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第十一章 神の棺

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第二千九百十九話 百片の真実

 ガレーシャは心底悔しそうに歯噛みした。うっすらと唇に血が滲む。


 ガイウスは出来るだけ、ガレーシャの気持ちを逆撫でしない様、注意して言った。


「とりあえず休戦ってことでどうだろうか?」


 ガレーシャが食いつく。


「休戦だと?」


「そそ、とりあえずの休戦。こちらも急に一方的に攻められて困っているし、そちらも急に俺みたいなのがしゃしゃり出て来たわけだし、ここは一旦、お互いに態勢を整え直すためにも、一時休戦ってことでどうだろうか?」


 ガイウスの提案に、パルススが即座に乗った。


「いいですね、それ。お互いにとって不測の事態が起こったわけですし、ここは痛み分けで一旦休戦というのは、悪い案ではないかと」


「そそ、痛み分け。どっちが勝ったとか、そういうことじゃなく、初戦は引き分けってことでどうかな?」


 ガレーシャが胡散臭いものを見るような目で、ガイウスとパルススを見た。


 ガイウスもパルススも、どちらもしれっとした顔で、その視線を受け流した。


 ガレーシャの舌打ちが、乾いた大地に染み渡るように鳴った。


 だがそれでも、ガイウスたちはとぼけ顔でやり過ごす。


 無言の時がしばし流れた。


 折れたのは、ガレーシャだった。


「いいだろう。では一時休戦とし、撤退する」


 ガイウスがすかさず笑みをこぼした。


「ありがたい!」


 パルススも続いた。


「見事なご裁断です。このパルスス、敬服いたしました」


 ガレーシャは顎を上げてパルススを睥睨し、腹立たし気に鼻を鳴らした。


「ふん!思ってもいないことを申すな。耳障りだ」


 パルススは何事もなかったように平静さを保ち、言った。


「とんでもございません。本心からの言葉にございます」


 ガレーシャは再度鼻を鳴らした。


「白々しい。お前の言葉に、真実など一片(いっぺん)たりと混じってなどいるものか」


 パルススはにんまりと笑った。


「一片くらいは混じらせております」


「ならば、一片だけということではないか」


「時と場合によります。一片の時もあれば、百片の時も――先ほどの言葉は、百片の真実でございます」


 ガレーシャは苦虫を嚙み潰したような表情となった。


「もうよい。とにかく引けばよいのであろう」


 ガイウスは、ガレーシャがこれ以上機嫌を損ねて先ほどの決断を覆さない様、慎重に言葉を選んで、あまりにも彼らしくないことを言った。


「お願いします」

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