第二千九百十七話 ハッタリ
「ふん、やはりか。道理でタイミングがおかしかったわけだ」
ガイウスは首をひねった。
「しかし、それにしてもよく見えたな?最高輝度の閃光弾を撃ったつもりだったんだけど」
「さあな。見えたものは見えた。それだけだ」
「まあ、そうなんだろうけど」
「とにかく、我が軍は引く気はないし、なんちゃら帝国なんてものの傘下に降るつもりもない」
「ヴァルハラ帝国だよ」
「なんでもいい。とにかく邪魔だ。そこをどけ」
「どけと言われてどく奴はいないだろ」
「では、実力で排除する」
「多くの死人が出るぜ?それでもいいのか?さすがに大軍が一気に押し寄せたら、俺も最大レベルの魔法で押し返すしかない。となれば当然、前数列は即死となるぞ」
「お前の魔導師としてのレベルが高いのはわかっている。だが、それほどの火力を有しているとは思えん。そのようなつまらぬハッタリで、我が軍を退けられると思っているのか?」
「じゃあデモンストレーションでもしてみるか」
ガイウスはそう言いつつも、内心では『どうも最近、こればっかりで飽きてきているけどな』などと思った。
だがガレーシャは、真顔でガイウスの顔をじっと見つめ、興味を示した。
ガイウスはこれ幸いと、言った。
「じゃあ見せるから、ちょっと下がって。あ、いや、やっぱいいわ。俺が上に行くから」
ガイウスは言うなり、上昇を開始した。
そして地上から二十Ⅿほどの高さに到達するなり、足下のガレーシャに向かって言った。
「よく見ていろよ」
ガイウスはすぐさま上空を見上げ、右手を高々と天に向けた。
同時に、ユラシア軍に対して威圧的な意味を含めて、わざと叫んだ。
「紅蓮の炎!」
瞬間、ガイウスの右掌から、凄まじい火力の炎が噴き出した。
炎は渦を巻きながら上昇し、巨大な火柱が天高く立ち昇った。
ガレーシャはその火柱の規模に、目を剥いた。
それは五万を超える兵士たち、そのひとりひとりも同様だった。
皆、暴れ狂う大炎を纏った巨柱を見上げ、慄き畏れた。
だがガイウスは、さらなる一手を打つ。
空いている左手も天に捧げるように向けると、同じように叫んだ。
「疾風迅雷!」
ガイウスが叫ぶなり、左手の先が瞬くように輝き、耳を劈くような雷鳴を伴なって、黄金色の竜が立ち昇った。




