米沢編第26話 ウアイラとエミーラ
K363
福島飯坂ランプの急勾配が、時速280キロで迫る二台のマシンを呑み込もうとしていた。
漆黒のウアイラと、銀白のエミーラ。
その走りに漂う、あまりにも異様な「冷たさ」に、実況席の若林は思わずマイクを握る手に汗を浮かべた。
若林「マヒロさん、、、この2台に共通点はあるのでしょうか、、、、、?」
マヒロ「……あります。若林さん。あの二人には……共通の『欠陥』があるんです……っ☆」
若林「『欠陥』……!? あれほど完璧なドライビングを披露している二人にですかッ!?」
マヒロ「ええ。二人とも……『恐怖』という感情が、根こそぎ抜け落ちているんです。乎太郎くんは他者を深淵に沈めることで、フブキちゃんは全てを凍りつかせることで、自分という存在を保っている……。彼らにとって、マシンの限界や死の淵なんて、ただの『風景』に過ぎないんですよぉ……っ!!」
乎太郎「あははっ! 聞こえるよマヒロさん! 僕の欠陥……? それはね、この世界が『退屈』すぎるからだよッ!!」
乎太郎が狂気の笑みと共に、ウアイラをフブキのエミーラへとさらに幅寄せする。
対するフブキは、その言葉さえも凍りつかせるように、視線を一切動かさない。
フブキ「……感情なんて、熱を生むだけの不純物。私はただ……全てを静止させたいだけ。」
共通点――それは、他者の介入を許さない「絶対的な孤独」と、それを維持するための「圧倒的な力」。
二人の天才が放つ異質のオーラが、飯坂の夜を極寒の深淵へと変えていく。
若林「若き怪物たちが、今、飯坂ランプの急旋回へ突入するゥゥッ!! どちらかが消えるまで、この戦いは終わらないのかァァァッ!!!」
福島飯坂ランプの急旋回が目前に迫る中、乎太郎の眼前に信じられない光景が広がった。
サイド・バイ・サイドで並んでいたはずのフブキのエミーラ。その輪郭が、猛烈な冷気の渦と共に揺らぎ、霧散していく。
乎太郎「……えっ!? 消えた……? フブキさん、どこ……ッ!!?」
ウアイラのライトが照らし出すのは、無人のアスファルト。
だが、そこには確かに「存在」している。路面を削り取るタイヤの音、そして空気を切り裂く風圧。
あまりにも純粋で、あまりにも強大な冷気が、マシンの周囲の光を凍らせ、屈折させ、その姿を不可視へと変えていた。
フブキ「私の力、、、見せてあげる、、、!!!」
無線のノイズさえも凍りつくような、澄み切ったフブキの声。
乎太郎のすぐ横で、透明な「死神」が冷気を放ちながら加速する。
乎太郎には、どこから攻撃が来るのか、どこに相手がいるのかさえも分からない。
乎太郎「あははっ……!! 姿を消すなんて……最高だよフブキさんッ!! でも、冷たすぎて僕のタイヤが……グリップを失って……ッ!!」
若林「エミーラが乎太郎の視界から消えたかのように張り付いているゥゥゥ!!!
猛烈な冷気を保ったまま、飯坂ランプ手前を不可視の状態で駆け抜けていくゥゥゥッ!!!」
透明な旋風となったフブキは、乎太郎のウアイラを翻弄し、その懐を冷徹に抉る。
姿が見えない恐怖。
「深淵」を操る乎太郎でさえ、この「無」の状態のフブキには、牙を立てる場所すら見つけられなかった。
マヒロ「……冷気が光を曲げてるんだ……っ☆。フブキちゃん、自分の周りだけ完全に別の空間にしてる……!! まさに『絶対零度』の真骨頂だよぉ……っ!!」
国道13号、飯坂ランプ手前の超高速セクション。
乎太郎のウアイラが空気を切り裂く横で、本来ならそこに居るはずの「銀色の残像」が、光の屈折の彼方へと消え去っていた。
だが、強烈な冷気の渦と、アスファルトを噛み締めるハイグリップタイヤの悲鳴が、その「存在」を強烈に主張している。
若林「エミーラがウアイラにサイドバイサイド!!! 姿なきロータスが、パガーニを内側から削りにかかっているゥゥゥッ!!!」
乎太郎「あははっ! 見えないよ、フブキさんッ!! どこをガードすればいいのか、さっぱりだ……ッ!!」
狂喜する乎太郎の無線のノイズを、氷の粒が弾けるような冷徹な声がブチ抜く。
フブキ「さっきよりも本気でいかせてもらうから......ッ!!
私の吹雪、味わいなさい......っ!!!!!」
フブキがステアリングをわずか数ミリ動かす。
その瞬間、透明なエミーラの周囲から「白き爆発」のごとき猛烈な冷気が噴き出した!
路面は瞬時に凍りつき、乎太郎のウアイラのフロントガラスを、一瞬で分厚い氷の膜が覆い尽くす。
乎太郎「……っ!? 前が……見えな……ッ!! 冷たすぎてステアリングが回らな……ッ!!」
透明なエミーラは、乎太郎の視界と自由を奪いながら、飯坂ランプの急旋回へと猛スピードで吸い込まれていく。
それはもはやレースではない。一方的な「吹雪」による蹂躙だった。
マヒロ「フブキちゃん、本気だよぉ……っ☆! 見えないだけじゃなくて、周囲の熱を全部奪い取ってるんだぁっ!! 乎太郎くん、このままじゃ凍死しちゃうよぉ……っ!!」
飯坂ランプの出口。急勾配を駆け上がり、再び本線へと合流する銀色のエミーラ。
その行く手を阻むように、もう一つの「銀」がバイパスの街灯を撥ね除けて立ち塞がった。
高橋勇太のホンダ・NSX (NC1)。ハイブリッドの静寂の中に、狂気を孕んだ狼の牙を隠し持つマシンだ。
若林「さあ! 来ましたァァ!!! 銀色のエミーラ対銀色のNSX NC1!!! フブキ対高橋勇太だァァァァ!!!!」
高橋「エミーラが下から上がってきたのか......ッ!! だが、どんなやつであれど...ぶっ殺すぞォォ!!!! 唸る狼のようにいくぜェェ!!!!」
高橋がSH-AWDのトルクベクタリングを全開に叩き込むと、NSXはまるで飢えた狼が獲物に飛びかかるような鋭さでラインを塞ぐ。
V6ツインターボと三つのモーターが咆哮を上げ、フブキの進路を物理的に、そして威圧的に削り取っていく。
フブキ「……狼? うるさいわね。その喉笛ごと、凍らせてあげる。」
フブキの瞳に、再び「絶対零度」の光が宿る。
エミーラから放たれる冷気が、NSXが発する猛烈な熱量を奪い去り、アスファルトの上に白い氷の轍を刻む。
銀色のエミーラが、NSXのリアバンパーを掠めるほどの超至近距離で、左右に揺さぶりをかける。
高橋「ハッ! 冷てぇ風だな! だが、この狼の血までは凍らねぇぞッ!!」
若林「高橋のNSXがブロック! しかしフブキのエミーラ、その隙間を縫うように牙を突き立てるゥゥッ!! 銀と銀がぶつかり合い、夜のバイパスに火花と氷晶が同時に舞い上がるゥゥッ!!!」
マヒロ「銀色の断頭台と、鋭利なる吹雪……! 二人とも、一歩も引かないよぉ……っ☆! まさに『銀の領域』での殺し合いだよぉ……っ!!」
福島飯坂から米沢へと続く、漆黒のバイパス。
銀色のエミーラが放つ冷気が、アスファルトを白く染め上げながら高橋勇太のNSXを捉えようとする。
だが、どれほどラインを入れ替えても、どれほど極限のブレーキングを見せても、眼前の銀色のテールランプは一向に遠ざかる気配を見せない。
フブキ「……っ、ハァ……ハァ……。でも、、、このNSX、、、速い、、、、ッ!」
エミーラのコクピット、フブキの額に薄っすらと汗が浮かぶ。
高橋の操るNSX(NC1)は、SH-AWDの驚異的なトルクベクタリングによって、まるで物理法則を書き換えるかのようにコーナーを「曲げて」いた。
フブキが冷気で路面を凍らせ、グリップを奪おうとしても、NSXは瞬時に三つのモーターで四輪の駆動を制御し、滑ることさえも「加速」へと変換してしまう。
高橋「ガハハハッ!! 凍りつかせるのがお前の芸かッ!? だがなァ、このマシンには三つの心臓が動いてんだよッ!! 冷却水が凍る前に、お前をぶっちぎってやるぜェェ!!!」
唸るような高橋の叫びと共に、NSXがシステム最高出力を解放する。
エミーラの鼻先を掠めるように、銀色の影が再び加速し、フブキの「絶対零度」の領域を力技で引き裂いていく。
フブキ「(……私の吹雪が、追いつけない……!? この人……本当に狼みたいに、食らいついたら離さない……ッ!!)」
若林「フブキが初めて焦りを見せたァァァッ!! 銀色のエミーラ、高橋勇太のNSXの壁を崩せないッ!! 12位争い、まさに銀と銀の意地がぶつかり合う、このレース最大の超高速バトルだァァッ!!!」
マヒロ「フブキちゃんの冷気よりも、高橋さんの『情熱』と『技術』が勝ってる……っ☆! でも、フブキちゃんがこのまま終わるとは思えないよぉ……っ!!」
銀色の激闘が続くバイパス。だが、ふとした瞬間に実況席に流れた沈黙を、若林が「禁断の問い」で破った。
若林「にしてもマヒロさん、、、スタートせずにスタート地点で爆発を起こしたナツメさんはどう思いますか?」
マヒロ「……えっ? あ、あはは……☆。ナツメさん、ですか……。そうですねぇ……」
マヒロは手元の資料を見つめたまま、一瞬だけ遠い目をした。
マヒロ「なんていうか、彼の熱意だけは本物だったんですよっ☆。でも、その熱意がエンジンの限界を……というか、物理法則を置き去りにしちゃったというか……。スタートの瞬間にマシンの心臓が『無理だァァ!』って叫びながら自爆するなんて、ある意味……ある意味、伝説ですよねぇ……っ☆」
若林「伝説……ッ! 確かに、0メートル地点でのリタイヤはエーペックスカップ史上初です!! 彼女のBRZが今もスタート地点で静かに煙を上げていると思うと、目頭が熱くなりますね……。全走者が飯坂を超えようとしている中、彼女だけがまだ、福島のスタートラインを守っている……ッ!!」
マヒロ「守ってるっていうか、動けないだけなんですけどねぇ……。でも、ナツメちゃんのあの『爆発力』が、いつか正しい方向に向けば、きっとすごいドライバーになる……かも、しれないですっ☆」
若林「……フォローありがとうございます。さて! 気を取り直して、銀色の狼と吹雪の戦いに戻りましょう!! 爆発したナツメさんの想いも乗せて、高橋のNSXが吠えるゥゥゥッ!!!」
銀色同士の死闘を伝える若林の絶叫を、マヒロの甘い、しかし抗いようのない冷気を孕んだ声が遮った。
マヒロ「そんなことより若林さん、、、またふーふーしたいんだけど、、、いい?☆」
若林「えっ!? い、いや、マヒロさん! 今は高橋とフブキが歴史的な……あ、あああぁぁぁッ!!?」
拒絶する間もなく、マヒロが若林の耳元にそっと顔を寄せる。
その唇から放たれたのは、極寒のミントが結晶化したかのような、白くパステルグリーンに輝く「ミントフラッペスノー」の吐息だった。
マヒロ「ふーーーーー……っ☆」
若林「ぐはぁっ!? 鼻腔が……鼻腔が北極圏に飛ばされたァァァッ!! 脳細胞が……シャリシャリに凍っていくゥゥッ!!」
若林の絶叫が、ミントの爽快感と絶対零度の冷気によって、次第に聞き取り不能なノイズへと変わっていく。
マヒロの吐息に触れたヘッドセットは一瞬で白く霜が降り、実況席のモニターさえも凍りついてひび割れた。
マヒロ「あははっ☆ 若林さん、カチコチだよぉ! まるでお菓子の家のアイスキャンディみたいっ☆」
若林「(……言葉が出ない……。意識が……ミントの海に沈んでいく……)」
若林は完全に氷像と化し、その目からは冷たさによる涙が結晶となって溢れ落ちた。
バイパスでは12位争いが激化しているが、実況席は今、一人の少女の気まぐれによって、世界で最も静かで冷たい「避暑地」と化していた。
「……カチ、カチカチッ……ッ!!」
氷の像と化していた若林の口元が、怒りとプロ意識によって爆発的に解凍される。
若林「って危なァァァい!! 全然フォローになってないじゃないですかァ! 鼻毛まで凍ってダイヤモンドダストになってますよマヒロさんんん!!!」
マヒロ「いいじゃーん☆ 私からの愛情表現だよ?☆ ほらほら、若林さんの顔、まだ真っ白で美味しそうだよぉっ☆」
若林「食べないでくださいッ! 私をスイーツ扱いするのはやめてくださいッ!! ……ハァ、ハァ……。視聴者の皆様、失礼いたしました! 意識を米沢の闇に持っていかれかけましたが、私はまだここにいます!!」
若林は霜の降りたマイクを握り直し、モニターを凝視する。
そこには、実況席の喧騒とは対照的に、死の静寂を纏った銀色の二台が、時速290キロで飯坂の橋梁を駆け抜けていく姿があった。
若林「さあ、茶番はここまでだッ!! 高橋勇太のNSX、逃げるゥゥッ!! 対するフブキのエミーラ、その排気熱さえも凍らせてスリップストリームに潜り込んでいるゥゥッ!! 銀と銀の意地が、米沢の入り口で火花を散らしているぞォォォッ!!!」
マヒロ「あははっ☆ 若林さんの絶叫、やっぱりいい音だねぇっ! でも、フブキちゃんの目は……まだ笑ってないよぉ……っ!!」
実況席の霜を拭いながら、若林が自身の服に染み付いた「香り」に目を見開いた。
若林「まさか、、、今私が凍ってたのって、、、ミントアイスですか!!?? やけにミントの匂いが、、、、鼻の奥を突き抜けて離れないと思ったんですよォ!!」
マヒロ「あははっ☆ やっと気づいた? 31アイスのチョコミントをイメージして特製ブレンドした『マヒロ・ミント・ブレス』だよぉっ☆ 若林さん、今の吐息で口の中までスースーしてるでしょ?☆」
若林「スースーどころか、肺がシャーベット状になってますよッ!! 実況者にミントを吹きかけるなんて、喉を殺しに来てるとしか思えませんッ!!」
若林の絶叫がミントの香りに乗って響く中、モニターの中の高橋勇太が、バックミラーに映る銀色の吹雪――フブキのエミーラに向かって不敵に笑った。
高橋「ガハハッ!! ミントの匂いか知らねぇが、こっちはタイヤの焼ける匂いでお腹いっぱいだぜェッ!! 15歳のガキに『銀色の断頭台』の本当の切れ味を見せてやるッ!!」
高橋がNSXの三つのモーターを限界までオーバーフローさせ、米沢へと続く緩やかな上り坂で、銀色の軌跡を描きながらエミーラを突き放しにかかる。
フブキ「……ミント? 下らない……。私はただ、その狼の遠吠えを、絶対的な静寂の中に沈めたいだけ。」
フブキのエミーラから、ミントなどよりも遥かに鋭く、無慈悲な冷気が噴き出す。
米沢へと続くバイパスの路面が、彼女の意思に応えるように、キラキラと輝くミントブルーの氷床へと姿を変えていった。
若林「だれか私を弁護してェェェェ!!!!」
「...さぁ!映像が変わります!!」
高橋のNSXを追うフブキのエミーラ。だが、彼女が「銀色の狼」に意識を割いたその刹那、バックミラーの闇が、ドロリとした漆黒に塗りつぶされた。
乎太郎「あははっ! 逃がさないって言ったでしょ、フブキさんッ!!」
福島飯坂ランプで振り切ったはずの乎太郎のウアイラが、死神の如き執念でフブキの背後に食らいつく。
だが、驚愕はそれだけでは終わらなかった。
乎太郎のさらに背後、地響きのような、もはやエンジン音とは呼べない「震動」がバイパス全体を震わせる。
若林「バ、バカなッ!! さらにその後方からブガッティ・シロンまでッ!! 坂田五郎丸、1500馬力の怪獣がついにその牙を剥いたァァァッ!!!」
坂田「ガハハハッ!! 銀だの深淵だの、チマチマした走りは飽きたぜッ!! 纏めて吹き飛ばしてやるよォォッ!!」
W16クワッドターボが咆哮を上げ、シロンが時速300キロの壁を軽々と突破する。
パガーニ、ロータス、そしてホンダ。
米沢の入り口を走る4台のマシンが、シロンが放つ圧倒的な「質量」の暴力に飲み込まれようとしていた。
フブキ「……っ、何なの……この化け物みたいなプレッシャーは……ッ!!」
乎太郎「……へぇ、坂田さんも混ぜてほしいんだね。いいよ、みんなで一緒に堕ちようよッ!!」
12位から15位までが、一瞬にして一つの「巨大な鉄の塊」と化して激突し合う、地獄の超高速バトル。
米沢バイパスの直線が、怪獣たちの処刑場へと変貌していく。
国道13号、米沢バイパス。
平坦な直線が続くこの区間は、パワーこそが正義となる残酷な舞台だ。
12位グループを形成する4台のマシンは、時速320キロという、一瞬のミスが「死」に直結する超高速域での肉弾戦を開始した。
若林「12位から15位の12位グループ争い!! 坂田のブガッティ・シロンが、もはや物理法則を無視した突進を見せているゥゥゥッ!!!」
坂田「ガハハハハッ!! 軽いんだよお前らァッ!! 1500馬力の暴力にひれ伏しなァァッ!!!」
坂田のシロンから放たれるW16クワッドターボの衝撃波が、前を走る乎太郎のウアイラとフブキのエミーラを物理的に「震わせる」。
風圧だけで車体が浮き上がるほどのプレッシャー。
乎太郎は狂気混じりの笑みを浮かべ、あえてその風圧の渦へと飛び込んだ。
乎太郎「あははっ! 坂田さん、もっとだよ! もっと僕を押し上げてよぉッ!!」
乎太郎のウアイラがシロンのスリップストリームを極限まで使い、フブキの右サイドへ。
そして、フブキは前方の高橋を視界に捉えながら、後方から迫る二つの「怪物」に歯を食いしばる。
フブキ「……っ、ハァッ!! 狼に死神に、今度は大食らいの怪獣……。まとめて……氷の下に沈めてやるわッ!!」
高橋「ガハッ!! お嬢ちゃん、後ろを気にしてる余裕があるのかよッ!! 俺の『断頭台』の刃は、もうお前の首元に届いてんだぜェッ!!」
先頭の高橋勇太がNSXを左右に激しく振り、後続の視界とラインを殺す。
銀色の狼、絶対零度の吹雪、深淵の死神、そして漆黒の魔王。
四台の怪獣が、夜の米沢を地響きと共に蹂躙していく!
マヒロ「うわぁぁぁんっ☆! みんな壊れちゃってるよぉっ!! この4台、誰かがリタイヤするまで止まらないよぉぉっ!!」
1500馬力のシロンが放つ衝撃波と、高橋勇太のNSXから溢れ出すドス黒い殺意。
死と狂気が支配する米沢バイパスの「聖域」に、青い閃光が割り込んだ。
スリップストリームの激しい乱気流を、WRX STIの大型ウイングが切り裂き、タイヤがアスファルトを噛み砕く。
乎太郎「山吹花、、、、ッ!? いつの間に、、、ッ!!??」
乎太郎が驚愕に目を見開く。バックミラーの中、ついさっきまで氷漬けにして最下位へ落としたはずの少女が、獣のような鋭い眼光で自分のテールに食らいついている。
坂田「へ、、、ッ! 300馬力には負けねェよ、、、!」
坂田が鼻で笑い、シロンのアクセルを床まで踏み抜く。
だが、山吹花は引かない。
3速の加速で得た勢いをそのままに、シロンが作り出した巨大な空気の穴(真空状態)を最短距離で突っ走る。
300馬力? 関係ない。今の彼女を動かしているのは、馬力ではなく、意地という名の燃料だ。
花「……私は、止まらない。……みんなを、抜いていくッ!!」
若林「来たァァァァァッ!!! 山吹花、12位グループに完全合流ゥゥッ!! スバルWRXが、数千馬力の怪獣たちを相手に真っ向勝負を仕掛けたァァッ!! まさにジャイアント・キリングだァァッ!!」
高橋「殺す……山吹……貴様も纏めて……殺してやるゥゥゥッ!!」
高橋のNSXが狂ったように花の進路へ切り込むが、花はそれを紙一重のステアリング捌きで回避し、逆にシロンの巨体を風除けにして乎太郎のイン側を狙う!
次回 レジェンドと氷のドラゴン




