第二千九百二十三話 分を超える
「まあな。なにせ、出来たばっかりの国だし。皇帝になったはいいが、なる前とほとんど変わってないね」
「それで成り立つので?」
「成り立つんじゃないの。実力があれば、さ」
「さきほどの実力があれば、ということですか」
「そそ、といっても力で脅してなったわけじゃないよ」
「強引に従えたわけではないと?」
「もちろん。結構みんなには色々と虐げられているよ」
「みんなとは?」
「各国の王たちとか」
「王たちの方が偉いのですか?」
ガイウスはそこで腕を組んで難しい顔をした。
「いや、そういうわけでもないんだけど、最近どうも女難の相が出ていてさ。ザバンの女王とか、ベルクの王女とかに、結構いじめられているんだよ」
「それはそれは、大変なことですね。ですが――」
「うん?なに?」
「そのようなことを、部外者のわたしに言ってもいいのですか?」
「構わないさ。あんたも色々とユラシアの事情を教えてくれたしね。行って来いってことで」
するとパルススがすっとぼけた。
「わたし、何か言いましたかね?」
ガイウスもとぼけた。
「さあ、どうだったかな」
二人は互いの顔を見合わせ、笑いあった。
ひとしきり笑い終えたところで、ガイウスが言った。
「どうもユラシアも、新皇即位後色々あるみたいだし、ちょっと行ってみてくるとするかな」
「我らを飛び越えてですか?」
「撤退してくれたのはいいけど、あんたたちが処罰されるのは忍びないからな」
「お優しいことで」
「まあね。こう見えて俺は、凄く紳士的で優しいんだよ」
「で、行ってどうされます?」
「新皇を見るさ」
「お会いになると?」
「当然。でなけりゃ意味がない」
「そうですか――」
「何か言いたそうだな?」
「そういうわけではありませんが、どうぞお気を付けを」
ガイウスの目がスーッと細くなる。
「どういう意味で?俺の強さは知っているはずだ。にもかかわらずそう言うってことは、何か意味があるんだろ?」
パルススは軽く肩をすくめた。
「陛下は――ああ、これはやはり臣下としての分を超えることですので、特別に申し上げることですよ?」
「わかっているよ。教えてくれ」
「陛下は――特別な方ではないかと」
「特別?」
「はっきりとしたことはわかりません。ですが、尋常ならざるお方だとわたしは感じました」




