第二千九百十五話 お飾り
「ふ~ん……」
ガイウスはガレーシャに見下すような視線を送り、それだけ言った。
ガレーシャは冷静にガイウスを見つめ、言った。
「お飾りだから、情報をもらっていないとでも言いたげだな?」
事実、ガイウスはガレーシャを完全にお飾りだと見下し、話す相手を間違えたくらいに思っていた。
そのことをガレーシャは、敏感に察知していた。
だが、またそれをガイウスも相手の反応をつぶさに見ることによって、直感した。
「お飾りだって言われ慣れている感じだな?」
ガレーシャが吐き捨てるように言う。
「皇女などに生まれれば、大なり小なり、そう言われることはある」
「まあ、そういうもんかな」
「それで、お前は何者なのだ?」
「上で戦っていたのを見たろ?魔導師だよ」
「それはわかっている。お前が先程言った、ヴァルハラ帝国とやらではどういうポジションにいるのだ?」
ガイウスはちょっと誇らしげに、軽く胸を反らした。
「皇帝だよ」
ガレーシャの片方の眉尻が大きく跳ね上がった。
胡散臭いものを見るような目で、ガイウスを見る。
ガイウスはその視線を正面から受け取る。
「本当だぜ。七か国連合の上に建国されたヴァルハラ帝国の、俺は皇帝なんだよ」
ガレーシャはさもつまらない冗談を聞いたときのような顔をした。
「それで、皇帝陛下御自ら御出陣したと?それも、単騎で?」
小ばかにするようなガレーシャの言い方だったが、ガイウスは腹も立てずに言った。
「そうだよ。俺は無敵の強さを誇るからな。だから七か国の王たちも、俺に従ってくれたんだ。お前もどうだ?」
ガレーシャは鼻で笑った。
「我にお前の下に降れと?つまらぬ冗談だ」
ガイウスは大げさに両手を広げて天を仰いだ。
「おいおいおい、冗談じゃないぜ。全部本当のことだし、降れっていうのも本心からだぜ」
「これ以上、お前の下らぬ戯言に付き合っている暇はない」
「戯言じゃないんだよ。本気だって言っているだろう?」
「世迷言だ」
「違うね。さっきの上空での戦いを見ていなかったのか?俺の圧勝だったぜ」
ガレーシャは、また鼻で笑い飛ばした。
「ふん、話をしていただけではないか」
「魔導師部隊が準備を整えるまで、ブリシアと話して待っていただけさ」
「何故準備を整えるまで待つ必要があるのだ?」
ガイウスは、また横綱相撲と言いそうになったものの、それでは意味が通じないと思い、言い換えた。
「皇帝たるもの、すべての敵の技を受けるのが王道ってものなのさ」




