米沢編第56話 プロフェッショナル
K393
オートマパドルシフトについて今話で解説!
86伝説エーペックス漫画版2026年10月公開開始決定!!!
1ページ目がついに完成!!!!!
セシル(ウラカン)「……なによ、後ろの黄色い子。
気配が消えたと思ったら……こんなに近くにいたの?」
4位を走るセシルが、バックミラーを見て眉をひそめる。
さっきまで感じていた熱苦しいプレッシャーが消え、代わりに背筋を撫でるような冷たい視線を感じたからだ。
伊藤 翔太「ランボルギーニ・ウラカン。V10の排熱でリアタイヤがタレ始めている。
……計算通りだ。次のセクターで堕とす」
伊藤は表情一つ変えず、淡々とシフトダウンを行った。
黄色い車体は、派手なアクションを起こすことなく、ただ「そこにいる」という事実だけで、スーパーカー集団に冷ややかな恐怖を与え始めた。
若林「怖い!! 逆に怖いぞ伊藤翔太!!
感情が見えない!! まるで精密機械のように、淡々と上位陣のミスを待っています!!
熱血漢が『冷徹なスナイパー』へと変貌したァァァッ!!」
若林「あとオートマパドルを開発したのってまさか、トヨタ、、、、?」
マヒロ「ブッブーッ☆ 残念でしたーっ!!
正解はね……『フェラーリ』なんだよーっ☆」
若林「えっ!? フェラーリですか!???
てっきり日本の技術かと……!!」
マヒロ「ううん、違うの☆
1989年のF1で、フェラーリが初めて実戦投入したんだよ!
ハンドルから手を離さずに変速できるこのシステムは、コンマ1秒を争うF1の世界で革命を起こしたの!」
「だからユナちゃんは今、F1由来のすごい武器を使って戦ってるってことなんだよーっ☆」
若林「なんと!! 夢野ユナのGR86には、F1の魂が宿っているというのかァァァッ!!
ハンドルを握ったままの電光石火のシフトダウン!!
これぞまさに、フェラーリが切り開いた『速さへの近道』だァァァッ!!」
コース上、夢野ユナのGR86が、その出自を証明するかのような鋭い挙動を見せる。
コーナー手前、山吹花のWRX STIがヒール・アンド・トウで回転を合わせる一瞬の間に、
ユナは左指だけで「カチッ、カチッ」と2速落とし、エンジンブレーキとフットブレーキを完璧に協調させていた。
夢野 ユナ「……ありがとうございます、フェラーリ様。
おかげで私、左足(クラッチ操作)の自由を、全部ブレーキングに使えます!」
ATだからこそできる「左足ブレーキ」。
ユナは右足でアクセル、左足でブレーキを操作するツーペダル走法を駆使し、
WRX STIよりもコンマ数秒遅く、かつ深くコーナーへ飛び込んでいく。
山吹 花「……ッ!? ブレーキング競争で仕掛けてくる!?
AWDの私に対して、雨の中で……度胸があるじゃない、ユナちゃん!」
山吹花がバックミラーで確認したユナのGR86は、ノーズダイブ(前のめり)しながらも、
電子制御の介入ギリギリの領域で、WRXのイン側を虎視眈々と狙っていた。
若林「マヒロさん!左足ブレーキって速いんでしょうかね?」
「確か、腹切カナタや山吹花も車はMTなのに左足ブレーキですよ?」
「そんでもってユナちゃんはオートマGR86で左足ブレーキですし、、、、」
マヒロ「鋭いねー若林さん! でもね、同じ『左足ブレーキ』でも、MTとATじゃ意味がちょっと違うんだよー☆」
若林「違う!? どちらも左足でブレーキを踏むことに変わりはないのでは!?」
マヒロ「全然違うの!
ユナちゃんのAT(2ペダル)の左足ブレーキは、『タイムラグをゼロにするためのブレーキ』!
アクセルから足を離してブレーキを踏むまでの時間をなくして、空走距離を削るための、純粋な速さの武器だねー☆」
若林「なるほど! ではMTのカナタや花はどうなんです!?」
マヒロ「MT(3ペダル)の左足ブレーキは、『姿勢を作るためのブレーキ』なの!
シフトダウンする時はクラッチ踏まなきゃいけないから右足でブレーキ(ヒール&トゥ)するでしょ?
でも、シフトチェンジがいらないコーナーの途中で、アクセルを踏んだまま左足でチョンってブレーキを踏むの。
そうすると、エンジンの回転を落とさずに、前のめり(荷重移動)を作って、車をキュッて曲げられるんだよー☆
これはめちゃくちゃ高等技術なんだよーっ!!」
若林「なにィィィ!? つまりユナは『速さ』のために、カナタや花は『挙動』のために左足を使っているとォォォッ!!
深すぎる!! レースの世界は足元でそんな複雑なダンスが行われているのかァァァッ!!」
コース上、その理論が実証される瞬間が訪れた。
コーナーへの進入。ユナのGR86(AT)は、右足でアクセルを離すと同時に、待機していた左足でガツンとブレーキを蹴り込む。
コンマ1秒の無駄もない、デジタルのような減速。
夢野 ユナ「反応速度なら……私の勝ちですッ!!」
ユナがインを刺そうとしたその時。
山吹花のWRX STI(MT)は、まだブレーキランプを点灯させていなかった。
いや、点灯させながらも、車体が不思議な動きを見せた。
山吹 花「……焦らないで、ユナちゃん。
ブレーキはね、止まるためだけにあるんじゃないのよ」
花はコーナーのクリッピングポイント付近で、アクセルを全開にしたまま、左足でブレーキペダルを優しく舐めた。
すると、アンダーステアが出そうだったWRXのノーズが、魔法のようにイン側へ吸い込まれる。
これがMT乗りの奥義、アクセル全開のまま行う「左足ブレーキによるヨー・コントロール」だ!
夢野 ユナ「なっ……!? ブレーキ踏んでるのに、加速しながら曲がっていく!?
これが……AWDとMTの『曲げるブレーキ』!?」
デジタルの鋭い減速と、アナログの滑らかな姿勢制御(花)。
二つの異なる左足ブレーキが、雨のコーナーで交錯し、火花を散らす!!
若林「マヒロさん、、、マヒロさんの思うレースのプロフェッショナルについて教えてください!!」
実況席が一瞬、静まり返った。
マヒロは手元のポテトチップスを置き、モニターに映る26台の死闘を見つめながら、ニッコリと、しかし瞳の奥だけは笑わずに答えた。
マヒロ「んー……難しい質問だねー☆
でもね、私が思うプロフェッショナルは……
『地獄をステージに変えられる人』のことかなーっ☆」
若林「地獄を……ステージに……!?」
マヒロ「そうだよ☆
雨も、恐怖も、事故も、全部『自分を輝かせるための演出』にしちゃうの。
例えばさっきのフリスさん。ぶつかって取り乱したでしょ?
あれは人間らしくて面白いけど、プロとしては『二流』になりかけちゃった。
でも、そこから一瞬で冷静さを取り戻してトップを奪い返した……あの切り替えこそが『一流』なんだよー☆」
マヒロは指を一本立てて続ける。
マヒロ「言い訳をしない。恐怖に喰われない。
どんなに泥だらけでも、タイヤがパンクしてても、
観客が『うわぁ、こいつヤバい……!』って震えちゃうような走りを見せて、
涼しい顔でチェッカーを受ける人。
自分の『狂気』を手綱でしっかりコントロールして、私たちに見せつけてくる『エゴイスト』……。
それが、私の思うプロフェッショナルだよーっ☆」
若林「狂気をコントロールするエゴイスト……!!
なるほど!! 確かに今のトップ集団は、まさに全員がその領域に足を踏み入れています!!」
マヒロ「そして今……一番『プロっぽい』走りをしてるのは、あの黄色いスイフトの子(伊藤翔太)かもねー☆」
コース上、5位の伊藤翔太が動いた。
マヒロの言葉通り、彼は感情を完全に殺し、プロフェッショナルな仕事人として、
格上のスーパーカー、ランボルギーニ・ウラカンの攻略を開始していた。
伊藤 翔太「……プロフェッショナル、か。
今の俺には都合のいい言葉だ」
伊藤は無線を聞いていたわけではないが、自身の役割を完全に理解していた。
目の前には4位のセシルが駆る白いランボルギーニ・ウラカン。
「氷のドラゴン」と呼ばれる冷気と、V10エンジンの暴力的なパワーを持つ怪物だ。
しかし、クールに覚醒した伊藤の目には、それはただの「攻略対象」としてしか映っていない。
伊藤 翔太「第3セクター、複合コーナー。
ウラカンの車重(1422kg)と俺のスイフト(970kg)。
雨でグリップが低下した路面なら、この450kgの重量差が『致命傷』になる」
セシル「……なによ、あの黄色いハエ。
ずっと私の死角に張り付いて……気味が悪いわね」
セシルが嫌悪感を抱き、少しアクセルをラフに開けた瞬間。
リアタイヤがわずかに空転し、ウラカンの姿勢がコンマ数秒乱れた。
伊藤は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
伊藤 翔太「……見つけた。そこが『患部』だ」
ズバッ!!!!!
派手なドリフトも、荒々しい雄叫びもない。
伊藤は外科医がメスを入れるように、スイフトのコンパクトなノーズをウラカンのイン側へ滑り込ませた。
最小限のステアリング操作。無駄のないライン取り。
スペック差を「物理法則(軽さ)」と「冷静な判断」だけでひっくり返す、完璧な仕事。
セシル「嘘でしょ!? V10の私が、あんな大衆車に……ッ!?
凍りなさいよッ!!」
セシルが慌ててブロックしようとするが、伊藤のスイフトは既にウラカンの前に躍り出ていた。
伊藤 翔太「……摘出完了。次へ行く」
若林「仕事だァァァッ!! 完全に『作業』のように抜いたァァッ!!
伊藤翔太、感情を排したクールな走りで、ついにランボルギーニを撃破!!
これで4位浮上!! まさにプロフェッショナルな仕事ぶりですッ!!」
マヒロ「でもね、、、、さっきプロが伊藤くんとか言ったけど、、、
本当はね、、、赤い戦闘機! 腹切カナタくんだよー☆」
若林「えっ!? カナタ!?
彼はさっき、フリスの精神攻撃に遅れを取ったばかりでは!?」
マヒロ「ううん、違うの。
普通ならあそこで心が折れて、ズルズル落ちていくの。
でも見て? カナタくんの86、もう姿勢が戻ってる。
というか、、、テクニックがもはや怪物だからねー☆」
コース上、2位を走る腹切カナタのREVIVE 86 TURBO。
さっきまでフリスの「冷徹な殺気」に圧され、リズムを崩していたはずだった。
だが今、86の動きは明らかに異質だった。
雨で濡れた路面の上を、タイヤがグリップしているのかスライドしているのか分からない、奇妙な挙動で疾走している。
フリス「……なっ!? バカな……。
貴様はさっき、我の『虚無』に飲まれたはずだ。
なぜ……なぜ、もう背後にいる!?
その86のタイヤは、雨雲の上でも走れるとでもいうのかッ!?」
王者のフリスが、初めてバックミラーを二度見した。
カナタは「滑る」ことを恐れていなかった。
むしろ、滑る瞬間のコンマ数秒の間に、タイヤの向きを微調整し、推進力に変えている。
それは、計算で走る伊藤翔太やフリスとは次元の違う、
野生動物が崖を駆け下りるような、本能と反射神経の極致。
腹切 カナタ「……聞こえるぜ、86。
路面が『こっちだ』って言ってる。
雨の粒一つ一つが、俺にラインを教えてくれてる……」
カナタの瞳孔は開き、極限集中状態のさらに奥深く、「怪物の領域」へと踏み込んでいた。
ステアリングを握る手は、もはや操作しているのではない。
車体の一部となり、路面のμ(摩擦係数)を直接触って確かめているかのような繊細さと、獰猛さ。
若林「速いッ!! 明らかにおかしい速度でコーナーを抜けてくる!!
グリップ走行でもドリフトでもない!!
『滑りながら進む』という矛盾を、カナタの超絶技巧が成立させているゥゥッ!!
これが……これがマヒロの言う『怪物』の正体かァァァッ!!」
マヒロ「そうだよー☆
フリスさんが『完璧な機械』なら、カナタくんは『生きた竜』なの。理論値なんて関係ない。
彼は今、物理法則を『説得』して走ってるんだよーっ☆」
赤い戦闘機が、銀色のポルシェの背後にピタリと張り付く。
そのプレッシャーは、先ほどまでの比ではなかった。
若林「AMGGTRが田中のFDに並ぶ!!!
強烈オーバーテイクの完成ですっ!!!!!」
それは、コーナーの立ち上がりで起きた「質量の暴力」だった。
田中英二が駆るマツダ RX-7 FD3Sは、軽量なボディとロータリーエンジンの鋭いレスポンスを活かし、雨のコーナーを華麗にクリアしていた。
「コーナーの魔術師」と呼ばれるFDの旋回性能は、本来なら重量級のGT Rを突き放すはずだった。
だが、北斗のメルセデス AMG GT Rは、物理法則をねじ伏せる「緑の怪物」だった。
北斗「……軽やかな舞だが、軽いゆえに『重み』がない。
我が拳の前では、貴様の回転数など無力」
ドゴォォォォォォンッ!!!!!
4.0L V8ツインターボエンジンが、地響きのような重低音を奏でる。
北斗はトラクションコントロールのダイヤルを雨用セッティングに合わせ、700Nmを超える強大なトルクを、極太のリアタイヤで路面に叩きつけた。
FDが甲高いロータリーサウンドで加速しようとしたその横を、AMG GT Rが倍以上の排気量で空気を押しのけながら強襲する。
田中 英二「な、なんだこの加速はッ!?
FDの立ち上がりも悪くないはずだぞ!?
なのに……まるで止まっているかのように抜かれるだとォッ!?」
マヒロ「わあー☆ 今のすごかったねー☆
FDさんが軽やかにステップ踏んでたのに、
後ろから緑色のワニさんが『ガブッ!』って一口で食べちゃったみたいだよー☆
消化不良起こしそうなくらい豪快だねーっ☆」
若林「マヒロちゃんの例え通りだァァッ!!
まさに捕食!! 緑の猛獣がRX-7を噛み砕きました!!
美しいロータリーの旋律が、V8の爆音にかき消されていくゥゥッ!!
北斗、慈悲なき一撃で9位へ浮上ですッ!!」
北斗「……次はGT-Rか。
同じRの名を持つ者として、どちらが真の怪物か教えてやろう」
緑の怪物は、FDをバックミラーの点へと変え、次なる獲物・クレアのR35 GT-Rへと照準を合わせた。
若林「行けてしまったあああああ!!!!!!!
RCFがバックストレートで一気に風を切り裂いていくううう!!!」
「行けるか」ではない。「斬れるか」だ。
久我ヒカルにとって、このオーバーテイクは単なる追い抜きではなく、武士が刀を振るう儀式そのものだった。
レクサス RCFの心臓部、5.0L V8自然吸気エンジン「2UR-GSE」が、高回転域で澄み渡ったソプラノを奏でる。
ターボのような爆発的なトルクはない。しかし、どこまでも突き抜けるような伸びやかな加速は、まさに研ぎ澄まされた日本刀の切っ先だ。
久我 ヒカル「……無念だろう、黒川。
だが、傷ついたまま戦場に留まるのは、武士の恥と心得よ」
久我はステアリングを真っ直ぐに保持し、アクセルを床まで踏み抜く。
対する黒川海斗のランエボX Final Editionは、先ほどのスピンでタイヤが終わり、コーナー立ち上がりでのトラクションが死んでいた。
必死にブーストを掛けて逃げようとする黒い背中が、RCFのフロントガラス越しに急速に大きくなる。
黒川 海斗「来るな……ッ!! 来るなよォォォッ!!
なんでだ……なんでどいつもこいつも、俺をカモにしやがるんだァァッ!!
俺は……俺は『最速』なんだぞォォォッ!!」
黒川の絶叫は、V8サウンドにかき消された。
スリップストリームから抜け出したRCFが、エボXの横に並ぶ。
一瞬の交錯。
久我はサイドウィンドウ越しに、焦燥と恐怖に顔を歪める黒川を一瞥した。
そこに嘲笑はない。あるのは、敗れゆく者への静かなる哀れみだけだった。
久我 ヒカル「介錯する。……御免ッ!!」
フォンッ!!!!!
乾いた変速音と共に、レクサス RCFがエボXを断ち切った。
風を切り裂く白い閃光。
圧倒的な排気量の差と、精神的な余裕の差。
黒川海斗は、また一つ順位を下げ、バックミラーの彼方へと追いやられた。
マヒロ「うわぁ……☆ 久我くん、容赦ないねー☆
『武士の情け』って言いながら、バッサリ斬っちゃったよー☆
黒川くん、もうメンタルがボロボロだよ……。
誰かお薬あげないと、壊れちゃうかもねーっ☆」
若林「止まらない!! 黒川海斗の悪夢が止まりません!!
スピンから復帰できず、ズルズルと順位を下げる!!
対する久我ヒカル、見事な太刀筋で11位浮上!!
レクサスの意地を、米沢の地のストレートに刻み込みましたァァッ!!」
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