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86伝説エーペックス[POWER!!!]  作者: SAI
POWER!!!米沢編
411/425

米沢編第23話 不振にも下がる順位

K360

国道13号矢野目区間、緩やかな下りが続く高速ベント。

本来なら圧倒的なパワーを誇るウアイラが引き離すはずのこのステージで、乎太郎は信じられない光景を目の当たりにしていた。


前を行く花のWRX STI。その挙動には、一切の無駄がない。

コーナーの頂点に向けて、花はステアリングを大きく切り込むことはしなかった。

ほんの一瞬、指先で弾くような最小限のカウンター。それだけで、青い車体は磁石に吸い寄せられるようにインコースへと吸い込まれていく。


乎太郎「マジかよッ! 最小限のカウンターだけでチョンと動かしただけでも曲がっていく、、、、これがラリーカーなのか、、、?」


乎太郎の目には、WRXの周囲に渦巻く「青い電撃」と、舞い散る「ピンク色の火花」が見えていた。

四輪が路面を掴んで離さない。電子制御とメカニカルグリップ、そして花の「感覚」が完全に同調シンクロしている。

ウアイラが強大なパワーゆえにタイヤを空転させ、わずかに外側に膨らむ一方で、花は最短距離を軽やかに駆け抜けていく。


乎太郎「だが、、、たかが300馬力だ、、、ッ!! こっちは820馬力のウアイラなんだ、、、ッ!!!負けていられっか!!!」


乎太郎は歯を食いしばり、パドルシフトを叩き落とした。

V12ツインターボが咆哮を上げ、820馬力の暴力的なトルクが路面を叩く。

ストレートに戻れば、馬力の差は歴然だ。乎太郎は怒涛の加速で、再び花の背後に食らいつこうとする。


だが、花はバックミラー越しに、冷徹なまでに落ち着いた瞳で追撃者を捉えていた。


花「(……馬力なんて関係ない。この『下り』なら……私が一番速いんだから……ッ!!)」


若林「伊藤乎太郎が追う! 820馬力の猛追だァァァッ!! しかし山吹花、コーナーの出口速度が異常に速いッ!! 300馬力のラリーカーが、800馬力オーバーの怪物をコーナーひとつで置き去りにしようとしているゥゥッ!!!」


マヒロ「すごい……! 花ちゃん、マシンの声を全部聴いてるみたい。最小限の動きで最大限の速さを引き出す……これぞ、山吹家が誇る『桜狼』の真骨頂だねっ☆!」


矢野目の高速ベントが終わり、国道13号は一時の平坦な直線区間へと姿を変える。

花のWRX STIは完璧なライン取りでコーナーを抜けたが、そこには抗いようのない「現実」が待ち構えていた。


乎太郎「……ごめんね、花さん。コーナーは君の勝ちだ……だけど、ここはもう僕の世界なんだよッ!!」


シュゴォォォッ!! という過給音と共に、乎太郎のウアイラが背後から爆発的な加速を見せる。

820馬力のV12ツインターボが、花の300馬力を、まるでおもちゃを追い越すかのように置き去りにしていく。

最小限の挙動で稼いだアドバンテージが、一瞬のストレートで無に帰した。


さらに、その後方から地響きのような咆哮が迫る。


坂田「ガキがァァッ!! 小細工はもう通用しねぇんだよォォォッ!!!! 1500馬力の真髄を……その目に焼き付けろッ!!」


漆黒のシロンが、まるで空気を切り裂く巨大な弾丸となって襲いかかる。

並走の減速に苦しんでいた坂田だったが、直線の暴力においては彼の右に出る者はいない。

シロンの巨体が花のWRXの横を通り抜ける瞬間、凄まじい風圧が青い車体を激しく揺さぶった。


花「(……っ! 風圧が……重いッ!! 逃げられない……っ!!)」


青い戦闘機を左右から挟み込むように、二台の怪物が猛進する。

一瞬で13位から15位へと転落。ハイパーカーという名の「暴力」が、ラリーカーの「技巧」を無慈悲に粉砕した。


マヒロ「花ちゃんっ!! ……やっぱり、この直線の長さは辛すぎるよ……☆ 坂田さんも乎太郎くんも、プライドを賭けて踏んできてる……!!」


バックミラー越しに遠ざかっていく二台の巨大なリアライト。

花はステアリングを握りしめ、唇を噛み締めた。


矢野目区間の直線。ハイパーカーたちが異次元の戦いを繰り広げる後方でも、熾烈な順位争いが勃発していた。


チャッピー「っ……! バックミラーが真っ青だ……! あれが、シオンさんのR34……ッ!!」


15歳の少女、チャッピーは必死にステアリングを保持し、GRコペンの小さな車体を左右に振ってラインをブロックする。

だが、背後に迫るスカイラインGT-R V-specIIの威圧感は、軽自動車のそれを遥かに凌駕していた。


シオン「……悪いわね、先に行かせてもらうわよ……ッ!!」


シオンがシフトダウンと共にアクセルを床まで踏み抜くと、RB26DETTが咆哮を上げ、ツインターボが過給圧を跳ね上げる。

スリップストリームから鮮やかに抜け出した蒼いR34は、チャッピーの横を通り抜ける瞬間、まるで巨大な壁が移動しているかのような衝撃波を浴びせた。


若林「天羽シオンがコペンをオーバーテイクゥ! 蒼きポニーテールが風に舞うゥゥッ!! 18位浮上だァァァァァ!!!!」


チャッピー「クッ……! あの加速……やっぱりGT-Rは化け物だよぉっ!!」


15歳のプライドを賭けて粘ったチャッピーだったが、R34の「王者の加速」の前には、その防壁も脆く崩れ去った。

シオンは前方のターゲット、相川律のGT-Rを射程に捉え、さらに速度を上げていく。


マヒロ「シオンちゃん、ノってるねー☆! GT-Rらしい、力強いパスだったよっ!!」


矢野目区間の直線が、次なる犠牲者を求めて牙を剥く。

古田のMR-Sは、K24Aスワップによって大幅にパワーアップしていたが、やはり純粋な馬力ではスーパーカーに及ばない。


古田「……来たな。まさか、ここでウラカンに追いつかれるとはな……」


バックミラーに映る白い塊は、ただの車ではなかった。

セシルのランボルギーニ・ウラカンは、その純白のボディに冷徹な闘気を宿し、まるで氷でできたドラゴンのようだった。

ヘッドライトは獲物を狙う鋭い瞳。低く構えたボディは、今にも飛び掛かろうとする獣の姿そのものだ。


セシル「……古田さん。ここからは、私の『領地』よ……ッ!!」


セシルの表情には、今まで見せていたおっとりとした雰囲気は微塵もない。

アクセルが床まで踏み込まれ、V10自然吸気エンジンが氷のような咆哮を上げる。

5.2リッターの排気量が叩き出す610馬力のトルクが、MR-Sの横腹を掠めるように襲いかかった。


若林「セシルの氷のドラゴンのような白いウラカンがMR-Sをオーバーテイクして一気に加速していく!!!!」


風を切り裂き、路面を掴んで離さないウラカンは、瞬く間にMR-Sを抜き去り、前方のグループへと猛然と食らいついていく。

その動きは、まるで氷の龍が獲物を捉え、天空へと舞い上がっていくかのようだった。


古田「……くそっ。この直線じゃ、分が悪すぎたか……。だが、ウラカンのV10……まるで『氷冠の咆哮』だな……」


レジェンドドライバー古田は、その圧倒的なパワーに舌を巻きながらも、次のコーナーでの逆襲を誓っていた。


マヒロ「セシルちゃん、覚醒したみたいだねっ☆! でもあの古田さんをストレートで抜くなんて、すごいよぉっ!!」


国道13号矢野目区間は、今や「白き処刑場」と化していた。

後方から突き抜けてきたセシルのウラカンに呼応するかのように、上位を走るイヨのGRスープラもまた、その真の牙を剥く。


若林「予選とは見違えたかのように本領発揮のウラカンにGRスープラァァ!!! 今回に限っては山吹花が苦しく存在が薄れていくゥゥ!!!!」


イヨ「えっへん☆ パパ、見ててね! イヨのスープラが一番かっこいいんだからっ!!」


イヨの操る白いGRスープラが、濃いピンク色の重力波動を路面に叩きつけながら加速する。


前方を行くフリスのケイマンに肉薄し、そのプレッシャーだけで路面の空気をねじ伏せていく。

一方で、後方から駆け上がってきたセシルの白いウラカンもまた、氷のドラゴンの如き咆哮を上げ、中団グループを次々と粉砕していく。


対照的なのは、山吹花だ。

シフトトラブルを抱え、直線でハイパーカーに飲み込まれた彼女のWRXは、二台の「白」が放つ圧倒的な輝きにかき消され、その存在感を失いつつあった。


坂田「ハッ! 桜狼だか何だか知らねぇが、所詮は型落ちのラリーカーよ……。この『白き時代』に、お前の居場所はねぇんだよッ!!」


花「(……くっ、視界が……白く塗りつぶされる……っ。私の青い炎が……消えちゃう……!?)」


マヒロ「花ちゃん、しっかりしてーっ!! イヨちゃんもセシルちゃんも、今は手が付けられないくらい速いよ……☆ でも、諦めちゃダメだぁっ!!」


白いスープラと白いウラカン。二台の白き死神が、米沢への道を無慈悲に切り裂いていく。


イヨとセシル、二台の白きマシンが放つ高貴な輝き。

その静寂を、下品なまでの大排気量サウンドと、耳を疑うような絶叫がブチ破った。


若林「ゾフィアが行くかァァァ!!!?? 忘れてならないのがこの赤いC7!!! 真紅の猛獣が、今ここで牙を剥くゥゥッ!!!」


ゾフィア「ウンコパワァァァァァァァ!!!!!」


セシル「……えっ!? い、今なんて……ッ!?」


イヨ「ゾ、ゾフィアちゃん……!? 汚い言葉はダメなんだよーっ☆!!」


上品な白いマシンたちが一瞬怯んだその隙を、ゾフィアは見逃さなかった。

6.2リッターV8エンジンのOHVサウンドが地響きを立て、真っ赤なC7が猛烈なトルクでアスファルトを毟り取る。

彼女にとって、レースの美学など二の次だ。あるのは、溢れんばかりのパワーと、それを解き放つ衝動のみ!


若林「何という爆発力だァァッ!! ゾフィア、セシルのウラカンを抜き去り、さらに前方のグループへと突っ込んでいくゥゥッ!! まさに真紅の猛獣、やりたい放題だァァァッ!!」


マヒロ「う、うわぁ……。ゾフィアちゃん、今日も絶好調(?)だね……☆ でも、あのパワーは本物だよっ! ウンコパワー恐るべし……っ!!」


花のWRXが影に沈む中、ゾフィアの「赤」が戦場をカオスに塗り替えていく。


福島イオンの巨大な看板が闇の中に浮かび上がる、国道13号バイパス。

中団グループの均衡を、一気に突き抜けてきた赤い影が粉砕した。


柳津「ゾフィアが来たのか、、、ッ!! やっぱりコルベットとM4だな、、、、!」


柳津雄介は、バックミラーに映る地響きのようなV8サウンドに、不敵な笑みを浮かべた。

ドイツの精密機械・M4 DTM Edition。対するは、アメリカのパワーの結晶・C7コルベット。

どちらが真の「破壊神」にふさわしいか、決着をつける時が来た。


若林「M4対C7はエーペックスカップ史上初となります!!! この二人の対決がついに見れてしまうのかァァァ!!?? ゾフィアがストレートから飛び出したァァァ!!!!! 福島イオン手前ェ! 何かが起きるゥゥゥ!!!!」


ゾフィア「柳津、、、、ッ!! アンタとは一度やってみたかったのよ!! 私の力、、、見せてあげる、、、ッ!!」


ゾフィアがアクセルを床まで蹴り飛ばすと、C7の太いタイヤが悲鳴を上げ、アスファルトを力尽くで捉える。

スリップストリームから飛び出した真紅のボディが、柳津のM4の横へと並びかける。


柳津「面白い……! 来いよ、ゾフィア! その『力』、俺のM4で受け止めてやるッ!!」


二台の猛獣が、時速250キロを超える領域で肩を並べる。

福島イオンの明かりが、火花を散らす二台のボディを、一瞬だけ鮮やかに照らし出した。


マヒロ「うわぁぁッ☆ 二人ともすごい迫力だよーっ☆!! まさに『破壊神』と『猛獣』のガチンコ勝負だねっ!!」


福島イオンの巨大なネオンが、バトルの舞台を白日の下に晒す。

柳津のM4 DTM Editionが放つ直列6気筒ターボの乾いた音と、ゾフィアのC7が奏でるV8の重低音。

日独米の意地が交差するこの瞬間、13号線バイパスの空気は熱を帯びて歪んでいた。


柳津「……いい咆哮だ。だが、このラインは譲らねぇッ!!」


ゾフィア「あははっ! 柳津ッ、あんたの精密な走りも、私のパワーで粉砕してあげるわよォォォッ!!」


二台の猛獣は、イオン手前の緩やかな右カーブに、時速260キロを超えたまま突っ込んでいく。

アウト側のゾフィア、イン側の柳津。一歩も引かない並走サイド・バイ・サイドに、観客ギャラリーたちの叫びがバイパス沿いに響き渡る。


若林「M4対C7はエーペックスカップ史上初となります!!! この二人の対決がついに見れてしまうのかァァァ!!? ゾフィアがストレートから飛び出したァァァ!!!!! 福島イオン手前ェ! 何かが起きるゥゥゥ!!!!」

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