第二千九百二十五話 偽装
「任に着いてからということは、俺と出会う前からか」
「第三方面軍副司令官を拝命してすぐ、でしたかねえ。違和感を感じたんですよ」
「どんな?」
「なんと言えばいいのか――誰かにずっと見られているような気がしていました」
「それは四六時中ってことか?」
「どうなんでしょう。感じる時もあれば、そうでない時もあったので。正直、わたしは魔導には詳しくないんです。なので、なんとなくです。あくまでなんとなく」
「頻繁には見られている感覚があったんだな?」
「そうですね。ちょくちょくありましたねえ」
「ということは、どちらなのか――」
「どちらとは?」
「監視対象が、あんたなのか、それともガレーシャなのか、さ」
「なるほど。わたしは任官してからは、ほとんどガレーシャ司令官と行動を共にしていますからねえ。本当の監視対象は、ガレーシャ司令官だったのかもしれませんねえ。でも――」
「でも、なんだ?」
「司令官はいまだ齢十五の少女でいらっしゃいます。ここだけの話ですが、いわばお飾りのようなお立場です。もっともそのことはご本人も重々承知されておられます。その上で、そのことを大変に気にしていらっしゃるので、このことはくれぐれも司令官にはご内密にお願いいたします」
「わかっているよ。健気に頑張ってるんだろ?だからあんたもガレーシャのことは、憎からず思っている」
「おっしゃる通りです。影ながらお支えいたしたいと本心より思っております」
「ただ、本当にあの子はただの十五の少女なのか?」
「と、仰いますと?」
「あんたは上での戦いを見ていたか?」
「魔導師部隊との一戦ですか?もちろん見ておりましたが?」
「どう見えた?」
「どう――と仰られても、何やら眩い輝きを放つ魔法で、魔導師部隊を倒されたようにわたしには見えましたが」
「だよな。俺もそう偽装したし」
パルススは一瞬呆気にとられた顔をした。
「偽装――と仰られましたか?」
「言った。あれは偽装工作だ」
「それはまた、どういうことで?」
「俺はヴァルハラ帝国の皇帝になったが、本当の目的は大陸統一なんだ」
「さらっと凄いことを仰いますね」
「まあ、聞いてくれ。なので俺はユラシアもその傘下に収めたいと思っている」
「これまたさらっと、ヤバいことを仰られましたが――まあ、とりあえずお聞きいたします」




