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転生君主 ~伝説の大魔導師、『最後』の転生物語~  作者: マツヤマユタカ@1×∞(ワンバイエイト)コミック第三巻発売中!
第一章 幼年期の始まり

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第二十八話 ダロスの憂鬱

 1



「えーと、そのう、正直、それは本当にわからないんですけど」


 なぜ悪魔であるアスタロトやザンギを見知っていたのかというカルラの問いに、ガイウスは本当に答えようがなかった。


 たしかにガイウスには秘密があったが、それは前世の知識や記憶などがおぼろげながらあるということであって、悪魔を見知っているということではなかった。


 だがあの時、確かにガイウスは記憶の中にあるアスタロトの姿を頭に思い描き、彼を(かた)るザンギの正体を見破ったのだが、なぜそんな記憶があるのかについてはわからなかった。


 そのためガイウスのカルラに対する回答はしどろもどろなものとなったが、(かえ)ってそれが功を奏した。


「ふ~ん。どうやら本当にわからないみたいだね」


「はあ」


「まあいいさ。これから長い付き合いになるんだ。追々(おいおい)わかることさね。まあなんにせよ、あたしゃ疲れた。隣の部屋でちょっと一眠りするから、後始末はお前たちでやんな!」


 そう言うとカルラは悠然と歩き出し、振り返ることなく大広間を後にした。


「そこは飛ばずに歩くのね」


 ガイウスの突っ込みに、ロデムルが応じた。


「魔法は、疲れますので」



 2



 ガイウスは大広間に隣接する豪華絢爛に彩られた一室で、ロデムルと共に一人ずつ事情聴取しようと、まずはジェイドを呼び出した。


「つまり双子の片割れであるユリアを人身御供(ひとみごくう)にして、クラリスの病気を直してもらうために悪魔を呼び出そうとしたって訳?」


 ガイウスの問いに、ジェイドはうなずきでもって肯定した。


「なるほどね。つまりクラリスの病気は医者では治せないような重病って訳か」


「いや、それはわからない」


 言葉の意味を図りかねたガイウスは、思わずジェイドを二度見した。


「えっ?どういうこと?」


「医者には一度も診せていない」


「はい~?」


 ガイウスは素っ頓狂な声で聞き返した。


 すると傍らで二人のやり取りを静かに聞いていたロデムルが、落ち着いた声音で言った。


「なるほど。つまり『ダロスの憂鬱』という訳ですね?」


「ああ。その通りだ」


「なに?『ダロスの憂鬱』って?」


 ガイウスの問いかけに、ロデムルが答える。


「ダロス王国が、世界最古の国家であるということはご存知ですね?その歴史は非常に古く、大変な厚みがございます。それは本来誇るべきことなのですが、場合によってはそれが(ゆえ)によくないこともございます」


「というと?」


「ダロスは、歴史が長い故にしきたりや慣わしなどが非常に多いのです。何事をするにも細かな慣例に従って行動をしなければならず、よって何をするにも時間がかかってしまい、大変に非効率です。他の国々でしたら効率を優先して慣例を捨てるべきところですが、ダロスは歴史がもっとも古い故に、またそれを誇るがあまり、効率よりも慣例を重視してしまうのです。そのため進取の気性を排除してしまう傾向が強いのです」


「それが『ダロスの憂鬱』?」


「はい」


「それが、病人を医者に診せないこととどんな関係が?」


「新しい学問もまた、排除されるということです」


「そうか。つまり医学を認めないってことか」


 ロデムルは厳かにうなずいた。


「それが、古い(まじな)いに頼り、医者に診せなかった理由かと」


「その通りだ。クラリス様同様、公爵も、そしてダロスもまた、病気なのだよ」


 ジェイドは深い嘆息と共に、諦念(ていねん)の言葉を吐き出した。

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