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86伝説エーペックス  作者: SAI
米沢編
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453/535

米沢編第63話 力ずくで

K400全シリーズ祝なろう版400話!!!!

若林「ここで森下が一気に7台抜き去ってしまううううう!!!!

残り2キロの区間でここまで目が回る程のデッドヒートが続くッッ!!!!!」


実況席の若林が椅子から転げ落ちそうになるほどの衝撃が、コース後方から押し寄せた。

これまで23位に沈んでいた森下遊矢のマツダ RX-8。

しかし、そのボンネットの下に収まっているのは、純正のレネシスではない。

かつてル・マン24時間レースを制した伝説のエンジン、「R26B型 4ローター」だ。


森下 遊矢「……待たせたな、相棒。

ここからはバイパスだ。お前の『喉』、全開にしていいぞ!!」


キィィィィィィィィィィンッ!!!!!


鼓膜ではなく、脳髄を直接揺さぶるような超高音の甲高いエキゾーストノート。

それは「天使の絶叫」とも「悪魔の金切り声」とも呼ばれる、世界で最も美しいロータリーサウンドだった。


天羽 シオン(R34)「な、なんだこの音は……!? F1か!?」

クリスタ(488)「No...!? フェラーリより高い音!?」


森下のRX-8は、音の壁を突き破るような加速で、前の車たちを次々とパスしていく。

天羽のGT-R、クリスタのフェラーリ、古賀のM5、古田のMR-S。

名だたるマシンたちが、その音を聞いた瞬間に置き去りにされた。


フェルリア(FD2)「嘘でしょ!? 私のVTECがかき消されるなんて……!!」

岡田 大成(GRヤリス)「速えぇぇぇ!! 音が速すぎて見えねぇ!!」


先ほど6台抜きを見せたフェルリアのシビックさえも、4ローターの圧倒的な伸びの前には止まって見えた。

岡田のヤリス、ゾフィアのコルベットも一瞬でバックミラーの彼方へ。


マヒロ「うっひゃー☆ ここで『伝説』を持ってきたかー☆

森下くん、ずっと爪を隠してたね。

あの音聞いた? 完全に『ル・マン』のストレートだよ。

残り2キロで7台抜き……。

最後尾から一番目立とうとするなんて、ロータリー乗りはこれだから面白いねーッ☆」


森下 遊矢「最高だ……!!

順位なんて関係ない。この音を響かせるだけで、俺は勝者になれる!!」


オレンジと緑のチャージカラーの幻影を纏い、RX-8は一気に中団グループのトップへと躍り出た。


ゾフィア「力ずくでいくわよおお!!

ウンコパワアアアアアアアア!!!!!!」


サーキットに似つかわしくない、あまりにもあんまりな絶叫が響き渡った。

17位を走っていたゾフィアのシボレー コルベット C7。

アメリカが誇る6.2リッターV8エンジンが、その掛け声に呼応するかのように、ドロドロとした重低音を爆発させた。

それは、繊細な電子制御など知ったことかと言わんばかりの、純粋なる「暴力」の解放だった。


若林「な……なんと言ったァァァッ!?

聞き間違いでなければ……非常に『芳ばしい』言葉を叫びながら、赤いコルベットが加速したアアアア!!!!

ものすごいトルクです!! タイヤがアスファルトをむしり取っていくゥ!!」


マヒロ「あははははっ☆ お腹痛いよーっ☆

ゾフィアちゃん、それ魔法の呪文かなにか!?

『汚い言葉』ほど力が湧くタイプなのかなー!?

とにかく速い! 臭い立つほどに速いよーっ☆」


ゾフィアのC7は、まるでロケットブースターでも点火したかのように、中団グループをごぼう抜きにした。

森下の4ローターも、海斗のランエボも、ユナのGR86も、ただの「障害物」として弾き飛ばしていく。


そして、その勢いは止まらない。

遥か前方を走っていた北斗のメルセデス AMG GT Rの背後に、赤い影が一瞬で到達した。


北斗「な、なんだこの揺れは……!?

地震か!? それとも……空襲か!?」


ゾフィア「どきなさいドイツの堅物ゥ!!

レディのお通りよオオオオオッ!!!!」


ドッギャアアアアアンッ!!!!!


北斗「ぬおォォォッ!?

こ、この俺が……パワー負けだとォォォッ!?」


ゾフィアは北斗のイン側に、コルベットのロングノーズを強引にねじ込んだ。

AMGの剛性を、排気量の暴力(と謎の掛け声)で粉砕。

緑の怪物が、赤いアメリカンマッスルの風圧でよろめく。


ゾフィア「アハハハハ!! 見たかこれが『ウンコパワー』よ!!

世界を制するのは、いつだって『デカいエンジン』なんだからァァッ!!」


品性のかけらもない勝利宣言と共に、赤いコルベットは7位の座を奪い取っていった。


実況席の若林が叫ぶ。

「訂正が入りました! 後方23位は陽太のマツダ・ロードスター!

森下遊矢の4ローターは遥か前方、16位まで突き抜けています!!」


だが、そんな順位変動すらも、今のトップ2台にはノイズでしかなかった。

ゴールラインまで、残り100メートル。

ポルシェ 718 ケイマン GT4の背後に、赤いREVIVE 86 TURBOが食らいつく。

スリップストリーム。空気の壁がなくなった真空地帯で、86の加速が限界を超える。


フリス「……来るか、サムライ。

だが、私のポルシェは『隙』を見せない」


フリスはバックミラーを見ずとも、カナタの殺気を感じ取っていた。

彼はコース中央を堂々と走り、インもアウトも、追い抜くためのラインを物理的に消し去る「王者のライン」をキープする。


腹切 カナタ「……ラインがねえ。

完璧だ……どこにも入り込む隙間がねえ……!!」


カナタの額に汗が伝う。

ポルシェのリアバンパーが目の前にある。手は届くのに、追い抜けない。

このままでは、コンマ数秒差で負ける。


マヒロ「うーん……☆ さすがフリスさん。

『勝つための走り』を徹底してるねー。

カナタくん、どうする?

もうパワーで抜く距離じゃないよ?

何か……『理屈じゃないこと』しなきゃ、その壁は越えられないよー?」


腹切 カナタ「……理屈じゃねえ、か。

そうだな、マヒロ。

俺たちの86は……いつだって『計算外』を起こしてきたんだ!!」


カナタはアクセルを緩めるどころか、さらに踏み込んだ。

狙うはインでもアウトでもない。

フリスが「絶対に誰も来ない」と信じている、ガードレールのわずかな隙間――「溝」だ。


腹切 カナタ「行けえええええッ!!

タイヤの1本くらい、くれてやるううううッ!!!!」


ガガガガガッ!!!!!


86の左タイヤが舗装を外れ、側溝の蓋の上を弾丸のように駆け抜ける!


フリス「なッ……!? そこは……走行ラインではないッ!!」


若林「入ったアアアアア!!!

腹切カナタ、まさかの『溝走り』だアアアア!!!!

ポルシェの横に……並んだァァァァッ!!!!!」


ゴールラインまで残り10メートル。

銀のポルシェと赤の86。

二つの鼻先が、完全に並んだ。


イヨ「イヨ、あと少しの所まで追い詰めたのに...ッ!!

ストレートにセッティングも振るのを忘れてた、、、!」


イヨの白銀のGRスープラは、バイパスの直線で悲鳴を上げていた。

エンジン音は「ブォォォォォンッ!!」と高らかに響いているが、スピードメーターの数字がある一定以上から上がらない。

彼女はスタート前、「いっぱいくねくねして、いっぱい潰せるように」と、ダウンフォースを最大にし、ギア比を加速重視(ローギアード)に振っていたのだ。

それは、峠道では最強の武器だったが、この長いストレートでは「足枷」でしかなかった。


イヨ「むぅぅぅ……! ペダル、床まで踏んでるのに!

エンジンさんが『もう無理だよぉ』って言ってるの!

これじゃあ、前のユナお姉ちゃん(GR86)にも追いつけないし、

後ろの怖い車たちに食べられちゃうよぉ……!!」


イヨは悔しそうにハンドルをバンバンと叩いた。

得意の「重力操作」で相手を重くすることはできても、自分の車のギア比を走行中に変えることはできない。

巨大なリアウイングが空気抵抗となり、スープラを後ろへと引き戻す。


マヒロ「あちゃー☆ イヨちゃん、やっちゃったねー☆

『壊す』ことに夢中で、『勝つ』ための計算を忘れちゃったかな?

今のイヨちゃんのスープラは、空気の壁と戦ってる状態だよー。

これじゃあ、後ろの『大排気量モンスター』たちにとっては、止まってるパイロンと同じだねーッ☆」


若林「なんと初歩的なミス!! しかし致命的だ!!

コーナーで稼いだマージンが、直線の伸び悩みですべて吐き出されていく!!

9位のイヨ、大ピンチです!!」


イヨ「うぅ……ちとせに怒られるぅ……。

でも、イヨは諦めないもん!

重力で……空気抵抗を、ちょっとだけ逸らすのっ!!」


イヨはピンクの萌え袖から謎の波動を出し、必死に抵抗を試みるが、直線のスピード差は残酷だった。


若林「ゴールまで1.8キロ!!!」


そのアナウンスは、古賀加奈子にとって「我慢の終了」を告げるゴングだった。

コーナーの多いセクションでは、M5の巨体と重量に苦しみ、ラインを譲り続けてきた。

だが、ここはバイパス。ただひたすらにアクセルを踏み抜くことだけが正義の場所だ。


古賀 加奈子「うおおおおらああああ!!!!!!

散々コケにしてくれたなァ!! 生徒(カナタ)の前で、いつまでも無様な姿晒せるかよォォォッ!!!」


ガッ!!!! ギュアアアアア!!!


加奈子はハイブリッドシステムの全エネルギーを解放し、アクセルペダルを床ごと踏み抜く勢いで蹴り飛ばした。

V8ツインターボと強力なモーターが同時に悲鳴を上げ、2.5トンの鉄塊が「砲弾」となって射出された。

空気抵抗など存在しないかのような、暴力的な加速。


イヨ「ふぇ……!? なに、後ろからすごい音が……」


イヨがバックミラーを見た瞬間、視界が真っ黒な巨大な影で覆われた。

M5が、伸び悩むスープラの横を、暴風を撒き散らしながら通過する。

その風圧だけで、スープラの軽量なボディが吸い寄せられそうになるほどだった。


若林「なんと古賀加奈子のM5がGRSUPRAの前に出てしまうううう!!!!!!!!

速い! 速すぎる!! 直線でのM5は、まさに『走る暴力』だアアアア!!!」


さらに、そのM5が空けた巨大なスリップストリーム(空気のトンネル)を見逃さない影があった。


フェルリア「あら、素敵な『特急列車』ね。無賃乗車させてもらうわよ!」


フェルリアのシビック FD2が、M5の背後にピタリと張り付き、空気抵抗ゼロの状態から一気に飛び出した。


フェルリア「ありがとね、イヨちゃん。今のあなた、とっても『遅い』わよ!!」


スパパパパンッ!!


若林「それに続いてフェルリアさんのFD2も古賀加奈子の後ろになだれ込むうう!!!!

イヨちゃんのGRSUPRAもさすがにストレートでは先程の記録が霞んでしまっていくうううう!!!!!

セッティングの差が! 馬力の差が! ここで残酷なほどに出ています!!」


イヨ「うぅぅ……!! 待ってよぉ……!!

イヨのスープラ、壊れちゃったのぉ!? なんで進まないのぉぉぉッ!!!」


涙目の破壊神を置き去りに、ドイツの重戦車と日本の侍マシンが、ゴールへ向けて爆走する。


そして黒いウアイラが一気にFD2の前まで来ていた、、、!!!!


フェルリア「なッ……!? なにこの風圧は……!?」


フェルリアのシビック FD2が、突如として横揺れに襲われた。

M5のスリップストリームを利用して加速していた彼女の視界に、音もなく、しかし圧倒的な存在感を放つ「黒い影」が滑り込んできたのだ。

パガーニ・ウアイラ。

カーボンチタニウムで作られた芸術品のようなボディが、可変フラップ(アクティブエアロ)をバタバタと動かしながら、物理法則を無視した挙動でFD2の前に躍り出た。


伊藤 乎太郎「……ふあ。そろそろゴールか。

遅い……あまりにも周りが止まって見える」


コクピットの伊藤乎太郎は、まるで散歩でもするかのような涼しい顔でステアリングを握っていた。

彼の背中で唸りを上げるのは、AMG製 6.0リッター V12 ツインターボエンジン。

730馬力超のパワーは、直線のバイパスにおいて「暴力」以外の何物でもない。


伊藤 乎太郎「どきなさい、お嬢さんたち。

『神』の通り道だ」


ズオオオオオオオオッ!!!!!


フェルリア「嘘……でしょ!?

M5についていくのがやっとだったのに……さらにその上を行くの!?

これが……『ハイパーカー』の領域……ッ!?」


ウアイラは、フェルリアのFD2をあざ笑うかのように一瞬で抜き去ると、そのまま前を行く古賀加奈子のM5にすら襲いかかった。

重戦車M5と、風の神ウアイラ。

規格外のモンスターたちが、ゴール手前で大気圏突入のような加速合戦を繰り広げる!


マヒロ「うっひゃー……☆ もう言葉が出ないよー。

乎太郎さん、今まで寝てたの?

ここに来てパガーニの本気出すなんて、大人気ないにも程があるよー!

FD2が軽自動車に見えちゃうくらいの速度差だねーッ☆」


若林「そして! 熾烈な先頭争い!

フリス! 腹切カナタ! 高橋勇太! 伊藤翔太!! 山吹花!!!

5台先頭グループが最終コーナーへ突入!!!!」


運命の「米沢の魔物」最終コーナー。

団子状態になった5台のマシンが、水しぶきを上げながら雪崩れ込む。

アウト側に膨らみながら加速を稼ごうとする伊藤翔太のスイフトスポーツ。

その懐(イン)が、一瞬だけ空いた。


若林「青いWRXがインのエイペックスからねじ込んでスイスポのラインをクロスさせるうううう!!!!!」


山吹花のスバル WRX STIが、物理法則を無視したような鋭角なラインでイン側の縁石(エイペックス)を蹴った。

ドミノ王冠を揺らし、ピンク色の髪とケモ耳を震わせながら、少女はステアリングを握りしめる。

その視線の先には、愛しい「黄色い背中」があった。


山吹 花(モノローグ)

「伊藤くん......伊藤くんのこと好きだよ......。

優しくて、熱くて、いつもみんなを笑わせてくれる伊藤くんが大好き......」


花の瞳から、一筋の雫がこぼれ落ちる。

それは恐怖の涙ではない。決別の涙だ。

彼女の足は、ブレーキではなくアクセルを選んでいた。


山吹 花

「でも、ごめんね、、、

私、今は『女の子』じゃなくて『レーサー』だから......ッ!!」


バババババッ!!!!!


AWD(全輪駆動)の暴力的なトラクション。

アウトへ膨らんだ翔太のラインの内側を、鋭利な刃物のようにえぐり取る「クロスライン」。

立ち上がりの加速で、青いWRXが黄色いスイスポの前に躍り出た。


伊藤 翔太「なッ......!? 花ちゃん......!?

嘘だろ、そこでクロスを仕掛けてくるのかよ......ッ!!」


翔太は信じられないものを見る目で、横をすり抜けていく少女の横顔を見た。

一瞬だけ交錯した視線。

花は泣きそうな、でも誇らしげな笑顔で、翔太を置き去りにした。


マヒロ「うわぁぁぁ......切ない! 切ないけど速いよ花ちゃん!!

『好きだからこそ、全力で勝つ』。

これぞ究極の愛だねー......☆

翔太くん、フラれたわけじゃないよ!

ただ、レーサーとして負けただけだよーッ!!(傷口に塩)」


若林「うおおおおお!!!!!

NSXが、高橋勇太があああ!!! 赤い戦闘機を抑えてしまった!!!

高橋勇太! これで2位だあああ!!!!!」


ゴールラインまで残り数メートル。

フリスのポルシェに並びかけようとしていた腹切カナタの86。

そのアウト側から、信じられない速度差で銀色の塊が被さってきた。

高橋勇太のホンダ NSX。

3基のモーターがシステム総出力581馬力を叩き出し、枯渇しかけていた86の加速を嘲笑うかのようにねじ伏せた。


高橋 勇太「ギャハハハハ!! 遅ぇ!! 遅ぇんだよ雑魚がァ!!

溝走りだァ? 根性論だァ?

そんなもん、俺の『科学の暴力』の前じゃ紙屑なんだよォォォッ!!!」


腹切 カナタ「なッ……!? 勇太……!!

俺の……俺のラインが……!!」


カナタは歯を食いしばった。

必死に作った立ち上がりのラインを、NSXの巨大な車体が物理的に塞いでいる。

アクセルを踏めば接触してクラッシュする。引けば負ける。

究極の選択を迫られたコンマ1秒、カナタの本能が「生存(ブレーキ)」を選んでしまった。


高橋 勇太「ビビったなァ!?

命が惜しいなら、そこで指くわえて見てろオオオオオッ!!!!」


NSXのリアタイヤが、86のフロントノーズをかすめながら前に出る。

カナタの視界から「優勝」の文字が消え、代わりに銀色の絶望が立ちはだかった。


マヒロ「うわぁ……酷い! でも強い!!

勇太くん、完全に『悪役(ヒール)』だねー☆

カナタくんの努力と根性を、最新スペックと狂気で踏み潰しちゃったよ。

でも、これがレース。速い奴が偉いんだねー……残酷だねーッ☆」


若林「腹切カナタ、万事休すか!?

ポルシェを追う権利を奪われ、3位に後退!!

その前には、銀色の狂犬・高橋勇太が立ちはだかる!!!」

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