米沢編第62話 ゴール直前!
K399
若林「さらに後方でもバトルが勃発!! 山吹花が北斗のAMG GT Rを僅かにリードして前へ!!!!」
最終コーナーの立ち上がり。
体勢を崩した北斗のメルセデス AMG GT Rのイン側を、鋭い「青い稲妻」が貫いた。
スバル WRX STI VAB。
そのステアリングを握っているのは、あどけない14歳の少女、山吹花だ。
山吹 花「……ごめんなさいね、おじさま。
私の大切な仲間(カナタと翔太)の背中は……誰にも触らせないっ!!」
コクピットの彼女は、ピンク色の髪に「ケモ耳」をぴこぴこと動かし、モコモコのピンクのアウターに身を包んでいる。
頭上で揺れるのは、不思議な模様の「ドミノ王冠」。
一見するとファンシーな魔法少女のようだが、その瞳に宿るのは「狼」の獰猛な光だ。
彼女こそ、チームを影から支え、時に牙を剥く「青の電撃の桜狼」!!
北斗「な、なんだこのプレッシャーは……!?
勇太とは違う……もっと鋭く、澄んだ殺気……!?
まさか、このSTI……あんな子供が操っているというのか!?」
北斗は横に並んだドライバーの姿を見て戦慄した。
メルセデスの剛体を震わせるほどのプレッシャーを放っているのが、愛らしい中学生であるという事実に、脳の処理が追いつかない。
山吹 花「AWDの安定感は、誰かを守るためにあるの。
私の『蒼い風』で、あなたの緑色の毒牙……吹き飛ばしてあげる!!」
バチバチバチッ!!!!!
WRXのタイヤがアスファルトを噛み締め、青い火花のようなエフェクトを散らす。
「桜狼」の咆哮と共に、WRXはAMGの鼻先をわずかに、しかし確実にリードした。
パワー差を「想いの強さ」と「四輪駆動のトラクション」で覆す、ジャイアント・キリングの瞬間だった。
マヒロ「きゃーっ☆ 花ちゃんカッコいいー!!
普段は『オカン』だけど、ハンドル握ると『野生の狼』だねー☆
しかも14歳でそのテクニック……末恐ろしいよー。
ピンクのモコモコでAMGを煽り倒す中学生、世界中探しても花ちゃんだけだねーッ☆」
【数年前・ヤマブキモーターズ】
あたり一面が白銀に染まる、静寂の世界。
その寒さをものともせず、ピンク色の髪を揺らして走り回る少女がいた。
まだ「ドミノ王冠」を被る前、純粋に走ることを楽しんでいた頃の山吹花だ。
ちとせ「花ちゃ〜ん☆ ちょっと来て〜、、、」
ふわりとした綿菓子のような声が、冷たい空気に溶けていく。
ちとせは、背後のガレージのシャッターを、指先ひとつで重力操作したかのように軽々と開けた。
山吹 花「ん? なあにー? ちとせ!!!」
花が元気よく駆け寄ると、そこには薄暗いガレージの中で、猛獣の如く目を光らせる「蒼い車体」が鎮座していた。
SUBARU WRX STI VAB。
巨大なリアウイングと、ボンネットのエアインテークが、ただならぬ迫力を放っている。
山吹 花「うわー! WRX STI!!!」
花の瞳が、サファイアのように輝いた。
今まで乗っていたコンパクトなスイフトスポーツとは、車格もオーラも段違いだ。
ちとせ「スイスポから乗り換える花ちゃんにプレゼント〜、、、!
この子はね、雪道でも嵐でも、花ちゃんのことを絶対に守ってくれる『騎士』ですよ〜。
私の氷の上でも滑らないように、特別に『おまじない』もしてありますからね〜☆」
ちとせはニコニコと笑いながら、WRXのボンネットを撫でた。
その横で、少し心配そうに佇む少女――花の妹、芽衣が静かに口を開く。
山吹 芽衣「……姉さん。その車、スイスポとはパワーが桁違いだから……。調子に乗って壊さないでね?
……あと、その車も、姉さんのことを選んでる気がするから……大事にしてあげてね、、、」
山吹 花「ありがとう〜ちとせええ!!!
ちとせさんも芽衣も心配性だなぁ!
私、この子とならどこまでだって行ける気がするッ!!」
花は迷うことなく運転席に飛び乗った。
小柄な体がバケットシートに埋もれるが、ステアリングを握る手つきは、すでに歴戦のドライバーのそれだった。
ボボボボボボッ……!!
EJ20エンジンの重低音が、氷の館に響き渡る。
山吹 花「早速乗るねー☆ きゃははッ♪
行ってきまーーーすッ!!!」
ダアァァッ!!!!!
WRXは猛烈な勢いで雪原へと飛び出した。
四輪が雪を掴み、まるで氷の上を舞う桜の花びらのように、美しく激しいドリフトを描く。
ちとせ「元気だね〜。
ふふっ……あの走り、将来は大物になるよ〜。
ねぇ、芽衣ちゃん?」
山吹 芽衣「……はぁ。姉さんの世話係が増えただけのような気がします……」
遠ざかる蒼いテールランプを見つめながら、これが「桜狼」誕生の瞬間であることを、二人は予感していた。
高橋 勇太が追い上げ!!! 北斗のAMG GT Rに襲いかかる!!!!
最終コーナーを立ち上がり、ゴールラインまでの短いストレート。
そこで再び、銀色の閃光が走った。
高橋勇太のホンダ NSX(NC1)。
先ほどの多重クラッシュ未遂で失速したはずのハイブリッド・スーパーカーが、3モーターのトルクベクタリングをフル活用し、驚異的な脱出速度で北斗の背後に食らいついたのだ。
若林「並んだアアアア!!!
サイド・バイ・サイドおおお!!!!
高橋勇太、まだ死んでいなかったァァァッ!!
執念のブレーキングと立ち上がりで、北斗のAMGを捉えたアアア!!」
北斗「なに、、、っ!?」
北斗はバックミラーを見る暇もなかった。
右側の視界が、無機質な銀色のボディで埋め尽くされる。
NSXのフロントタイヤが、AMGのドアミラーを掠めるほどの至近距離にねじ込まれていた。
常人なら恐怖でアクセルを戻す距離。だが、北斗もまた「緑の地獄」の住人。退くことはない。
北斗「貴様……ッ!!
まだ懲りずに噛み付いてくるか!!
その傷だらけのボディで、俺の剛性に勝てると思っているのかァッ!!」
高橋 勇太「あいにくだが、、、こういう競り合いは得意なんだよおおおおおっ!!!」
ガガガガガッ!!!!!
二台の接触音が、タイヤのスキール音をかき消す。
勇太はステアリングをねじ込み、AMGの巨体を物理的に押し出しにかかった。
ラインがないなら作る。相手が退かないなら退かせる。
それがストリートで培った、高橋勇太の「喧嘩殺法」だ。
高橋 勇太「綺麗なレースがしてぇなら、サーキットでママ事でもしてな!!
ここは『公道』だ!!
生き残った奴が勝者なんだよォォォッ!!!!」
マヒロ「うわーオ☆ 勇太くん、完全に『スイッチ』入ってるねー☆
北斗さんのAMGも頑丈だけど、勇太くんの『殺意』が装甲を貫通してるよー。
これ、ゴールラインまでにどっちかが廃車になるチキンレースだねーッ☆」
互いに譲らぬ二台の猛獣。
チェッカーフラッグが振られるその瞬間まで、火花散る死闘は続く!
高橋勇太と北斗がサイド・バイ・サイドで火花を散らす中、その背後から急速に冷気が広まった。
アスファルトが凍てつくような感覚。そして、鼓膜を劈くV10エンジンの絶叫。
セシル「……調子に乗らないで。
私の前で……そんな汚い走りを見せないでッ!!!」
若林「AMGに氷のドラゴンが襲う!!!!
7位に落ちていたセシルのウラカン、驚異的なリカバリーだァァァッ!!
勇太と北斗のバトルの外側から、白い猛牛が強襲する!!!!」
北斗「な、なにィ……!?
さっき弾き出されたはずの……あの小娘かッ!?」
北斗がサイドミラーで確認した時には、もう遅かった。
白く輝くランボルギーニ・ウラカンは、実体以上の巨大な「氷の竜」の幻影を纏い、AMG GT Rに襲いかかっていた。
勇太との競り合いで消耗していた北斗のマシンには、その冷徹な一撃を避ける力は残っていなかった。
セシル「緑色のトカゲなんて……私の氷で冬眠してなさいッ!!
そこをどけェェェェェッ!!!!」
ズバァァァァンッ!!!!!
強烈オーバーテイク!!!!!
セシルはブレーキを遅らせるどころか、加速しながらコーナーへ飛び込むような勢いで、アウト側から北斗をねじ伏せた。
風圧と気迫だけで、1.6トンのAMGがよろめく。
北斗「ぐわァァァッ!!?
重い……!! 車体が……鉛のように重く感じる……ッ!!
これが……ランボルギーニのプレッシャーなのかッ!?」
マヒロ「うっひょー☆ セシルちゃん、ブチ切れだねー☆
『私を置いて喧嘩するな!』っていう、強烈なツンデレ・アタックだよー!
北斗さんのAMG、完全に凍りついて動けなくなっちゃったね。
これでセシルちゃん、6位浮上! 前の勇太くんも喰っちゃう勢いだよーッ☆」
セシル「ふん……。次はあんたよ、野良犬!(高橋)。私の視界から……消えなさい!!」
氷の女王は、凍りついたAMGを置き去りにし、次なる獲物・NSXの背中をロックオンした。
ゴールまで、あと2つのコーナー。
3位を走る伊藤翔太は、表彰台の光景を思い浮かべて震える足を必死に抑えていた。
4位の山吹花も、このまま順位をキープしようとラインを閉じていた。
だが、その背後から。
物理法則を嘲笑うような「銀色の暴風」が、すべてを破壊しにやってきた。
高橋 勇太「俺は...永遠の命を手に入れるんだアアアアアアっ!!!!!!」
若林「高橋が3位に躍り出てしまったアアア!!!!!!
信じられない! 信じられません!!
コーナーへの進入速度がおかしい! あんな速度で突っ込んだら曲がれるわけがない!!
しかしNSXは……曲がっているゥゥゥッ!!」
勇太は「死」を恐れていなかった。
いや、「死」すらも自分の燃料に変えていた。
NSXの3つのモーターが悲鳴を上げ、四輪がアスファルトを削り取る。
彼は4位の山吹花のインを強引にこじ開け、その反動を利用して、3位の伊藤翔太の横っ腹にミサイルのように突っ込んだ。
伊藤 翔太「は……!? なんで……!?
ここ、追い抜きポイントじゃないだろッ!?
うわあああああっ!! 俺の表彰台がァァァァッ!!!」
山吹 花「きゃっ!? ……嘘でしょ!?
この人、自分が壊れてもいいって言うの……!?」
ドォォォンッ!!!!!
衝撃音と共に、黄色いスイスポと青いWRXが弾き飛ばされるようにラインを譲らされた。
その真ん中を、傷だらけのNSXが「狂喜の笑み」を浮かべて突き抜けていく。
マヒロ「あははははは☆ やばいよやばいよー☆
勇太くん、完全に『人間』辞めちゃったねー!
『永遠の命』って、伝説になること? それとも師匠に褒められること?
どっちにしても、今の彼は無敵のゾンビだよーッ☆」
高橋 勇太「ギャハハハハ!! 見ろバニラ!!
俺は……俺は誰よりも速く、誰よりも深く傷跡を残したぞォォォッ!!」
表彰台への執念が、常識を凌駕した瞬間だった。
ゴール地点である「リナワールド」の入場ゲートが見え、観客のボルテージが最高潮に達したその時だった。
コース脇の茂みから、唐突に一台のモンスターマシンが飛び出してきた。
日産 GT-R R35 NISMO。
日本の技術の結晶とも言えるスーパーカーが、なぜかドリフトでもグリップでもない、「コマ」のような回転運動をしながらコース上に現れたのだ。
相川「よお! お前ら!! 待たせたなァ!!
俺様も混ぜろよォォォッ!!!」
腹切 カナタ「相川あああ!!??
なんでお前がここにいるんだよッ!?
ていうか、その回転は何なんだよォォォッ!?」
2位を走るカナタは、目前に現れた友人の奇行に、あやうくステアリング操作を誤るところだった。
相川のGT-Rは、物理法則を無視したような速度で、その場でクルクルと360度ターンを繰り返している。
まるで、ゲームのバグか、コントの演出のように。
相川「見てくれこの超絶テクニック!!
『トルネード・エントリー』だァァァ……って、あれ?
目が……回る……うぷっ……」
キキキキキッ……ドカァァァンッ!!!!!
相川のGT-Rは、そのまま制御不能に陥り、リナワールドの入場ゲートの柱に、実にコミカルな効果音と共に激突した。
ボンネットからプシューッと白い煙が上がり、エアバッグが「ポンッ」とマヌケな音を立てて開く。
アナウンス「えー……ただいま乱入しました車両は、危険走行および『回転しすぎ』のため、強制リタイヤとなります。
警備員の方、回収をお願いします」
黒川 海斗「またアイツ何してんねえええん!!!!!!
カッコよく登場して、3秒で廃車にしやがったアアアッ!!
俺の感動のゴール前を返せェェェェッ!!!!」
15位を走る黒川海斗は、車内で頭を抱えて絶叫した。
極限のバトルが繰り広げられる中、相川という一陣の風が、シュールな笑いを残して去っていった。
若林「ここで森下が一気に7台抜き去ってしまう!!!!
残り2キロの区間でここまで目が回る程のデッドヒートが続くうううう!!!!!」
実況席の若林が椅子から転げ落ちそうになるほどの衝撃が、コース後方から押し寄せた。
これまで23位に沈んでいた森下遊矢のマツダ RX-8。
しかし、そのボンネットの下に収まっているのは、純正のレネシスではない。
かつてル・マン24時間レースを制した伝説のエンジン、「R26B型 4ローター」だ。
森下 遊矢「……待たせたな、相棒。
ここからはバイパスだ。お前の『喉』、全開にしていいぞ!!」
キィィィィィィィィィィンッ!!!!!
鼓膜ではなく、脳髄を直接揺さぶるような超高音の甲高いエキゾーストノート。
それは「天使の絶叫」とも「悪魔の金切り声」とも呼ばれる、世界で最も美しいロータリーサウンドだった。
天羽 シオン(R34)「な、なんだこの音は……!? F1か!?」
クリスタ(488)「No...!? フェラーリより高い音!?」
森下のRX-8は、音の壁を突き破るような加速で、前の車たちを次々とパスしていく。
天羽のGT-R、クリスタのフェラーリ、古賀のM5、古田のMR-S。
名だたるマシンたちが、その音を聞いた瞬間に置き去りにされた。
フェルリア(FD2)「嘘でしょ!? 私のVTECがかき消されるなんて……!!」
岡田 大成(GRヤリス)「速えぇぇぇ!! 音が速すぎて見えねぇ!!」
先ほど6台抜きを見せたフェルリアのシビックさえも、4ローターの圧倒的な伸びの前には止まって見えた。
岡田のヤリス、ゾフィアのコルベットも一瞬でバックミラーの彼方へ。
マヒロ「うっひゃー☆ ここで『伝説』を持ってきたかー☆
森下くん、ずっと爪を隠してたね。
あの音聞いた? 完全に『ル・マン』のストレートだよ。
残り2キロで7台抜き……。
最後尾から一番目立とうとするなんて、ロータリー乗りはこれだから面白いねーッ☆」
森下 遊矢「最高だ……!!
順位なんて関係ない。この音を響かせるだけで、俺は勝者になれる!!」
オレンジと緑のチャージカラーの幻影を纏い、RX-8は一気に中団グループのトップへと躍り出た。
ゾフィア「力ずくでいくわよおお!!
ウンコパワアアアアアアアア!!!!!!」
サーキットに似つかわしくない、あまりにもあんまりな絶叫が響き渡った。
17位を走っていたゾフィアのシボレー コルベット C7。
アメリカが誇る6.2リッターV8エンジンが、その掛け声に呼応するかのように、ドロドロとした重低音を爆発させた。
それは、繊細な電子制御など知ったことかと言わんばかりの、純粋なる「暴力」の解放だった。
若林「な……なんと言ったァァァッ!?
聞き間違いでなければ……非常に『芳ばしい』言葉を叫びながら、赤いコルベットが加速したアアアア!!!!
ものすごいトルクです!! タイヤがアスファルトをむしり取っていくゥ!!」
マヒロ「あははははっ☆ お腹痛いよーっ☆
ゾフィアちゃん、それ魔法の呪文かなにか!?
『汚い言葉』ほど力が湧くタイプなのかなー!?
とにかく速い! 臭い立つほどに速いよーっ☆」
ゾフィアのC7は、まるでロケットブースターでも点火したかのように、中団グループをごぼう抜きにした。
森下の4ローターも、海斗のランエボも、ユナのGR86も、ただの「障害物」として弾き飛ばしていく。
そして、その勢いは止まらない。
遥か前方を走っていた北斗のメルセデス AMG GT Rの背後に、赤い影が一瞬で到達した。
北斗「な、なんだこの揺れは……!?
地震か!? それとも……空襲か!?」
ゾフィア「どきなさいドイツの堅物ゥ!!
レディのお通りよオオオオオッ!!!!」
ドッギャアアアアアンッ!!!!!
北斗「ぬおォォォッ!?
こ、この俺が……パワー負けだとォォォッ!?」
ゾフィアは北斗のイン側に、コルベットのロングノーズを強引にねじ込んだ。
AMGの剛性を、排気量の暴力(と謎の掛け声)で粉砕。
緑の怪物が、赤いアメリカンマッスルの風圧でよろめく。
ゾフィア「アハハハハ!! 見たかこれが『ウンコパワー』よ!!
世界を制するのは、いつだって『デカいエンジン』なんだからァァッ!!」
品性のかけらもない勝利宣言と共に、赤いコルベットは7位の座を奪い取っていった。
イヨ「イヨ、あと少しの所まで追い詰めたのに...ッ!!
ストレートにセッティングも振るのを忘れてた、、、!」
イヨの白銀のGRスープラは、バイパスの直線で悲鳴を上げていた。
エンジン音は「ブォォォォォンッ!!」と高らかに響いているが、スピードメーターの数字がある一定以上から上がらない。
彼女はスタート前、「いっぱいくねくねして、いっぱい潰せるように」と、ダウンフォースを最大にし、ギア比を加速重視に振っていたのだ。
それは、峠道では最強の武器だったが、この長いストレートでは「足枷」でしかなかった。
イヨ「むぅぅぅ……! ペダル、床まで踏んでるのに!
エンジンさんが『もう無理だよぉ』って言ってるの!
これじゃあ、前のユナお姉ちゃん(GR86)にも追いつけないし、後ろの怖い車たちに食べられちゃうよぉ……!!」
イヨは悔しそうにハンドルをバンバンと叩いた。
得意の「重力操作」で相手を重くすることはできても、自分の車のギア比を走行中に変えることはできない。
巨大なリアウイングが空気抵抗となり、スープラを後ろへと引き戻す。
マヒロ「あちゃー☆ イヨちゃん、やっちゃったねー☆
『壊す』ことに夢中で、『勝つ』ための計算を忘れちゃったかな?
今のイヨちゃんのスープラは、空気の壁と戦ってる状態だよー。
これじゃあ、後ろの『大排気量モンスター』たちにとっては、止まってるパイロンと同じだねーッ☆」
若林「なんと初歩的なミス!! しかし致命的だ!!
コーナーで稼いだマージンが、直線の伸び悩みですべて吐き出されていく!!
9位のイヨ、大ピンチです!!」
イヨ「うぅ……ちとせに怒られるぅ……。
でも、イヨは諦めないもん!
重力で……空気抵抗を、ちょっとだけ逸らすのっ!!」
イヨはピンクの萌え袖から謎の波動を出し、必死に抵抗を試みるが、直線のスピード差は残酷だった。




