米沢編第52話 WRX再始動!
K389
マヒロ「あはは☆ やっぱり凍らせすぎちゃったかなーっ☆
ま、でもずっとこんなんじゃ実況出来ないだろうし、、、、ドライヤー☆」
マヒロがどこからともなく取り出したのは、これまたパステルグリーンの
特注ハイパワードライヤーだった!!
ボォォォォォォォォォッ!!!!!
マヒロ「えいっ☆ 温風最大だよーっ☆
溶けろ溶けろーっ、若林さんの氷像ーっ☆!!」
絶対零度の氷の宮殿に、場違いなほどの熱風が吹き荒れる。
パステルグリーンの紅茶氷がパキパキと音を立てて溶け出し、実況席は一転して、ミントの香りが漂うサウナのような湿気に包まれた。
若林「(……はっ……!!)……ぷはああぁぁぁぁぁぁッ!!!!!
い、息が……息ができましたァァァッ!!
し、死ぬかと思った……本当に三途の川で、ミント色のアイスを食べているご先祖様が見えましたよォォッ!!」
マヒロ「あはは☆ おかえりなさい若林さん☆
さあ、元気になったところで、3位争いの実況に戻ろうかーっ☆!!」
若林「(フラフラになりながら)……マヒロさん……あなたという人は……。
ええ、やりますよ!! 氷漬けにされても、ドライヤーで炙られても、
私は実況のプロだァァァァッ!!!!」
若林「さあ! 映像は……ついに捉えました、トップ争いの最前線ッ!!」
「……ッ!!!???」
「うおおああああああああああ!!!!!!! 腹切カナタがアアアア!!!!!!
赤い戦闘機があああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
モニターに映し出されたのは、あまりにも異常な光景だった。
先行するフリスのポルシェ 718 ケイマン GT4。その完璧なライン取りに対し、
カナタの86は、イン側のさらに内側――本来なら脱輪して終わるはずの「排水溝」に
左前輪を叩き込んだのだッ!!
ゴワシャ!! ガリッ!! ギャアアアアアアアア!!!!!!!
ホイールがコンクリートを削り、火花が雨夜を真っ赤に染め上げる!!
しかし、その強引な遠心力の相殺により、86は物理法則を無視した旋回を開始。
無表情のままステアリングを保持するカナタの瞳に、王者の背中が映る。
若林「なんとケイマンGT4が魔法のように一瞬で抜かれてしまううううう!!!!!!
信じられないッ! 溝の縁をレールにした『溝落とし』だァァァッ!!
腹切カナタ、ついに絶対王者フリスを抜き去り、1位に浮上しましたァァッ!!」
フリス「……そんな......ッ!? この低速コーナー、この豪雨で……その非力なマシンが、私のポルシェの内側を通ったというのか......?」
腹切 カナタ「.......」
サイドミラーに映るポルシェのヘッドライト。
カナタは溝落としという荒技を決めた直後であっても、眉一つ動かさず、息を乱すことすらなかった。
歓喜も、安堵もない。あるのはただ、目の前の濡れたアスファルトと、
背後から迫る「完璧」という名の恐怖に対する、氷のような集中力だけ。
REVIVE 86 TURBOの車内には、過給機の吸気音と、雨粒が叩きつける音だけが響く。
彼は知っている。王者は、傷つけば傷つくほど、その牙を深く突き立ててくることを。
フリス「......」
対するフリスもまた、無線に一言も発することはなかった。
怒り狂うでもなく、焦るでもない。
ただ、その碧眼は、前を行く86のリアバンパーの一点を見据え、
まるで解剖するかのようにカナタの走りを分析し続けていた。
(……溝落とし。物理的ダメージはゼロではないはずだ。
サスペンションの歪み、タイヤの偏摩耗……必ずボロが出る。
その瞬間、貴様の希望を絶望に変えてやる……)
言葉のない空間で、互いの殺気だけが火花のように散る若林の実況さえも遠くに聞こえるほどの極限状態。
トップを走る赤い86と、それを追う銀のポルシェ。二台のマシンは一寸の狂いもなくラインを重ね合わせ、まるで「連結」されているかのような超接近戦で、闇深い峠の奥へと消えていく。
天羽 シオン「神様……。どうか、私の翼(GT-R)に力を……。
迷えるロータリーの魂を、私が導いてあげなくちゃ……」
無線から聞こえるのは、聖歌隊のソロパートのように澄んだ、天使のような歌声(声)。
だが、その可憐な少女が踏み込んだのは、ブレーキペダルを床までぶち抜くような剛脚だったッ!!
キキキキキキキィィィィィッ!!!!!!
森下 遊矢「な、なんだアイツはァッ!?
バックミラーに……白いR34!? まるで雪崩みてぇな勢いで突っ込んできやがった!!」
前を行く森下遊矢のRX-8(4ローター換装)がコーナーへ進入しようとしたその瞬間、
シオンの白いスカイラインGT-R R34 V-Spec IIが、信じられないほど奥のブレーキングポイントからノーズをねじ込んできた!
RB26DETTエンジンの重さを、アテーサE-TSの緻密な制御と、彼女の「祈り」のような繊細かつ大胆なペダルワークで完全にコントロールしているッ!!
天羽 シオン「そこです……。森下さん、懺悔のお時間です……!」
純白のボディが、雨のコーナーで白い光の軌跡を描く。
天使の微笑みを浮かべたまま、シオンは凶暴なG(重力)の中でRX-8の懐を鋭くえぐり取った!!
若林「後方集団でも激しいバトルッ!!
『サーキットの天使』天羽シオン、白いR34を駆り、森下の4ローターマシンにフルブレーキング勝負を挑んだァァッ!!」
森下 遊矢「くそっ……! 700馬力の4ローターが、立ち上がりで置いていかれるだと……!?
ここまで下がるとは、、、計算外だぜ、、、っ!!!!」
甲高いロータリーサウンドを轟かせるも、雨の路面で空転するRX-8の横を、
純白のR34が「アテーサE-TS」の完璧なトラクションでぶち抜いていく!!
若林「抜いた、抜いた、R34が完全に抜けたああああ!!!!!」
「伝説のル・マン優勝エンジン!! RX-8の787Bエンジンスワップでも太刀打ち出来なかったあああ!!!!!」
森下の悔しがる顔をサイドミラーの彼方へ置き去りにし、天羽シオンの視線はすでに次の獲物を捉えていた。
前を行くのは、イタリアの至宝、クリスタ・ニールセンが駆る真紅のフェラーリ 488 GTS!!
若林「天羽シオン、止まらない!! 獲物を見つけた猛禽類のように加速!!
さらにクリスタの赤いフェラーリにR34が食いかかるうううううう!!!!!!」
天羽 シオン「まあ……なんて派手な赤色(欲望)でしょう……。
あのお馬さんにも、安らかな眠り(オーバーテイク)を与えてあげなくては……」
白いGT-Rのフロントバンパーが、フェラーリのディフューザーに吸い付くように接近する!
天使の微笑みを浮かべたまま、シオンはフェラーリのV8ツインターボに喧嘩を売ったッ!!
若林「さあ、中団グループも休む暇待ったナシ!
13位を走るゾフィアのコルベットC7に、柳津カリンのフェラーリ Romaが張り付いてきた、、、、!!!
アメリカン・マッスルのV8と、イタリアン・エレガンスのV8!
性格の異なる二つの8気筒が、米沢の峠で火花を散らしていますッ!!」
カリン「……お兄ちゃんのM4の敵討ちもしなきゃいけないけど……
まずは邪魔なアメ車を退かさないとね。優雅に、でも確実に……!」
フェラーリ Romaの流麗なボディが、雨の中でも乱れないスタビリティを見せつけ、
コルベットのテールランプに至近距離まで迫る!
サイドミラー一杯に広がるフェラーリのエンブレムに、ゾフィアが声を荒らげる!
ゾフィア「何ッ!? また下から強そうなのが、、、、ッ!?
北斗のAMGといい、天羽のR34といい、今回強いやつ多いわよね、、、、ッ!!???
私のコルベットが、なんでこんなに煽られなきゃいけないのよォッ!!」
若林「ゾフィア、悲鳴を上げながらもアクセルは緩めない!!
大排気量OHVエンジンのトルクで、フェラーリの追撃を振り切れるかァァッ!?」
若林「中団争いがヒートアップ!! 一度は離されたはずのレクサスが、再び牙を剥いたァァッ!!
久我ヒカルのRCFが、北斗のAMGに再び迫り来ようとしているぞおおお!!!!!」
久我 ヒカル「北斗神拳だか何だか知らねえが……レクサスのV8(2UR-GSE)をナメてもらっちゃ困るなアアアアアアアっ!!」
RCFのスピンドルグリルが、AMG GT Rの巨大なリアウイングに食らいつく!
重量級のRCFだが、久我の巧みな荷重移動により、AMGの旋回速度に必死に食らいついているのだ。
若林「しかし、北斗のAMG GTRも譲らない!!!
バックミラーに映るレクサスの威圧感を、緑の怪物は鼻で笑うかのように加速で突き放すッ!!」
北斗「……無駄だ。お前の車には、既に死兆星が輝いている」
ドォォォォォォンッ!!!!!
AMG GT Rの4.0L V8ツインターボが、野太い咆哮と共にトラクションを路面に叩きつける!
雨の峠で繰り広げられる、NA大排気量 vs ターボ大パワーの超重量級バトル!
二台のV8サウンドが重なり合い、米沢の空気をビリビリと震わせるッ!!
山吹花「……聞こえる。この鼓動......
タイヤの声、路面の歌、雨粒のリズム……。
私一人だけど、一人じゃない。
まるで私を前へと押し出す......ッ!!」
「でも、、、箱みたいに全く重くならない......
優しく軽やかなユメがあるかのようみたい。
このクルマと、みんなの想いがあるから……」
彼女がアクセルを深く踏み込んだその瞬間、奇跡が起きた。
WRX STI VABのボディから、バチバチィッ!と迸る鮮烈な「青い電撃」。
さらに、その周囲を舞うように包み込む、幻想的な「桜風のオーラ」。
マヒロ「わぁ……☆ 綺麗……っ!!
花ちゃん、クルマと完全に一つになってるよーっ☆ まるで、嵐の中に咲く一輪の強い桜みたい……!!」
若林「なんだこの光景はァァァッ!!
スバル伝統の青き雷と、山吹花自身の優しさと強さを具現化した桜色の風!!
その二つを纏い、WRXが物理法則を超えた加速を見せつけるゥゥッ!!
視界にはどの車もいない……だが、彼女は『見えない敵』、あるいは『自分自身』と戦い、それに打ち勝とうとしているのかァァッ!!」
山吹 花「……行こう、相棒。私たちが、この峠の『支柱』になるのよッ!!」
若林「さぁ! ここで...まさか山吹花もできてしまったのかァァ!!???」
ヘアピンカーブへの進入。クレアのR35は、後方のWRXを警戒してイン側をガッチリと閉める。
普通のドライバーなら、そこでブレーキを踏んで終わるはずだった。
だが、山吹花は違った。彼女は減速するどころか、さらに外側――ガードレールギリギリのアウトサイドへ向かってステアリングを切ったのだッ!!
クレア「なっ……!? 自殺志願か!? そこは苔むして滑るのじゃぞ!!」
山吹 花「……道はある。信じれば、そこに道は生まれるッ!!」
ドガガガッ!!!!!
WRX STIの右側のタイヤが、コースの最外殻にある「排水溝」にガリガリと噛み込む!!
山吹花は、その溝を「レール」として利用し、本来なら遠心力で外へ飛び出すはずのスピードを、
全て推進力へと変換したッ!!
若林「信じられないィィィ!! 山吹花がクレアのR35に対して、
アウトから溝に落として抜き去る!!!!
カナタのイン・ミゾ落としとは対極の、超高速『アウト・ミゾ落とし』だァァァッ!!」
山吹花から放たれる青い電撃と桜色のオーラが、外側からR35を飲み込む。
物理法則を無視したコーナリングスピードで、スバルブルーの車体が
デビルカラーのGT-Rを鮮やかに置き去りにした!!
クレア「ば、バカな……ッ!? 外から……我の重力(R35)が、置いていかれるじゃと……ッ!?」




