米沢編第61話 デットヒート
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若林「さらに高橋の前に並ぶ北斗ォォ!!!!
その高橋のNSXを抜いてく赤い戦闘機ィィ!!!!」
若林「先頭グループが4台に!!! 後方から2台が追いつく!!!
718ケイマンGT4フリス! 赤い戦闘機!トヨタ86GT!!!腹切カナタ!!
そしてチャンピオンイエロー! スイスポ伊藤翔太に序盤から後方から一気に上へ上り詰めた白いウラカンがついに先頭グループへ接近してきたあああああああ!!!!!」
南陽バイパスの長いストレートが、四色の光の帯と化した。
先頭を逃げるフリスのポルシェ 718 ケイマン GT4。
その背後に食らいつく、「赤い戦闘機」こと腹切カナタのREVIVE 86 TURBO。
さらにそのイン側を伺う、鮮烈なチャンピオンイエロー、伊藤翔太のスイフトスポーツ。
そして、その三台をまとめて飲み込まんとする白い猛獣、セシルのランボルギーニ・ウラカン。
セシル「……お待たせ。随分と楽しそうなことをしているじゃない?」
セシルのウラカンは、V10エンジンの圧倒的なパワーを解放し、バイパスの速度域で水を得た魚のように加速してきた。
コーナーの多いセクションでは大型ボディを持て余していたが、ここは彼女の独壇場だ。
伊藤 翔太「げっ……マジかよ。
ここでランボが来るのは計算外だ……!
この直線じゃ、俺のスイスポは分が悪すぎる……ッ!」
翔太はバックミラーに映る白いスーパーカーの威圧感に舌打ちをした。
軽量コンパクトなスイスポにとって、大排気量モンスターの接近は「死刑宣告」に近い。
腹切 カナタ「関係ねえ……!! 誰が来ようと、前だけを見る!!
フリス……お前の背中、もう捕まえるッ!!」
カナタは後方のウラカンのプレッシャーを無視し、全神経をフリスのポルシェ一点に集中させていた。
「赤い戦闘機」と化した86が、ポルシェのリアバンパーにノーズをねじ込む隙を虎視眈々と狙う。
フリス「……ふん。騒がしいハエが増えたか。
だが、王の走りは揺るがない。
数で来ようと、パワーで来ようと……私のラインは一本だ」
フリスは冷静にシフトノブを操作し、ポルシェのミッドシップレイアウトが生むトラクションで、後続の追撃を封じ込める。
マヒロ「うっわー……☆ めちゃくちゃな絵面だねー☆
ドイツの精密機械を、日本のチューニングカー(86)とコンパクトカー(スイフト)が追いかけて、
後ろからイタリアの猛牛が突っついてるんだよー?
これぞ『エーペックスカップ』!!
車のスペックじゃない、ドライバーの魂がぶつかり合う最終決戦だよーッ☆」
四台のマシンが、一つの塊となって、運命のファイナルラップへと雪崩れ込んでいく。
伊藤 翔太「4台のうち真ん中がストレスだ、、、、!」
コクピットの中で、伊藤翔太はうめき声を上げた。
彼の視界の前方には、カナタの赤い86が、排気ガスとタイヤカスを撒き散らしながら走っている。
そして、バックミラーには……。
伊藤 翔太「なんだよあの『壁』みたいな白は……!
圧が凄いんだよ! 威圧感だけでブレーキ踏みそうになる!」
鏡を埋め尽くすセシルのランボルギーニ・ウラカン。
V10エンジンの「ガオオオオッ!!」という捕食動物のような咆哮が、スイスポの薄いリアハッチ越しに直接背中を叩いてくる。
もしここで自分がシフトミスをすれば、数千万円のスーパーカーに追突される。
かといって、逃げようにも、スイスポの排気量では直線で引き離すことなど不可能だ。
伊藤 翔太「前はカナタ、後ろはランボ……。
俺だけ『大衆車』なんだぞ!?
なんでこんな化け物たちの間に挟まってなきゃいけないんだよ……ッ!」
マヒロ「あはは☆ 翔太くん、顔色がボディカラー(黄色)より青くなってるかもー☆
これぞ『庶民の英雄』の試練だねー!
前門の86、後門のランボルギーニ。
このプレッシャーの中で、冷静なライン取りができるのは、世界で翔太くんだけだよー☆」
セシル「……どきなさい、黄色いネズミ。
私のウラカンが、その小さな車を飲み込んでしまいそうよ?」
背後からの殺気は増すばかり。
だが、翔太は震える手でステアリングを強く握り直した。
伊藤 翔太「……上等だ。
ストレスで胃が痛かろうが、足が震えようが……。
ここで引いたら、『伊藤自動車』の看板が泣くんだよッ!!」
翔太は恐怖を「集中力」という燃料に変え、針の穴を通すような精密なラインで、前の二台に食らいついた。
伊藤 翔太「う、うわあああああっ......!?
なんだこれ......寒い......!? バックミラーが......真っ白だ......ッ!!」
伊藤翔太の悲鳴は、物理的な恐怖によるものだった。
背後から迫るセシルのランボルギーニ・ウラカン。
その純白のボディが、雨粒を凍らせるような冷徹なオーラを放ちながら、スイスポのサイドに並びかけた。
V10エンジンの咆哮は、もはやエンジンの音ではない。
巨大な「氷のドラゴン」が、小さな獲物を咀嚼しようと喉を鳴らす音だった。
セシル「......ごちそうさま。
頑張ったけれど、ここは『怪獣』たちの領域よ。
黄色い小鳥さんは、私の胃袋の中で暖まっていなさい」
バオオオオオオッ!!!!!
圧倒的な排気量差。
ウラカンは一瞬でスイスポを抜き去ると、その風圧だけで翔太の車体を揺さぶった。
翔太は抵抗することさえ許されず、ただ呆然とその白いテールランプを見送るしかなかった。
まるで、氷の息吹に包まれ、存在ごと食われてしまったかのように。
だが、その絶望の隣で、奇跡が起きていた。
腹切 カナタ「......翔太が食われたか。
だが、そのおかげで......お前の意識が一瞬、後ろに逸れたな? フリス!!」
フリス「......ッ!? 貴様......!!」
後方で起きた「捕食劇」。
そのノイズにフリスが気を取られたコンマ数秒の隙を、腹切カナタは見逃さなかった。
REVIVE 86 TURBOのタービンが過給の限界を超えて回転する。
「赤い戦闘機」が、ポルシェ 718 ケイマン GT4の横に、音もなく、しかし力強く並んだ。
若林「並んだアアアアア!!!!
スイスポが散ったその屍を越えて!! 赤い86がポルシェを捉えたアアア!!
サイド・バイ・サイド!! 完全に互角!!
これが日本の『86』だアアアアアッ!!!!」
マヒロ「鳥肌が止まらないよー......☆
翔太くんが『生贄』になってくれたおかげで、カナタくんが『王手』をかけたね!
右にポルシェ、左に86。
違う国、違う思想で作られた二台が、同じ速度で走ってる......。
もう言葉はいらないよ。先にゴールした方が『正義』だねーッ☆」
雨の米沢、最終コーナー手前。
赤と銀、二つの魂が火花を散らしながら、一つのラインを奪い合う。
セシル「……はぁ。見てられないわね。
男同士で意地張り合って、ラインを塞ぎ合ってるなんて……美しくないのよ」
セシルはコクピットの中で、呆れたようにため息をついた。
目の前では、フリスのポルシェと腹切カナタの86が、互いの進路を潰し合うような泥臭いドッグファイトを繰り広げている。
彼女のランボルギーニ・ウラカンは、その隙を見逃すほど甘くはなかった。
ステアリングを強く握りしめると、彼女の瞳に「冷たい炎」が灯る。
セシル「……別に、あんたたちの邪魔をするつもりはないのよ?
ただ、私のウラカンが『退屈だ』って騒ぐから……。
仕方なく、遊んであげるだけなんだからッ!!」
彼女はアクセルを床まで踏み抜いた。
V10エンジンの咆哮が、まるで氷の結晶が砕け散るような高音に変わる。
それは、計算され尽くした「タイミング」と「パワー」の暴力だった。
二台が接触ギリギリで競り合い、アウト側のラインがわずかに空いた瞬間。
白い猛牛は、そこへ強引に……しかし優雅に滑り込んだ。
セシル「あなたもそこのケイマンも食われなさい、、、
私の氷のドラゴンにィ、、、、!!」
ズバアアアアアンッ!!!!!
フリス「なっ……!? 外から被せてきただと!?」
腹切 カナタ「嘘だろ……!? この速度域で、そこを通すのかよッ!?」
若林「ウラカンがついにトップに躍り出てしまったアアアア!!!!!
やはりイタリアンマッスルアイスドラゴンは伊達じゃない!!!!
ポルシェと86を、まるで子供扱いするかのように抜き去りましたッ!!」
マヒロ「うっひょー☆ セシルちゃん、完全に『ツン』が爆発してるねー☆
『あんたたちのために勝負を終わらせてあげるんだから感謝しなさいよね!』って顔してるよー。
でもその走り……誰よりも熱い『デレ(勝利への愛)』が隠しきれてないねーッ☆
これがツンデレ・イタリアンの真骨頂だよーっ☆」
セシル「ふん……。口ほどにもないわね。
私の後ろで、せいぜい仲良く喧嘩してなさい!」
トップに立ったセシルは、バックミラー越しに二台を睨みつけると、
頬を少しだけ赤らめながら、勝利へのビクトリーロードを独走し始めた。
セシル「もう氷のドラゴンに食べられたから動けないでしょ、、、?
私のウラカンに、、、、」
セシルはバックミラーに映る、小さくなったポルシェと86を見て、艶然と微笑んだ。
彼女のランボルギーニ・ウラカンから放たれるのは、物理的な冷気ではない。
「圧倒的な格の違い」という名の精神的な絶対零度だ。
フリスもカナタも、そのプレッシャーに金縛りにあったかのように、一瞬アクセルを踏む足が強張った。
セシル「……ふん。だらしないわね。
私が本気を出したら、これっぽっちもついてこれないなんて。
……ま、いいわ。私の背中を見て、そこで凍えていなさい。
ゴールラインは、私だけのものなんだから」
彼女は独り言のように呟くが、その声色はどこか寂しげで、同時に相手の奮起を期待しているようでもあった。
「追いかけてきなさいよ、バカ」
そんな心の声が、冷たい氷のドラゴンの咆哮に混じって響く。
フリス「……くっ、身体が……重いだと!?
この私が……ただの小娘の気迫に圧されているというのか!?」
腹切 カナタ「ちくしょう……!! 寒い……!!
心臓まで凍りつきそうだ……。
これがスーパーカー……これがランボルギーニの『捕食』かよ……ッ!!」
二人のドライバーは、目の前の白い悪魔が作り出す「絶望の壁」に阻まれ、本来の走りを封じられていた。
マヒロ「うわぁ……☆ 会場全体が冷蔵庫だよー☆
セシルちゃんの『ドS』な走りで、熱かったバトルが一瞬で凍りついたねー。
『動けないでしょ?』って、最高の決め台詞じゃない?
もう誰も、この氷のドラゴンからは逃げられないのかなーっ☆」
若林「勝負ありか!? 勝負ありなのか!?
セシルのウラカン、他を寄せ付けない圧倒的なオーラ!!
このまま氷の独走劇で幕を閉じるのかァァァッ!!」
ゴールまで、残り数百メートル。
白い猛牛は、勝利を確信して優雅に疾走する。
若林「おおおっと!!!! そこに高橋が突っ込んで来たあああ!!!!!
さらにウラカンに赤い戦闘機! WRXが一気に!!!
そしてスイスポが接近してきたあああ!!!!」
セシル「な……ッ!? 嘘でしょ!?
私の『絶対零度』の中で、なんで動けるのよ……!?」
セシルが勝利を確信した瞬間、バックミラーが「銀色の殺意」で埋め尽くされた。
8位から驚異的なブーストアップで飛んできた高橋勇太のNSX。
彼はブレーキペダルを蹴り飛ばす勢いで踏み込み、スピン寸前のドリフトでトップ集団のど真ん中に殴り込みをかけたのだ。
高橋 勇太「ギャハハハハ!! 寒い!! 寒いんだよテメェら!!
凍ってるなら、俺が『炎上』撒いて燃やしてやるよォォォッ!!!!」
NSXの暴風が、凍りついた空気を物理的に破壊する。
その亀裂を縫うように、復活した「赤い戦闘機」腹切カナタと、チームの守護神・山吹花のWRX STIが突っ込んできた。
腹切 カナタ「ありがとな、高橋!! お前のおかげで目が覚めたぜ!!
セシル……お前の氷は綺麗だが、俺たちのエンジンはもっと熱いんだよ!!」
山吹 花「悪いわね、お嬢さん。
うちの子(カナタと翔太)をイジめるなら、この山吹花がお相手するわ!!
WRXのAWD、雪道だけが能じゃないのよッ!!」
さらに、一度は食われたはずの黄色いスイスポも、ボロボロになりながら食らいついてくる。
伊藤 翔太「ハァ……ハァ……! 諦めるかよ……!
俺は、カナタ先輩と走るためにここまで来たんだ……!!
ランボだろうがNSXだろうが、ドサクサに紛れて抜いてやるッ!!」
セシルのウラカンを、日米のスポーツカーたちが四方八方から包囲する。
「氷の女王」vs「暴走する野獣たち」。
ゴールラインまで残りわずか。誰が勝ってもおかしくない、極限のバトルロイヤルが始まった!!
マヒロ「うっひょー☆ もうこれ『レース』じゃないよー☆
『大乱闘スマッシュ・カー・ブラザーズ』だねー!
セシルちゃんの計算が、勇太くんの狂気とみんなの根性でグチャグチャだよー。
さあ、誰が一番最初にゴールテープを切るのかなーっ☆」
若林「さらに高橋の前に並ぶ北斗ォォ!!!!
その高橋のNSXを抜いてく赤い戦闘機ィィ!!!!」
信じがたい光景だった。
一度は勇太に置き去りにされたはずの北斗(メルセデス AMG GT R)が、最終コーナー手前のブレーキングで、まるで物理法則を無視したかのようにNSXの横に並んでいた。
「緑の地獄」で鍛え上げられた剛性と、北斗の執念が生んだ神速のツッコミ。
北斗「貴様の走り……見切った!!
勢いだけの特攻で、この俺を殺せると思ったかァァァッ!!」
高橋 勇太「あァァ!? なんで生きてやがるゾンビ野郎!!
しつけェんだよ!! 俺の前から消えろォォォッ!!」
銀のNSXと緑のAMGが、火花を散らしながらサイド・バイ・サイドで接触寸前の肉弾戦を展開する。
互いに譲らぬ殺意の応酬。だが、その二台が「個」の戦いに没頭したその一瞬こそが、待ち望んでいた「隙」だった。
腹切 カナタ「……見えたッ!!
お前らが喧嘩してる間に……俺は先に行かせてもらうぜッ!!」
カナタはステアリングを鋭く切り込み、勇太と北斗が空けたわずかなイン側のスペースへ、REVIVE 86 TURBOを滑り込ませた。
軽量な86ならではの、鋭利な刃物のようなライン取り。
重量級の二台がもつれ合う横を、赤い戦闘機が鮮やかにすり抜けていく。
マヒロ「うっひょー☆ 漁夫の利アタックだねー☆勇太くんと北斗さんが『怪獣大決戦』してる足元を、カナタくんが『主人公補正』で駆け抜けていくよー!これがレースの面白いところ!
速いだけじゃダメ、喧嘩が強いだけでもダメ。
『賢い』やつが一番前に行くんだねーッ☆」
セシル「……ッ!? 赤いのが……来た!?」
トップを走るセシルのバックミラーに、銀でも緑でもない、鮮烈な「赤」が急接近する。
もはや、誰が勝ってもおかしくない。
ゴールラインまで残り数百メートル、息を止めるようなデッドヒートが続く!
若林「ゴール直前!!! 一気に順位がひっくり返ってしまうううう!!!!!」
最終コーナー、通称「米沢の魔物」。
そこで起きたのは、必然の自滅と、奇跡の生還だった。
トップを独走しようとしたセシルのウラカンに、北斗のAMGと高橋勇太のNSXが、ブレーキング競争で同時に突っ込んだのだ。
三台のラインが交錯し、火花と共に外側へと膨らむ。
「どきなさい!」「テメェがどけ!」「押し出せェ!」
欲と意地が詰まった塊が、コースアウト寸前まで流れていく。
その、ぽっかりと空いたイン側。
「がら空きだぜ、お前ら……」
冷静に混乱を見極め、最短距離を駆け抜けた影があった。
王者の威厳を取り戻した、フリスのポルシェ 718 ケイマン GT4だ。
若林「先頭フリス! 2位腹切カナタ!! 3位伊藤翔太!!
4位北斗! 5位山吹花!! 6位に高橋勇太! 7位にセシル!!」
フリス「……勝つのは、最後まで『レース』をした者だ。
殺し合いがしたければ、他所でやるんだな」
ポルシェが先頭でホームストレートへ踊り出る。
それに続くのは、同じく冷静にラインを見つけた腹切カナタのREVIVE 86。
そして、なんと伊藤翔太のスイフトスポーツが、大排気量車たちが膨らんだ隙間を縫うようにして3位に浮上していた!
伊藤 翔太「うおおおおおッ!! 見えた!! 前が空いた!!
あんな化け物たちの喧嘩に付き合ってられるかよ!!
俺は……俺のラインで走るだけだァァァッ!!」
セシル「嘘……でしょ……!? 私が……7位……!?
あんな泥臭い車たちに……負けるの……!?」
外側へ弾き飛ばされたセシルは、信じられないという表情で、前を行く「小粒な車たち」の背中を見つめた。
パワーでも値段でもない。
最後にモノを言ったのは、一瞬の判断力と、勝利への純粋な渇望だった。
マヒロ「あはははは☆ 最高傑作だねーこれッ☆
『欲張りすぎた怪獣』は自滅して、『賢いウサギ』たちがトップを奪い返したよー!
特に翔太くん! ランボとAMGが喧嘩してる足元をすり抜けるなんて、忍者みたいだねー☆
さあ、残り数秒! チェッカーを受けるのは誰だーッ!!」




