第二千九百二十六話 監視対象者
「なので、ユラシア軍の兵たちは、出来れば無傷で配下にしたいと考えているんだ」
パルススはすべてを悟ったような表情となった。
「なるほど。それで魔導師部隊と息を合わせて、撤退を偽装工作したというわけですか」
ガイウスは満足げにうなずいた。
「そういうこと」
「それって元々通じていたわけじゃないですよね?」
「事前にってわけじゃないよ。あの場で急にそうなった。あんたたちが痺れを切らして軍を動かしたろ?それで俺は慌ててあんたたちの対処をしなきゃならないから、その場で考えて実行したんだ」
「そうですか、それは困ったものですが、貴方の実力を鑑みれば、仕方がないことですかね」
「そういうこと」
「では、そのことはひとまず置いておくとして、その一件が司令官とどうつながるんですか?」
「見えていたんだよ」
「何をですか?」
「ガレーシャは、俺の閃光弾を見破ったんだ。あれは偽装だったとな」
「貴方の偽装を、司令官が見破っていたと?あんな上空の出来事を?」
「そうだ」
「あの眩しい輝きは閃光弾ですか?とてもじゃないですが、眩しくって目を開けてなどいられませんでしたよ?」
「だと思うよ。実際俺は、それを狙ってあの閃光弾を撃ったんだから」
「なのに、司令官は見えていたと?」
「そう。あんたが来る前に俺と二人だけで話をしていた時があったろ?その時に言われたんだよ」
パルススは驚いた表情で大きく息を吸った。
「つまり、司令官は只者ではない、と?」
ガイウスはうなずいた。
「普通は見えないはずだ。それを十五の少女が見破った。実は警戒すべき少女なのかもしれないと思ってな」
「つまり、監視対象者はわたしではなく、司令官だと?」
「あるいは、両方」
「わたしも入りますか」
「その可能性の方が高いだろうな」
「何故です?」
「そりゃあ、あんたも只者じゃないからだよ」
パルススはとぼけた顔をする。
「わたしが、ですか?わたしなんて、ただの軍人ですよ」
「そうは見えない。かなり頭は切れるし、なにより判断力が素晴らしい」
パルススは肩をすくめた。
「お褒めに預かり恐悦至極ですが、貴方の実力を間近で見れば、誰でも撤退の判断をしますよ」
「そうかな?物量で攻める選択は有り得たと思うぞ。俺を無視してマンド軍に突撃をかければ、乱戦となる。そうなれば、俺が一気に片を付けるという風にはならなかったはずだぞ?」




