吾妻編第3話 ヤマブキモーターズ再来
K409
深夜のヤマブキモーターズ。
葬儀を終え、心身ともに疲れ果てた花が、ようやく整備場のシャッターを下ろそうとしたその時だった。
島 勝也「ごめんくださああい!!!」
静まり返った街に、不似合いなほど凛とした、それでいてどこかズレた大声が響き渡った。
山吹 花「ひっ、、、、!? だ、誰っ!?」
花が飛び上がって振り返るより早く、黒い影が背後から迫る。
漆黒のスーツを纏った島勝也が、まるで見えないコーナーを攻めるかのような鋭さで、いきなり花をその腕の中に抱きしめてきた。
島 勝也「私がこうすることで、喜ばぬ山吹花はいな……」
山吹 花「やめろオオオオオオ!!!!! なんでアンタがここに居るのよおおお!!!」
花の絶叫が夜空を裂く。
島は至近距離で、ポエム全開の冷徹な瞳を花の目に向ける。
島 勝也「……湾岸の闇を走る時、私はいつも孤独だった。
だが、君の『黒い炎』を見た時、私の中のポルシェが疼いたのだ。
これは愛ではない。過給圧が高まりすぎただけだ……」
山吹 花「知るかあああ!! 離せこの変態外科医ィィッ!!!」
げし!! げし!!! げしいいい!!!!
怒り心頭の花の足が、島の脛、膝、そして急所を的確に捉え、えげつない音を立てて連続ヒットした。
だが、島は「……ぐっ、この衝撃……1.2キロのブースト圧に匹敵する……!」と呟きながら、ボロボロになっても離れようとしない。
ちとせ「もへ〜……。深夜に賑やかだね〜……。
花ちゃん、その不審者、冷凍保存してゴミの日に出しちゃおうか〜?」
奥の部屋から、パジャマ姿のちとせが眠そうに、しかし目が笑っていない笑顔で現れた。
伊藤 翔太「(……島さん、あんた首都高じゃ英雄かもしれないけど、ここじゃただの不審者だぜ……)」
シャッターの陰でそれを見ていた翔太とカナタは、島のあまりの「折れない心」に、もはや尊敬を通り越して戦慄を覚えるのだった。
深夜の整備場。ボロボロになりながらも立ち上がった島勝也は、ネクタイを整え直し、再び不気味なほど真っ直ぐな瞳を花に向けた。
島 勝也「改めて、、、深夜ですが、私のブラックバードを……」
彼が愛車のセッティングについて語ろうとした、その時!
闇を切り裂くような、悲痛で、それでいて凄まじい声量の叫び声が響き渡った。
「どうしてよ、、、どうしてよ勝也アアアア!!!!!
なんでこの前、悪魔のZを止めたのよ、、、教えてよ勝也あああ!!!」
山吹 花「ひいいっ!? 今度は何よおおお!!?」
そこに現れたのは、夜風に髪をなびかせ、激しい執着心を全身から放つ女性、朝倉てーこ。
彼女は島に詰め寄ると、その胸ぐらを掴んで激しく揺さぶった。
島 勝也「てーこ、、、、」
花の脳裏に、かつて読んだ(あるいは次元の狭間で見た)物語の断片がよぎる。
(このシーンの後、、、ここから、海外にてーこがこれを忘れるために、悲劇的な別れが待っているはず……)
だが、目の前の島勝也は、花の予想を300キロのスピードで裏切った。
島 勝也「……もう、走る必要はないのかもしれない。
一緒にいつまでもいようか、てーこ♡」
朝倉 てーこ「うん、勝也♡」
二人は深夜のヤマブキモーターズのど真ん中で、熱い抱擁を交わし始めた。
ピンク色のオーラが立ち込め、先ほどまでのシリアスな「最高速の求道者」の空気は微塵も残っていない。
山吹 花「おおおおおおおおい!!!!!
勝手に盛り上がってんじゃないわよ!!
何その『全部解決しました』みたいな空気!!
てか、アンタたちの因縁とか葛藤とか、全部どこに捨ててきたのよおおおッ!!!」
ヴィヴァーチェ「いいじゃないですか、一無量大数年の愛に比べれば、彼らの痴話喧嘩なんて誤差みたいなものです。はい、退場退場〜☆」
ヴィヴァーチェが指をパチンと鳴らすと、島とてーこは抱き合ったまま、夜の闇へと消えていった。
島勝也とてーこが熱い抱擁を交わし、大団円を迎えようとしたその時。
深夜のヤマブキモーターズに、タイヤのスキール音と共にミッドナイトブルーの影が滑り込んできた。
朝倉 カイト「ヤ、、、ヤメロォォォォ!!!」
絶叫と共にS30Zから飛び出してきたのは、先ほどまでクールだったはずの朝倉カイトだった。
彼は島の手を振り払い、驚く強引さでてーこの肩を抱き寄せた。
島 勝也「朝倉アアアア!!!! 何をするッ!!」
朝倉 カイト「てーこと付き合うのは俺だ!!
今はZよりも、最高速よりも……てーこだ!!
ほら! いこう、てーこ!!」
そう叫ぶやいなや、カイトはてーこを軽々と横抱きにし、そのまま愛車のバケットシートへと押し込んだ。
あの「悪魔のZ」が、今はただの「恋の逃走車両」と化している。
山吹 花「、、、、は?」
花は呆然と立ち尽くし、手にしたレンチを地面に落とした。
峠のカリスマ、湾岸の伝説……そんな肩書きが、音を立てて崩れ去っていく。
島 勝也「……させるかああああ!! 待ちたまえ朝倉ッ!!
てーこの愛を外科手術(独占)するのは、この私だッ!!」
島はボロボロの体で黒いポルシェに飛び乗り、猛烈なブラックマークを刻みながらS30Zを追走し始めた。
深夜の福島の街に、L型改とフラット6の咆哮が響き渡る。
ただし、それは「真実」を求める走りではなく、ただの「三角関係の追いかけっこ」だった。
山吹 花「……ねえ、カナタ。
私、明日から走るのやめていいかな?
なんか……『速さの向こう側』にあるのが、あんなドロドロの痴話喧嘩だなんて、夢も希望もないわよ……」
カナタ「あはは……。まあ、伝説の人たちも、一人の人間ってことなのかな……。
(……あんな風にだけはなりたくないな)」
ヴィヴァーチェ「ほほほ☆
いいじゃないですか、一無量大数年ぶりの喜劇ですよ!
あのZとポルシェ、愛のパワーで吾妻スカイラインのコースレコード更新しちゃうかもしれませんねぇ☆」
ヴィヴァーチェだけが、去りゆくテールランプを見送りながら、楽しそうに笑っていた。
「お前らマジで出てけえええ!!!!!!!
深夜のコンビニの外で暴れんなああああ!!!!」
静まり返った双葉町の夜空に、花の絶叫が木霊した。
もはや伝説の走り屋だろうが外科医だろうが関係ない。
安眠を妨げ、店の前で痴話喧嘩を繰り広げる不届き者たちへ、花の怒りの鉄槌が下る。
げし!!! げし!!! げしいいい!!!!
鋭いローキックの連打が、島とカイトの尻に叩き込まれた。
「うわああッ!」「くっ、このトラクション……!」
二人はそれぞれの愛車に飛び乗り、タイヤを鳴らして闇の向こうへと消えていった。
…………。
静寂が戻ってきた。
遠くで虫の鳴き声が聞こえるほど、夜は深い。
コンビニの奥にある自宅の寝室では、ちとせとイヨ、そして芽衣が、先ほどの騒ぎなど嘘のように静かな寝息を立てている。
嵐のような伝説たちに振り回され、駐車場に残されたのは、肩で息をする山吹花と、呆然と立ち尽くす伊藤翔太の二人だけだった。
山吹 花「……はぁ、はぁ。
なによ、あいつら。……本当に、なんなのよ」
花は乱れた髪をかき上げ、自販機の横に座り込んだ。
深夜の冷たい空気。自販機の明かりだけが、彼女の少し疲れた横顔を照らしている。
伊藤 翔太「……災難だったな、花さん。
でも、まあ……あんな奴らでも、走りに懸ける情熱だけは本物だったんだろうな。
やり方は、その……最悪だったけど」
翔太は自販機で温かいコーヒーを二つ買い、一つを花に手渡した。
スチール缶の熱が、冷えた指先に心地いい。
山吹 花「ありがと、伊藤。
……明日、いよいよ吾妻ね。
あんなバカげた大人たちの後だと、なんだか自分たちの走りがすごく『まとも』に思えてくるわ」
伊藤 翔太「はは、全くだ。
俺たちには『俺たちの言葉』がある。
あんなポエムや昼ドラじゃなくて、もっと真っ直ぐな走りを……明日、見せてやろうぜ」
二人は並んで、誰もいない夜の国道を見つめた。
明日の朝、カナタや古田、そしてヴィヴァーチェたちと合流し、天空の道へ。
一無量大数年の孤独を背負った「68号車」と、仲間のために覚悟を決めた「伊藤」の戦いが、すぐそこまで迫っていた。
翌朝。
安達太良山の裾野に位置するHURUTAWORKSのガレージには、朝露に濡れた四台の猛者たちが並んでいた。
カナタ、伊藤、花、そしてどこからともなく現れたヴィヴァーチェ。
古田は油の染み付いた軍手を脱ぎ、厳しい表情で一同を見渡した。
古田 のりあき「……昨夜は変な客が来て騒がしかったようだが、準備はいいか。
これから、それぞれアップデートした箇所を伝える。耳の穴かっぽじってよく聞け」
古田はまず、カナタの86の前に立った。
古田 のりあき「カナタ。お前の『REVIVE 86』は、ターボの過給圧特性を吾妻の低中速コーナーに合わせて再構築した。
高地特有の薄い空気を計算に入れ、レスポンスを極限まで研ぎ澄ませてある。
お前の一人称が変わったように、こいつの性格もより攻撃的になった。……手懐けてみせろ」
腹切 カナタ「……わかりました。この『俺』の86で、必ずモノにしてみせます」
次に、古田は伊藤のスイスポを指差した。
古田 のりあき「伊藤。お前のスイスポには、リアのトラクション抜けを抑えるための足回りのリセッティングと、吾妻の荒れた路面をいなす新型のダンパーを組んだ。
『伊藤の言葉』を路面に叩きつけるには、まずは四輪がしっかり接地してなきゃ始まらんからな」
伊藤 翔太「最高だぜ、古田さん! これで思い切り立ち上がれる!」
そして最後に、古田は花のWRX……「68号車」へと視線を移した。
古田 のりあき「山吹。お前のVABには、あのヴィヴァーチェが言う『68』という数字の重みに耐えられるよう、ボディ剛性をさらに引き上げた。
古田仕様のスポット増しだ。……青の電撃を、あの『魔の山』で解き放ってこい」
山吹 花「……ええ。私の、そして私たちの全てを出し切ってくるわ」
古田 のりあき「乎太郎のウアイラには、吾妻のダウンフォースを最適化するエアロ制御を追加した。
……さて、ヴィヴァーチェ。お前の車については……俺には理解の外だ。
勝手に走りな。ただし、他の連中の邪魔だけはするなよ」
ヴィヴァーチェ「あらあら☆ 私の車は『世界の理』そのものですから、チューンなんて必要ありません。
でも、皆さんのアップデート、なかなか『いい色』に仕上がっていますねぇ☆」
ヴィヴァーチェはケモ耳をピコピコと動かし、満足げに微笑んだ。
古田の技、そしてヴィヴァーチェの加護。
全てが揃った今、一行はついに福島の聖地、磐梯吾妻スカイラインへと進撃を開始する。
古田は、カナタたちのマシンの説明を終えた後、ずっと気になっていた「違和感」に決着をつけるべく、ヴィヴァーチェに向き直った。
彼女の周りには、スペアタイヤも、工具箱も、ましてやガソリンの匂いすら漂っていない。
古田 のりあき「……ところで、ヴィヴァーチェさん。あんたの車はどこにあるんだ?
まさか、その格好で吾妻の1,600メートルを駆け上がるわけじゃねえだろ」
ヴィヴァーチェは扇子をパッと広げると、120センチの小さな体を優雅に揺らした。
ヴィヴァーチェ「ふふっ☆ 実は、、、車なんてアリマセン☆」
山吹 花「……は?」
花の持っていたスポーツドリンクが、地面にポタポタと溢れた。
伊藤もカナタも、古田ですら、石像のように固まった。
山吹 花「ちょっと待ちなさいよ!! アンタ、さっきから『私の車は世界の理』だの『68の加護』だの、散々走り屋みたいなこと言ってたじゃない!!
車がないなら、どうやって吾妻を走るつもりなのよッ!?」
ヴィヴァーチェ「あらあら☆ 誤解しないでください。
『車という物体』は持っていませんが、私自身が『最高速の概念』そのものなのですよ。
私が走れば、そこには轍ができ、私が飛べば、そこにはダウンフォースが生まれる……。
わざわざ鉄の塊に乗り込むなんて、一無量大数年前の流行りですよ〜? ん〜?☆」
古田 のりあき「……つまり、生身で俺たちの横を併走するってのか?
時速100キロを越えるバトルの中に、その小さな体で……?」
ヴィヴァーチェ「ええ☆ もし寂しかったら、花ちゃんの屋根の上にでも座ってあげましょうか〜?
もちろん、空気抵抗ゼロ、重さゼロの設定にしてあげますから安心してくださいね☆」
花「絶対やめてッ!! 怖いし、何よりシュールすぎるわよ!!」
伊藤 翔太「……おいカナタ。俺たち、これから車と戦うんだよな?
隣に生身の幼女が爆走してたら、もう何のランキングを競ってるのか分かんねーよ……」
ヴィヴァーチェは「ほほほ☆」と笑いながら、地面から数センチ浮き上がった。
車を持たない「世界の獣神」。
彼女の参戦により、吾妻スカイラインの戦いは、もはやモータースポーツの枠を完全に踏み越えようとしていた。
ヴィヴァーチェはふわりと宙に浮くと、不敵な笑みを浮かべて花を見下ろした。
ヴィヴァーチェ「ふふっ☆ 私は今回は様子見します!
皆さんの必死な走りを、特等席から眺めさせていただきますね。
……ところで花さん、、、あなた、先ほどからとっても生意気じゃないですか、、、」
山吹 花「なっ、なんですって……!?
いきなり何言い出すのよ、この幼女……ッ!」
花が言い返そうとした瞬間、ヴィヴァーチェが音もなく花の背後に回り込んだ。
120センチの小さな体が、花の肩にちょこんと乗る。
ヴィヴァーチェ「そんな生意気な口を利く悪い子には、お仕置きが必要です。
私の神々しい生意気の吐息、浴びてみます? 耳ふーを2回……。
1回でも、世界がひっくり返るほど強烈なんですよ〜☆」
山吹 花「ちょっと、やめなさ……んっ!?」
拒絶する間もなかった。
ヴィヴァーチェが花の右耳に、そっと小さな唇を寄せ、至近距離から「ふぅー……」と、神聖な魔力を帯びた吐息を吹き込んだ。
山吹 花「あぁっ……!? んんっ……、なに、これ……っ!!」
一瞬にして、花の脳内が真っ白に染まった。
それは冷気ではなく、魂を直接とろけさせるような、あまりにも甘美で強烈な刺激。
さらに、追い打ちをかけるように左耳にも「ふぅー……☆」と、二回目の吐息が注ぎ込まれる。
山吹 花「はぅあッ……!? ……あ、あつ、い……っ」
あまりの衝撃に、花はその場にへたり込んだ。
普段の凛とした「青の電撃」の面影はどこへやら。
彼女の耳は、まるで沸騰したかのように真っ赤に染まり、熱を持ちすぎてふにゃふにゃに柔らかくなっている。
視線は定まらず、その場から一歩も動けないほど「骨抜き」にされてしまったのだ。
ヴィヴァーチェ「ほほほ☆
どうですか、私の神々しい生意気の吐息の味は?
そんなふにゃふにゃな耳では、WRXの排気音も聞き取れないかもしれませんねぇ☆」
伊藤 翔太「おいおいおい!! 花が……あの強気な花が、耳ふー二発で再起不能になってるぞ!!」
カナタ「(……世界の獣神の吐息、恐ろしすぎる。俺だったら一発で消滅してたかもしれない……)」
ふにゃふにゃになった耳を押さえ、潤んだ瞳でヴィヴァーチェを睨む(つもりで上目遣いになる)花。
吾妻スカイラインへの出発を前に、最強のドライバーがまさかの「完敗」を喫した瞬間だった。
耳が真っ赤でふにゃふにゃになり、へたり込んでいた花が、ゆっくりと立ち上がった。
だが、その瞳に宿っていた「世話焼きなお姉さん」の光は消え失せ、代わりにヴィヴァーチェを彷彿とさせる、底意地の悪い冷徹な輝きが満ちていた。
山吹 花「……はぁ? 何よ今の。……案外、悪くないじゃない」
花はふにゃふにゃの耳を自ら指で弾くと、不敵な、それでいて最高に生意気な笑みを浮かべた。
山吹 花「ねえ、カナタ。……いつまでそうやって、借りてきた猫みたいに突っ立ってるの?
私のWRXの排気音を聴けるだけでも光栄だと思いなさいよ。……この、鈍臭い86乗りが☆」
カナタ「え……!? は、花? 急にどうしたんだよ……」
伊藤 翔太「おいおい、花!? その言い方、まるで今のヴィヴァーチェ……」
山吹 花「うるさいわね、伊藤。
あんたのその黄色い車、吾妻の霧の中で目立ちすぎて邪魔なのよ。
私の『68号車』の後ろから、私のタイヤのカスでも拾いながら走ってなさいな。……うふふっ☆」
花は腰に手を当て、顎をツンと上げた。
ヴィヴァーチェの吐息に含まれていた「生意気な神性」が、花の精神構造を書き換えてしまったのだ。
ヴィヴァーチェ「ほほほ☆ 素晴らしい!
毒には毒を、生意気には生意気を!
花ちゃん、今のあなたなら、一無量大数年くらい私の遊び相手が務まりそうですねぇ☆」
山吹 花「黙りなさいな、小さな獣神さん。
あなたが様子見するっていうなら、精々そこで指をくわえて見ていなさい。
……吾妻の王者は、私よ☆」
花はそのまま、普段の彼女なら絶対にしないような「おしとやかな、しかし最高に人を小馬鹿にした歩き方」でWRXへと乗り込んだ。
その背中からは、これまでの「守護者」としてのオーラではなく、周囲を支配し、踏みつけるような「女王」のプレッシャーが放たれていた。
WRXのドアに手をかけ、冷笑を浮かべていた花だったが、その背後に再び「影」が落ちた。
ヴィヴァーチェが、まるで重力など存在しないかのように、花の首筋に顔を寄せたのだ。
ヴィヴァーチェ「いいですよ☆ その調子^_^
生意気な花ちゃんは、とっても愛くるしいです。
……では、さらに強力に耳ふーしてしまいましょう、、、☆」
山吹 花「……っ!? ま、待ちなさ……っ」
不敵に笑っていた花の顔が、一瞬で恐怖と期待が入り混じったものに変わる。
ヴィヴァーチェは花の真っ赤な耳朶に、今度は「ふぅー……」という音さえ聞こえないほどの、高密度な神性の波動を吹き込んだ。
山吹 花「ひゃ、あああああああッ……!!!!」
花の全身が、電流が走ったかのように激しく震えた。
一回目、二回目とは比較にならない、全細胞が書き換えられるような衝撃。
花の瞳からハイライトが消え、代わりに妖しくも美しい「生意気の光」が渦を巻く。
山吹 花「……はぁ、はぁ……っ。
なによ……。……最高じゃない。
世界が……、皆が……、私の足元に跪いているのが見えるわ……☆」
花はふにゃふにゃを通り越し、熱を帯びてとろけそうな耳を自ら愛おしそうに撫でた。
その口調は、もはや「生意気」という言葉では足りない。
まるで全宇宙を掌で転がす女王のような、圧倒的な不遜さに満ちていた。
山吹 花「カナタ、伊藤。……今すぐそのガラクタを動かしなさい。
私の『68号車』の後ろ姿を拝ませてあげる。
……あぁ、でも、あまりの速さに絶望して、そのまま崖から落ちないように気をつけることね☆ うふふっ」
伊藤 翔太「……おい、古田さん。これ、元に戻るのか?
花が、ただの『性格の悪い最強の女王様』になっちまったぞ!!」
古田 のりあき「……知らん。だが、あの目……。
今のアイツなら、吾妻のレコードを10秒は短縮しやがるぞ。
……行け! 怪物ども!!」
ヴィヴァーチェ「ほほほ☆
さあ、吾妻を『生意気な青の電撃』で染め上げてあげなさいな、花ちゃん☆」




