吾妻編第6話 高嶺の女王様
K412
少女が差し出す「マッチョ」という名の異物を、花は鼻で笑い飛ばした。
その瞳は、もはや哀れみすら感じさせない、純粋な蔑みに満ちている。
山吹 花「ざぁ〜こ♡ こう言われないとわかんないの?
そんな暑苦しいだけの『肉の塊』、私の神聖な68号車に乗せるわけないでしょ?☆」
マッチョ「(ショックで筋肉が萎む音)……ッ!?」
少女「……マッチョじゃあだめ、ですか……?」
山吹 花「ええ、ダメに決まってるじゃない。
だいたい、そんな価値の無いものを売りに来るなんて、あなたの存在そのものが『ザコ』なのよ。
……ね? 高槻くん☆」
花は高槻の方を向き、とろとろに熱を持った真っ赤な耳を弄りながら、とろけるような甘い微笑みを浮かべた。
その呼びかけに応じるように、高槻も金持ちの御曹司らしい不遜な笑みで、バイパーのドアに肘をつく。
高槻 健永「 全くだぜ、花!俺たちの世界には、洗練されたマシンの咆哮と、俺たち二人の会話があれば十分だ。おいガキ、そのマッチョを連れてさっさと失せな。俺たちの邪魔をするヤツは、筋肉だろうが何だろうがバイパーの餌食だぜ!☆」
山吹 花「うふふっ☆ 本当に、高槻くんの言う通りね。
さあ、山村さん。こんなザコ共は放っておいて、早く私のハイカムを仕上げてちょうだい。
愚民共が絶望する、最高の『悲鳴』を奏でるエンジンにね……☆」
ヴィヴァーチェ「あはは☆ 素晴らしい連携!
マッチョ売りの少女さん、残念でしたねぇ。
この二人の『生意気』という名の壁は、一無量大数トンの筋肉でも突き崩せませんよ〜☆」
少女は力なくマッチョを引き連れ、宇都宮の夕闇へと消えていった。
ガレージには再び、女王と暴君、そして狂気のエンジニアだけが残り、WRXの「魔改造」が加速していく。
山村が指を鳴らすと、ガレージの奥から青白い蛍光灯に照らされて、一人の男が歩み寄った。
山村「早速だが、、、手伝ってくれ坂本!」
坂本「ああ、、、ハイカム担当の坂本です。
山村自動車は主に首都高向けのチューンを行っています。
湾岸のような最高速重視のセッティングだけではなく……C1のような急なアップダウンや、タイトなコーナーのセッティングも得意としています」
坂本は無機質な手つきでハイカムのカムシャフトを手に取り、花と高槻に冷徹な視線を向けた。
首都高という「都会の戦場」で磨かれた技術が、今、福島の山に持ち込まれようとしていた。
高槻 健永「ハハハ! 坂本さん、頼むぜ!
……ああ、今回はどちらもセッティングは、より『コーナーストローク重視』でいこうぜ、、、? な? 俺?☆」
高槻は自分自身の判断に酔いしれるように笑い、WRXの横に立つ花へと視線を投げた。
花の瞳には、さらなるパワーへの渇望が宿っている。
山吹 花「ええ……。コーナーで愚民共を蹂躙し、ストレートでゴミのように引き離す。
首都高の『C1』の粘りと、『湾岸』の伸びが合わさった私の68号車……想像しただけで、とろけてしまいそうだわ☆」
花は真っ赤に熱を帯び、ふにゃふにゃになった自分の耳を指先で弄りながら、高槻に向かって最高に不遜な笑みを浮かべた。
山吹 花「ねえ、坂本さん。280馬力程度で満足しているザコ共が、絶望してハンドルを離してしまうような……そんな『絶対的な暴力』を、私のエンジンに刻み込んでちょうだい。
……ざぁ〜こ♡ って、バックミラー越しに言ってあげるのが楽しみで仕方ないのよ☆」
坂本の手に握られた工具が、WRXのエンジン内部へと深く沈み込んでいく。
福島の「山」の技術を、首都高の「戦場」の技術が上書きし、最凶の女王は更なる高みへと昇ろうとしていた。
山村が手にしたスパナを握り直した瞬間、花の視線がさらに冷たく、鋭く彼を射抜いた。
彼女はドミノ王冠を指で弾き、真っ赤に熟してとろとろになった耳を弄りながら、蔑みの笑みを深める。
山吹 花「それに……山村とか言ったわよね、あなた☆」
山村「……ああ、それが俺の名前だが?」
山吹 花「ふん、平凡すぎて欠伸が出るわ。
山村なんて、そこら辺に転がっている石ころと同じくらい価値の無い名前ね。
そんな名前で、よくもまあ私の『神聖な68号車』に触れられたものだわ☆」
高槻 健永「ハハハ! 全くだ、花。
山村なんて、田舎の修理工にピッタリの名前だよな!☆」
山吹 花「ええ。技術があるなんて威張っているけれど、所詮はRという過去の遺物に縋って、油塗れになっているだけの『老いぼれたザコ』じゃない。
ねえ、山村さん。あなたのその汚れた手で、私のハイカムを触るなんて……本当は汚らわしいのよ。
ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ 自分の名前も、人生も、全部が『ザコ』だって自覚して、私のためにせっせと働きなさいな☆」
花は山村の胸元を細い指先で突き、最高に人を小馬鹿にした、とろけるような微笑を浮かべた。
山吹 花「いい? あなたは私の栄光を支えるための、ただの『使い捨ての道具』。
私のWRXが頂点に立った時、あなたの名前なんて誰も覚えていないわ。
……跪きなさいな。名前すら忘れてしまいそうなザコのエンジニアさん。
私の排気音を聴けるだけで、あなたの人生における最高の栄誉だと思いなさい……うふふっ☆」
山村の額に青筋が浮かぶが、花は気に留める様子もなく、高槻に向かって「行きましょ、高槻くん☆」と甘い声を出し、ガレージの椅子に優雅に腰を下ろした。
山村がエンジンの調整を続けようと手を伸ばした瞬間、花は嘲笑と共に、隠し持っていたボトルを逆さまにした。
ドロリとした無色透明のローションが、山村の無骨な、油の染み付いた両手にぶちまけられる。
山村「……っ!? な、何を……っ!」
山吹 花「あはは☆ あまりにもその手が汚らわしいから、少しは滑りを良くしてあげたのよ。
山村、あなたのそのザコ臭い手で、私の神聖なシリンダーヘッドに触れるなんて……万死に値するわ☆」
花はドミノ王冠を指で弾き、真っ赤に熱を帯びてとろとろになった耳を弄りながら、ローションでヌルヌルになった山村の手を蔑むように見下ろした。
山吹 花「見てなさいな、その無様な姿。
一流のエンジニア(笑)が、ローション塗れで工具も握れないなんて……最高に滑稽だわ!
ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ ヌルヌルの手で、せいぜい自分の無力さを噛み締めていなさいな☆」
高槻 健永「ギャハハハ! 最高だぜ、花!
おい山村、その手じゃネジ一本締められねぇな! まさに『使えないゴミ』そのものじゃねぇか!☆」
山吹 花「ええ。山村、あなたはもう技術者ですらない。
私の足元で這いつくばって、床に落ちたローションでも舐めとっているのがお似合いよ。
いい? あなたの名前も、その汚れた手も、私のWRXにとっては『不浄』なの。
……跪きなさいな。ゴミ以下のザコ・エンジニアさん☆
そんなヌルヌルの手で、私の栄光に触れようなんて、一無量大数年早いのよ……うふふっ☆」
花はとろけるような笑みを浮かべ、山村の顔にローションの飛沫を飛ばすように手を振った。
もはや、恩義も礼節も、今の女王には「滑り落ちる不純物」に過ぎなかった。
ローションまみれで立ち尽くす山村と、静まり返ったガレージを背に、高槻はバイパーのキーを指先で回しながら、花にエスコートの手を差し出した。
高槻 健永「行こうぜ、花……。宇都宮で一番の高級ホテル、最上階のスイートを予約しといた。
こんな油臭い場所、お前のような王には相応しくねぇよ☆」
山吹 花「ええ……。そうね、高槻くん☆
ゴミ溜めの中でザコをいたぶるのも楽しいけれど、今はあなたのその『おもてなし』に身を委ねたい気分だわ」
花は高槻の手を取り、真っ赤に熱を帯びてとろとろになった耳を弄りながら、とろけるような笑みを浮かべた。
彼女は最後に一度だけ振り返り、ローションで手が滑って工具すら拾えない山村を、最高に生意気な眼差しで見下ろした。
山吹 花「山村。明日の朝までに、私のハイカムを完璧に仕上げておきなさい。
もし少しでも期待外れだったら……その時は、あなたのガレージごとスクラップにしてあげるわ☆
ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ せいぜい一晩中、私のために働き続けなさいな……うふふっ☆」
高槻 健永「ハハハ! 頼んだぜ、山村さんよぉ!
さあ花、行こうか。今夜は二人で、吾妻を支配する計画の続きを話そうじゃないか☆」
咆哮を上げるバイパーの助手席に乗り込み、花は宇都宮の夜景の中へと消えていった。
高級ホテルの柔らかなベッド、冷えたシャンパン、そして自分を「王」として扱う高槻。
福島で泥にまみれて280馬力に魂を削っているカナタや伊藤のことなど、今の花の頭には、塵一つほども残っていなかった。
宇都宮の街明かりが、足元で宝石をぶちまけたように輝いている。
高級ホテルの最上階。高槻が用意した最高級のスイートルームのバルコニーで、花はガウンを羽織り、夜風に吹かれていた。
指先には、細身の煙草。
カチリ、と高槻が差し出した金のライターが火を灯す。
山吹 花「……ふぅーっ。……ねえ、高槻くん☆
こうして上から見下ろすと、世界が本当に『ザコ』の集まりに見えるわね……☆」
花は真っ赤に熱を帯び、とろとろに蕩けた自分の耳を愛おしそうになぞりながら、紫煙を夜空へと吐き出した。
その瞳には、下界で必死に生きる人々への慈しみなど微塵もない。
高槻 健永「ハハハ! その通りだ。
俺たちの足元で、カナタや伊藤みたいな愚民が、泥にまみれて数馬力を競い合ってる。
滑稽だと思わないか? どんなに足掻いても、俺たちの財力と、お前のその天賦の生意気さには勝てやしないのに☆」
山吹 花「本当に……☆
今頃、山村っていうあのザコ・エンジニアも、ローション塗れの手を震わせながら私のために働いているのかしら。
ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡
私の美しさを引き立てるために、一生を費やせるんだから、彼も本望でしょうね……うふふっ☆」
花はタバコを深く吸い込み、肺を満たす毒を愉しむように目を細めた。
1ヶ月後の吾妻GT。
そこにあるのは「勝負」ではない。
女王・山吹花による、一方的な「蹂躙」と「処刑」。
その確信が、煙と共に夜の闇へと溶けていく。
山吹 花「……ねえ、高槻くん。
もっともっと、私を高いところへ連れて行って。
この世界にあるすべての『誇り』を、私のヒールで踏み潰せる場所まで……☆」
高槻はシャンパングラスを傾け、バルブコニーの手すりに寄りかかる花を、陶酔したような瞳で見つめた。
金で買えるものなら何でも与えてきた御曹司が、今、目の前の「女王」に心底から問いかける。
高槻 健永「お前は何がしたい? 何が欲しい花、、、!!
金か? 名声か? それとも……このバイパーを超える力か? 言ってみろ、俺がすべて叶えてやる☆」
花はタバコを深く吸い込み、紫煙を夜風にたゆたわせると、ゆっくりと振り返った。
その瞳は宇都宮の夜景よりも冷たく、そして妖しく輝いている。
山吹 花「……何がしたいか、ですって? うふふっ☆
高槻くん、そんなの決まっているじゃない……。
私は、この世界のすべての『誇り』が、私の前で音を立てて崩れ去る瞬間が見たいのよ☆」
花は真っ赤に熱を帯び、とろとろに蕩けた自分の耳を弄りながら、とろけるような笑みを深めた。
山吹 花「私が欲しいのは、最新のマシンでも、光り輝く宝石でもない。
……あのアホなカナタや、生意気に私を呼び捨てにする伊藤。
あんなザコ共が、必死に積み上げてきた『絆』や『努力』が、私のWRXの排気圧だけで粉々に砕け散り、絶望に染まった彼らの『泣き顔』が欲しいのよ……☆」
花は高槻の胸元に指先を這わせ、甘く、そして残酷な声で囁いた。
山吹 花「ねえ、高槻くん。
私のハイカムが奏でる絶叫で、福島の山々を震わせ、すべての走る者たちを『愚民』として跪かせたい。
彼らが地面を舐めながら、私に『ざぁ〜こ♡』って罵られるのを悦びに感じるような……そんな、私だけの帝国を作りたいの。
……それが、私のしたいこと。私が欲しい『景色』よ……うふふっ☆」
高槻 健永「……ハハハ! 最高の望みだ!
いいぜ、花。俺の財力とバイパー、そしてお前のその最高に生意気な魂で、世界を『ザコ』の色に染め上げてやろうじゃないか!☆」
女王の欲望は、もはやとどまることを知らない。
タバコの火が消える頃、二人の間には、友情でも愛でもない、最凶の「共犯関係」が完成していた。
宇都宮の夜景を背景に、花は最後の一吹きの煙を吐き出すと、吸い殻を高級な灰皿に力任せに押し付けた。
その瞳に宿る傲慢さは、もはや高槻すらも圧倒するほどの神々しさを放っている。
山吹 花「……そうよ。私こそがこの国を制圧して、唯一無二の王になるの。……ふふっ☆」
花は真っ赤に熟し、とろとろに熱を持った自分の耳を指先でなぞりながら、窓に映る自分の不敵な笑みに見惚れた。
山吹 花「走りも、権力も、プライドも。すべてを私のヒールで踏み潰してあげる。
カナタや伊藤みたいなザコ共なんて、私の前で一生泣き顔のまま、地面をぺろぺろしてればいいのよ☆」
高槻 健永「ハハハ! 国の制圧か……! 面白い、俺のバックアップがあれば、それすらもただの遊びだぜ、花!☆」
山吹 花「ええ。私のWRXが通る道は、すべてが私の領土。
ひれ伏さない愚民には、私のハイカムの絶叫で鼓膜を焼き切ってあげるわ。」
「……ねえ、想像してみて?日本中の走り屋たちが、私の後ろ姿を拝みながら涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして跪いている姿。」
「ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ って、踏みつけられながら悦んでいる無様な姿を……うふふっ☆」
花はとろけるような笑みを浮かべ、高槻の顎をクイと持ち上げた。
その指先には、ヴィヴァーチェから授かった「生意気な魔力」が脈打っている。
山吹 花「この国を、私の生意気で染め上げてあげる。
明日になれば、山村のガレージで私の『最強の牙』が完成しているはずだわ。
さあ、夜明けが楽しみね、高槻くん☆
……世界が、私の足元に跪く日が、すぐそこまで来ているんだもの……☆」




