第千四百三十六話 弱点
「俺が見えない……」
ガイウスは自らの記憶をたぐってみた。
「……いや、俺は何度もルキフェルと話しているし、その際には目が合っていたと思うんだけど……」
カルラは軽く何度もうなずきながら答えた。
「まったく見えないわけではないのではないか?ある程度……そう、例えば輪郭は見える。となれば目の位置も大体判るというものだ」
「なるほどね。そうか、それなら辻褄は合うか……」
「ああ。しかしそうなると面白いね」
「何がよ?」
「あのルキフェルともあろう者が、お前の姿を捉えられないなんて面白いじゃないか」
するとガイウスが首をひねった。
「でもさ、単に見えないってだけでしょ?実際に戦って勝てるってわけじゃないし……」
「まあな。だがそれでも面白い。なぜならそれにルキフェルがこだわっているってことは……」
カルラはそこで一旦間を取ると、ガイウス、シェスターの順に顔を見てから言ったのだった。
「そこに奴の弱点があるかもしれないってことじゃあないか?」
ガイウスはシェスターと顔を見合わせて言った。
「弱点?ルキフェルの弱点が俺だって?」
すると横合いからシェスターが言った。
「その可能性は高いでしょう。ルキフェルがことさらガイウス君にこだわるのは、それが理由と考えれば納得です」
カルラが大いにうなずいた。
「そうだろう。わたしも初めは単なる暇つぶしの材料くらいに思っていたが、あれはそうではあるまい。となれば、そこに秘密があるはずだ」
「それが弱点。弱点の鍵をガイウス君が握っているためにルキフェルはガイウス君にこだわった」
「そうだ。だが問題は、何故ルキフェルにはガイウスが見えないのかだ」
「それは判りません。サタンもその理由は知らなかったはずです」
「そうか。知らぬか……まあ、いいさ。どうせ知っていたとしても教えまい」
シェスターがうなずいた。
「はい。サタンは味方ではありませんので」
「うむ。で……ガイウスよ、まだ納得いかんのか?」
そこでカルラが、ずっと腕を組んで考え込んでいたガイウスに尋ねた。
「……う~ん……いや、ある程度納得はした……したけど、何でサタンもルキフェルも俺のことが見えないんだろうと思ってさ……」
「やはり問題はそこだな。何故見えないのか……それを知るには、やはり特異点とは何かということを理解する必要がありそうだな?」
「そうだけど……俺自身のことなんだけれど……特異点のなんたるかは俺、何にも判っていないんだよね~……」
するとカルラが、フッと一つ鼻息を鳴らして言ったのだった。
「だろうな。得てして自分のことは意外と知らないものだしな」




