吾妻編第8話 吾妻GT、開幕!
K414
6月13,14日の86伝説はお休みします。
高湯温泉のスタート地点は、数万人の観衆と、10億円という巨額の賞金に目が眩んだ欲望の熱気に包まれていた。
ヒルクライムの急勾配を見上げる位置に、選ばれし15台の怪物が並ぶ。
先頭に陣取るのは、高槻の資金と山村・坂本の技術で「魔改造」された、山吹花のWRX。
そして隣には、真紅のダッジ・バイパー。
一方で、最後方から鋭い視線を送るのは、280馬力に魂を研いだカナタの86と、伊藤のスイスポだ。
若林「皆さん! お待たせしました! エーペックスカップ第8戦! 吾妻GTが開幕です!!!」
実況の若林の声が、スピーカーを通じて福島の山々に響き渡る。
若林「コースは周回! 全65.5キロを2周してもらいます! 1位は今回からは10億円に賞金が繰り上がり!!!! 15位までが賞金を獲得できます!」
山吹 花「うふふっ☆ 10億円……。私の帝国の軍資金に相応しいわ。
ねえ高槻くん、ゴミ掃除をしながら、優雅にパレードを楽しみましょう☆」
高槻 健永「ああ、任せろ花! このバイパーの加速で、スタート直後に全員チリにしてやるぜ!☆」
若林「高湯温泉のヒルクライムからスタートして磐梯吾妻スカイラインへ!!! そこから土湯峠を駆け下り庭坂のタイトなコーナーを滑走していただきます!!!」
樋口 瀬那「10億かぁ。まあ、SU7の電気代くらいにはなるかな?
行くよ……お父さんを負かした『赤い戦闘機』。君のナイフが本物か、試させてもらうね」
柊 蒼真「……金などどうでもいい。僕はただ、このFL5で君たちを支配するだけだ」
柳津 雄介「俺の因縁……今ここで決着をつけてやる。赤い86、覚悟しておけ」
腹切 カナタ「……待ってろよ花、俺はお前を……引きずり降ろす!!」
信号が赤から青へ変わるその瞬間、福島の山が「音」で爆発した。
高湯温泉の立ち込める硫黄の匂いと、15台の怪物が吐き出すガソリンの匂いが混ざり合い、異様な熱気が辺りを支配していた。
観衆の叫び声さえもかき消すほどのアイドリング音。
10億円という莫大な賞金、そしてかつての仲間や新たな宿敵との因縁。
そのすべてが、このスタートラインに凝縮されている。
先頭集団から最後方まで、各々のドライバーがステアリングを握りしめ、前方の急勾配を見上げていた。
高湯温泉のヒルクライムから始まり、磐梯吾妻スカイライン、そして土湯峠のダウンヒル。
全65.5キロの過酷なコースが、これから彼らのすべてを剥き出しにする。
山吹 花「……うふふっ☆ 準備はいいかしら?
この女王の玉座に、指一本触れさせるつもりはないわ。
私のハイカムの音、しっかりと鼓膜に刻み込みなさい……☆」
高槻 健永「ハハハ! 10億は俺と花で山分けだ!
ザコ共、俺たちの排気ガスを吸う栄誉を噛み締めるんだな!☆」
腹切 カナタ「……280馬力。古田さんの執念が、このペダルから伝わってくる。
俺はもう……絶対に引かない。花さん、見ててください」
伊藤 翔太「花!! その生意気な鼻っ柱、俺のスイスポで叩き折ってやる!
……行くぞ、カナタ。俺たちの意地を見せてやろうぜッ!!」
樋口 瀬那「1500馬力の加速に、みんなの目がついてこれるかな?
赤い戦闘機……君の『ナイフ』、私のSU7で受け止めてあげるよ」
柊 蒼真「……鈴鹿で学んだことが、この峠でどこまで通用するか。
自分の限界を、この戦いで確かめるだけだ」
柳津 雄介「俺の因縁、ここで終わらせる。
スカイラインを制するのは、俺とM4だ。他の誰でもない」
若林の声が空気を震わせる。「シグナル、オールレッド……!!」
15人の修羅たちが、一斉にアクセルを床まで踏み込んだ。
一無量大数年ぶりの、魂がぶつかり合う音が山々に響き渡る。
高湯温泉の静寂は、スピーカーから響く若林の熱狂的なアナウンスによって、一瞬で粉砕された。
全15台の怪物が集う吾妻GT。その幕開けとなる「1日目」のラインナップが、電光掲示板に鮮烈に映し出される。
若林「皆さん! 1日目となる今回のラインナップはこちら!!
1人目、柳津雄介! BMW M4 DTM Edition!
2人目、内藤セリナ! アウディ R8 V10 plus!
3人目、中野伸一! クラウンアルテッツァ!!」
観衆のどよめきが山々にこだまする。
15台が一斉に走るのではない。この3人が、まずは吾妻の魔物に挑む先遣隊となるのだ。
スタートライン。先頭に静かに、だが殺気を放って鎮座するのは、白きレーシング・マシン、柳津雄介のM4 DTM Editionだ。
ロールケージに囲まれたタイトなコクピットで、雄介はグローブをはめた手でステアリングを強く握りしめた。
柳津 雄介「……1人目か。上等だ。
俺の走りが、この大会の『基準』になる。
赤い戦闘機……見ていろ。俺がこのM4で、お前が辿り着けない領域を真っ先に切り裂いてやる」
雄介の瞳には、かつて完敗を喫したあの「赤」への執念が、青白い炎となって燃えていた。
背後には、V10サウンドを響かせるセリナのアウディ、そして異色の中野のアルテッツァが控えている。
柳津 カリン『お兄ちゃん、聞こえる?
タイヤの熱は十分よ。10億円の価値、まずはあなたが見せつけてあげなさい......っ!!!』
無線の向こうから届くカリンの落ち着いた声に、雄介は短く「わかってる」とだけ返し、アクセルを軽く煽った。
バルブが開いたM4の排気音が、高湯温泉の湯煙を真っ二つに切り裂く。
若林「1人目は……柳津雄介!!!
シグナル、ブラックアウト!! 行けぇッ!!!」
爆音と共に、M4の極太のタイヤがアスファルトを食い破る。
白き閃光が、ヒルクライムの急勾配へと吸い込まれていった。
10億円を巡る地獄の周回レース、その最初の1ページが、今、柳津雄介の手によって書き込まれた。
柳津雄介のM4が白き閃光となってヒルクライムへ消えてから数分。
スタートラインには、宝石のように輝くアウディ R8 V10 plusが静かに、だが獲物を狙う猛獣のような低い唸りを上げて滑り込んできた。
若林「さあ、2人目は……お待たせしました!
エーペックスカップ号令の『フミッパスライダー』の使い手!! 内藤セリナアア!!!」
実況の絶叫と共に、観衆から割れんばかりの歓声が上がる。
運転席のウィンドウが下がると、そこには緊張感とは無縁の、屈託のない笑顔を浮かべたセリナがいた。
内藤 セリナ「えへへ☆ 私、頑張っちゃおうかなー?
10億円あったら、お菓子も可愛いお洋服もいっぱい買えちゃうもんね☆」
その愛らしい口調とは裏腹に、彼女の右足は、R8のアクセルペダルをミリ単位で愛撫するように動いている。
彼女の代名詞「フミッパスライダー」。
それは、一見すると無謀なフルスロットルに見えながら、実はタイヤの摩擦円を限界まで使い切る、超高等なスライディング・コントロール。
内藤 セリナ「柳津さん、速いなぁ……。でも、私のV10ちゃんも負けてないよ?
……あはは☆ それじゃ、いっくよー!」
若林「シグナル、ブルー!! スタートォ!!」
瞬間、高湯温泉の空気が震えた。
クワトロ・システムによって四輪すべてが路面を掴み、5.2リッターV10エンジンが、まるでソプラノ歌手のような高音の絶叫を上げる。
内藤 セリナ「フミッパ...♡……なんて言わないけど、みんな、私の後ろ姿をしっかり見ててね☆」
セリナのアウディは、コーナー入り口でブレーキを一切残さないまま、独自の「フミッパスライダー」で滑るようにクリップを抜けていく。
可愛らしい外見の裏に隠された、圧倒的な速度域。
1日目の吾妻は、雄介の執念と、セリナの狂気的な「遊び」が交差する戦場へと変貌した。
高湯温泉のヒルクライム、その最大の難所と言われるヘアピンコーナー。
先行する柳津雄介がストイックに最短距離を抜けたその数秒後、後方から鼓膜を突き破るようなV10の高周波が迫り上がってきた。
若林「出たアアアアア!!!!! フミッパスライダアアアアアアっっ!!!!」
若林の実況が絶叫に変わる。観衆の目の前で、内藤セリナのアウディR8が信じられない挙動を見せた。
通常、この速度で突っ込めばアンダーステアでガードレールに突き刺さるはずのライン。
だが、セリナはアクセルを抜くどころか、さらに踏み込み、リアを敢えて外側にスライドさせた。
内藤 セリナ「えへへ☆ 滑る、滑るぅ! 気持ちいいよぉ、V10ちゃん!☆」
クワトロシステムが四輪の駆動力をミリ秒単位で制御し、車体は横を向きながらも、恐るべき前進スピードを維持してコーナーを旋回していく。
タイヤから上がる白煙が、硫黄の湯煙と混ざり合い、幻想的な軌跡を描く。
若林「信じられません! ブレーキを踏まず、パワーで強引に旋回軸を作り出した!
これぞ内藤セリナ! 吾妻の急勾配を平面のように駆け抜ける、文字通りの『スライダー』だぁぁ!!」
柳津 雄介「(何だ……今の音は!? 背後から化け物が近づいているのか……!?)」
先行する雄介のミラーに、ライトニングイエローに勝るとも劣らない、眩いアウディのヘッドライトが映り込む。
落ち着いた笑顔の裏で、セリナは10億円の賞金を「遊び道具」のように扱いながら、先行するM4の背中を確実に捉えようとしていた。
内藤 セリナ「柳津さーん、見ーつけた☆ 逃げても無駄だよぉ……私のスライダーからはね!☆」
高湯温泉を飲み込むような歓声の中、V10の絶叫が山々に響き渡り、レース1日目は早くもトップ争いの火花が散り始めた。
スタートの号砲が響く30分前。高湯温泉の特設ピットエリアは、マシンの最終調整を行うメカニックたちの怒号と、緊張感で張り詰めていた。
柳津雄介は、自分のM4 DTMの隣に滑り込んできた、内藤セリナのアウディ R8 V10 plusに目を留める。
柳津 雄介「……セリナ。そのR8、大きめのリアウイングを付けたのか?」
雄介の鋭い視線が、R8のリアエンドに鎮座する、以前よりも二回りほど巨大化したカーボン製のGTウイングを射抜いた。
低速コーナーの多い吾妻において、過度なダウンフォースはストレートの伸びを殺すはずだ。
内藤 セリナ「えへへ☆ 柳津さん、よく見てるね!
そう、特注の『デカ羽』だよ☆ これがないと、私のフミッパスライダーが暴れすぎちゃうんだもん」
セリナはヘルメットを抱えながら、屈託のない笑顔で答えた。だが、その瞳の奥には、10億円を獲りに行くハンターの光が宿っている。
柳津 雄介「……スライダーの安定性を、ダウンフォースで補うつもりか。
だが、その引き換えにドラッグが増える。このヒルクライム、俺のM4を抜けると思うなよ」
内藤 セリナ「あはは☆ どうかなー?
ダウンフォースでリアを無理やり地面に叩きつけて、そのまま強引に横を向ける……。
タイヤが悲鳴を上げるのが、今から楽しみで仕方ないんだぁ☆」
雄介はフンと鼻で笑い、自分のコクピットへと戻っていった。
一見、女の子らしい無邪気な会話。だが、その実態は「超高速域で横滑りさせる」という、狂気じみた走法への最終確認だった。
柳津 雄介「(あんな翼が必要なほどの旋回速度か……。内藤セリナ、やはり底が知れねぇ)」
30分後、あの若林の絶叫と共に炸裂する「フミッパスライダー」。
その異次元の旋回を支えていたのは、雄介が指摘した、あの「巨大な翼」だったのである。
吾妻GT、全65.5キロのコース終盤。
土湯峠の長い下りを終え、舞台は庭坂のタイトでテクニカルなセクションへと移っていた。
先行する柳津雄介のM4が、精密なライン取りで庭坂のコーナーを抜けていくが、背後のV10サウンドは一向に遠ざからない。
内藤 セリナ「えへへ☆ 庭坂は私のステージだよ……! いけぇ、V10ちゃんッ!!☆」
セリナがアクセルを床まで踏み抜くと、巨大なリアウイングが庭坂の空気を強引に掴み、車体を路面に叩きつける。
通常ならスピンする角度でコーナーに飛び込みながら、四輪が猛烈に駆動を伝え、M4のインを鋭く抉り取っていく。
若林「来たアアアアアア!!! 内藤セリナがコースレコード樹立だあああ!!!!
コース終盤の庭坂区間はR8が速かったアアアっ!!! 柳津のM4を抜き去ったぁ!!!」
若林の絶叫が福島の夜空を震わせる。
電光掲示板に表示されたセリナのタイムは、これまでの公式記録を塗り替える驚愕の数字だった。
「フミッパスライダー」と「巨大な翼」。その組み合わせが、庭坂の連続コーナーを一つの直線のように繋ぎ合わせたのだ。
柳津 雄介「……何だと……!? 俺のラインが、あの『滑走』に負けたというのか……ッ!」
セリナのアウディが、庭坂を駆け抜けてゴールラインを通過する。
1日目の衝撃は、そのまま後続の怪物たちへの強烈なプレッシャーとなった。
内藤セリナの驚愕のレコードに沸き立つ会場。その喧騒を、低く、力強いエンジンのビートが鎮めた。
3人目。福島県川内村から、この10億円の修羅場に再び足を踏み入れた男――中野伸一だ。
若林「3人目は黒のクラウンアルテッツァ! 福島県川内村からの再参戦!!!
中野伸一!!! 父親のために、再びこの過酷な戦いへと戻ってきました!!!」
漆黒のボディを纏ったアルテッツァは、派手なエアロこそないが、その一挙手一投足に使い込まれた道具としての凄みが宿っていた。
中野は、ダッシュボードに置かれた、病床の父親の写真にそっと指を触れる。
中野 伸一「……親父。10億もありゃ、最高の治療を受けさせてやれる。
エリートどもの『遊び』に、俺の人生を壊させてたまるかよ」
柳津 雄介や内藤セリナが放つ、富と才能のオーラ。中野にはそれはない。
だが、彼には川内村の荒れた山道を走り込み、生活を懸けて磨き上げた「執念のライン」がある。
若林「スタートッ!! さあ、地元の意地を見せられるかぁ!!」
アルテッツァが、力強いトラクションをかけてヒルクライムを駆け上がる。
セリナのような華麗なスライダーはない。だが、一ミリの無駄もないギアチェンジと、福島を知り尽くした者だけが選べる最短の軌跡。
それは、家族を守るために戦う男の、泥臭くも美しい「本気の走り」だった。
中野 伸一「(待ってろよ、親父……。この吾妻、俺の庭だ。10億、必ず村へ持ち帰る……!)」
2日目の朝、高湯温泉は昨日以上の緊張感に包まれていた。
昨日、内藤セリナが叩き出したコースレコード。その輝かしい数字を嘲笑うかのように、一台の青い怪物がスタートゲートへと歩みを進める。
若林「2日目に突入です!!! 青いスバルブルー! WRX STIがゲートを超えて……今、スタートしたアアアア!!!!!!」
4人目。まさかの、そして最悪のタイミングで現れた絶対女王。山吹花だ。
彼女はドミノ王冠を指先で弄り、真っ赤に熱を帯びたとろとろの耳を震わせながら、アクセルペダルに置いたヒールに力を込める。
カナタ「嘘だろ、、、」
伊藤「花が4人目かよ、、、、、!!」
山吹 花「うふふっ☆ レコード? 10億円?
そんなの、私が王座に座るための『供え物』に過ぎないわ。
山村、坂本。あんたたちが作ったこの『おもちゃ』……せいぜい壊れるまで使い倒してあげるから、光栄に思いなさいな☆」
高湯温泉のヒルクライムを瞬く間に駆け抜け、山吹花のWRXはセクター2、磐梯吾妻スカイラインの高速区間へと突入した。
標高が上がり、視界が開ける。本来なら横風と路面のうねりに足を取られ、わずかにアクセルを緩めるはずの超高速コーナー。
だが、青い68号車のテールランプは、一瞬の淀みもなく加速を続けていた。
若林「WRXがセクター2である磐梯吾妻スカイライン区間へ!!!
信じられません! 前回とは違い、全く減速しない!!
何かしらのアップデートはあったかもしれません!!! 異次元の安定感、いや、これはもはや執念の加速だぁぁ!!!」
若林の実況が裏返る。
コ・ドライバー席の高槻が、タブレットに表示されるGセンサーの数値を見て、狂気的な笑い声を上げた。
高槻 健永「ハハハ! 見ろよ花、山村のオッサンの言った通りだ!
足がしなやかに動いて、路面のギャップを全部無効化してやがる! 行け、花! 全開だッ!!☆」
山吹 花「……うふふっ☆ 当然よ。
こんなデコボコの道、私のヒールで平らに踏み潰してあげているだけだわ。
昨日の連中は、こんな段差にビビってブレーキを踏んでいたのかしら?
私のWRXにとっては、赤ん坊のゆりかごより快適な道よ……☆」
花は真っ赤に熱を帯びたとろとろの耳を震わせ、ハイカムが奏でる金属質の咆哮に酔いしれる。
280馬力の壁など、今の彼女には存在しない。
首都高のタイトなセッティングと、福島の荒野をねじ伏せるストローク。
その相反する要素が、女王の生意気な魂によって一つに溶け合い、スカイラインに「絶望」のシュプールを描いていった。
セクター3、土湯峠のダウンヒル。
標高を一気に下げる過酷な勾配の中でも、山吹花のWRXはまるで重力をあざ笑うかのような加速を見せていた。
山村が施した「コーナーストローク」の極致が、路面のうねりを完璧にいなし、4輪すべてをアスファルトに食い込ませている。
若林「さあ! セクター3!!! うおおおおおお!!!! 山吹花がこれまでのコースよりもコースレコードを上回って来てしまいましたアアアア!!!!」
実況の絶叫が会場に響き渡る。昨日の内藤セリナの驚愕のタイムすら、今の花の前では色褪せた。
解説席の相川も、モニターに映し出される異常なセクタータイムを見て、椅子から立ち上がった。
相川「はあああああ!!? バカな……! あの速度で土湯のヘアピンを抜けるなんて……!
マシンの挙動が完全に計算を超えている。一体どんな魔法をかけたんだ!?」
山吹 花「……魔法? いいえ。これは『実力差』よ」
花は真っ赤に熱を帯びた耳を震わせ、落ち着いた、しかし冷徹な声で呟く。
隣に座る高槻は、Gに耐えながらも、花が描き出す完璧なラインに恍惚としていた。
山吹 花「昨日までのはただの『お遊び』。
私がこの国の王になるための舞台に、ザコ共の記録なんて不純物は必要ないのよ……。
跪きなさいな、内藤セリナ。あなたの作った砂の城、私が跡形もなく踏み潰してあげたわ☆」
WRXのハイカムが奏でる絶叫が、土湯の谷間に木霊する。
セクター3を終え、いよいよ最後の庭坂区間へ。
女王の走りは、もはやタイムを競う次元を超え、観る者すべてに「敗北」を予感させる絶対的な威圧感を放っていた。
次回 山吹花のコースレコード




