ!!)


ヒール&トゥを完璧に刻み、陽太は下りのセクションで驚異的な伸びを見せる。

大型マシンが持て余す吾妻の急カーブを、まるでダンスを踊るように駆け抜けていった。


若林「ゴールイン!! タイムは……出たあああ!!

中野伸一を抜き、暫定16位に食い込んだァァ!!

モブとは言わせない、意地のランクインだあああ!!!」


豪華なフェラーリやバイパー、未来的なシャオミが並ぶパドックにおいて、そのオレンジ色のロードスターはどこか場違いなほどコンパクトに見えた。

だが、ドライバーの陽太の瞳には、誰にも負けないギラついた野心が宿っていた。


若林「残り2人!!!! 17人目は、、、

オレンジ色のロードスター! 陽太アアアアッ!!!!」


陽太「見てろよ、、、いつまでもモブな訳がねぇんだよ、、、、!」


高槻 健永「あはは☆ またボロいマツダ車? ジュンちゃんだけでお腹いっぱいなんだけどなー☆」


陽太は高槻の嘲笑を無視し、無線のスイッチを切った。

集中力を極限まで高め、1.5リッターのエンジンをレブリミットまで叩き込む。


若林「スタートッ!! 軽いッ!! 圧倒的な軽さだああ!!

パワーでは劣るロードスターだが、吾妻のタイトなつづら折りではその『軽さ』が牙を剥く!!

陽太、イン側のガードレールを掠めるような、狂気的なライン取りだぁぁ!!」


陽太(俺は……主役になりたいんじゃない。俺をバカにした奴らの喉元を、この非力なマシンで食い破ってやりてぇだけだッ!!)


ヒール&トゥを完璧に刻み、陽太は下りのセクションで驚異的な伸びを見せる。

大型マシンが持て余す吾妻の急カーブを、まるでダンスを踊るように駆け抜けていった。


若林「ゴールイン!! タイムは……出たあああ!!

中野伸一を抜き、暫定16位に食い込んだァァ!!

モブとは言わせない、意地のランクインだあああ!!!」


予選の最後、18人目の枠に滑り込んだのは、夕闇に溶け込むようなディープマリンブルーの巨体だった。

かつてのR33 GT-Rが、NISMOの手によって「400R」へと究極の進化を遂げ、その姿を現した。


若林「最後に来たあああ!!!

ブルーシャークが満を持して吾妻にも来た!! 相川美保オオオオッ!!!」


美保はシートベルトを締め直し、パドックで見守る兄・律に向かって、少し幼さの残る、しかし自信に満ちた笑みを無線に乗せた。


相川 美保「見ててね、、、おにぃちゃん、、、。

私の33、、400Rになったからすごいよ?」


相川 律「美保……! 無理はするなよ!

(あいつ、いつの間にあんな化け物マシンを……。RB26が、まるで別物の音をさせてやがる!)」


若林「スタートッ!! 400馬力を超える伝説の咆哮!!

アテーサE-TSが吾妻のアスファルトを完璧に掌握!!

美保、迷いのないライン取りでセクター1を通過……なんと、暫定3位を上回るペースだあああ!!」


高槻 健永「あはは☆ 最後は女の子?

33なんてデカくて重いだけの失敗作でしょー? 400馬力あったって……☆」


美保(おにぃちゃん……。高槻なんかに、相川の、GT-Rの誇りをバカにさせない。

この400Rなら……いける!!)


「ガガガガガッ!!」

美保は強引なシフトダウンと共に、400Rをタイトなヘアピンへねじ込む。

重さを感じさせない軽快なフットワーク。それは、彼女が「ブルーシャーク」と呼ばれた所以たる、鋭い旋回だった。


若林「チェッカーーーッ!! 予選18人、すべて終了!!

相川美保、見事に暫定4位へランクインだあああ!!!」


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