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86伝説エーペックス  作者: SAI
米沢編
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452/535

米沢編第62話 ゴール直前!

K399

若林「さらに後方でもバトルが勃発!! 山吹花が北斗のAMG GT Rを僅かにリードして前へ!!!!」


最終コーナーの立ち上がり。

体勢を崩した北斗のメルセデス AMG GT Rのイン側を、鋭い「青い稲妻」が貫いた。

スバル WRX STI VAB。

そのステアリングを握っているのは、あどけない14歳の少女、山吹花だ。


山吹 花「……ごめんなさいね、おじさま。

私の大切な仲間(カナタと翔太)の背中は……誰にも触らせないっ!!」


コクピットの彼女は、ピンク色の髪に「ケモ耳」をぴこぴこと動かし、モコモコのピンクのアウターに身を包んでいる。

頭上で揺れるのは、不思議な模様の「ドミノ王冠」。

一見するとファンシーな魔法少女のようだが、その瞳に宿るのは「狼」の獰猛な光だ。

彼女こそ、チームを影から支え、時に牙を剥く「青の電撃の桜狼(さくらおおかみ)」!!


北斗「な、なんだこのプレッシャーは……!?

勇太とは違う……もっと鋭く、澄んだ殺気……!?

まさか、このSTI……あんな子供が操っているというのか!?」


北斗は横に並んだドライバーの姿を見て戦慄した。

メルセデスの剛体を震わせるほどのプレッシャーを放っているのが、愛らしい中学生であるという事実に、脳の処理が追いつかない。


山吹 花「AWDの安定感は、誰かを守るためにあるの。

私の『蒼い風』で、あなたの緑色の毒牙……吹き飛ばしてあげる!!」


バチバチバチッ!!!!!


WRXのタイヤがアスファルトを噛み締め、青い火花のようなエフェクトを散らす。

「桜狼」の咆哮と共に、WRXはAMGの鼻先をわずかに、しかし確実にリードした。

パワー差を「想いの強さ」と「四輪駆動のトラクション」で覆す、ジャイアント・キリングの瞬間だった。


マヒロ「きゃーっ☆ 花ちゃんカッコいいー!!

普段は『オカン』だけど、ハンドル握ると『野生の狼』だねー☆

しかも14歳でそのテクニック……末恐ろしいよー。

ピンクのモコモコでAMGを煽り倒す中学生、世界中探しても花ちゃんだけだねーッ☆」


【数年前・ヤマブキモーターズ】


あたり一面が白銀に染まる、静寂の世界。

その寒さをものともせず、ピンク色の髪を揺らして走り回る少女がいた。

まだ「ドミノ王冠」を被る前、純粋に走ることを楽しんでいた頃の山吹花だ。


ちとせ「花ちゃ〜ん☆ ちょっと来て〜、、、」


ふわりとした綿菓子のような声が、冷たい空気に溶けていく。

ちとせは、背後のガレージのシャッターを、指先ひとつで重力操作したかのように軽々と開けた。


山吹 花「ん? なあにー? ちとせ!!!」


花が元気よく駆け寄ると、そこには薄暗いガレージの中で、猛獣の如く目を光らせる「蒼い車体」が鎮座していた。

SUBARU WRX STI VAB。

巨大なリアウイングと、ボンネットのエアインテークが、ただならぬ迫力を放っている。


山吹 花「うわー! WRX STI!!!」


花の瞳が、サファイアのように輝いた。

今まで乗っていたコンパクトなスイフトスポーツとは、車格もオーラも段違いだ。


ちとせ「スイスポから乗り換える花ちゃんにプレゼント〜、、、!

この子はね、雪道でも嵐でも、花ちゃんのことを絶対に守ってくれる『騎士(ナイト)』ですよ〜。

私の氷の上でも滑らないように、特別に『おまじない』もしてありますからね〜☆」


ちとせはニコニコと笑いながら、WRXのボンネットを撫でた。

その横で、少し心配そうに佇む少女――花の妹、芽衣(メイ)が静かに口を開く。


山吹 芽衣「……姉さん。その車、スイスポとはパワーが桁違いだから……。調子に乗って壊さないでね?

……あと、その車も、姉さんのことを選んでる気がするから……大事にしてあげてね、、、」


山吹 花「ありがとう〜ちとせええ!!!

ちとせさんも芽衣も心配性だなぁ!

私、この子とならどこまでだって行ける気がするッ!!」


花は迷うことなく運転席に飛び乗った。

小柄な体がバケットシートに埋もれるが、ステアリングを握る手つきは、すでに歴戦のドライバーのそれだった。


ボボボボボボッ……!!


EJ20エンジンの重低音が、氷の館に響き渡る。


山吹 花「早速乗るねー☆ きゃははッ♪

行ってきまーーーすッ!!!」


ダアァァッ!!!!!


WRXは猛烈な勢いで雪原へと飛び出した。

四輪が雪を掴み、まるで氷の上を舞う桜の花びらのように、美しく激しいドリフトを描く。


ちとせ「元気だね〜。

ふふっ……あの走り、将来は大物になるよ〜。

ねぇ、芽衣ちゃん?」


山吹 芽衣「……はぁ。姉さんの世話係が増えただけのような気がします……」


遠ざかる蒼いテールランプを見つめながら、これが「桜狼」誕生の瞬間であることを、二人は予感していた。


高橋 勇太が追い上げ!!! 北斗のAMG GT Rに襲いかかる!!!!


最終コーナーを立ち上がり、ゴールラインまでの短いストレート。

そこで再び、銀色の閃光が走った。

高橋勇太のホンダ NSX(NC1)。

先ほどの多重クラッシュ未遂で失速したはずのハイブリッド・スーパーカーが、3モーターのトルクベクタリングをフル活用し、驚異的な脱出速度で北斗の背後に食らいついたのだ。


若林「並んだアアアア!!!

サイド・バイ・サイドおおお!!!!

高橋勇太、まだ死んでいなかったァァァッ!!

執念のブレーキングと立ち上がりで、北斗のAMGを捉えたアアア!!」


北斗「なに、、、っ!?」


北斗はバックミラーを見る暇もなかった。

右側の視界が、無機質な銀色のボディで埋め尽くされる。

NSXのフロントタイヤが、AMGのドアミラーを掠めるほどの至近距離にねじ込まれていた。

常人なら恐怖でアクセルを戻す距離。だが、北斗もまた「緑の地獄」の住人。退くことはない。


北斗「貴様……ッ!!

まだ懲りずに噛み付いてくるか!!

その傷だらけのボディで、俺の剛性に勝てると思っているのかァッ!!」


高橋 勇太「あいにくだが、、、こういう競り合いは得意なんだよおおおおおっ!!!」


ガガガガガッ!!!!!


二台の接触音が、タイヤのスキール音をかき消す。

勇太はステアリングをねじ込み、AMGの巨体を物理的に押し出しにかかった。

ラインがないなら作る。相手が退かないなら退かせる。

それがストリートで培った、高橋勇太の「喧嘩殺法」だ。


高橋 勇太「綺麗なレースがしてぇなら、サーキットでママ事でもしてな!!

ここは『公道(ストリート)』だ!!

生き残った奴が勝者なんだよォォォッ!!!!」


マヒロ「うわーオ☆ 勇太くん、完全に『スイッチ』入ってるねー☆

北斗さんのAMGも頑丈だけど、勇太くんの『殺意』が装甲を貫通してるよー。

これ、ゴールラインまでにどっちかが廃車になるチキンレースだねーッ☆」


互いに譲らぬ二台の猛獣。

チェッカーフラッグが振られるその瞬間まで、火花散る死闘は続く!


高橋勇太と北斗がサイド・バイ・サイドで火花を散らす中、その背後から急速に冷気が広まった。

アスファルトが凍てつくような感覚。そして、鼓膜を劈くV10エンジンの絶叫。


セシル「……調子に乗らないで。

私の前で……そんな汚い走りを見せないでッ!!!」


若林「AMGに氷のドラゴンが襲う!!!!

7位に落ちていたセシルのウラカン、驚異的なリカバリーだァァァッ!!

勇太と北斗のバトルの外側から、白い猛牛が強襲する!!!!」


北斗「な、なにィ……!?

さっき弾き出されたはずの……あの小娘かッ!?」


北斗がサイドミラーで確認した時には、もう遅かった。

白く輝くランボルギーニ・ウラカンは、実体以上の巨大な「氷の竜」の幻影を纏い、AMG GT Rに襲いかかっていた。

勇太との競り合いで消耗していた北斗のマシンには、その冷徹な一撃を避ける力は残っていなかった。


セシル「緑色のトカゲなんて……私の氷で冬眠してなさいッ!!

そこをどけェェェェェッ!!!!」


ズバァァァァンッ!!!!!


強烈オーバーテイク!!!!!

セシルはブレーキを遅らせるどころか、加速しながらコーナーへ飛び込むような勢いで、アウト側から北斗をねじ伏せた。

風圧と気迫だけで、1.6トンのAMGがよろめく。


北斗「ぐわァァァッ!!?

重い……!! 車体が……鉛のように重く感じる……ッ!!

これが……ランボルギーニのプレッシャーなのかッ!?」


マヒロ「うっひょー☆ セシルちゃん、ブチ切れだねー☆

『私を置いて喧嘩するな!』っていう、強烈なツンデレ・アタックだよー!

北斗さんのAMG、完全に凍りついて動けなくなっちゃったね。

これでセシルちゃん、6位浮上! 前の勇太くんも喰っちゃう勢いだよーッ☆」


セシル「ふん……。次はあんたよ、野良犬!(高橋)。私の視界から……消えなさい!!」


氷の女王は、凍りついたAMGを置き去りにし、次なる獲物・NSXの背中をロックオンした。


ゴールまで、あと2つのコーナー。

3位を走る伊藤翔太は、表彰台の光景を思い浮かべて震える足を必死に抑えていた。

4位の山吹花も、このまま順位をキープしようとラインを閉じていた。


だが、その背後から。

物理法則を嘲笑うような「銀色の暴風」が、すべてを破壊しにやってきた。


高橋 勇太「俺は...永遠の命を手に入れるんだアアアアアアっ!!!!!!」


若林「高橋が3位に躍り出てしまったアアア!!!!!!

信じられない! 信じられません!!

コーナーへの進入速度がおかしい! あんな速度で突っ込んだら曲がれるわけがない!!

しかしNSXは……曲がっているゥゥゥッ!!」


勇太は「死」を恐れていなかった。

いや、「死」すらも自分の燃料に変えていた。

NSXの3つのモーターが悲鳴を上げ、四輪がアスファルトを削り取る。

彼は4位の山吹花のインを強引にこじ開け、その反動を利用して、3位の伊藤翔太の横っ腹にミサイルのように突っ込んだ。


伊藤 翔太「は……!? なんで……!?

ここ、追い抜きポイントじゃないだろッ!?

うわあああああっ!! 俺の表彰台がァァァァッ!!!」


山吹 花「きゃっ!? ……嘘でしょ!?

この人、自分が壊れてもいいって言うの……!?」


ドォォォンッ!!!!!


衝撃音と共に、黄色いスイスポと青いWRXが弾き飛ばされるようにラインを譲らされた。

その真ん中を、傷だらけのNSXが「狂喜の笑み」を浮かべて突き抜けていく。


マヒロ「あははははは☆ やばいよやばいよー☆

勇太くん、完全に『人間』辞めちゃったねー!

『永遠の命』って、伝説になること? それとも師匠に褒められること?

どっちにしても、今の彼は無敵のゾンビだよーッ☆」


高橋 勇太「ギャハハハハ!! 見ろバニラ!!

俺は……俺は誰よりも速く、誰よりも深く傷跡を残したぞォォォッ!!」


表彰台への執念が、常識を凌駕した瞬間だった。


ゴール地点である「リナワールド」の入場ゲートが見え、観客のボルテージが最高潮に達したその時だった。

コース脇の茂みから、唐突に一台のモンスターマシンが飛び出してきた。

日産 GT-R R35 NISMO。

日本の技術の結晶とも言えるスーパーカーが、なぜかドリフトでもグリップでもない、「コマ」のような回転運動をしながらコース上に現れたのだ。


相川「よお! お前ら!! 待たせたなァ!!

俺様も混ぜろよォォォッ!!!」


腹切 カナタ「相川あああ!!??

なんでお前がここにいるんだよッ!?

ていうか、その回転は何なんだよォォォッ!?」


2位を走るカナタは、目前に現れた友人の奇行に、あやうくステアリング操作を誤るところだった。

相川のGT-Rは、物理法則を無視したような速度で、その場でクルクルと360度ターンを繰り返している。

まるで、ゲームのバグか、コントの演出のように。


相川「見てくれこの超絶テクニック!!

『トルネード・エントリー』だァァァ……って、あれ?

目が……回る……うぷっ……」


キキキキキッ……ドカァァァンッ!!!!!


相川のGT-Rは、そのまま制御不能に陥り、リナワールドの入場ゲートの柱に、実にコミカルな効果音と共に激突した。

ボンネットからプシューッと白い煙が上がり、エアバッグが「ポンッ」とマヌケな音を立てて開く。


アナウンス「えー……ただいま乱入しました車両は、危険走行および『回転しすぎ』のため、強制リタイヤとなります。

警備員の方、回収をお願いします」


黒川 海斗「またアイツ何してんねえええん!!!!!!

カッコよく登場して、3秒で廃車にしやがったアアアッ!!

俺の感動のゴール前を返せェェェェッ!!!!」


15位を走る黒川海斗は、車内で頭を抱えて絶叫した。

極限のバトルが繰り広げられる中、相川という一陣の風(ギャグ)が、シュールな笑いを残して去っていった。


若林「ここで森下が一気に7台抜き去ってしまう!!!!

残り2キロの区間でここまで目が回る程のデッドヒートが続くうううう!!!!!」


実況席の若林が椅子から転げ落ちそうになるほどの衝撃が、コース後方から押し寄せた。

これまで23位に沈んでいた森下遊矢のマツダ RX-8。

しかし、そのボンネットの下に収まっているのは、純正のレネシスではない。

かつてル・マン24時間レースを制した伝説のエンジン、「R26B型 4ローター」だ。


森下 遊矢「……待たせたな、相棒。

ここからはバイパスだ。お前の『喉』、全開にしていいぞ!!」


キィィィィィィィィィィンッ!!!!!


鼓膜ではなく、脳髄を直接揺さぶるような超高音の甲高いエキゾーストノート。

それは「天使の絶叫」とも「悪魔の金切り声」とも呼ばれる、世界で最も美しいロータリーサウンドだった。


天羽 シオン(R34)「な、なんだこの音は……!? F1か!?」

クリスタ(488)「No...!? フェラーリより高い音!?」


森下のRX-8は、音の壁を突き破るような加速で、前の車たちを次々とパスしていく。

天羽のGT-R、クリスタのフェラーリ、古賀のM5、古田のMR-S。

名だたるマシンたちが、その音を聞いた瞬間に置き去りにされた。


フェルリア(FD2)「嘘でしょ!? 私のVTECがかき消されるなんて……!!」

岡田 大成(GRヤリス)「速えぇぇぇ!! 音が速すぎて見えねぇ!!」


先ほど6台抜きを見せたフェルリアのシビックさえも、4ローターの圧倒的な伸びの前には止まって見えた。

岡田のヤリス、ゾフィアのコルベットも一瞬でバックミラーの彼方へ。


マヒロ「うっひゃー☆ ここで『伝説』を持ってきたかー☆

森下くん、ずっと爪を隠してたね。

あの音聞いた? 完全に『ル・マン』のストレートだよ。

残り2キロで7台抜き……。

最後尾から一番目立とうとするなんて、ロータリー乗りはこれだから面白いねーッ☆」


森下 遊矢「最高だ……!!

順位なんて関係ない。この音を響かせるだけで、俺は勝者になれる!!」


オレンジと緑のチャージカラーの幻影を纏い、RX-8は一気に中団グループのトップへと躍り出た。


ゾフィア「力ずくでいくわよおお!!

ウンコパワアアアアアアアア!!!!!!」


サーキットに似つかわしくない、あまりにもあんまりな絶叫が響き渡った。

17位を走っていたゾフィアのシボレー コルベット C7。

アメリカが誇る6.2リッターV8エンジンが、その掛け声に呼応するかのように、ドロドロとした重低音を爆発させた。

それは、繊細な電子制御など知ったことかと言わんばかりの、純粋なる「暴力」の解放だった。


若林「な……なんと言ったァァァッ!?

聞き間違いでなければ……非常に『芳ばしい』言葉を叫びながら、赤いコルベットが加速したアアアア!!!!

ものすごいトルクです!! タイヤがアスファルトをむしり取っていくゥ!!」


マヒロ「あははははっ☆ お腹痛いよーっ☆

ゾフィアちゃん、それ魔法の呪文かなにか!?

『汚い言葉』ほど力が湧くタイプなのかなー!?

とにかく速い! 臭い立つほどに速いよーっ☆」


ゾフィアのC7は、まるでロケットブースターでも点火したかのように、中団グループをごぼう抜きにした。

森下の4ローターも、海斗のランエボも、ユナのGR86も、ただの「障害物」として弾き飛ばしていく。


そして、その勢いは止まらない。

遥か前方を走っていた北斗のメルセデス AMG GT Rの背後に、赤い影が一瞬で到達した。


北斗「な、なんだこの揺れは……!?

地震か!? それとも……空襲か!?」


ゾフィア「どきなさいドイツの堅物ゥ!!

レディのお通りよオオオオオッ!!!!」


ドッギャアアアアアンッ!!!!!


北斗「ぬおォォォッ!?

こ、この俺が……パワー負けだとォォォッ!?」


ゾフィアは北斗のイン側に、コルベットのロングノーズを強引にねじ込んだ。

AMGの剛性を、排気量の暴力(と謎の掛け声)で粉砕。

緑の怪物が、赤いアメリカンマッスルの風圧でよろめく。


ゾフィア「アハハハハ!! 見たかこれが『ウンコパワー』よ!!

世界を制するのは、いつだって『デカいエンジン』なんだからァァッ!!」


品性のかけらもない勝利宣言と共に、赤いコルベットは7位の座を奪い取っていった。


イヨ「イヨ、あと少しの所まで追い詰めたのに...ッ!!

ストレートにセッティングも振るのを忘れてた、、、!」


イヨの白銀のGRスープラは、バイパスの直線で悲鳴を上げていた。

エンジン音は「ブォォォォォンッ!!」と高らかに響いているが、スピードメーターの数字がある一定以上から上がらない。

彼女はスタート前、「いっぱいくねくねして、いっぱい潰せるように」と、ダウンフォースを最大にし、ギア比を加速重視(ローギアード)に振っていたのだ。

それは、峠道では最強の武器だったが、この長いストレートでは「足枷」でしかなかった。


イヨ「むぅぅぅ……! ペダル、床まで踏んでるのに!

エンジンさんが『もう無理だよぉ』って言ってるの!

これじゃあ、前のユナお姉ちゃん(GR86)にも追いつけないし、後ろの怖い車たちに食べられちゃうよぉ……!!」


イヨは悔しそうにハンドルをバンバンと叩いた。

得意の「重力操作」で相手を重くすることはできても、自分の車のギア比を走行中に変えることはできない。

巨大なリアウイングが空気抵抗となり、スープラを後ろへと引き戻す。


マヒロ「あちゃー☆ イヨちゃん、やっちゃったねー☆

『壊す』ことに夢中で、『勝つ』ための計算を忘れちゃったかな?

今のイヨちゃんのスープラは、空気の壁と戦ってる状態だよー。

これじゃあ、後ろの『大排気量モンスター』たちにとっては、止まってるパイロンと同じだねーッ☆」


若林「なんと初歩的なミス!! しかし致命的だ!!

コーナーで稼いだマージンが、直線の伸び悩みですべて吐き出されていく!!

9位のイヨ、大ピンチです!!」


イヨ「うぅ……ちとせに怒られるぅ……。

でも、イヨは諦めないもん!

重力で……空気抵抗を、ちょっとだけ逸らすのっ!!」


イヨはピンクの萌え袖から謎の波動を出し、必死に抵抗を試みるが、直線のスピード差は残酷だった。

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