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86伝説エーペックス  作者: SAI
米沢編
PR
456/535

米沢編第66話 閉会式

K403

フブキ「......クリスタさん」

クリスタ「あ? なによ、邪魔しな……」

フブキ「それはNGです.....」

戦いの喧騒が少し落ち着いた頃。

WRX STIの傍らに立つ山吹花のもとに、静かに歩み寄る影があった。

フブキだ。

彼女もまた、この過酷なレースを走り抜いた一人だった。


フブキ「花ちゃん、、、」

山吹 花「フブキ、、、、」


互いに全力を出し切った者同士。言葉多くは要らなかった。

フブキは、花の後ろで騒がしく(そしてボロボロに)なっているカナタや翔太たちを見て、ふっと優しく微笑んだ。


フブキ「今回は負けたけど...花ちゃんには大切な場所があるんだね。

そういう『帰る場所』がある強さには、今の私は勝てないかも」


花は黙って頷く。

しかし、フブキの表情が急に曇り、ジト目でとある方向を見た。


フブキ「……でも、悔しいのはさ。

特にあの白いR35 NISMOが居なきゃ、、、、

もっとまともなレース展開だったはずなのにね」


その視線の先には、リタイヤしてレッカー移動されてきた相川と、泥だらけになった白いGT-R NISMOがあった。


相川「は? 俺?」


自分こそが被害者だと言わんばかりの間の抜けた顔をする相川。

その横から、先ほど翔太を助けたシラヌイが、氷よりも冷たい視線を突き刺した。


シラヌイ「そうよ!

あなたが温泉街のコーナーから外側走ってたから『ナーフ』されて回避できずに巻き添え食らったんじゃない!」


相川「な、ナーフだと……!?

俺の最強のGT-Rが弱体化されたって言うのか!? 意味わかんねぇよ!!」


シラヌイ「ええ、意味なんて分からなくていいわ。

あの区間は『源泉の結界』がある場所。

邪な心で大外をブン回そうとする車は、神聖な力でグリップ力を没収(ナーフ)されるのよ。

それをアンタが踏み抜いてスピンしたせいで、後続が大混乱だったの!」


相川「お、オカルトかよッ!? ふざけんな!

俺はただ、アウト・イン・アウトを極めようと……」


シラヌイ「それが『アウト・アウト・アウト(コース外)』になったんでしょ?

まったく……迷惑な『歩く不具合(バグ)』ね」


シラヌイは呆れて肩をすくめた。

相川の事故は、実力不足ではなく「ワールドの仕様」に喧嘩を売った結果だったのだ。


ちとせの氷やシラヌイの炎でドタバタしていたパドックに、またしても異質な空気が流れ込んだ。

地を這うような低い車高。

カーボンファイバーのボディが怪しく黒光りする、走る芸術品。

イタリアのパガーニ・ウアイラが、ガルウィング(正式にはアクティブ・エアロフラップ付きのガルウィングドア)を優雅に開いて停車した。


そこに、、、、

黒いウアイラが、、、、


伊藤 翔太「コタロー....? コタロー!」


スイスポの横で、伊藤翔太が信じられないものを見る目で声を上げた。

数億円のスーパーカーから降りてきたのは、まだあどけなさの残る少年だった。


伊藤 乎太郎「やあ、兄さん! 久しぶりー!」


少年――伊藤乎太郎(コタロー)は、まるで近所のコンビニに来たような軽いノリで手を振った。


腹切 カナタ「はい?」

山吹 花「どゆこと?」


カナタと花は、伊藤翔太(スイスポ・数百万)と、目の前の少年(ウアイラ・数億)を交互に見比べた。

顔立ちは確かに似ている。しかし、纏っているオーラと「値段」が違いすぎる。


伊藤 翔太「俺の弟だよ、、、、」


腹切 カナタ「え!?」

山吹 花「伊藤くんの弟なんていたんだ、、、

ていうか、弟さんがなんであんなスーパーカーに乗ってるの!?」


伊藤家の謎に、カナタたちの思考が追いつかない。

乎太郎はニコニコしながら、爆弾発言を投下した。


伊藤 乎太郎「海外にいたけどエーペックスカップ出たくなっちゃってさー!

だから、頼んで日本に来ちゃったんだよ!!」


彼は愛車のウアイラをポンと叩く。

その仕草には、車の価値に臆することのない、天才特有の無邪気さがあった。


伊藤 乎太郎「よろしくな! みんな!!!

まだ15なんだ!!」


腹切 カナタ「じゅ、15歳……!?」

山吹 花「免許は!? いや、海外のライセンス!?

ていうか15歳であのバケモノマシン(ウアイラ)を8位で完走させたの!?」


伊藤翔太は、弟のあまりの奔放さに頭を抱えた。

兄はコツコツといじったスイスポで戦う努力型。

弟は生まれ持った才能でハイパーカーを乗り回す天才肌。

伊藤兄弟、そのスペック差はあまりにも激しかった。


伊藤 乎太郎「免許なんて海外で取れるよ、、、

日本じゃダメでも、世界は広いからねー」


乎太郎は、数億円のマシン・ウアイラのボディを愛おしそうに撫でながら、あっけらかんと言い放った。

15歳でスーパーカーを操る。

それは彼にとって特別なことではなく、呼吸をするように自然なことなのだ。


そして、少年の瞳から「無邪気さ」が消え、レーサーの冷徹な光が宿った。


伊藤 乎太郎「悪いけど、、、次は手加減しないからね?」


その言葉は、8位という順位が彼にとって「遊び」だったことを示唆していた。

本気を出せば、もっと上――フリスや勇太の領域まで行けたかもしれない、と。


伊藤 乎太郎「また付き合ってくれるかい? お兄さん、、、」


それは、弟から兄への甘えの言葉ではない。

「僕のスピードについてこれるの?」という、極めてシビアな挑戦状だった。

風の神(ウアイラ)に乗る天才が、黄色いスイスポに乗る努力家に突きつけた、残酷なまでの格差。


伊藤 翔太「、、、、、、ッ」


翔太は言葉を返せなかった。

言い返したい言葉は山ほどある。「調子に乗るな」「俺だって負けない」。

だが、喉の奥が熱くなり、拳を握りしめることしかできなかった。

弟の才能が、マシンの性能が、あまりにも巨大すぎたからだ。


腹切 カナタ「翔太……」


カナタは心配そうに親友の顔を見た。

いつも明るいムードメーカーの翔太が、かつてないほどのプレッシャーに押しつぶされそうになっている。

伊藤兄弟の再会は、感動的な抱擁ではなく、ヒリつくような緊張感と共に幕を開けたのだった。


兄である翔太を黙らせた乎太郎は、くるりと踵を返し、今度は青いWRX STIの横に立つ少女へと歩み寄った。


伊藤 乎太郎「君が花ちゃんだね?」


山吹 花「えっ? あ、うん。そうだけど……」


花は少し警戒した。

この少年は、見た目はあどけないが、中身は底知れない。

兄を圧倒するほどの覇気を持ったパガーニ乗り。

そんな彼が、自分に何用なのか。


乎太郎は、花の顔をまじまじと見つめると、ニコッと人懐っこい(そして少し意地悪な)笑みを浮かべた。


伊藤 乎太郎「へぇー、兄さんが言ってた通り、可愛くてしっかりしてそうだね。

……でさ」


彼は声を潜め、しかし周囲にはっきりと聞こえるように囁いた。


伊藤 乎太郎「伊藤くん(兄さん)とのラブストーリー、期待してるよ」


山吹 花「な、、、、ッ!!!!」


その言葉は、時速300キロのクラッシュよりも衝撃的だった。

花の顔色が、一瞬で真っ白になり、次の瞬間には沸騰したやかんのように真っ赤に染まった。


山吹 花「は、はぁ!? な、ななな何言ってんのよこの子はッ!!!

ラブって!? ストーリーって!?

私と伊藤くんはただのチームメイトで腐れ縁で……!!!」


伊藤 翔太「ぶっ!!!???

お、おいコタロー!! テメェ何吹き込んでやがる!!!

変なこと言うんじゃねぇよ!!!」


翔太もまた、顔を茹でダコのように赤くして弟に掴みかかろうとする。

しかし、乎太郎はひらりと身をかわした。


伊藤 乎太郎「あはは! 図星かな?

だって兄さん、電話で『すげー頼りになる女子がいるんだ』って嬉しそうに話してたしー。

それに……」


乎太郎は、同い年である花に向かって、同級生のような気軽さでウインクした。


伊藤 乎太郎「僕と君は同い年(15歳)だろ?

若いうちの恋は加速力が大事だよ? ウアイラのターボみたいにね!」


山吹 花「同い年だからってませすぎだよあんたはーーッ!!!

もうやだこの兄弟!! 調子狂うぅぅぅッ!!!」


花は顔を両手で覆い、その場にしゃがみ込んでしまった。

しっかり者の「お姉さん役」だと思われていた彼女が、年相応の少女の顔を見せた瞬間だった。


兄である翔太を黙らせた乎太郎は、くるりと踵を返し、今度は青いWRX STIの横に立つ少女へと歩み寄った。


伊藤 乎太郎「君が花ちゃんだね?」


山吹 花「えっ? あ、うん。そうだけど……」


花は少し警戒した。

この少年は、見た目はあどけないが、中身は底知れない。

兄を圧倒するほどの覇気を持ったパガーニ乗り。

そんな彼が、自分に何用なのか。


乎太郎は、花の顔をまじまじと見つめると、ニコッと人懐っこい(そして少し意地悪な)笑みを浮かべた。


伊藤 乎太郎「へぇー、兄さんが言ってた通り、可愛くてしっかりしてそうだね。

……でさ」


彼は声を潜め、しかし周囲にはっきりと聞こえるように囁いた。


伊藤 乎太郎「伊藤くん(兄さん)とのラブストーリー、期待してるよ」


山吹 花「な、、、、ッ!!!!」


その言葉は、時速300キロのクラッシュよりも衝撃的だった。

花の顔色が、一瞬で真っ白になり、次の瞬間には沸騰したやかんのように真っ赤に染まった。


山吹 花「は、はぁ!? な、ななな何言ってんのよこの子はッ!!!

ラブって!? ストーリーって!?

私と伊藤くんはただのチームメイトで腐れ縁で……!!!」


伊藤 翔太「ぶっ!!!???

お、おいコタロー!! テメェ何吹き込んでやがる!!!

変なこと言うんじゃねぇよ!!!」


翔太もまた、顔を茹でダコのように赤くして弟に掴みかかろうとする。

しかし、乎太郎はひらりと身をかわした。


伊藤 乎太郎「あはは! 図星かな?

だって兄さん、電話で『すげー頼りになる女子がいるんだ』って嬉しそうに話してたしー。

それに……」


乎太郎は、同い年である花に向かって、同級生のような気軽さでウインクした。


伊藤 乎太郎「僕と君は同い年(15歳)だろ?

若いうちの恋は加速力が大事だよ? ウアイラのターボみたいにね!」


山吹 花「同い年だからってませすぎだよあんたはーーッ!!!

もうやだこの兄弟!! 調子狂うぅぅぅッ!!!」


花は顔を両手で覆い、その場にしゃがみ込んでしまった。

しっかり者の「お姉さん役」だと思われていた彼女が、年相応の少女の顔を見せた瞬間だった。


乎太郎の「ラブストーリー期待してるよ」という言葉に、耳まで真っ赤にしてしゃがみ込んでいた山吹花。

翔太と乎太郎の兄弟喧嘩、セリナの騒ぎ、そしてボロボロのカナタ。

男たちの騒がしさに、彼女のキャパシティは限界を迎えていた。


そこにフブキが、、、、

音もなく、花の隣に寄り添った。


フブキ「花ちゃんと一緒に閉会式いたい、、、、、」


普段はクールで、レースでは氷のように冷徹なフブキが、今は迷子の子供のように花の袖を掴んでいた。

その瞳には、ライバルとしての闘志ではなく、花への純粋な親愛の情だけが映っていた。


花は、熱くなった頬を両手でパタパタと仰ぎ、深呼吸をした。

目の前のフブキの、静かで落ち着いた空気。

それが、今の花には何よりも心地よかった。


山吹 花「......私もだよ」


花はフブキの手を、ぎゅっと握り返した。


山吹 花「行こう、フブキちゃん。

あんなバカな男ども(伊藤兄弟&カナタ)は放っておいて。

私たちだけで、美味しいもの食べに行こ?」


フブキ「うん……♪」


花とフブキ。青いWRXと、雪のような少女。

二人は互いに寄り添い合いながら、騒がしいパドックを後にした。

後ろで翔太が「ちょ、待って花ちゃん!? 俺を置いてくの!?」と叫んでいたが、二人の世界にはもう届かなかった。


パドックでの騒動から数十分後。

リナワールド内の屋外ステージは、ライブ会場のような熱気に包まれていた。

色とりどりのレーザー光線が夜空を切り裂き、大音量のBGMが観客の心臓を叩く。


早川「閉会式実況担当の早川です!!!!

さあ、皆様お待たせいたしました!!

長く、険しく、そしてカオスだった峠のバトルロイヤル!!

激闘を勝ち抜きィィ米沢を制した4人に拍手をォォ!!!!!!」


早川の絶叫と共に、ステージ中央に強烈なスポットライトが降り注いだ。

スモークの中から、激戦を戦い抜いた上位4名のドライバーが姿を現す。


**第1位:絶対王者 フリス**

(ポルシェ 718 ケイマン GT4)

涼しい顔で、王者の風格を漂わせて中央に立つ。


**第2位:狂犬 高橋勇太**

(ホンダ NSX NC1)

不機嫌そうにポケットに手を突っ込みながらも、鋭い眼光を客席に向けている。


**第3位:不屈のヒーロー 腹切カナタ**

(REVIVE 86 TURBO)

頭にはセリナに殴られたタンコブ、体は解凍直後で震えているが、照れくさそうに手を振る。


**第4位:青き守護者 山吹花**

(スバル WRX STI VAB)

フブキとの癒やしの時間で少し回復し、凛とした表情でカナタの隣に立つ。


早川「表彰台(ポディウム)に上がるのは3位までですが、今回は激戦を称え、4位の山吹選手まで特別にステージへお呼びしました!!

さあ、会場の皆さんも、配信を見ている皆さんも!

彼らに惜しみない称賛を!!!!」


ワァァァァァァァッ!!!!!


割れんばかりの歓声と拍手が、4人を包み込んだ。

それは、恐怖のダウンヒルと、理不尽な妨害(セリナやちとせ含む)を生き残った者たちへの、最大のリスペクトだった。


若林「さあ、激闘を終えた英雄たちに、勝利の美酒(ノンアルコール)を浴びてもらいましょう!!

ボトルを構えて……!!

それでは、みんなでシャンパンファイトはじめ!!!」


ポンッ! ポポンッ!! シュパァァァァァッ!!!!!


若林の合図と同時に、4本の巨大なボトルからコルクが弾け飛んだ。

中から勢いよく噴き出したのは、照明に照らされてキラキラと輝く金色の炭酸水。


高橋 勇太「オラァァァァッ!!

テメェら全員、水浸しになりやがれェェェッ!!!」


2位の勇太は、ここぞとばかりにボトルを振り回し、隣のカナタと花に集中砲火を浴びせた。

それはもう「祝福」というより「高圧洗浄機」のような勢いだった。


腹切 カナタ「うわっ!? つめたッ!?

勇太さん激しすぎ……ぶくぶくっ!!

目に! 目に入った!!」


山吹 花「キャーーッ!! ちょっと高橋くん!!

ドレス(レーシングスーツ)がベタベタになるじゃない!!

もう、やり返してやるーーッ!!」


花も負けじと応戦し、勇太の顔面に炭酸のシャワーを浴びせ返す。

15歳の少女と狂犬の、仁義なき撃ち合いが始まった。


フリス「……フッ。元気な奴らですね」


1位のフリスは、そんな騒ぎを少し離れた場所から優雅に見つめ、自分にかかる飛沫を片手で制しながら、ボトルの中身を一口煽った。

王者の余裕。


若林「あーーっと!! 会場にも飛んできたーー!!

冷たくて気持ちいいーーッ!!

これぞ勝者の味です!!!!」


ステージ上の4人は、順位も、敵味方も関係なく、ただただ笑い合い、びしょ濡れになっていた。

米沢の夜空に、彼らの笑い声と炭酸の泡が溶けていく。

それは、過酷な「死のレース」の終わりと、次なる戦いへの「プロローグ」を告げる、最高の瞬間だった。


ステージ上は既に勇太とカナタの炭酸水合戦でビショビショだったが、そこへさらなる「災害」が降り注いだ。

下位フィニッシュだったはずの連中が、どさくさに紛れてステージに乱入してきたのだ!


内藤 セリナ「えーい☆ 私も混ぜて〜!!」


セリナはどこから調達したのか、業務用の巨大な炭酸水ボトルを抱えてステージに飛び乗った。

そして、ターゲットを一番リアクションの良い山吹花に絞る。


ゾフィア「オラァァァッ!! 私も混ぜろ!!

コルベットのパワーを見せてやるぜェェェッ!!!」


筋肉質な肉体を揺らし、赤いコルベット乗りのゾフィアも参戦。

彼女はボトルを股間に構え、品のない角度で噴射口を向けた。


ゾフィア「喰らえ!!! 小便POWERあああ!!!!」


山吹 花「汚い! やめて!!

言い方!! 言い方が最悪すぎるでしょあんたはーーッ!!!」


花は悲鳴を上げた。

中身はただの炭酸水(しかも高級)なのに、ゾフィアが言うと途端に汚らしい液体に見えてくる不思議。

精神的ダメージは計り知れない。


しかし、攻撃の手は緩まない。

セリナは「フミッパ(アクセル全開)」の精神を、ボトルの栓にも応用した。


内藤 セリナ「そら! ダシッパアターック!」


彼女はボトルの口を指で押さえて勢いを増すこともせず、ただただドバドバと、全開で中身を垂れ流しながら花に突撃した。

無駄が多いが、水量は凄まじい。


山吹 花「ダシッパセリナやめろぉ!!

出しっぱなしにするな!! 締まりがないんだよあんたの走りと一緒でェェェッ!!!」


内藤 セリナ「あはは☆ 褒め言葉ありがと〜☆

私の辞書に『止める』って文字はないの〜!

全部出し切るのが私の流儀だよ〜!!」


ゾフィア「ガハハハハ! いいぞセリナ!

もっとビショビショにしてやれェ!!」


花は二人の変態(?)に囲まれ、もはや抵抗する気力もなく立ち尽くした。

美しい表彰式は、完全に「水遊び大会」と化し、米沢の夜は更けていくのだった。


ゾフィアの汚い放水と、セリナの垂れ流し攻撃で、ステージは阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

だが、その喧騒を切り裂くように、凛とした声が響き渡った。


フリス「ふふ……騒がしいな、お前たち。

王の前で随分と楽しそうではないか」


1位の表彰台に立っていたフリスが、ゆっくりと巨大なマグナムボトルを持ち上げた。

その所作は、剣を構える騎士のように優雅で、しかし隠しきれない覇気が漂っていた。

少女のような可憐な容姿からは想像もつかない、王者の威圧感。


フリス「いいだろう。

優勝者(ウィナー)として、敗者たちに慈悲を与えねばな。

……我の力...見せてあげよう!」


彼女はボトルを激しく振るような野蛮な真似はしなかった。

ただ一点、指先でボトルの底に「衝撃」を加えた瞬間、コルクが弾け飛んだ。


**ドォォォォンッ!!!!!**


それはシャンパンの開封音ではなかった。まるで戦車砲の発射音だ。

圧縮された炭酸ガスと液体が、一直線の「レーザービーム」となって噴射された。


フリス「ゆけ...我が必殺技『カイザーストリーム

』よ......っ!!」


**バシャアアアアアアアアッ!!!!!**


ゾフィア「ぐわあああッ!? 重てぇ!!

水圧が……高圧洗浄機並みだァッ!?」


内藤 セリナ「きゃあーーッ!?

ダシッパが押し返されるぅぅぅーーッ!!!」


フリスが放った金色の激流は、ゾフィアとセリナの攻撃を真っ向から押し返し、二人まとめてステージの端まで吹き飛ばした。

精密、かつ高威力。

ポルシェ 718 ケイマン GT4の走りを体現するかのような、無駄のない一撃だった。


フリス「ふっ、他愛もない。

だが、悪くない余興だ。

どうだ? 我の聖水は、貴様らの泥水とは格が違うだろう?」


王者はフワリと髪をかき上げ、不敵に微笑んだ。

その姿は、あまりにも美しく、そして絶対的に強かった。


山吹 花「す、すごい……。

一瞬で変態二人を黙らせた……。

これが……絶対王者の品格……!」


花はビショビショになりながらも、その圧倒的な「格の違い」に、ただただ見惚れるしかなかった。


ゾフィアの放水と、フリスの「聖水」でカオス極まるステージ。

そこに、22位という屈辱にまみれた「堕ちたフェラーリ」クリスタ・ニールセンが、ヤケクソ気味に乱入した。


クリスタ・ニールセン「くそぉぉぉッ!!

もう順位なんてどうでもいいわ!!

私のフェラーリが汚れたんだから、お前らも汚してやる!!!」


クリスタは、マグナムボトルを股間に構えるゾフィアの真似をしようとしたのか、それとも単にボトル形状がそう見えたのか、とんでもなく卑猥な角度でボトルを握りしめた。

その目は完全に据わっており、狂気に満ちていた。


クリスタ・ニールセン「こうなったら……

ち○ぽの液体でもびしゃあああああって!!!」


会場が一瞬、静まり返った。

それは、どんなにカオスな宴でも超えてはいけない「ライン」だった。

R-18指定確実。

公共の電波(配信)に乗せてはいけない、最低最悪の暴言と共に、クリスタがボトルを振ろうとした――


その瞬間。


スッ……。


音もなく、クリスタの背後に白い影が立った。

フブキだ。

彼女は、クリスタが握りしめているボトルの首を、冷え切った手でガシッと掴み、物理的に動きを止めた。


フブキ「......クリスタさん」


クリスタ「あ? なによ、邪魔しな……」


フブキ「それはNGです.....」


その声は、絶対零度よりも冷たく、そして事務的だった。

怒っているわけではない。

ただ、「これ以上やるとBANされます」という、純粋な警告と強制執行だった。


バキキキキッ……。


フブキの手から冷気が伝わり、クリスタが持っていたボトルの炭酸水が、一瞬で凍結した。

液体が出ない。

「びしゃあああ」ができない。


クリスタ「あ……あれ? 出ない……?

私の……液体が……固まっちゃった……?」


山吹 花「フブキちゃんナイスゥゥゥッ!!

危なかった……! 今、この会場が社会的に終わるところだったよ!!

ありがとう!!!」


フブキ「どういたしまして。

花ちゃんの耳に、汚い言葉を入れるわけにはいかないから」


フブキは凍りついたボトルをクリスタの手から取り上げ、ゴミ箱へと放り投げた。

こうして、米沢グランプリ最大の放送事故は、フブキの冷静な判断によって未遂に終わったのだった。

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