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唯一無双の現代ダンジョン  作者: 歌歌犬犬
第二章 宝物殿
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第九話 不破ちゃん葛藤録



◆side不破ちゃん◆


〈コメント〉

:これが『ギフトホルダー』の限界


 薄暗い自室の中でもう何度もこのコメントを見てる。

 私が威勢よく宣言した癖に第七階層のゴーストに手こずっているから、このコメントが何度も目に入る。

 これはなにも一回限りのコメントじゃない。

 たくさんの人間が、私がゴースト相手に苦戦するたび投げてくる言葉。


 悔しい。


 このコメントに対してじゃない。

 『ギフトホルダー』でもやれるって信じてた私の限界が、たったの七階層だったことが悔しくて堪らない。


 膝に顔を埋める。

 こんなでも毎日ダンジョンに潜ってはゴースト相手に戦ってる。

 けど、一向に突破の兆しが見えない。

 私の【断絶】は物理属性だから、霊体のゴースト相手には通用しないんだ。

 そういう手合いには魔法で対処するのがセオリーだけど、私は『ギフトホルダー』。

 それでも大鎌に付与された属性で斬れば対処はできるけど、そこに【断絶】は関係ない。


 ただ第七階層に行っては大鎌で斬りつける毎日。

 悔し紛れに放った【断絶】は当然のように素通りし、ゴーストは群がって私を襲う。

 もう何度メグルぽんのソラ姉たちに助けられたかわからない……。


「……こんなんじゃダメなのに」


 配信したくない。

 有象無象に何を言われても構わないけど、この体たらくを宿敵に見られてると思うと配信をしたくなくなる。

 あんな啖呵を切って、そのすぐ後に第七階層で苦戦してますなんて、ほんと死にたくなる。

 ソラ姉たちが「見てないかもじゃん! ね?」って励ましてくれたけど、それはそれで凄く萎える。

 見ろ宿敵、私を見ろ、私が苦戦する配信を見ろ。


 こんな意味不明な思考でループしてる自分が凄く恥ずかしい……。

 そもそも、私だけ配信してて宿敵の動向は探れないって不公平では?

 いや配信はメグルぽんの活動なんだけど、そういう話じゃなくて。

 私は宿敵にも配信する義務があると思う。


 顔を上げ、真理を悟った私はこうしてはいられないと端末を開き、宿敵がダンジョン配信をしていないかと検索をかけた。

 なにがキーワードに引っかかるかわからないので、もう片っ端だ。


 そうすると一本の動画が宿敵というワード有りで、妙に再生回数も多いので目に留まった。


「まさか……」


 本当に?

 そう思ってすぐ動画の再生を始めると、そこに映ったのはかわいい女の子二人。


「釣りかよ」


 許せない。

 画面越しでも呪い殺せないかと怨念を籠めた視線を送ってしまう。

 でもそんなの意味があるはずもなく、動画は流れていく。

 もう興味なくしたし他の探そうと思い消そうとして……止まった。


 画面には仲良く笑って話す配信主らしい少女が二人と……少年が一人。


 その少年の声に、聞き覚えがあった。

 その少年の腰の剣に、見覚えがあった。


 忘れるはずもない、私の【断絶】を受け止めた許されざる宿敵。

 間違えるはずもない、許してはならない宿敵のことだけは。


「……見つけたァ」


 そんな顔をしてたんだね。

 やっぱりユートピア学園にいたんだね。

 嬉しくて思わず笑ってしまう。


 でも……。


「……楽しそう」


 かわいい女の子二人に挟まれて、随分と楽しそうに笑って話す宿敵の姿。

 初めて私と会ったときなんかチラチラ胸ばかり見てきた癖に、女なら誰でもいいんだ。

 私が第七階層で苦戦してる様子は配信で伝わってるはずなのに、そんな風に笑って他の女と話せるんだね。

 もしかして見てない?

 もしかして私の配信見てないのかな?

 経緯は知らないけどこの女の子たちの配信に出るくらいご執心なんだもんね、見てないんだねきっと。


「ふーん……」


 悲しくなった。

 なんだ、宿敵なんてライバル視してるのは私だけか。

 馬鹿みたいだね。


 もう配信消して明日に備えようと横になろうとして、それは聞こえた。


『一ノ瀬さんは不破ちゃんってご存知ですか? 彼女も『ギフトホルダー』で立派に冒険者をしている方で、私たち同様不健全なんです』

「不健全ってなに!?」


 寝ようとして聞こえた無視できない発言に、私は飛び上がって端末を凝視する。

 不健全ってなんだろう?

 私たち同様って?

 もももしかしてこの二人、いや三人? って、そういう関係……⁉


『あぁ、勿論不破ちゃんは知ってる。我がラ……うぅん。まぁ、同じ不健全な生き方をする者として負けたくないからな』

「………」


 焦っていた頭がすっと冷える。

 今、宿敵は我がライバルと、そう言おうとした、確実に言おうとした。

 頭の中でその言葉がリピートされる。

 我がライバル……負けたくない相手……キヒヒ。


 私が画面を見てニヤニヤしている間も、会話は続く。

 今度は男勝りなほうの言葉。

 わかりづらいなこの二人。


『その不破ちゃんも今第七階層で苦戦しているらしいぞ。ゴーストに【断絶】が通じないとかでな。一ノ瀬はどう思う?』

「ド直球に聞くな……!」


 お前らは知らないだろうがそいつが宿敵なんだぞ。

 私だけが知っている正体だけど、いつか教えてやりたいものだけど。

 けどそれでも今は直球に聞かれた問いに宿敵がどう答えるのか知りたい。

 胸がモヤモヤする中、宿敵の口が開く。

 来る。


『苦戦は苦戦だろ? 終わりじゃない。俺たち不健全な冒険者に苦戦は時折のスパイスだろ』

『……ククク、はははは! そりゃそうだな! はははは! そりゃそうだ!』

『あらあらふんふん。一ノ瀬さんは飛び抜けて不健全ですね。ふふふ』


 ……え?

 それだけ?

 苦戦は苦戦?

 時折のスパイス?

 不健全ってどういうこと……?


 なにがなんだかまるでわからない私だったけど、それでもクツクツと笑いがこみ上げてくる。

 そうか、そうだったんだね。

 宿敵は私の苦戦を見ても、本当になにも思わなかった。

 そこが私の限界だとも、突破できないだろうなんて心配も。

 ただのスパイスだもん、きっと宿敵は楽しんでんなくらいにしか思ってない。


「ぶっちぎりでイカれてる……! キヒヒっ」


 甘く見ていた、宿敵という冒険者を。

 これは確かに不健全だ。

 あいつは不健全で、そしてそんなあいつに認められる私も不健全だ。


『ま、どうもこういう意見らしいぜ?』


 見れば画面の向こうで男勝りなほうがカメラに向かってニヒルに笑う。

 ああそうだね、わかってるお前不健全だもん。

 なにも言わないけど、もう一人のほうもわかってるんでしょ?

 だってそっちも不健全だもん。


 どういう経緯か知らないけど、今不健全な女二人が宿敵に接近している。

 彼女らが、そして宿敵がどういう話をするのか知らないけど、私も負けてられない。


「第七階層なんて今に突破する。スパイスは多いと逆にマズくなるもんね」


 大丈夫、私がスキルに属性を乗せられるようになればいいだけの話。

 私の配信を見てろ宿敵、あと女二人。

 あと宿敵、お前も配信しろ。

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