米沢編第45話 山吹花の横スマ
K382
黒川が蛇行しながら、伊藤のスイスポをガードレールへと追い詰め、
今まさにトドメの衝撃を加えようとしたその瞬間――。
ガアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!
左から、怒りに燃えた WRX STI・山吹花が、
スバル自慢の剛性ボディに全体重を乗せて黒川のエボXへ激突!!
花「ふざけんな黒川アアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
横から完全に押し潰すッ!!!
帝王のタイヤ余力すら意味をなさない、物理法則を無視した「怒り」の突進!!
ドゴオオオオオオオオオオオンッ!!!!
エボX、制御不能!!
鋼鉄の爪がアスファルトを虚しく掻きむしり、
ギギィィィィ、、、、ッッ!!!!と
悲鳴を上げながら、漆黒の機体が宙に浮く!!
ギギギ、、、、、、
ドゴオオオオオオオオオオオオン!!!!!
花の一撃は止まらない! そのまま黒川のエボごと、茂庭ダムの底、漆黒の深淵へと叩き落としたァァァァァッッ!!!!!
若林「落ちたァァァァァッッ!!!!!
黒カラスの帝王・黒川海斗、山吹花の捨て身の横スマッシュにより、エボXと共に茂庭の底へと消えていきましたァァァッ!!!!!
これは……これはもはや伝説の幕引きだァァァッ!!」
若林「出たアアアア!!!
山吹花の横スマアアアアアアア!!!!
黒川海斗ごと黒カラスのエボを一撃で茂庭ダムに戦線離脱させたアア!!!!! 」
「なんという結末! なんという幕切れッ!
茂庭の女神の鉄槌により、その漆黒の翼を折られて深い水底へと沈んでいきましたァァァッ!!」
花「ハァ……ハァ……。ざまぁないわね、黒川……ッ!これが、アンタが踏みにじってきた人たちの怒りよッ!!」
伊藤「花……ッ!!!!
……凄すぎる。黒川のあの巨体を、一瞬で……」
カナタ「……やったな花!!!!
これでようやく、純粋な『走り』の場に戻れるな。伊藤! 花! 準備はいいか?
ここからは、一秒の迷いも許されないトップバトルの領域だッ!!」
若林「さあ、邪魔者は消えた!!
5位に繰り上がった伊藤翔太、そして傷だらけの処刑人・山吹花!
この二人が、3位カナタ、2位イヨ、1位フリスの背中を、死に物狂いで追いかけ始めるゥゥゥッ!!」
若林「ところでマヒロさん、、、花さんの仰った『後でシバく』とは、、、、、?
地元の言葉にしては、随分と……こう、物騒な響きに聞こえましたが……」
マヒロ「(冷や汗を流しながら)……ノーコメントで!!
……あ、あはは☆ 茂庭の夜道で怒らせた花ちゃんに、何をされるかなんて口にするのも怖いわぁーっ☆!!」
若林「ノーコメント!! まさに『触れてはいけない領域』というわけですかッ!!
視聴者の皆さんも、この『シバく』の真の意味に戦慄しているようです!!」
花「(ダムの底を睨みつけながら)……伊藤くん、心配しなくていいよ。
アイツは今ごろ水冷されてるだろうけど……、
コースに復帰した瞬間に、私が本当の『絶望』を教えてあげるから……」
伊藤「(……花、マジで怖い。
黒川をダムに落としただけじゃ、まだ足りないってことかよ……!)」
@福島県民: 「花ちゃんの『シバく』は冗談じゃない……。ガチでひっぱたかれる5秒前だぞw
ただでさえ青い電撃操るってのに、、、、、、」
@スバル党: 「処刑人モードの花ちゃん最高。黒川、水底から上がってきても居場所ねーぞ!」
@茶ぁしばく勢: 「関西だと『お茶飲みに行く』だけど、今の文脈は100%『物理』で草」
@花の隣のメカニック: 「あーあ……。花ちゃん、キレると長いんだよね……。黒川、南無……」
@伊藤の震え: 「花さんの後ろ姿が、ポルシェ(1位)より大きく見えるんだが……」
@マヒロ推し: 「マヒロちゃんがノーコメントってことは……放送禁止レベルってことだねっ☆!!」
伊藤「花、、、、、、」
歪んだフェンダーから白煙を上げ、今にも止まりそうなWRX。
だが、そのステアリングを握る山吹花の瞳には、一点の曇りもない。
彼女はサイドミラー越しに、後ろを走る黄色いスイスポを見つめ、静かに、だが力強く告げた。
花「伊藤くん、、、私が守るからね、、、、ッ!!
あんな奴に、アンタの夢を紐になんてさせない。
この先、何が起きたって……私がアンタの『盾』になるッ!!」
伊藤「、、、、、、ッ!!
(……花、アンタの車だってボロボロじゃねえか……なのに、自分のことより俺のことを……ッ!!)」
若林「絆!! なんという熱い絆だァァァッ!!
自らも満身創痍でありながら、後輩の伊藤を守ると誓った山吹花!!
茂庭の夜空に、青と黄色の閃光が重なり合い、
トップ3を猛然と追い上げるエネルギーへと変わっていくゥゥッ!!」
カナタ「……いい顔になったな、二人とも。
だが、守られているだけでは俺たちの領域(トップ3)には届かない。
伊藤! 山吹の想いに応えたいなら、お前自身の力で俺を抜いてみせろッ!!」
カナタ「……いい顔になったな、二人とも。
だが、守られているだけでは俺たちの領域には届かない。
伊藤! 花の想いに応えたいなら、お前自身の力で俺を抜いてみせろッ!!」
伊藤「……ああ、分かってる。
花、アンタが護ってくれたこのチャンス、絶対に無駄にはしない。
カナタさん……アンタを超えて、俺はさらにその先へ行くッ!!」
花「ふふっ……言ってくれるじゃない。
いいよ、伊藤くん。思いっきり行きなさい!
私が後ろを完璧に抑えてあげるからッ!!」
若林「なんとォォォッ!!
伊藤翔太と腹切カナタ、二人同時に『花』と名前を呼んだァァッ!!
名字で呼び合う儀礼的な関係はもはやここには存在しない!
あるのは、互いの走りを認め合った者同士の、魂の共鳴だァァッ!!」
マヒロ「きゃあぁぁっ☆
名前呼びとか、もう最高にエモいよぉーっ☆!
花ちゃんも、二人に名前で呼ばれてさらにエンジン回っちゃってるみたいだねーっ☆!!」
若林「黒川海斗の脱落により、茂庭の夜は再び静寂……いや、
かつてないほどの『走りの熱気』に包まれていますッ!!
5位へと浮上した伊藤翔太、そして彼を護りきった花!!
二人の絆が、今、3位を走る腹切カナタの背中を捉えたァァァッ!!」
カナタ「……ようやく静かになったな。
花、無茶しやがって。だがお前らしいよ。
伊藤! 花が繋いでくれたそのチャンス、無駄にするなよッ!!」
伊藤「ああ……分かってる。
花、カナタさん……俺は、俺たちの走りで、この頂(トップ3)を奪いに行くッ!!」
花「ふふっ……言ってくれるじゃない。
いいよ、伊藤くん。思いっきり行きなさい!
私が後ろを完璧に抑えてあげるからッ!!」
若林「さあ、邪魔者は消えた!!
伊藤翔太、花のスリップストリームから解き放たれ、ついにカナタの86へとサイド・バイ・サイドで並びかけたァァァッ!!」
若林「さあ、後方の混沌を切り裂き、トップ争いはさらなる異次元の領域へ!!
独走を続けるフリスのポルシェ 718 ケイマン GT4!!
バックミラーに映るダムへの転落劇すら、彼にとってはただの景色に過ぎないのかァァッ!!」
フリス「……何か後ろで起きてたけど、、、、
このまま1位でいさせてもらうわ......ッ。
悪いけど、我が見ているのはゴールラインだけ......。
君たちの熱いドラマに付き合って、スピードを落とすつもりはないよ……」
フリスは冷静に、精密機械のような正確さでポルシェを操る。
タイヤの熱、路面のμ、風の抵抗……すべてを計算し尽くした彼の走りに、一ミリの無駄も、一瞬の油断も存在しない。
若林「完璧だァァッ!! 1位フリス、後方の乱戦をよそに、さらにそのリードを広げにかかる!!
2位のイヨですら、その背中を捉えるのが精一杯かァァッ!!」
マヒロ「きゃあぁぁっ☆ フリスさん、冷た~いっ☆!でもそこがまたシビれるよねーっ☆!!
伊藤くんたちがどんなに頑張っても、あの壁は高すぎるよぉーっ☆!!」
伊藤「見てろよ花、、、、ッ!!!
今回ばかりは……今回ばかりは、もう誰にも、俺の上を行かせねェ!!!!」
スイスポのタービンが限界を超えて唸りを上げる!
花の想いを受け取った伊藤の咆哮は、先行するポルシェのコクピットまで届いたッ!!
フリス「......我にその声聞こえたぞ、、、、、、。
だが、、、我の前はいかせぬ、、、、、、ッ!!
この甘美たる最強、、、閻魔天からは逃れられない、、、、、、ッ!!!」
若林「豹変!! フリス選手、突如として禍々しいオーラを放ち始めたァァァッ!!
冷静なポルシェ使いだった彼が自らを『閻魔天』と呼び、後方の全車両を地獄へと誘うような、鬼気迫るブーストを開始!!
茂庭の山頂付近が、今、神と悪魔の決戦場と化したァァッ!!」
花「伊藤くん、負けないでッ!!
あの王者の皮を剥いで、アンタが真の主役だって証明してきなさいッ!!!!」
伊藤「俺が……俺のスイスポが、その最強をぶち壊してやるッ!!」
若林「ところで、、、???(???)とはなんなんですかね......ッ
まさか、、、実況資料にもない、フリス選手の隠された異名だというのですか!?」
マヒロ「、、、、、、」
若林「マヒロさん……? どうしました、顔色が……ッ!!」
マヒロ「(ヒッ……、ハァ……ハァッ……!!)
……だめ……その名前を……呼んじゃ……だめぇッ……!!」
突如として、放送席のマヒロが真っ青になり、胸を押さえて激しく過呼吸に陥る!
華やかなトップアイドルの面影は消え、ただ怯える少女のように震え出したッ!!
若林「マヒロさん!! しっかりしてください!!
救急班! 放送席に至急応援を!!
……一体、この言葉に何が隠されているというのか!?
かつて、ある非公式のレースで、対戦相手全員を再起不能の地獄へ送った『白い悪魔』が存在したという都市伝説……まさか、それがフリスなのかァァッ!!」
伊藤「(……なんだ!? 放送席の悲鳴が無線に入ったぞ……!?」
若林「(深く息を吸い込み)……マヒロさんが救急車に運ばれてしまいましたが、、、
深呼吸して、、、実況を再開していきます!!!!
上位が闇に包まれる中、後方では眩いばかりの光が火花を散らしているッ!!
フェラーリRoma対AMGGTR!! 未来ある2台の対決になります!!!!」
21位、柳津カリンの駆る流麗なフェラーリ・ローマが、V8ツインターボの咆哮を上げながら、20位の北斗を猛烈に追い上げる!
カリン「……みんなが何を怖がっているのか知らないけれど、私は私の走りを貫くだけだよ。
行くよ...Roma、、、ッ!!!!」
若林「20位にAMGの北斗! 21位が1.3秒差からRomaが接近中です!!!!
緑の猛獣・AMG GTR vs 跳ね馬の貴婦人・Roma!!
1000万、2000万を超えるスーパーカー同士の、
意地とプライドをかけた超高速バトルが今、始まったァァァッ!!」
北斗「……フッ、未来か。悪くない。
だが、この緑の猛獣(AMG)を飼い慣らすのは、そう簡単じゃないぞ!!」
若林「実況再開です!! 闇を切り裂くような二台の咆哮が茂庭に響くッ!!
北斗神拳伝承者の異名を持つ男・北斗のAMG GTRに対し、
柳津カリンのフェラーリ・ローマがその背後、ゼロ距離まで肉薄しています!!」
カリン「……騒がしいのは嫌い。
私はただ、この車のポテンシャルをミリ単位で引き出すだけ……。
北斗さん、貴方の荒々しいライン……今の私には、隙だらけに見えるわ」
カリンは表情一つ変えず、繊細なステアリングワークでローマを操る。
北斗のAMGが放つ威圧的なプレッシャーをクールにいなし、
タイヤ一平分さえも無駄にしない、計算され尽くしたラインでインサイドを抉り取るッ!!
北斗「……ほう、見切ってきたか。
だが北斗神拳の神髄は、相手の動きを封じることにあり!
この緑の猛獣が描くライン、そう易々と通らせるわけにはいかんッ!!」
若林「並走!! 20位争いが熱い!!
北斗の放つ重圧を、カリンがクールな刃で切り裂いていく!!
次なるヘアピン、先に鼻先を突っ込むのはどちらだァァッ!!」
若林「おっと! そこに天羽シオンにフェルリアァァァァ!!!!!
下位から猛追していた二人が、20位争いの背後に一気に食らいついたッ!!
北斗、カリン、シオン、フェルリア!!
4台入り乱れてシャッフルしてしまうゥゥゥゥ!!!!」
シオン「……蒼い閃光(R34)からは、誰も逃げられない。
北斗さん、カリン……まとめていかせてもらうわよッ!!」
フェルリア「シビックのVTECを舐めないで!
格上のスーパーカーだろうが、この峠じゃただの標的よォッ!!」
北斗のAMGが中央を固め、カリンのRomaがインを狙い、
外側からシオンのR34が被せ、その隙間をフェルリアのFD2が強襲する!
火花とタイヤスモークが夜の闇を覆い、順位が目まぐるしく入れ替わるッ!!
カリン「……くっ、暑苦しいわね。
でも、この乱戦の中こそ……私の繊細なラインが輝く時ッ!!」
若林「21位から24位がシャッフルしてしまったアアアア!!!!
柳津カリンのRomaを筆頭に、シオン、フェルリア、そして陽太!!
この4台がヘアピンの入り口で、まるでカードを切り混ぜるように、
その順位を激しく入れ替えていきますッ!!」
カリン「……くっ、横一線!?
シオン、貴方のR34、邪魔よ……そこをどきなさいッ!!」
シオン「言ったはずよ、誰も逃がさないって!!
この混戦、私のGT-Rが一番得意なステージなんだからッ!!」
フェルリア「あはは! 面白くなってきたじゃない!!
VTECの咆哮で、その高い車たちを全部黙らせてあげるわよッ!!」
陽太「……みんな速すぎだよ!
でも、ロードスターの軽さなら……この隙間を抜けるッ!!」
若林「入れ替わる!! 目まぐるしく順位が動くゥゥッ!!
フェラーリ、GT-R、シビック、ロードスター!!
排気量も馬力も無視した、魂と魂のぶつかり合いだァァッ!!」
若林「出たァァァッ!! 激しいシャッフルの末、最初に出口を駆け抜けたのはこの車だ!!
柳津カリン、21位!!
混戦の中でもその繊細なラインを崩さず、フェラーリ・ローマが再び集団の頭に躍り出た!!」
カリン「……ふぅ。ようやく少し、静かになったかしら。
でも、後ろの気配がまだ消えないわね……しつこい人たち」
若林「そしてコンマ数秒の差で続く!!
天羽シオン、22位!!!陽太、23位!!!!
さらにフェルリアが24位へとドロップしてしまったァァァッ!!!!」
シオン「……チッ、カリンに逃げられたか。
でも陽太、あんたのそのロードスター……意外とやるじゃない。
次は逃がさないわよッ!!」
ッチじゃねえよw
陽太「ハァ……ハァ……。
スーパーカー相手に23位……! でも、まだ上を狙えるはずだ!!」
フェルリア「あちゃー、最下位(集団内)まで落ちちゃった!
でもいいよ、後ろから全員ぶち抜くのが一番気持ちいいんだからねッ!!」
若林「さあ、お待たせいたしました!! 舞台は再び茂庭の山頂付近、先頭争いへ!!
ポルシェ、スープラ、そして86……3台による極限の対決が幕を開けますッ!!」
1位を走るフリスのポルシェ・ケイマンGT4。
その走りは先程までの禍々しさが消え、水面を滑るような、繊細で壊れそうなほど美しいラインへと変化していた。
フリス「そう、可愛ければ何もかも我でされど許される、、、、、、。このラインも、この加速も……すべては美しさのために。
君たちの泥臭い走りは、我の視界には必要ないんだよ……」
イヨ「......もう一度1位を。
フリス、君の美学は認めるよ。
でも、勝利の女神が微笑むのは……
最後まで路面と対話し続けた者だけッ!!
イヨのスープラが、その領域を証明してみせるッ!!」
若林「火花散る美の競演!!
フリスの繊細なブロックに対し、イヨが神の領域のハンドリングで肉薄する!!
そしてその後方には、この二人の隙を虎視眈々と狙う腹切カナタの86が迫っているゥゥッ!!」




