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86伝説エーペックス  作者: SAI
吾妻GT編
PR
464/535

吾妻編第5話 山吹花の行方不明

K411

高槻健永はバイパーのドアを開け、極上の革シートに身体を沈めると、隣のWRXにいる花へ向けて不敵に笑った。

金持ち特有の余裕と、他人を見下すことに慣れきった不遜な態度。今の生意気な花にとって、それは何よりも心地よい「同類の香り」だった。


高槻 健永「ハッ、当然だ。王には王に相応しいパートナーが必要だからな。

……行こうぜ、花。こんな湿気臭いガレージ、俺たちの高貴な排気音には似合わねぇ☆」


山吹 花「ええ……行きましょ、、、? 高槻くん☆

こんな狭いところで愚民たちの相手をするのも、もう飽きてしまったわ」


花はとろとろに熱を持った耳を弄りながら、高槻にだけは極上の、そして最高に生意気な微笑みを向けた。

その瞬間、ヴィヴァーチェが「あはは☆ 最高のペアリングですね!」と笑い声を残して空気に溶けるように消えると、二台のマシンは猛烈な咆哮と共に、タイヤスモークを残してガレージから飛び出していった。


…………。


残されたのは、静まり返ったHURUTAWORKSと、呆然と立ち尽くす伊藤とカナタだけだった。


伊藤「は?、、、何アイツら、、、どうしていつの間に仲良くなったのかな????

ついさっきまであんなに毛嫌いしてたじゃねーかよ!!」


伊藤は髪を掻き毟り、親友の信じられない裏切りに叫んだ。

高槻のような金持ちで生意気な男に、あの花が……自分たちの精神的支柱だった「花さん」が、自ら寄り添っていったのだ。


伊藤「高槻の野郎……金とパワーに物言わせて、花まで自分の側に引き込みやがったのか!?

あんな生意気な奴と花がくっつくなんて……最悪だ、最悪すぎるぞ!!」


カナタ「……伊藤、落ち着け。きっと、同じように生意気な高槻と共鳴しちゃったんだ……」


カナタの言葉も、伊藤の耳には届かない。

呼び捨てを拒絶され、自分を「雑草」と呼んだ花の冷たい瞳。

そして、高槻に向かって甘く囁いた「高槻くん☆」という声が、伊藤の胸を激しく締め付けていた。


タイヤの焦げる匂いと、バイパーの暴力的なV10サウンドの残響だけが、冷え切ったアスファルトに取り残されていた。


カナタ「おい待てエエエエエ!!!!!

おい!!! 花アアアアアアアアアア!!!!!」


カナタは叫んだ。喉が張り裂けるほどの、悲痛な絶叫だった。

反射的に体が動いていた。86のキーを回すことさえ忘れ、カナタは自身の足で、走り去る二台のテールランプを追いかけて駆け出した。


カナタ「戻ってきてくれ、花さん!! なんでだよ!! 嘘だろッ!!」


必死にもがき、腕を振り、肺が焼けるほど冷たい空気を吸い込んで足を回す。

だが、人間の足が、怪物のようなパワーを秘めたWRXとバイパーに追いつくはずもなかった。

角を曲がった先、二台の光は夜の闇に吸い込まれるように、完全に見えなくなった。


カナタ「はぁっ、はぁっ……!! !!

嘘だ……そんなの……っ!!」


カナタは膝を突き、激しく地面を叩いた。

あんなに優しかった花さんが、今は高槻という「自分たちを最も蔑む男」の隣で、最高に生意気な笑みを浮かべている。

ヴィヴァーチェが残した「あはは☆」という嘲笑が、まだ耳の奥でリフレインしているようだった。


伊藤 翔太「……無駄だよ、カナタ。アイツらはもう、俺たちの知ってる世界にはいないんだ」


背後から、凍りついたような声で伊藤が呟いた。

その瞳には、かつてないほどの激しい怒りと、それ以上の「喪失感」が宿っていた。


伊藤 翔太「花は……俺たちの花は、あんな生意気な金持ちの野郎を選んだ。

俺たちを『愚民』と呼び、あいつを『高槻くん』と呼んでな……」


ガレージの前の静寂が、カナタの荒い呼吸を虚しく強調する。

かつての絆は、あまりにも呆気なく粉砕されてしまったのだ。


膝をつき、夜の闇に叫んでいたカナタの肩に、油の染み付いた古田の重い手が置かれた。


古田 のりあき「……いつまで地面を這ってやがる。

叫んで花が戻ってくるなら、俺がいくらでも叫んでやる。だが……そんなわけねぇだろ」


古田の厳しい声が、カナタの意識を現実へと引き戻す。

古田は視線を、まだ冷え切っていないガレージの奥に鎮座する『REVIVE 86』へと向けた。


古田 のりあき「カナタ、お前の86REVIVE。米沢仕様では馬力は260だったが……

ここからは280に上げていく……!!」


カナタ「280……!? でも、このエンジンのキャパシティは……」


古田 のりあき「限界は俺が決める。

20馬力の差は、あの生意気な女王様のWRXや、高槻のバイパーに対抗するための『怒りのマージン』だ。

その代わり、扱いはさらに難しくなるぞ」


古田は86の足回りに手をかけ、確信に満ちた表情で続けた。


古田 のりあき「車高調は引き続き、吾妻の険しいヘアピンも、荒れた路面のインカットも可能に……曲がりやすいように、あえて純正のように高く設定してある。

992(ポルシェ)のような低さじゃねぇ、福島の山を知り尽くしたこの高さが、お前の武器だ」


伊藤 翔太「……古田さん、俺のスイスポは? 俺も、あいつらの隣に並びたいんだ!!」


古田 のりあき「当たり前だ、伊藤。お前の『言葉』も、さらに鋭く研ぎ澄ませてやる。

……いいか二人とも。花は今、ヴィヴァーチェの毒に当てられて『王』を気取ってる。

なら、お前らがやるべきことは一つだ。

その280馬力の86と、極限まで絞り出したスイスポで……あの生意気な女王を、引きずり降ろせ!!」


カナタ「……280馬力……。

……分かりました。俺、やります。

花さんに……『ザコ』の意地、見せてやります!!」


カナタの瞳に、絶望ではない、鋭い闘志の火が灯った。

HURUTAWORKSのシャッターが閉まる。

そこでは、女王の鼻を明かすための、不眠不休の突貫作業が始まろうとしていた。


膝をつき、夜の闇に叫んでいたカナタの肩に、油の染み付いた古田の重い手が置かれた。


古田 のりあき「……いつまで地面を這ってやがる。

叫んで花が戻ってくるなら、俺がいくらでも叫んでやる。だが……そんなわけねぇだろ」


古田の厳しい声が、カナタの意識を現実へと引き戻す。

古田は視線を、まだ冷え切っていないガレージの奥に鎮座する『REVIVE 86』へと向けた。


古田 のりあき「カナタ、お前の86REVIVE。米沢仕様では馬力は260だったが……

ここからは280に上げていく……!!」


カナタ「280……!? でも、このエンジンのキャパシティは……」


古田 のりあき「限界は俺が決める。

20馬力の差は、あの生意気な女王様のWRXや、高槻のバイパーに対抗するための『怒りのマージン』だ。

その代わり、扱いはさらに難しくなるぞ」


古田は86の足回りに手をかけ、確信に満ちた表情で続けた。


古田 のりあき「車高調は引き続き、吾妻の険しいヘアピンも、荒れた路面のインカットも可能に……曲がりやすいように、あえて純正のように高く設定してある。

992(ポルシェ)のような低さじゃねぇ、福島の山を知り尽くしたこの高さが、お前の武器だ」


伊藤 翔太「……古田さん、俺のスイスポは? 俺も、あいつらの隣に並びたいんだ!!」


古田 のりあき「当たり前だ、伊藤。お前の『言葉』も、さらに鋭く研ぎ澄ませてやる。

……いいか二人とも。花は今、ヴィヴァーチェの毒に当てられて『王』を気取ってる。

なら、お前らがやるべきことは一つだ。

その280馬力の86と、極限まで絞り出したスイスポで……あの生意気な女王を、引きずり降ろせ!!」


カナタ「……280馬力……。

……分かりました。俺、やります。

花さんに……『ザコ』の意地、見せてやります!!」


カナタの瞳に、絶望ではない、鋭い闘志の火が灯った。

HURUTAWORKSのシャッターが閉まる。

そこでは、女王の鼻を明かすための、不眠不休の突貫作業が始まろうとしていた。


ガレージにモニターの電子音が響く。古田は険しい表情で、これまで蓄積された走行データを睨みつけていた。


古田 のりあき「……データを見ると、やはりカナタはコーナーワークで稼ぐタイプだ。

対して伊藤、お前たち兄弟は、直線の伸びと立ち上がりの鋭さでタイムを削っている。

よって……3人ともストロークを変えてみるぞ」


古田はジャッキアップされた86とスイスポ、そして乎太郎のウアイラの間に立ち、指示を飛ばした。


古田 のりあき「カナタ。お前の86は、リバンプ(伸び側)のストロークをさらに持たせる。

280馬力に上げたパワーを、吾妻のうねるようなコーナーのイン側でも逃がさないためだ。

地面を掴んで離さない……お前の執念を、タイヤに伝えろ」


カナタ「……リバンプのストローク。……分かりました。これで、あの『女王』の内側に食い込める……!」


古田 のりあき「伊藤。お前と乎太郎は、バンプ(縮み側)のストローク量を最適化し、ストレートでの安定性と、踏み込んだ瞬間のトラクションを稼ぐ仕様にする。

高槻のバイパーのような暴力的な加速に対抗するには、一瞬のロスも許されんからな」


伊藤 翔太「ストロークの最適化……! これなら、花を……女王様(あいつ)を、ストレートの終わりで捉えられるッ!!」


乎太郎「……わかるよ。風が……足回りを通じて、新しい『道』を教えてくれる……。」


乎太郎も、吾妻仕様のセッティングを授かり、静かに闘志を燃やしている。

ヴィヴァーチェの毒に当てられ、高槻と共に消えた「最愛の姉」を取り戻すため、三台のマシンは今、物理法則の限界に挑む調整(チューン)を受けていた。


古田 のりあき「いいか。280馬力とこの足回り……使いこなせなきゃ死ぬぞ。

だが、あの生意気な女王を黙らせるには、死ぬ気で踏むしかねぇんだ。

……準備はいいか、愚民共!!」


カナタ・伊藤・乎太郎「「「……おうッ!!」」」


古田の檄に、三人は力強く応えた。

ガレージの外では、一無量大数年の悪戯を楽しむヴィヴァーチェが、暗い夜空を眺めて「にひ☆」と不気味に笑っていた。


標高1,600メートル。深夜の吾妻スカイライン、浄土平の駐車場には、月明かりを反射する二体の怪物が佇んでいた。

真紅のダッジ・バイパーと、青いWRX STI。

その傍らで、高槻健永と山吹花は、勝利を確信したような不遜な面持ちでタバコを吸っていた。


高槻 健永「……ハッ、最高だな。この冷えた空気と、バイパーの熱気が混ざり合う感覚。

おい、花。あんなボロクズの86やスイスポの連中、今頃ガレージで泣きべそかいてるんじゃねぇか?☆」


高槻は高級なタバコを指に挟み、金持ち特有の余裕たっぷりに吐息を吐き出した。


山吹 花「うふふっ☆ 本当に……。

今さら古田さんに泣きついて、数馬力上げたところで何が変わるっていうのかしら。

王である私と、そのパートナーである高槻くん。

私たちの前に立てば、彼らの『絆』なんて、このタバコの灰と同じくらい脆く崩れ去るわ☆」


花は真っ赤に熟し、とろとろに熱を持った自分の耳を指先で弄りながら、細いメンソールの煙を夜空へと燻らせた。

その瞳には、かつて家族や仲間に向けていた慈しみは微塵も残っておらず、ただ「支配」への渇望だけが宿っている。


高槻 健永「吾妻GTか……。俺たちがトップを独占し、あのザコ共を周回遅れにしてやるのが最高のエンターテインメントだな。

お前のWRXがコーナーで切り裂き、俺のバイパーが直線でトドメを刺す。完璧だ」


山吹 花「ええ……楽しみだわ、高槻くん☆

伊藤が、カナタが、絶望してハンドルを投げ出す瞬間を至近距離で拝ませてもらいましょう。

ざぁ〜こ♡ ざぁ〜こ♡ って、チェッカーを受ける時に耳元で囁いてあげるのが今から待ちきれないわ……うふふっ☆」


二人の高笑いが、静寂の山々に不気味に響き渡る。

ヴィヴァーチェが「あはは☆」と影から見守る中、最凶の生意気コンビは、吾妻の頂点を汚すための密談を続けていた。


夕暮れ時の宇都宮市。餃子の香りが漂う街外れに、異彩を放つガレージがあった。

真紅のバイパーを先頭に、青いWRXがその敷地へと滑り込む。


高槻 健永「ここだよ! ここの人がすごくてさー☆

ハイカムチューンも容易くしてくれるんだぜ!!

おい、山村さん! こんちはー!!」


高槻はバイパーから降りるなり、金持ちの御曹司らしい尊大な態度でシャッターの奥へと声をかけた。

すると、オイルと火花の匂いの中から、鋭い眼光を放つ男、山村がゆっくりと姿を現した。


山村「やあ、見ない顔が1人いるね? ……面白そうだな。

生意気な子は嫌いじゃないさ、むしろ面白い。

お嬢さん、いいパーツが揃ってる。見ていきなよ」


山村の視線が、WRXから降りてきた花へと注がれる。

花はドミノ王冠を指で直し、真っ赤に熱を帯びてとろとろになった耳を弄りながら、不敵な笑みを浮かべて山村を見据えた。


山吹 花「……へぇ。ここが、高槻くんの言っていた『魔法使い』の住処かしら?

私の『68号車』を、あの愚民共が二度と追いつけないほどの絶対的な神へと変えてくれるのね☆」


高槻 健永「ハハハ! 期待してろよ花。

山村さんの手にかかれば、お前のWRXは吾妻の霧を切り裂くレーザービームになる。

ハイカムを組んで、高回転域でザコ共を置き去りにする快感……たまらねぇぜ!☆」


山村「……ふふ。いい目をしている。

お嬢さんのその生意気な魂に相応しい、魂を削るようなセッティングを施してやろう。

……お前たちの『支配』に、この宇都宮の技術を添えてやるよ」


夕闇に溶けるガレージの中で、WRXの心臓部(エンジン)が、さらなる狂気を宿すために解体され始める。

280馬力まで上げたカナタたちを、さらに上空から踏み潰すための「超高回転ハイカム仕様」。

最凶の女王は、その牙をさらに鋭く研ぎ澄まそうとしていた。


山村がWRXのエンジンに手をかけようとした、その時。

ガレージの入り口の薄暗い影から、小さな、しかし妙に落ち着いた声が響いた。


少女「こんにちは、、、マッチョ売りの少女です、、、」


高槻 健永「……あぁ? 何だ、ガキか? 今忙しいんだ、どっか行け……ッ!?」


高槻が言葉を失った。

少女の背後から、ガレージの蛍光灯の光を反射して、脂ぎった「巨体」がヌッとせり出してきたからだ。

それは、もはや人間というよりは、筋肉の鎧を纏った岩石の塊。


少女「マッチョドライバーはいりませんか?

どんな重いステアリングも片手で捩じ伏せ、重力加速度(G)を筋肉の弾力で無効化する……特選のマッチョです。……マッチョ、いかがですか……?」


マッチョ「(ポージングと共に)……モスト・マスキュラーッ!!」


山吹 花「……は? なによ、その暑苦しい生き物は」


花は真っ赤に熱を帯びた耳を弄りながら、あまりの「不純物」の登場に、生意気な笑みさえ忘れて呆然とした。


山村「ふむ……。マッチョドライバーか。

剛性を高めた車体に負けない、肉体という名のパーツ……。

お嬢さん、どうだい? 助手席に積んでおけば、横Gによる姿勢の乱れを筋肉で支えてくれるかもしれんぞ?」


山吹 花「いらないわよ!!

私のWRXに、そんなバンプラバーみたいなマッチョを積めるスペースなんて無いわッ!!

だいたい、重すぎてパワーウェイトレシオが台無しじゃないのよ!!」


高槻 健永「ハハハ! 面白いじゃねぇか!

おい、そのマッチョ、俺のバイパーの横にでも縛り付けておくか?

空気抵抗(ダウンフォース)の代わりになりそうだぜ!☆」


ヴィヴァーチェ「あはは☆ 素晴らしいですねぇ!

一無量大数年ぶりの筋肉の祭典!

花ちゃん、生意気な女王には、膝元で跪くマッチョな奴隷も似合うと思いますよ〜☆」


少女「……一マッチョ、お安くしておきますよ……。

さあ、マッチョを……マッチョを買ってください……」


山村「マジでなんなんおまえらw」

ちなみにマッチョ売りの少女は北川エリカというばちくそ強いドライバーで

この後エーペックスカップに参戦してきますww

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